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ミステリの祭典

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その先は想像しろ

作家 エルヴェ・コメール
出版日2016年07月
平均点8.00点
書評数2人

No.2 8点 八二一
(2020/07/13 20:19登録)
愛についてのエピソードを散りばめた、何とも独創的な犯罪小説。全くもって好みでの選択だけど、その世界観に脱帽。

No.1 8点 tider-tiger
(2018/09/02 21:45登録)
2014年フランス作品
フランスの北部では二人のチンピラが地元の顔役から金を盗んで逃亡した。些細な事件だった。それから数年、全世界で爆発的な人気を誇るロックバンド「ライトグリーン」のヴォーカリストがシチリア島で失踪した。本作はあらすじを書くのが難しいので、その先は想像して欲しい。~

前作『悪意の波紋』がアレで、こっちもタイトルがタイトルなものだから、きっとバカミス系かなあなんて思いつつ手に取った。
プロローグでロックスターの失踪事件が簡潔に語られる。そして、第一章カルル 第二章ニノ 第三章セルジュ と、三人の人物の視点から三人称形式で過去の話が語られる。それぞれに思い込みや誤解があることが判明し、ロックスター失踪事件の輪郭が浮かび上がるのだが、その真相が話の肝ではない。
第四章オール・トゥギャザーで端役たちも含めて全員の人生の断片がしりとりのように語られて幕を閉じる。この第四章が素晴らしい(ちょっと説教臭いが)。もちろん一章~三章までの少しくどいくらいの書き込みによってラストがさら輝いたのだと思う。
ジャンル選定には迷った。クライムノベルになるのか、その他にすべきか。
文章はリズミカルであり、詩的でもあり、声に出して読みたくなるようなものだったが、いかんせん五〇〇頁のヴォリュゥム(芥川風表記)、改行少、会話少、読むのが大変だった。先が見通せない作品だった。変な作品だった。どうということもなさそうでいて素晴らしい作品だった。
カルルの章がやや退屈であったが、なぜかこのカルルが私は一番好きだったりする。
読んでいる最中は、徐々に胸糞展開になって読後感は悪いのだろうなあなんて思わなくもなかったが、とんでもない。本作は人生賛歌とでもいうべき作品で無情で切ない部分がありながらも、温かな気持ちで本を閉じることができた。多くの人に読んでもらいたい。そんな作品だった。
※裏表紙には注目のフレンチミステリなどとあったが、ミステリ度は低い作品でした。あらすじはぜんぜん違いますが、なんとなくアレッサンドロ・バリッコの『海の上のピアニスト』を思い出してしまいました。

訳者は田中未来(たなかかなた)さん。御本人、もしくは御両親がお茶目な方のようである。

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