home

ミステリの祭典

login
初老人さんの登録情報
平均点:6.80点 書評数:130件

プロフィール| 書評

No.70 7点 兄の殺人者
D・M・ディヴァイン
(2015/02/09 18:22登録)
最後の真犯人があぶり出されるくだりが淡々としており、カタルシスを得る事が出来なかった。尤もそれは犯人を外した事から来る単なる僻みなのかもしれない。
この作家のあまり誇張し過ぎない感じが気に入ったので、機会があれば次作以降も追いかけていきたいと思う。


No.69 8点 ハサミ男
殊能将之
(2015/01/29 15:38登録)
二つの主たるトリックが使われており、終盤で明らかにされる怒涛の真相開示に読んだ当初は相当の衝撃を受けた覚えがある。
真犯人の印象が薄いのが多少の不満だが、それも含めて作者の計算の内なのだと思えば十分納得がいく。


No.68 5点 悪魔の寵児
横溝正史
(2015/01/16 22:15登録)
この作品で扱われている主となるトリックは、当時としてはかなり斬新なものであったのだろうが、今となっては時代に埋もれてしまった感があるのは否めない。
そういった点を度外視すれば、雨男の意外性など十分楽しめる内容の作品になっているのは間違いない。


No.67 8点 オランダ靴の秘密
エラリイ・クイーン
(2015/01/05 23:43登録)
今まで読んだ作品の中で犯人を1人に特定するための論理構成が最も美しく、かつ明快だったもののひとつ。
それにも拘らず犯人を外してしまった当時の自分の愚鈍さが悔やまれる。もっとも今の自分が当時と比べて少しは進歩したかと言えば全く実感が無いというのが正直な所である。


No.66 7点 木蓮荘綺譚 伊集院大介の不思議な旅
栗本薫
(2015/01/04 01:37登録)
伊集院大介シリーズ事実上最後の長編作品。
あるうららかな春の日の午後、伊集院は住宅街の散策を楽しんでいた。
そんな時、あるちょっとしたきっかけが元で品の良い老婦人とそのお手伝いと知り合う。
この瀟洒な住宅街では3件の幼児失踪、殺害事件が未解決のままであり、人びとの心に暗い影を落としていた。
トリックというよりは誰にでもある心の闇、静かで穏やかな世界観を描き出す事に成功しており、シリーズの最後を飾るのに相応しい静謐感漂う作品に仕上がっている。


No.65 6点 美貌の帳
篠田真由美
(2014/12/18 23:25登録)
道具立ては揃っている。揃ってはいるのだが、肝心のトリックの中身が余りにも…といった所。
しかしながら建築探偵シリーズの中では比較的出来がいい方だと思われるので、もしこのシリーズを味見したい、と思っている方がいらっしゃれば、この作品から入って見るのもアリかと考えます。


No.64 7点 一角獣の繭
篠田真由美
(2014/09/28 00:28登録)
時系列としては、宗教団体による集団自殺事件(聖女の塔)の直後にあたる。前作で心に傷を負った蒼は門野の勧めで長野の鏡平の会員制リゾートに静養に赴くのだが、そこで放火惨殺事件の生き残りの少女と宿命的に出逢い、惹かれてゆく。そんな中閉ざされたリゾートで殺人事件が起きる。被害者は少女の母親で、青銅製のユニコーンの角に眼を貫かれ事切れていた。
二年前に起きた未解決の放火殺人と、現在の殺人事件が複雑に絡み合い、今作は考える事が多いです。そして何よりも蒼の初恋は成就するのか。この辺りも読みどころの一つと言っていいでしょう。
そして全てが終わった後訪れる衝撃的な展開。桜井京介はどこへ向かおうとしているのか…シリーズのラストに向けて全てが動き出したという印象を受けました。


No.63 8点 バーニング・ワイヤー
ジェフリー・ディーヴァー
(2014/09/17 21:47登録)
このシリーズを一作でも読んだ事のある方なら外せない作品だと思います。
真犯人の正体も十分に衝撃的なもので、久々に寝食を忘れて本に没頭するという体験をしました。
最終的に各々がハッピーエンドを迎えるというのも、このシリーズならではだと思います。


No.62 5点 天狼星
栗本薫
(2014/08/24 00:51登録)
伊集院大介と宿敵シリウスとの死闘の幕開けを告げる一作。 業界の関係者しか集う事を許されないパーティーの情景だとか、普段そういった事に縁もゆかりもない私のようなものにとっては大変に興味深く、じっくりと読み進めた。
シリウスのキャラクターも強烈だが、刀根一太郎の境遇に思いを馳せ、思わず同情してしまう自分がいた。


No.61 6点 毒物殺人
今野敏
(2014/07/29 00:34登録)
STシリーズ2作目。今回はフグ毒による死者が出たのを皮切りに 連続殺人事件へと発展していき、STの面々が調査に乗り出す。(ここからネタバレ)事件の最後の局面まで白鷺が直接手を下したものと思っていたが、最終的に自殺教唆並びに幇助の罪で落ち着いたのは意外だった。しかし殺人を実行するのではなく人を直接的に操り殺人を行わせていた事を考えると、殺人教唆の罪に問われる事案であるような気がする。
ドラマ版では多少のアレンジが加えられていたが、概ね原作通りの展開で、これはこれで良かったのではないかと思った。


No.60 10点 下町ロケット
池井戸潤
(2014/07/26 00:33登録)
この作品に巡り会えた事に感謝!


No.59 8点 魔術師
ジェフリー・ディーヴァー
(2014/07/22 01:29登録)
今までに読了したディーヴァー作品の中では、最も強く印象に残っている一品。私がディーヴァー作品を気に入っている理由の一つが、物語の手作り感がダイレクトに伝わってくるという点だ。この魔術師という小説の中で、作者は誤導というテクニックを最大限に活用し、読み手を翻弄し楽しませるが、その姿勢にスマートさと同時に、職人気質の誠実さというものを感じ取れるのだ。そしてその精神性は、ウォッチメイカーといった後続の作品に受け継がれている。これからもディーヴァーとその作品から、目が離せない。


No.58 5点 硝子のハンマー
貴志祐介
(2014/07/13 23:55登録)
トリックの独創性という点では文句なし。にもかかわらずこの点数にしたのは、犯人視点に切り替わってから話の勢いが削がれ、スピード感溢れる物語をスローダウンさせているように思われるからだ。犯人の正体が明かされるのも、犯人側の視点からのみで緊張感に欠ける事甚だしい。これではいかにトリックが素晴らしくても、構成上の不備があったと思われても仕方のない事のような気がする。 しかし私は散々批判したものの、この構成が斬新な試みであったという事がおそらく評価の一因となり 、本作が日本推理作家協会賞を授賞したという事実に対しては素直に喜ばしい事だと思っている。それでもなお、残念ながら私は、この大胆な試みを買う事は出来なかった。


No.57 4点 黄昏の囁き
綾辻行人
(2014/07/09 09:07登録)
前作、前々作と比べて明らかにパワーダウンしており、短くまとめているのは良いのだが、犯人の正体もありきたりなものだった。これといったトリックもなく、褒めるべきところがあまりない。
作者もこのシリーズの方向性でやっていく事の限界に気付かされたのではないだろうか。これ以降続刊されないのがその事の証明とは言えないだろうか。それともこの作品を最後に三部作として完成させたつもりなのか。いずれにしろ、少々残念な出来であると言わざるを得ない。


No.56 8点 人形はなぜ殺される
高木彬光
(2014/07/03 18:56登録)
再読だが、初読時は解題の方を先に読んでしまったが為に興が削がれ、斜め読みをした結果犯人だけ分かってしまい、それ以上の追求はしなかった、という経緯がある。なので、今回はトリックを読み解く事に特に重点を置いた。すると、これが実に良く出来ている。特に列車のトリックは人形と人間とを実に無駄なく「殺し」て処理しており、犯人を完全に容疑者圏外に置いた事に対して、素直に感嘆し、本当に読み返して良かったと思わされた。
ただ一つ瑕疵があるとすれば、犯人が分かり易い。恐らくほとんどの読者は犯人について、金色夜叉の時点で気付いてしまったのではないだろうか。作者は自信があったのかもしれないが、こればかりは少々読者サービスが過剰に過ぎた、と言えるのではないだろうか。


No.55 6点 死にぞこないの青
乙一
(2014/06/30 09:40登録)
主人公は、好感を持っていた担任の先生から教室ぐるみのいじめを受けてしまう。いじめはエスカレートしていき、彼の前に現れた自身の心の投影であるアオと手を組み先生を殺す 、という考えを持つに至る。
読んでいて決して気持ちのいい話ではない。だが抗えないような不思議な魅力がある。読後少々不快だったのが、先生の行った数々のいじめ行為などが世間に知られる事はなかった、という事だ。先生には厳しい社会的制裁なりペナルティーがあっても良かったのではないだろうか。まぁ勧善懲悪がこの物語のテーマではないからそこはあえて深く掘り下げる事はなかったのだろう。暑い夏に読むのをおすすめする一品だ。


No.54 8点 アクロイド殺し
アガサ・クリスティー
(2014/06/28 03:41登録)
ネタバレあり


初読時はかなり楽しめた記憶があるが、ある登場人物が○○いじりが好きな事についてさらりと触れられており、おぼろげながら犯人の正体に思い当たったのには嬉しくもあり反面拍子抜けした面もあった。その当時はこの作品が叙述トリックの最高峰であるという知識すらなかったので、後々読み返してみた時この作品を書き上げるにあたりいかに細心の注意が払われていたのか、という事を知り初読時にもっと読み込んでいれば新鮮な驚きに浸る事が出来たのではないか、と思うと中途半端に浅い理解の仕方しか出来なかった当時の自分がなんとも口惜しい。


No.53 6点 人形館の殺人
綾辻行人
(2014/06/22 01:59登録)
館シリーズの中でも、あるひとりの人物の狂気というか、○○○○を扱っていながら今となってはそれほどのインパクトがこの作品からは感じられない。むしろネタが割れてしまえばシリーズの中でも比較的地味な部類、凡作に属するのではないか、と思ってしまう。ただ発刊直後の反響等を考慮して点数は甘めに付けさせていただいた。


No.52 7点 塗仏の宴
京極夏彦
(2014/06/19 22:19登録)
宴の支度で登場した数々の怪しげな宗教団体による、さながら百鬼夜行の様相を呈して混乱の極み、といった感じだったのが宴の始末では一変、宗教団体の数にまで意味を持たせ最終的には一点に収束させる力業は見事と言うしかない。
しかしながら個人的に京極氏の最高傑作だと信じている絡新婦の理より結末のカタルシス、という点ではやや劣る、と感じたのでこの点数。


No.51 7点 どんどん橋、落ちた
綾辻行人
(2014/06/17 02:00登録)
バラエティに富んだ犯人当てがテーマの作品集として楽しめました。第1話のどんどん橋、第2話のぼうぼう森の人の思い込みを利用したトリックが大変好みです。そして第5話の意外な犯人、アヤツジユキト役の役者が登場するのですが、そう思わせておいて実は○○が…という展開。これも遊び心に溢れていて興味深かったです。伊園家の崩壊は、真相は平凡ですがこれほど救いの無い話は珍しいと思いました。フェラーリは見ていた、が作品の印象としては一番薄いように思いました。

130中の書評を表示しています 61 - 80