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ミステリの祭典

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mediocrityさんの登録情報
平均点:6.23点 書評数:286件

プロフィール| 書評

No.86 5点 寝台急行「銀河」殺人事件
西村京太郎
(2019/06/01 02:53登録)
全7章。
無駄な描写ほとんどなしに話がどんどん進む。それにしても展開の速いこと。「尾行している私立探偵はいったい何者なのだ?」と言った2ページ後にもう名前特定、更に2ページ後に探偵事務所で殺されているのを発見というくだりは、さすがに高速すぎて笑ってしまった。
結構な量の謎を振りまくが、6章を終わった段階ではまだ真相は全くわかっていない。謎解きも超高速、最後は唐突な終わり方。
いかにも量産期に入ってからの作品という感じで、文章も構成もかなり雑に感じた。密室?トリックもアリバイトリックも大したことない。ただ点数付けろと言われたら5点(まぁ楽しめた)になってしまうのがベストセラー作家たる所以か。実際短時間で読めて「まぁ楽しめた」から。


No.85 8点 ABC殺人事件
アガサ・クリスティー
(2019/05/29 18:44登録)
1日1章ペースで読んで半分ほど読んで放置していたが、再開すると後半は面白くて2日で読み終わった。フランス語部分は最初のうちはググっていたが、途中からは面倒くさくなって調べていない。

<以下ネタバレあり>

正直に言うと犯人当ては間違えた。Dと間違って殺された(と思われた)人物が、犯人が本当に殺したい人物だと思ってた。だから犯人はその周辺の人間で、そのためにABCを殺したのかと推測したのだが・・・まあ半分あってた?から満足。
細かい所では、警察署ではなくてポワロ宛てに手紙を送った理由が意外で良かったです。
気になった点は、てんかん患者に、あそこまで「存在しない事実」を「実際に起こったこと」と思い込ませる事が本当にできるのかということでしょうか。
ところで、ポワロものは初めて読んだんですが、あまり名探偵という感じがしなかったんだけど気のせいかな。


No.84 9点 本陣殺人事件
横溝正史
(2019/05/27 07:20登録)
角川文庫版
『本陣殺人事件』
200ページほどの中編だが、内容はギッシリ詰まっていて大満足。並の長編小説では太刀打ちできないレベルの面白さ。トリックもいいが、それ以上にストーリー展開のうまさの方が際立っていると思った。
一つだけ文句を言うと、3本指男周りの事実が色々と都合が良すぎる気がする。
『車井戸はなぜ軋る』
これもたった80ページの作品とは思えないほど読み応えがあった。どの辺が良かったのかを書くとネタバレになりそうなのでこれ以上は書くのは避ける。
『黒猫亭事件』
130ページほど。途中、金田一が登場すると話は急展開する。いや急転回と言った方がいいか。これもあまり書くとネタバレになりそう。

小説としては表題作がやはり一番面白かったが、ミステリとしては他の2編も同レベルかそれ以上の名作だと思った。


No.83 9点 斜め屋敷の犯罪
島田荘司
(2019/05/20 18:51登録)
驚愕のメイントリックには「唖然としました」という他ないでしょう。特に天狗の面の使い方が秀逸です。第1の殺人の2本の棒の用途、ゴーレムの体がバラバラにしてばらまかれた謎の解答のシンプルさは、メイントリックと対照的で面白いです。
第1の殺人時の、犯人と周辺人物の行動が少しややこしいです。作者がこの作品で一番苦労したのはトリックの数々ではなくてその部分なのではないかと感じました。
人間関係の描写や言い争いの場面などは、自分は好きでしたが、くどいと感じる人もいるでしょう。殺人の動機は、当時全盛だったらしい社会派ミステリでも通用しそうなものです。
欠点は、犯人の意外性がないということと、アレが命中するのかということでしょうが、後者はフィクションなんだから別に問題はないと個人的には感じます。


No.82 5点 ジークフリートの剣
深水黎一郎
(2019/05/14 19:19登録)
ワーグナーとかクラシック音楽に全く興味がないミステリ愛好者に無理やり読ませたら、多くの人が3点以下を付けるんじゃないかと思うほどミステリ要素は薄い。正直、ストーリーよりも、『ラインの黄金』や『神々の黄昏』の疑問点に対する著者の解釈(登場人物に語らせている)の部分が一番面白かったかも。


No.81 6点 ガリレオの苦悩
東野圭吾
(2019/05/14 02:23登録)
『探偵ガリレオ』同様、化学トリック満載の短編集。
今回はトリックはおまけで、むしろ湯川とその周辺人物の人間ドラマの方が主役に感じた。第5章『攪乱す』も良いが、第2章『操縦る』の恩師とのストーリが一番良かった。読み物としては『探偵ガリレオ』よりこちらの方が楽しめた。


No.80 3点 神様ゲーム
麻耶雄嵩
(2019/05/13 03:34登録)
同級生が神様という設定を面白いと思えるかどうかはさておき、そもそも話のメインである殺人事件と謎解き部分が大して面白くなかった。3点(あまり面白くなかった)くらいだが、解決の後味が悪いのでマイナス1点させてもらってこの点数。

<追記>
この作品、同じく「井戸」が謎に大きく絡む超傑作『首無の如き祟るもの』から1ヶ月くらい後に読んだんです。だから明らかに劣ると感じて上の評価になったようなんですが、ちょっと点数が低すぎる気がするんで1点プラスで。


No.79 7点 完全犯罪に猫は何匹必要か?
東川篤哉
(2019/05/13 01:41登録)
烏賊川市シリーズ3作目。相変わらずユーモアを交えて話が進行するが、謎解きは安定している。ただし450ページはちょっと長いか。トリックより動機の方が驚いた。


No.78 7点 びっくり館の殺人
綾辻行人
(2019/05/08 22:28登録)
平均点は現状5点を下回っているが、悪い作品だとは思わなかった。雰囲気はむしろ好き。色々制約がある中で書かれたとのことだが、その中で最大限に工夫されたストーリーだと感じた。
小学六年生がニトログリセリンを知っていたり、「奇縁」なんて言葉を使ってみたり、鹿谷が解決編に出てくるのかと思ったら出てこなかったり、館に壮大な秘密があるのかと思ったらそうでもなかったり、確かに色々とビックリでした。


No.77 9点 カラスの親指
道尾秀介
(2019/05/07 03:20登録)
『ラットマン』はあまり楽しめなかった(実際、4月29日に書評書いてるのにもう内容を覚えていないくらい)のですがこれは最初から最後まで楽しめました。結構長いですが、文章が平易で読みやすいですし、色々と目まぐるしく事件が起こるので退屈しません。そしてなんといっても最後が良い。このオチは使い方によっては興ざめしそうですが、ここまで読後感が爽やかだと感動的ですらあります。


No.76 9点 マジックミラー
有栖川有栖
(2019/05/06 06:07登録)
鉄道アリバイものも工夫すればここまで面白くなるのかと感動した。この種の作品が好きな人は文句なく楽しめるだろうし、苦手な人が時刻表部分を読み飛ばしても、その他の謎で十分楽しめるだろう。
学生アリスシリーズでも作家アリスシリーズでもないので、正直あまり期待してなかったが嬉しい誤算だった。


No.75 5点 L特急踊り子号殺人事件
西村京太郎
(2019/05/05 00:12登録)
70~90ページ程度の短編3作。2作目はイマイチ、他の2作は水準か。
『L特急踊り子号殺人事件』
犯人と一緒にいたという証言者と最低でも30分程度離れていたことになり、その部分はちょっと無理があると思った。それを除けば短編の割に工夫が多くて面白い。
『特急しらさぎ殺人事件』
事件が起こって淡々と捜査が進むだけ。正直面白くない。デッドセクションなる物の存在を知れたのが一番の収穫か。
『振り子電車殺人事件』
有栖川氏の『やけた線路の上の死体』と似たネタ。あちらの方が話は面白いけど、トリックのフィージビリティはこちらが上だ。


No.74 4点 R.P.G.
宮部みゆき
(2019/05/04 06:08登録)
『火車』が世評のわりに楽しめなかったので、薄めの本を選んでみたが、あまり印象は変わらなかった。中編を無理に長編にした感じで、引き延ばしのような記述が多い。その割に突然、一気に話が進んだりして焦る。
扱っている内容は『火車』よりは楽しめたけど、ミステリとして特に面白いとは思えなかった。しかしながら2時間ドラマにするには良い作品だと思う。


No.73 4点 ラットマン
道尾秀介
(2019/04/29 02:16登録)
謎解き自体は面白かったが、326ページでこれだけだと点数はこのくらいか。
正直130ページあたりで読むのをやめようかと思ったけど、その章の最後でやっと事件が起こったので読み続けた。ただ事件が起きた後のストーリーも言葉は悪いが、かったるかった。
偶然にも文庫版の解説を書いている大沢氏の『新宿鮫』も退屈で途中で読むのをやめてしまった数少ない本の1冊なんだけど、なんだか雰囲気が似てたような。
2冊とも平均点は高いので自分が変なだけだと思います。


No.72 3点 六枚のとんかつ
蘇部健一
(2019/04/28 04:20登録)
文庫版。これは評価が分かれるのはしょうがない。
基本面白くなかったが、数作は楽しめた。外れた推理の中に興味深いものがいくつかあった。


No.71 9点 双頭の悪魔
有栖川有栖
(2019/04/26 00:48登録)
有栖川先生、還暦おめでとうございます。

学生アリスシリーズ長編3作目。前作よりページ数も内容もスケールアップしている。ミステリー研究会メンバーが全員登場するのもうれしい。とことん理詰め(今回は消去法が多い)で謎を丁寧に解きほぐしていくのは前作と同じ。
例のごとく橋が落ちるが、今回は橋の両側で事件が起きてそれらが密接に絡み合ってるのが良い。もう少し終盤ビックリさせて欲しい気はしないでもないが、できないのではなくあえて抑えてるのだろう。
火村シリーズよりこちらのシリーズ方が好きなのに、未読が残り1作しかないのか。なんだか読むのがもったいないな。


No.70 7点 密室に向かって撃て!
東川篤哉
(2019/04/21 23:51登録)
密室というよりも、誰がいつどこでどう銃を撃ったのかの謎解きがメイン。地味だが実に論理的だ。科学捜査を初期段階でもう少しきっちりやればいいのにという批判はしたくない。
海岸に落ちていたアレはもう少しばれないように処分すべきとは思ったが、あくまで読者へのヒントであって、存在しなくても謎は解けるのでそれほど問題ではないか。
ストーリーとかはデビュー作の方が好みだったが、出来は2作目のこちらの方がいいと思う。


No.69 8点 狂骨の夢
京極夏彦
(2019/04/19 07:42登録)
面白かったがちょっと読み疲れた。文庫本で「たった」969ページの中にいくらなんでも内容を詰め込みすぎ。
テーマに魅力的な要素が多いこの本こそ、前後作以上の長い枚数が必要だったのではないかと感じた。
稀代の傑作になってたかもしれないのに残念な作品だ。


No.68 8点 緋色の研究
アーサー・コナン・ドイル
(2019/04/18 06:25登録)
シャーロックホームズのデビュー作。100年以上前の本だが思ったより読みやすかった。
前半はホームズの紹介の後、ダイイングメッセージつきの殺人事件が起きる。そして意外な形で犯人確保。
さあ謎解きの時間だ!と思ってたら、突然アメリカに飛ばされて茫然。なんだかよくわからない別の話が延々と続くのでなかなか読む気が起きなかったのだが、読み進めていくとこれが意外と面白い。
それにしてもモルモン教の扱いがすごい。だんだん表現が直接的になってきて2回ほど吹き出しましたわ。
正直ミステリとしてはそれほどでもないと思うが(挿入話が長すぎてあまり前半の内容を覚えてなかったのもあるけど)、大胆な構成で小説として非常に面白かったのでこの点数。


No.67 7点 葬送行進曲
鮎川哲也
(2019/04/16 19:59登録)
短編集。書評がないということは、あまり有名でない作品集なのか。倒叙物で、犯行がばれた理由を当てる推理クイズ形式。推理小説を何百冊も読んでいる人には簡単すぎるのだろうが、100冊にも達していない自分には、解けたり解けなかったりというちょうど良いレベルで楽しかった。

『葬送行進曲』
これは読者への挑戦にほぼ答えを書いてしまってるような気が。真相はあっけない。
『尾行』
ズバリ当てるのは難しいと思う。ヒントは確かにあったけど。
『ポルノ作家殺人事件』
これは簡単。ただ話自体はユーモアにあふれてて面白い。
『詩人の死』
これはちょっと難しい、と作者が書いている。大体の答えは想像できたけど厳密には分からなかった。
『赤は死の色』
これだけ犯人当てクイズなし。消去法で犯人が特定される。
『ドン・ホァンの死』
ドン・ホァンという表記は出てくるたびに変な感じがする。原語の発音には近いんだろうけど。ハゥムズとウォトゥスンみたいな感じか。ちなみにこの作品は犯人当てである。
『死人を起す』
超短編。やさしいと書いてあるが、細かくて気付かなかった。繰り返し読める長さだから懸賞クイズにはピッタリだと思う。
『新赤髪連盟』
文字の謎はなんとなくわかったが、背景まで含めて完全に解明するのは難しいか。

前に氏の『崩れた偽装』という倒叙短編集を読んだが、こちらの方がずっと面白かった。なんというか、楽しみながら書いている感じが文章から溢れている。

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