home

ミステリの祭典

login
了然和尚さんの登録情報
平均点:5.53点 書評数:116件

プロフィール| 書評

No.76 6点 ダブル・ダブル
エラリイ・クイーン
(2015/10/16 14:47登録)
読み手を選ぶ作品です。クイーン好きでも国名シリーズからいきなりこれを読むとかなりガッカリ物かと思いますが、「十日間の不思議」、「九尾の猫」と読みつなぐと、この頃のクイーンのスタイルに馴染んで、本作も楽しめます。相変わらずのクイーン探偵の踊らされぶりで、犯人指摘後の納得感も薄く、いまいちなのですが、最初から読み直してみると構成的にはしっかりと本格になってます。失敗点は犯人の動機の隠蔽に気を使いすぎ(ま、ここが肝なのですが)不自然すぎる内容になってしまったことでしょうか。一体、この人何人殺したのかなとか、どこで犯罪に持って行ったのかとかは、読み直してみればわかるようになっているのですが、直接の犯罪で死んでいない人は「登場人物」には記載されていないというのは、本格っぽくて+1点です。(偶然か?)
それから、童謡の見立てで「商人」と「証人」が引っ掛けてあったのは、面白すぎますが、原文ではどうなっているんでしょうか? 翻訳者のファインプレーなんでしょうかね? 気になります。



No.75 3点 偽のデュー警部
ピーター・ラヴゼイ
(2015/10/10 15:05登録)
どうやら私にはユーモアのセンスがないようです。


No.74 6点 囁く影
ジョン・ディクスン・カー
(2015/10/03 16:22登録)
過去の事件も、今の事件も動機が隠されてたりして、なんとも入り込みにくい内容で4点。犯人が(その正体がと言うべきか)以外で+1点、その後の謎解きでパズルを組み上げるような見事さに+1点と、尻上がりに評価が上がる作品でした。自分の眼の節穴ぶりが情けなくなります。
本作はいかにも本格推理という感じで、90%つまらなくても、最後の10%で見事にやってくれた感じです。非本格の犯罪小説である松本清張の作品では90%楽しく読めて、最後の10%の仕上げでがっかりするのと対照的なのが面白いですね。作品の娯楽量とでもいう指標があるならば、両者は同じなんだなと感じます。


No.73 7点 不安な演奏
松本清張
(2015/09/29 18:27登録)
本格を基準として採点してますので、本作は−2点しましたが、面白さは清張作品のトップクラスでした。清張はもう何冊も読んできましたが、まだこんな傑作があったかというかんじです。本作の弱点はラブホでの盗聴(しかも普通のは飽きたので男X男希望とか言ってます)という、なんだかなあという導入にあるのかもしれませんが、殺人計画を偶然録音する環境として苦肉の索なので、堪忍してください。しかも、最後にはトリックの一部としてひらっています。展開は謎、素人の追求、旅、偶然の発見、次の死体の繰り返しですが、信用できない仲間、黒い教会、政治家、土建屋などと何かミュージシャンのベスト盤を聞くような楽しさでした。(結末のあっけなさも含めて!)
また、本作では語り手の宮脇平助(すけべに読める)、久間監督(太っている、フェル博士級の天才かと思ったが後半行方不明で残念)、葉山良太(食わせもの)の探偵役3名が面白い味を出していて、パスティーシュが読みたいキャラ達でした。


No.72 6点 爬虫類館の殺人
カーター・ディクスン
(2015/09/12 19:51登録)
数十年ぶりの再読ですが、密室のトリックはピンときました。この今でも2時間ドラマで出てきそうなネタも先生の発案でしたか。それでも、犯人は絞りきれなかったのでさすがです。(動機が金なのも明白なのですが) 最後の章で、「どうや、犯人は娘かおじさんかドクターかと思ったやろ」と書かれて、まいりましたという感じです。
 真犯人ですが、重要な役割の犯人の夫の方が、みごとに消えすぎていて影しかなく(いや、影薄すぎませんか)え、って感じであっけなかったです。共犯であるにせよないにせよ、もうすこし露出してくれれば読後感が良かったと思います。
 H.Mの拷問に近い強制自白(あるいは、仕返し)という結末に+1点。


No.71 4点 斜め屋敷の犯罪
島田荘司
(2015/09/08 09:28登録)
「顔の無い死体が出てきたら被害者と加害者が入れ替わっている」という金言と同様に「奇妙な館が出てきたら犯人は館の主である」と言いたい。 今後の館物については当主が犯人という先入観を利用した引っかけに注意したいものです。 そういえばカー大先生で館の前の持ち主(犯人)と現当主(被害者)というのがあったような気もしますが、これくらいはひねってほしいです。 
 前作も感じたのですが、トリックは素晴らしいのですが、文章がページ数を稼いでいるだけみたいに感じて楽しめなかったので、いまいちです。意外とびっくりトリックというのはブラウン神父ものみたいに短編でキレるのかなと思います。


No.70 4点 パディントン発4時50分
アガサ・クリスティー
(2015/09/06 19:42登録)
このサイトでも評判が悪いですね。私もイマイチだと思います。
しかし、骨格だけを見直してみると7点ものの本格作品なのですが、どこで失敗したんでしょうかね。
8ページ目に早々と殺人が目撃されますが(最早記録ってあるんでしょうか?)、並行して走る列車の窓からの偶然の目撃は、テレビドラマで演出されていたように、ちょっとコミカルな感じで、最高の入り方でした。
次は、探偵助手役に非常に魅力的なキャラが出てきます。こっちは本作のみらしいですが、1作のみでおしいサブキャラ1位は確実なのでは。
そして、いよいよ身元不明の死体と大家族、遺産相続、天一坊と黄金パターンです。
結末は、死体の身元とそれまで語られた容疑者がすべて燻製ニシンー>消極的消去法でこいつが犯人 みたいに読めるのが意外な犯人であっても、本作の流れにはマッチしなかったようです。


No.69 5点 ホラー作家の棲む家
三津田信三
(2015/09/01 17:50登録)
「首無の如き祟るもの」が本サイトで人気のようなので、読んでみようと古本屋を探したのですが、代わりに本作が見つかったので読んでみました。(ホラーとは知らなかった)現実と創作の2つの話が混沌化して、展開がスピードアップするあたりからついていけなくなって、内容の評価は低めですが、乱歩などの話や、登場する本格推理の名作など、わき道は十分楽しめましたし、参考になりました。大昔に買った「怪奇小説傑作集(創元推理文庫)」の1、2が本棚にあるので、また読んでみようかと思いました。
もちろん「首無の如き祟るもの」の期待度も上昇しました。


No.68 2点 紅い白描
松本清張
(2015/08/31 15:27登録)
殺人も詐欺も出てきません。よって2点ですが、読み物としては4点ぐらいです。
デザイン問題が世間を騒がしていますので、業界の内幕的な内容を期待して読んだのですが、「天才画の女」の劣化版でした。(あとがきによると「天才画の女」の方が本作を元に発展させているようなので当然か) 
注目すべきはラストでのデザイナーの潔さでしょうか。盗用を暴かれた有名デザイナーは、騙し続けることの苦痛と自らの能力の限界を感じ、全てを告白してデザイン事務所を解散し引退しました。 胸がスッとしました。


No.67 6点 九尾の猫
エラリイ・クイーン
(2015/08/30 10:34登録)
出だしの部分では国名シリーズの最初の頃のような雰囲気に戻り、期待したのですが、またしてもクイーン探偵は間違ってしまいます。前作に続き、本格物としては大減点です。ドクターが逮捕されたあたりで読む気が無くなったのですが、結末の部分では探偵エラリークイーンを好きにならずにはいられない展開ですね。本作を読まずしてエラリークイーンは(特に後期)語れずという感じですか。 内容的にも手がかりの提示が少なく突然の展開が多いのですが、ABC殺人で真のターゲットの存在をにおわせて、若い2人組の線を伸ばして真犯人をうまく消しているあたりは本格度が十分でした。


<以下 「悪魔の手毬唄 横溝正史」のネタバレ語ります>
真犯人の動機ですが、夫の他の子供(本作は思い込み)を殺して回るあたり、なんとなく「悪魔の手毬唄」を思い出しました。
動機が利害関係ではないので弱いという意見もありますが、個人的にはこの対比で説得力を感じました。



No.66 4点 山峡の章
松本清張
(2015/08/29 07:22登録)
4回もテレビドラマ化されているようです。内容は心中物なので「点と線」を思わせます。(官僚だし) 松本清張を読んでいて楽しいところは、テーマとなった各種業界などの内輪ネタが語られるところですが、本作では夫は官僚ですが、妻の視点で語られるため、新婚生活がテーマのようになっていて、小粒な感じです。犯罪小説としては、目新しさもなくイマイチでしたが、腐乱死体との対面から野焼きによる火葬あたりの場面の雰囲気は良かったので、ドラマ化でどのように扱われたか気になります。


No.65 6点 危険な未亡人
E・S・ガードナー
(2015/08/27 08:23登録)
11作続けて読んできましたが、いつものように楽しめました。メイスンの寝技も段々危なくなってきますが、ついに逮捕されました。メイスン物はサスペンス活劇という先入観があり、今まで軽視していたのですが、実際はよく根拠が提示された論理を重視する本格物です。本作も、例えば事実と違っても自殺の結論をひねり出してごまかすような結末を予想したのですが、意外な犯人とトリックを暴いて決着しています。残念ながら、うかつにも金庫「室」というのを読み逃して、とほほな読後感になりましたが。


No.64 6点 ポケットにライ麦を
アガサ・クリスティー
(2015/08/23 16:45登録)
すっきりよくまとまっていて、面白く読めた一冊でした。本格の観点としては少し物足りない気もしますが、特にマザーグースの関わりが、イマイチでした。改めて考えてみると見たて物って(獄門島とか)意外と派手な演出で見栄えは良くなりますが、本筋とは関係が薄いのが多いかなと思います。本作も童謡殺人と呼ぶには寂しいですね。マープルが犯人を指摘するときに、論理と証拠を挙げた後(これが重要)、犯人の妻は2度までも不幸な結婚をしているので今回も夫は何者かに違いないというのは結構好きですね。


No.63 1点 五匹の赤い鰊
ドロシー・L・セイヤーズ
(2015/08/20 15:25登録)
この本の評価は難しい! ミステリーのレベルとしては5点(まあまあ)ぐらいで、6点でも良いかもしれない。しかし、私にはスコットランド訛りがひどく集中して読めませんでした。6人の中から犯人を読み解くという緻密な謎ときなので、これは痛かったです。ネットで検索したら原書が見つかったのですが、"Did ye hear aboot Mr. Campbell?" が「キャンベルさんのことを聞きなすったがですか?」の調子で一体どこの世界の方言なんだろうか(あ、スコットランドか) フレバー程度に語られるならまだしも、証言でも、現地のお巡りさんも訛るもんだから、まったく集中できない。翻訳者は趣味と工夫を見せたとして、編集者は通して読んでなんとも思わなかったのだろうか? 内容ですが、電車トリックはもちろん、他に船の移動のアリバイなんかも出てきますのでクロフツが意識されているようです。実際「マギル卿最後の旅」の書名がそのまま出てきているのはすごいですね。
 クリスティーの「5匹の子豚」と同じなのですが、容疑者が明示され、並行的に淡々と証拠調べが行われるスタイルは、フェアでリアリティーがあり推理しがいはあるのですが、反面、物語としては単調になる欠点があるようです。フレンチ警部のように、順次推理しつつ展開していく話とは対極ですね。


No.62 4点 隻眼の少女
麻耶雄嵩
(2015/08/16 23:32登録)
「御陵みかげ最後の事件」とサブタイトルつけてもらうと、すっきりします。(実際は最初の事件ですが) 好みとして探偵が間違った推理をして読者を振り回すのは嫌いなので−1点、犯人でもあるのでさらに−1点です。1985年の事件は前段として良かったと思うのですが、2003年の事件はできがイマイチですね。前半は5人も死んでいるわけですから、後半も種馬を含めて5人シンメトリーに死んでくれれば(そのための再度の三つ子?)、それで犯人母(自害)で、実は真犯人は娘の方とかなら、ループして世紀の奇書になったのに。(あと300ページくらい必要ですが) それから、後半で母みかげの出現が突然過ぎたのですが、実はどっかで娘の代わりにこっそり入れ替わってたりして(叙述的に仕掛けられていなかったか)、私が読み逃しているシーンとかあったんでしょうか?


No.61 6点 死が二人をわかつまで
ジョン・ディクスン・カー
(2015/08/13 16:46登録)
最初に毒殺話をしたおっさんですが、誰でも嘘話だとわかりますよね。(偽モンとは思わなかったけど)なぜなら、フェル博士が、しかも密室の事件において、犯人にしてやられて未解決なんてありえないです。(ハハハ)
 まあ、平均点ぐらいかなという感じです。皆さんご指摘の通り、後半の殺人は不要ですね。犯人の動機面について、とってつけたというか、物足りなさはありますが、最も意外な犯人という結論ゆえにしかたがないかなと思います。これらの不満点についても本格の手がかりを細かく提示しているところは、カーはさすがです。
 


No.60 4点 魔術の殺人
アガサ・クリスティー
(2015/08/10 21:11登録)
皆さんがコメントされている通り、イマイチですね。残り100ページのところで最初に戻って、添付の平面図に人物を記入しながら読み返したら、犯人はわかったのですが、マープルが明確に否定するのは、気に入りませんね、(私は、探偵は間違ってはいけないと思う)このトリックはクリスティ再読さんと同じ日本の作品をすぐ連想しました。日本の作品の方が先に書かれているんですね。 犯人はわかっても動機に本格物らしい工夫がしてあったので、まあまあの読後感なのですが、最後に無意味に4人も死体が並ぶのは減点でした。このへんが荒っぽい仕上げですね。


No.59 5点 エンジェル家の殺人
ロジャー・スカーレット
(2015/08/05 21:59登録)
まあまあな感じでした。本格物として手がかりもよく示されており、良い作品だと思うのですが、探偵に馴染みがないのが残念なのと、クイーンの好きそうな異様な大家族物ですが、クイーンほど人物描写がねちこくないのでキャラの印象が薄い点で−1点です。ロジャースカーレットという名前は英語ではwikipediaに出てこないのですが、その辺の事情の一部があとがきに書かれていて参考になりました。乱歩の翻案の方は未読なので、読み比べが楽しみです。


No.58 7点 貴婦人として死す
カーター・ディクスン
(2015/08/05 21:49登録)
ちょっと地味な内容かと思いましたが、作品としてよくまとまってました。第二、第三の殺人が組み込まれてもおかしくない構成なのですが、最初の事件だけにすることで、結末を(またもや超法規的、人情的な決着)盛り上げています。「王立美術院会員ポール・フェラーズによって書かれた補足と結末」と唯一タイトルが付けられた1ページのインパクトは最高の効果を上げていました。確かに本書は他の人に勧めたい一冊ですね。


No.57 6点 サウサンプトンの殺人
F・W・クロフツ
(2015/07/30 20:49登録)
ミステリーを構成で分類した場合、本書は歴史上唯一無二と言えるような実験作品でした。まず、本書は倒叙ミステリーではありません。倒叙ミステリの定義を(1)前半は犯人、後半は探偵の2部構成 (2)犯人は単独犯 従って前半は犯人の日記のように綴られる。 と勝手に定義してみました。本書は犯人と探偵視点の1、2部があり、続いて通常の犯人探し、探偵の解決と4部構成になっています。また、犯人も最初に2人、その後その上司、事情を知ったむしろ被害者側の3人が恐喝に加わると、どんどん増えていきます。大変興味ある構成なのですが、残念ながら全部がうまくいっているとは言えず、驚きや感動の要素は少なかったです。3、4部のフーダニットでは、皆殺しを図って1人とり逃すのですが(故に、この人物が犯人の線が残るのだが)、生き残った故に犯人のアリバイ工作が意味をなすことと、一人でも残ったら犯人破滅やろという矛盾が印象を悪くしてます。

116中の書評を表示しています 41 - 60