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ミステリの祭典

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八二一さんの登録情報
平均点:5.76点 書評数:397件

プロフィール| 書評

No.57 8点 白銀の墟 玄の月
小野不由美
(2019/12/25 20:40登録)
中国風異世界ファンタジーのシリーズで、18年ぶりの長編。舞台は独自の世界設定を持つ「十二国」。今回は行方不明の王を捜す話が主軸になる。シリーズを貫くのは、人のあり方から国のあり方まで、妥協せず理想を追い求める姿の力強さ。特に施政者と民の関係に焦点を合わせた本作からは、現実社会への問いかけが浮かび上がる。虚構だからこそ紡げるリアルがあると感じた。


No.56 7点 夢見る帝国図書館
中島京子
(2019/12/25 20:32登録)
明治に建てられた帝国図書館の歴史と、一人の女性の歴史を重ねて描いた小説。福沢諭吉によって設立が提唱されたものの、戦争のたびに予算が削られたり増築が止まったりという図書館史が興味深い。面白いのは図書館の視点でつづるという手法。訪れる文豪たちを図書館がいとおしく眺める描写が実にいい。図書館は何のためにあり人は何のために本を読むのか、読むうちに自分なりの答えが見つかるはず。


No.55 6点 リラと戦禍の風
上田早夕里
(2019/12/25 20:27登録)
第一次世界大戦で死にひんしたドイツ兵が魔物に助けられ、他者の中に入り込む能力を得る物語。さまざまな立場の人の中に入ることで、人はなぜ戦争を繰り返すのか、それにあらがうすべはないのかという重厚なテーマを描いている。不死の魔物を登場させたのは、繰り返される戦争を俯瞰するため。心にずしりと響く歴史ファンタジー。


No.54 8点 幽霊の2/3
ヘレン・マクロイ
(2019/12/16 18:06登録)
エイモスの莫大な印税に群がる人々の欲と駆け引きや複雑な人間関係、秘密が徐々に露呈していく過程が緊密に描かれ、いくつもの人生が鮮やかに浮かび上がる。古さを全く感じさせない作品を読み終え、人間性は時代を経ても不変なのだと、あらためて感じた。


No.53 5点 野望への階段
リチャード・ノース・パタースン
(2019/12/16 18:03登録)
選挙戦をめぐる丁々発止の駆け引きの面白さに加え、戦争と人生の傷をひきずるコーリーとレキシー恋愛が読みどころ。美人で頭の切れるレキシーが魅力的。


No.52 5点 ベルファストの12人の亡霊
スチュアート・ネヴィル
(2019/12/16 17:59登録)
アイリッシュ文学特有の怒りを秘めた慟哭に根差した幻想性に支えられた犯罪小説。主人公に憑いた亡霊が魅力的。まさかの感動も待っている。


No.51 5点 リバース
北國浩二
(2019/12/10 18:40登録)
予知というモチーフを活かした青春ミステリ。キャラクター造形に不満が残るものの、大掛かりなどんでん返しを作品全体に仕掛けた手際は見事。ラストで明らかになるタイトルの意味も巧い。


No.50 7点 三崎黒鳥館白鳥館連続密室殺人
倉阪鬼一郎
(2019/12/10 18:37登録)
あまりにも馬鹿馬鹿しいネタを濃密な文体で描き切っている。どのトリック、仕掛けも作者らしい力作。なのだがやはり、いつも通り人を選ぶ作品。非常に効率の悪いかたちで、これほどの労力をかけた作者に敬意を表すほかありません。


No.49 6点 ハーモニー
伊藤計劃
(2019/12/10 18:33登録)
才能の煌きを感じる未来小説で、プロットの骨格は一応ミステリ。日本SFを背負って立つはずだった若き鬼才の最後の長編。京極夏彦ルー=ガルーの未来像をSFの側から語り直した作品とも読める。


No.48 6点 ロマンス
柳広司
(2019/12/03 21:09登録)
瞠目するようなトリックではない、むしろ小粒だが、語り方・見せ方・創り方が巧い。昭和史を描いた歴史小説であり、切ない恋愛小説であり、ミステリ小説でもる。三つのどの側面から読んでも良い。絶妙な時代設定がうまく生かされている。華族ファン必読。


No.47 5点 私たちが星座を盗んだ理由
北山猛邦
(2019/12/03 21:02登録)
物理トリックからファンタジックな無想と冷徹さが同居した、本格ミステリならではの興味深いアプローチを施した切れ味鋭い短編集。


No.46 5点 柳生十兵衛秘剣考
高井忍
(2019/12/03 20:57登録)
史書に残る剣豪や必殺技のエピソードを使って、不可能犯罪を作るアイデアが秀逸。ジャンル的には剣豪小説だが秘剣の秘密は本格トリック。


No.45 7点 古書の来歴
ジェラルディン・ブルックス
(2019/11/28 14:29登録)
人類が歴史の中で犯してきた数多くの過ちと、故にこそ貴重な希望の灯を、一冊の古書に託して語った大河小説。ペダンチズムの嫌味なく、すんなり愉しめる知的ミステリ。


No.44 5点 風船を売る男
シャーロット・アームストロング
(2019/11/28 14:25登録)
非常にサスペンスフル、でも根っからの悪人が誰も出てこないので読後感が爽やか。サスペンスにほんのりコージー風味が効いている。フェアな脇役たちにも好感が持てる。


No.43 5点 機械探偵クリク・ロボット
カミ
(2019/11/28 14:22登録)
フランス語のダジャレを、片っ端から日本語のダジャレに変換した、この翻訳は神業。ほっこりする素敵なユーモアミステリ。


No.42 5点 水時計
ジム・ケリー
(2019/11/14 15:30登録)
石と水の相克を通じて、沼沢地に生きる人々の希望と絶望、欲望と懊悩を摘出する、英国ミステリの伝統に根差した本格もの。舞台の風土のせいか二十一世紀っぽさがなんとなく希薄なのも面白い。


No.41 5点 ミスター・ディアボロ
アントニー・レジェーン
(2019/11/14 15:26登録)
カーのオカルト趣味の継承を目指して成功した?稚気あふれる小説。ホラーテイストが強い本格もので、幻想的な犯人像が印象深い。エスピオナージュ世界からスピンオフした、オーソドックスでユーモア溢れる本格ミステリ。


No.40 3点 メアリー‐ケイト
ドゥエイン・スウィアジンスキー
(2019/11/14 15:22登録)
ありそうもない設定に、予想不可能な展開。とあるSF的ガジェットが空前絶後の使われかたをした作品。
こんな馬鹿な使いかたを思いついた人はこれまでいなかったし、今後もこんな馬鹿なことを書く気になる人はいないでしょう。


No.39 5点 失踪家族
リンウッド・バークレイ
(2019/11/08 20:40登録)
平凡のなかに潜む狂気。家族の絆と正と負を描いた作品。ありえない設定が野心的でサスペンスの盛り上げ方もうまい。


No.38 6点 五番目の女
ヘニング・マンケル
(2019/11/08 20:38登録)
巨大なる主題を、等身大の視線で、真摯に描いている。社会批評と謎解きとが合体したプロットが見事。

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