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ミステリの祭典

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ルーフォック・オルメスの冒険
ルーフォック・オルメス

作家 カミ
出版日2016年05月
平均点6.71点
書評数7人

No.7 6点 メルカトル
(2024/05/04 22:34登録)
オルメスはホームズのフランス語読み。ルーフォックは「頭のおかしい」とか「いかれた」の意味。ホームズのパロディと言うには、ぶっ飛びすぎの、とんでもユーモア・ミステリ・コント集。34編の掌編を集めたもの。たとえば、寝ている間に自分の骸骨を盗まれてしまった男の話、とか、巨大なインク壺のなかに閉じ込められた男たちの話とか……「アホカ! 」というような掌編ばかり。ミステリ・マニアとしては、読んでおくべき奇書の一冊。
Amazon内容紹介より。

実に馬鹿馬鹿しいが実に面白い。バカミスの見本の様な・・・だからあまり突っ込まないで広い心で読んで頂きたい一冊です。奇想の連打で、よくそんな発想が出来るものだと感心します。個人的には第一部の方が好みです、第二部は何となく怪盗を捕まえては脱獄されての繰り返しで、ちょっぴり飽きが来ます。まあどれも奇想天外、荒唐無稽な話ばかりなのでそんな細かい事は気にせず、何も考えずに楽しめば良いのですが。

バカミス好きにはお薦め出来ると思います。あり得ない事件でも、それなりに理論的に解決してしまうので、一概に下らないと断定してしまう訳にも行きません。訳も洒落が効いていて上手ですね。クセは強いですが、インパクトに欠ける作品も見られるので、すぐに忘れてしまいそうな気がして残念です。

No.6 7点 クリスティ再読
(2022/11/08 18:23登録)
評者のユーモア・シリーズもそろそろ終わりに近づいてきているけど、これやらなきゃ、ダメでしょ!で図書館で探したんだけど....あれ?あるはずだけど、見当たらない。

理由は評者がこれが「戯曲」扱いだと気がつかなかったんだ(苦笑)。図書館で探すときにはちょっと落とし穴。まあでもさ、「戯曲」って言ってもコントの台本の形式で、ト書は最小限。それぞれ翻訳文庫本で8ページくらいのものが全34本。スピード感に乗せて一気に読めちゃう本である。

要するに「考えさせちゃ、ダメ」ということ。奇抜なシチュエーションの上に、さらに「んなアホな!」というオチをオッ被せて読者の度肝を抜く。まさに「速攻」で読者はたまらず土俵を割る、好きな話は「聖ニャンコラン通りの悲劇」(キャッと空中...)「シカゴの怪事件」(復活祭のために鐘がローマと往復する!)「《とんがり塔》の謎」(シーツの出現の謎)
いやいや実はロジックがあるんだよ。ただしそのロジックが奇抜なシチュエーションを前提にした「ありえない」ロジックだから、力技で一気に押し切られることになる。だからこれはこれで「本格」なんだと思うんだ.....「あなたがカミか!」

No.5 7点 八二一
(2020/07/13 20:28登録)
戯曲形式のフランス式ホームズパロディ。しかしながら、時折考えさせられる部分もあり、現代においてもその魅力は腐らない。翻訳も秀逸。

No.4 7点 弾十六
(2018/11/11 07:24登録)
1926出版。
蛇足をつけたりで出しゃばりな訳者なんですが、駄洒落も頑張ってるので良いことにしましょう。(駄洒落の原文を教えて欲しかったです)
内容はファンタジーな綺想溢れるほのぼのギャグ。ワトソンが登場しない、ホームズ物語とは全く関係ない名探偵パロディものです。
知らないうちにカミさんが沢山翻訳されていて、ちょっとびっくり。訳者さんに感謝です。

No.3 8点 mini
(2016/12/16 10:13登録)
先日10日に年末恒例の「このミス 2017年版」が刊行された、今回は内容も結構充実しておりこれも近日中には書評の必要ありだが、その前に

今回の「このミス」海外編の12位にランクされたのが、カミ「ルーフォック・オルメスの冒険」である、12位って意外と高いのかそれとも案外と低いのか微妙なところだが、ベストテン入りの可能性もあるかなと思ってたからまぁまぁな順位でしょうかね
皆様御存知のように、「このミス」のアンケートは各回答者が順位を付けて6冊挙げる回答方式なわけだけど、挙げた6冊は集計上は全く同じ点数じゃないわけですよね
それだったら順不同でいいわけで、当然ながら順位が上位な程ポイントも高くなるのですよね、つまり挙げた回答者の人数も重要だがそれ以上に各回答者の順位付けも重要なわけ
何でこんな事をクドクド言うかというと、「ルーフォック・オルメス」を挙げた人は人数的にはそれ程多くないんだよね
それでも総合順位が12位になった理由だけど、この作品に4位とか5位とか中途半端な順位を付けた回答者は少数派なのですよ
つまりこの作を挙げる回答者の多くは1~3位という高い順位にしているわけ、それで挙げた人数に比して総合順位がそこそこ高まったわけですね
おそらくは回答者によって、中途半端な順位に置くくらいなら別格として除外するか、挙げるのだったら思い切って1~2位に置くかの両極端な回答結果になったと思われるのだよね
要するに「ルーフォック・オルメス」とはそういう作品なのです

このところの私の書評はフランス作家に偏っていたので、どうせついでだこれもやっちゃえ
もうこれはね一言で言ってしまえば、単に馬鹿々々しい、の一言で済んじゃうわけでね、その馬鹿々々しさを楽しむものなわけで
これに伏線がどうのだのロジックがどうのなどという要素を採点に反映させても全くナンセンスなので、採点上はこの馬鹿々々しさに何点付けるかという問題な気がする
だからこのユーモアが大して面白くないと思うから低い点数にした、という考え方ならもちろんそれもアリなわけです
しかしマジな意味でのきちんとしたロジックで謎を解いていないとかの基準で低く採点しても、それだとこの作品に対しては全く意味が無い、まさかそんな人は居ないとは思いますが
実は作中ではオルメス流のロジックが展開されるのだけれど、それさえもユーモアの一環ということでしょうか、どちらかと言えば長編「エッフェル塔の潜水夫」の方が相当強引ではあっても最後は謎解きとして決着させていたかな
だから今後も増えるであろうこの作の書評上の採点は、読んだ人がこのユーモアが合うか合わないかとの違いに帰着されると思う
尚当サイトでkanamoriさんも御指摘されているが、今回の創元文庫版はとにかく翻訳が素晴らし過ぎ、私の採点にはこの翻訳の仕事に対する高評価もかなり入っていることを明記しておきたい

余談だが今年に創元文庫で刊行される以前にも抄訳的には過去にいくつか翻訳が有って、どうしても読みたかった私は出帆社版を中古で数年前に入手していたのですよ、それ読む前に創元文庫版が出ちゃったのだよね(苦笑)、絶版本に投資しない私としては珍しく中古本にそこそこの金額払ったのにな、えー今だとAmazonで4000円、ふー、買ったのが2000円未満の頃で良かったぁ(さらに苦笑)

No.2 5点 nukkam
(2016/07/08 17:47登録)
(ネタバレなしです) 喜劇王チャールズ・チャップリンに「世界でいちばん偉大なユーモア作家」と言わしめたフランスのカミ(1884-1958)がルーフォック・オルメス(Loufock=Holmes)の活躍するショート・ショート34作をまとめて1926年に発表した短編集です。あのコナン・ドイルのシャーロック・ホームズのパロディーではありますがまともな謎解きは一つもなく、あまりの馬鹿馬鹿しさを笑って楽しむのが正しい読み方でしょう。34編合わせても創元推理文庫版で300ペ-ジに満たない短さですが、この短さだからこそ馬鹿馬鹿しさに最後まで付き合えます。kanamoriさんのご講評の通り、第一部「ルーフォック・オルメス、向かうところ敵なし」の作品よりも第二部「ルーフォック・オルメス、怪人スペクトラと闘う」の作品に馬鹿馬鹿しさが強力で印象的ものが多いと思います。「《とんがり塔》の謎」とか「血まみれの細菌たち」とか「地下墓地の謎」とか「死刑台のタンゴ」などは光景を想像するだけで絶句ものです。

No.1 7点 kanamori
(2016/06/22 18:18登録)
フランス製のシャーロック・ホームズ・パロディ。名探偵ルーフォック・オルメスが、奇想天外な34もの怪事件を、あれよあれよと謎解いていくユーモア連作短編集で、74年ぶりの新訳完全版です。各話とも10ページほどの掌編で、演劇シナリオ風になっていることもあって、カッパえびせん並みにサクサクと読めます。

ギロチン台やボートが空を飛び、運河の水の中を自転車が走る。巨大な赤ん坊が人を襲い、人体の中から骸骨だけが盗まれる------ありえない奇想とナンセンス・ギャグに溢れた、これぞバカミスの聖典と呼ぶにふさわしい作品集です。これらの数々の奇想の連打で連想してしまうのは、われらの島田荘司センセーです。これまで島荘が信者から”本格ミステリ界の神(カミ)”と崇め奉られているのが個人的にはピンとこなかったのですが、なるほどダブルミーニングだったのですねw 
当シリーズで感心したのは、ありえない馬鹿馬鹿しい設定にも関わらず、それを前提にしたそれなりにロジカルな推理が展開されるところで、とくに第2部に入り、宿敵〈怪人スペクトラ〉との知的闘争編はミステリ的にも面白い作品が多い(ような気がする)。なかでも、怪人の脱獄トリックを扱った「トンガリ塔の謎」と、おバカすぎるトリックが炸裂する「血まみれの細菌たち」がお気に入り。で、一番笑えたのは「死刑台のタンゴ」かな。
「機械探偵クルク・ロボット」と同様に、そのまま日本語にすると分かりずらいギャグを、大胆にアレンジした翻訳の高野氏の功績も素晴らしい。また、氏が本書のナンセンス・ギャグの本質を、古典落語の滑稽噺(「頭山」や「粗忽長屋」)の近似だと見たのは慧眼だと思いますね。

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