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ミステリの祭典

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密室に向かって撃て!
烏賊川市シリーズ

作家 東川篤哉
出版日2002年10月
平均点6.38点
書評数16人

No.16 6点 パメル
(2023/02/25 07:26登録)
突発的に発生した改造拳銃流出事件。その持ち逃げされた拳銃が次々と事件を引き起こす。まずホームレスが犠牲となり、そして名門・十乗寺家の屋敷では、娘・さくらの花婿候補の一人が犠牲となる。名探偵・鵜飼は、弟子の流平と共に密室殺人の謎に挑む。
密室といっても建物に鍵がかかっているのではなく、建物自体が海へ突き出た岬に建っており、入口には人々がおり、そこから出ることが出来なかったという衆人環視の密室である。
どこか頼りない名探偵と弟子のやり取りはギャグに溢れていて、そこかしこで笑ってしまう。ふざけた雰囲気の中であっても丁寧に伏線を張り、それもギャグの中に仕込んだりしているから油断ならない。その伏線を元に論理的に犯人の動機、手口を絞り込み真相を明らかにする謎解きの巧さはなかなかのもの。
最終的に明かされるメイントリックは、銃声の数と銃弾の数が合わないという「一発の足りない銃弾」をどう補うかという点だったが、真相自体の発想は面白い。ただこのトリックは、科学捜査を行えば即バレするのではという疑問が残る。前作に比べるとミステリ部分に物足りなさを感じたが、軽妙な語り口にぐいぐい引き込まれたし、ユーモアの腕も上がっていて総じて楽しめた。

No.15 7点 mediocrity
(2019/04/21 23:51登録)
密室というよりも、誰がいつどこでどう銃を撃ったのかの謎解きがメイン。地味だが実に論理的だ。科学捜査を初期段階でもう少しきっちりやればいいのにという批判はしたくない。
海岸に落ちていたアレはもう少しばれないように処分すべきとは思ったが、あくまで読者へのヒントであって、存在しなくても謎は解けるのでそれほど問題ではないか。
ストーリーとかはデビュー作の方が好みだったが、出来は2作目のこちらの方がいいと思う。

No.14 7点 名探偵ジャパン
(2017/12/01 21:51登録)
本格にユーモアの皮をかぶせたこのシリーズの作風は、この頃から今まで、全然変わっていません。本作も、書かれてから十五年も経っているとは思えないほどです。

このシリーズで私が好きなのは、キャラクターやその言動はふざけていても、事件自体は本格(しかも、キャラクターや作風にマッチするような「日常の謎」ではなく、ガチガチの殺人事件)を貫いているところです。銃弾の数や、それが撃たれた場所をあぶり出す推理はあくまでロジカルで、それらを担保する物証もきちんと、しかもかなり早い段階から出してきてフェアです(砂浜で見つけた、あれは、もっとうまく処分するべきだったのでは? とは思いますが)。

このシリーズ、数年前に実写ドラマ化しましたけれど、ほとんど話題にはなりませんでしたね。ガチのミステリ好き以外の、もっと一般層にも読まれてよいシリーズだと思います。

No.13 7点 青い車
(2016/06/24 19:20登録)
 『密室の鍵貸します』ではいわゆる「鍵の掛かった部屋」パターンの密室だったのに対し、本作では衆人環視の密室がテーマになっています。銃声を利用してアリバイを確保するトリックがよく練られており、作中でもネタバレされている海外の名作を意識したような決死の犯行には意表を突かれました。銃弾の数から犯人を導き出す推理もロジカルで、前作より格段に密度の濃い仕上がりです。

No.12 7点 蟷螂の斧
(2013/10/18 11:59登録)
刑事のコンビ、探偵のコンビ、プラス2人のマドンナ?が織りなす天然ボケが受けます。展開がスピーディで読みやすいですね。A・C氏の「N」、A・B氏の「D」作品がヒントになっているようですが、真相のアイデア(伏線の回収は見事)は独自のものでは?と思います。十条寺さくらの恋の行方が気になったのですが、シリーズ4弾「交換殺人には向かない夜」(既読)に登場していたのですね。やはり、シリーズものは順番に読まなくては・・・(笑)。

No.11 7点 アイス・コーヒー
(2013/09/23 19:02登録)
警察の失態で流出した改造銃がホームレスを襲い、さらには密室殺人事件にまで発展する。烏賊川市シリーズ第二弾。
相変わらずのギャグと個性的なキャラクターに富んだ設定で、展開は早い。また、素人探偵たちの独自の推理はそれなりの工夫があって読みやすい。
今回は密室破り(あと犯人当て)というよりは、銃弾と銃声の数の問題がメイン。部分的にクリスティの名作を引き合いにしつつ、見事に消化しているところは感心。また、論理派の名探偵・鵜飼の推理に対し、伏線を利用した流平の推理も見事だった。まさか、腕相撲やあれがそんなに重要だったとは…
ただ、不運のホームレス・金蔵が犬死だったんじゃないか、とは思う。それに、メインのあのトリックだってもっと慎重にやるべきだったのではないか。少し雑な点もあって残念。

No.10 6点 mozart
(2012/08/06 14:13登録)
「ベスト本格ミステリ2012」に収録されていた「雀の森の異常な夜」を読んで、烏賊川市シリーズが気に入ったので、図書館で借りてきました。「謎解きは・・・」に比べるとギャグ度(?)はそれほどではないけれど、本格度(?)はそこそこ、といった感じです。ただ、「謎解き」自体はそれほど意外性はなく、犯人もあの程度の理由でホームレスを殺害する、というのはどうかな~、と・・・。
それでも、鵜飼探偵のキャラクターは大変気に入ったので、他のシリーズ作も是非読んでみたくなりました。

No.9 6点 ミステリ初心者
(2012/06/20 10:06登録)
ネタバレあります


 ツッコミ役の女性キャラクターが主要人物の一人となり、さらに面白さと読みやすさが増しました。
 銃の発射音と弾数の問題が面白かったです。 犯人は分かり易すぎた感じです。

No.8 6点 こう
(2012/01/21 00:50登録)
 前作で「バイクを壊していた」朱美さんがつっこみ役でレギュラーになった第2作目も楽しめました。正直このシリーズは笑えればいいと思いながら読んでますのでこの作品も楽しみました。確かに4、5作目を考えればおとなしめかもしれません。

No.7 6点 E-BANKER
(2011/04/05 22:52登録)
烏賊川市シリーズの第2弾。
「謎解きはディナーの後で」で超意外なブレイクを果たした作者が贈る「お笑い系本格」ミステリーです。
~烏賊川市警の失態で持ち逃げされた拳銃が次々と事件を引き起こす。ホームレス射殺事件、そして烏賊川市きっての名家の屋敷では一人娘の花婿候補の1人が銃弾に倒れる。花婿候補3人の調査を行っていた名探偵鵜飼は、弟子の流平とともに密室殺人の謎に挑む~

う~ん。相変わらず"お笑い系ミステリー”が冴えてます。
今回は、衆人環視の準密室で起こる殺人事件の謎がメインテーマ。
ただ、サプライズがあるかと思っていた真犯人については、意外なほど「普通」・・・
「銃弾の数」がアリバイトリックの鍵となるわけですが、ちょっと強引というか、現実味が薄いのが気になるところ。先に起こったホームレスの事件や「肉」の件も、必要性あるんですかねぇ? 伏線にしたかったのは分かりますが、これもちょっと現実性が薄い・・・
まぁ、分かりやすいといえば、分かりやすいと思いますので、鵜飼よりも先に真相解明も十分可能ではないでしょうか。
本格ファンにも「お笑い系」ファンもある程度満足できる作品かとは思います。
(しかし、これほどブレイクするとは、まさかねぇ・・・)

No.6 7点 nukkam
(2011/01/19 09:18登録)
(ネタバレなしです) 2002年発表の烏賊川市シリーズ第2作の本格派推理小説です。ユーモアの度合いが前作「密室の鍵貸します」(2002年)に比べて数段パワーアップしています。謎解きも充実しており、お笑いの中に謎解き伏線をしっかり張ってあります。前作のような破天荒な真相ではありませんが、その分解決のまとまりは良いので本書の方が一般受けしやすいと思います。

No.5 6点 まさむね
(2010/11/20 22:11登録)
氏の作品を読むのは,「交換殺人には~」・「もう誘拐なんて~」に次いで3作品目。
まずは,烏賊川市シリーズは順に読むべきだったなぁと反省した次第。(一般的にそりゃあそうか。)
で,思ったよりも本格の状況を作ってましたね。根幹はしっかりとしていて,安心感はあります。
犯人の意外性が少ない等,細かい点は色々(血は気付くんじゃないかなぁ…とか)ありましたが,まあ,ストレスなく読み進められたし,作者の「狙い」は成功してるような気がします。
ちなみに,既読2作品と比べて,ギャグが薄かったような気が…。個人的にはもっとガンガン攻めて欲しかったなぁ。

No.4 6点 いけお
(2010/01/29 21:34登録)
作品自体が条件を限定しているので、その中でフェアだし論理性があり楽しめた。
結末はあまりひねりも無く地味かも。

No.3 5点 こもと
(2009/11/17 12:39登録)
 この手のギャグを小説として読むには、ぬるさが痛い。 以前、『しゃべくり探偵』を読んでいて、辛かったことを思い出してしまった。・・・と言っても、私が単に好みじゃないだけかもしれませんが。
 「科学捜査をもってすれば、多々矛盾が出てくるんじゃない?」と思えてならない解決も、ちょっと。

No.2 7点 makomako
(2009/08/28 18:44登録)
 密室といってもそれほど閉ざされた環境というわけでもない、犯人も途中で見当がついてしまったが楽しく読める小説ではある。
 いいかげん風な割にはじつはそれなりに本格しているし。
 厳格に考えると穴はいっぱいありそうだが、そこは軽いタッチの小説なのでこれで良しといった感じになってしまう。こういった感じは好みとしては結構好きです。

No.1 6点 江守森江
(2009/05/24 03:55登録)
シリーズにセミレギュラー(この作品の時点では判明しない)が加わり先々の楽しみが増した。
前作の重要人物が殺されたりシリーズ物として書き続ける意欲が見える。
本格度はさほどでもない。

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