home

ミステリの祭典

login
ラスト・ウィンター・マーダー
ジャスパー(ジャズ)・デント

作家 バリー・ライガ
出版日2016年05月
平均点6.33点
書評数3人

No.3 6点 八二一
(2020/07/13 20:23登録)
最悪のシリアルキラーを父親に持った少年が主人公の青春ミステリ三部作の完結篇。衝撃の結末も、読み終えてみればこれしかなかっただろうと納得する。

No.2 6点 蟷螂の斧
(2017/03/23 22:11登録)
三部作の完結編とは知らずの読書。前作からの完全なる続き物でした。前二作の読者からも「今までの話を少し復習してくれないと、読んでる側は辛いなぁ」との声あり(苦笑)。訳者あとがきを読み、何とか人物相関図を把握するという具合でした。リーダビリティはありますし、親子の対決も読みどころでした。またサプライズも用意されています。まあ、シリーズを読んでいる人にとっては、ある程度予想はつくのかも?。青春ミステリーというより、シリアルキラーものといってよいと思います。ただ、ある重要人物のその後が不明で、完結編としては?マークがつきます。

No.1 7点 人並由真
(2017/02/23 15:12登録)
(ネタバレなし)
 20年間にひそかに100人以上も女性を殺した史上最凶のシリアルキラー、ビリー・デント。その息子でアメリカの地方の街ロボズ・ノットに住む少年ジャズ。彼はビリーから後継者になるべく殺人術を教えられながらも父の意志に背き、恋人のコニー、親友ハウイー、そして一度はビリーを逮捕した保安官G・ウィリアムスたちとの絆のもと、あくまでまっとうな人間として生きてきた。だがNYでビリーとの関連が疑われる連続殺人事件が発生。NYの刑事ヒューズは、殺人者として訓育された資質を探偵的な推理力に変えられるジャズの器量を認めて応援を願うが、その大都会でジャズを待っていたのは事件の意外な展開だった。ついに殺人鬼の父親と、その運命に抗う少年の最後の闘いが始まる。

『さよなら、シリアルキラー』『殺人者たちの王』に続く三部作の完結編。前巻が逃げも隠れもしないクリフハンガー式のラストで幕を閉じたのち、本書はその加速感を受けたまま、最後までいっきに読ませる。
 作中での最大のサプライズはおおむね予想の範疇だが、その事実が明かされてのち、ほぼ同時に判明する人類の近代文明の裏面にひそむホラ話的な話の広がりが実に痛快。こういう文芸を用意しているとは思わなかった。ハイテンションな最後の抗争を経たのちに語られる、ある作中人物の去就も人を食ったオチのつけたかでよい。
 ちなみにwebではこれまで以上に殺戮・暴力描写が凄絶とか言われてるけど、いやそんなに騒ぐほどのことはないね。これなら公共の電波で放映されている深夜アニメ『カオスチャイルド』なんかの方が、はるかに猟奇的なキチガイ作品だよ。本書はあくまで、過激な部分もある、やや破格の、しかしまっとうな青春ミステリです。

 なお本書の<最後の一行>は正にやられた、という感じ。個人的にはマット・スカダーものの『過去からの弔鐘』なみに号泣もののフィニッシング・ストロークではあったが、その後webとかの他の人の感想を読むと、なるほど…短い最後の一行は色々な解釈が可能でかなり深い。改めて考えるなら、そこにヒューマニズムを感じてもいいし、ぞっとするバッドエンドめいたものを感じてもいいし、ある種の切なさを認めてもいい。少なくとも三つ以上の読み方ができそう。まあ自分は悪人になれない読者なので、この最後の一行をどう受け取るかは決まってるんですが。 

3レコード表示中です 書評