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ミステリの祭典

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湖畔荘

作家 ケイト・モートン
出版日2017年08月
平均点7.00点
書評数4人

No.4 6点 nukkam
(2021/12/29 22:15登録)
(ネタバレなしです) 「秘密」(2012年)に続いて2012年に発表された長編第5作で、創元推理文庫版で上下巻合わせて700ページを超す大作であるところも「秘密」と共通しています。心理描写が非常に丁寧なので大作であっても重厚さよりも抒情性を感じさせるところがこの作者ならではの作風ですね。メインの謎が1930年代に起こった赤ん坊(セオ)の失踪事件であることと現代(2003年)でその謎解きを試みるのが女性刑事のセイディであること(但し警察の組織力には頼れません)が本書の特徴ですが、事件発生前の複雑な家族ドラマ描写が長々と続き、いくつかの秘密や問題が示唆されて緊張感も徐々に高まるのですが、事件発生後の描写が短いためかミステリーらしさは希薄に感じられるかもしれません。それでも最後は本格派推理小説風に伏線を回収しての謎解きがあるのですが、真相については何度か作中で語られる「コインシデンス(偶然の一致)」をどう評価するかで読者の賛否が大きく分かれそうな気がします。

No.3 7点 猫サーカス
(2021/12/12 18:24登録)
複雑な時間軸を行き来するのがモートン流だが、本作のストーリーラインは三つ、三人の女性が視点人物となる。一つ目は、一九三三年、コーンウォールの湖畔の別荘でパーティの晩に起きた乳児失踪事件をめぐるパート。二つ目は、二〇〇三年、ある幼児の置き去り事件にからみ、現場から干されたロンドン警視庁刑事やセイディを中心とする物語。そして三つ目は、二十世紀初頭、若いエリナの目線で、第一次大戦や財政難をくぐり抜けたエダヴェイン家の様子が語られる。物語の背景を準備し、謎を仕込み、七十年後に一気に展開させる。三人はそれぞれの過去と向き合うことになるが、各々に思い込みはあり、叙述のすべては信用できないかもしれない。三つの物語は謎解きの意外な二転三転を経て、巧緻かつ鮮やかに結ばれていく。歴史小説としても、一族のサーガとしても秀逸なゴシックミステリである。

No.2 8点 八二一
(2020/07/27 19:28登録)
とっつき難い構成と多視点描写なのにぐいぐい読ませる。プロットの面白さがずば抜けている。

No.1 7点 小原庄助
(2017/12/05 09:56登録)
物理的に重厚な上下巻に、見た目だけで威圧されてしまうかもしれない。構成も決してシンプルではない。だが、読むことの楽しさをじっくり味わえる作品。
物語は過去と現在を行き来し、複数の視点から語られる。さまざまな人々の記憶の断片が並べられ、最初のうちは五里霧中の感覚を味わうことでしょう。
やがて断片同士が徐々につながり始めたところに、そのつながりをひっくり返すような意外な断片が投げ込まれる。ここまで来ると、もう逃れられない。全体像がどうなるのかを見届けるまで、夢中で読み進めることになる。複雑ながら一気に読ませる、驚きに満ちた物語。

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