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ミステリの祭典

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バーニング・ワイヤー
リンカーン・ライムシリーズ

作家 ジェフリー・ディーヴァー
出版日2012年10月
平均点7.00点
書評数8人

No.8 5点 八二一
(2022/10/09 20:44登録)
電力網を巡るディテールが今の日本の電力事情を連想させる。
目的のためなら手段を選ばないというのが作者らしいが、手段の規模が動機に合っていない。

No.7 6点 レッドキング
(2020/04/07 16:22登録)
ライムシリーズ第九弾。今回の敵は、電力を自由に操り惨劇を繰り返す「電気男」。骨格は〇〇殺人と見せかけた✕✕殺人・・と見せかけた△△殺人、そうDMディヴァイン「五番目のコード」と同じで、ここまでなら4~5点。と見せかけておいて、ボスキャラ「ウォッチメーカー」・・ライムのモリアーティたる・・ウォッチメーカー登場で加点。

No.6 7点 E-BANKER
(2019/09/23 22:24登録)
“リンカーン・ライム”シリーズ九作目となる本作。
今回の相手は「電気」。電気が大いなる凶器となる世界・・・怖くて寝ていられない!
2010年の発表。

~突然の閃光と炎。それが路線バスを襲った。送電システムの異常により変電所が爆発したのだ。電力網を操作する何者かによって引き起こされた攻撃だった。FBIは科学捜査の天才リンカーン・ライムに捜査協力を依頼する。果たして犯人の目的は何か? 人質はNYそのもの・・・史上最大の犯罪計画にライムと仲間たちが挑む!~

今回、ライムのセリフで非常に印象深かったものがふたつ。
ひとつめは、他の方も触れられてますが、捜査が重大な転換点を迎えるなかで、アメリアに向けて放った言葉。
『・・・考えうる可能性をすべて排除したあと、一つだけ排除できなかったものがあるとすれば、一見どれほど突飛な仮説と思えても、それが正解なんだよ。』
-まさに、シャーロック・ホームズが「緋色の研究」で放ったセリフと同じ。シリーズファンにとっては今さらではあるけど、かの名探偵に対する愛情が伺える一幕。
そしてふたつめは、事件も解決した後、ライム自身が大きな決断をしたとき、アメリアに残した言葉。
『・・・時代は変わる。人間も変わらなくてはならない。どんなリスクがあろうとも。何をあきらめなくてはならないにしても・・・』
かりそめの平和のなか、不穏な空気が充満している昨今の世界情勢。この言葉をひとりひとりが胸に刻んで生きていかなくてはならないのではないか?と再認識させられる一幕。

今回は前々作から続いてきた宿敵「ウオッチメイカー」との戦いにも終止符が打たれる。
事件の渦中で意識を失うという大ピンチに陥ったライムにとっても、大きな転換点となる事件になったのだろう。
もちろんアメリアにとっても、そしてチームの他のメンバーにとっても・・・

いやいや、ここまでシリーズを重ねてきてのこの出来栄えは恐れ入る。
もちろん純粋な謎解きのレベルで言えば、決して本作が優れているわけではない。
ただ、作品を重ねていくごとに芳醇な味わい-ちょうどライムがこよなく愛する上質なスコッチウィスキーのようなーが加えられている。
これを超えるシリーズを創作するのは並大抵ではない。そんな気にさせられた。
(今回はアメリアのピンチシーンがなかったのが不満点。次回は是非!)

No.5 6点 HORNET
(2017/08/20 17:09登録)
 今回の凶器は「電気」。目に見えないながら、一瞬にして命を奪う威力をもつ凶器に相対するシーンは読んでいるこちらも緊張する。いつもながら、それぞれの作品にはっきりした題材というか、テーマのようなものをもたせる作者の腕は秀逸だと思う。

 物語は電力会社へのテロともいえる犯行に立ち向かう本筋と、メキシコに逃亡を図った「ウォッチメイカー」を逮捕するという複線との二本立てで進められている。ウォッチメイカーはやはり特別な作品らしく、ちょいちょいこうやって「その後」がストーリーに出てくるので、そういう点ではこのシリーズ作品(ライムシリーズの方)は順番通りに読んだ方がよいのかも。

 リーダビリティの高さは相変わらずで、またそれもチープな感じではないので、今回も十分楽しく読めた。ただイマイチ得点が上がらなかったのは、私は今回の「どんでん返し」がちょっと飛び道具というか、奇を衒ったものに感じてしまったので…。ちょっと読者の予想を超えることに行き過ぎてないかな?

No.4 8点 Tetchy
(2015/11/29 21:38登録)
現代のシャーロック・ホームズ、リンカーン・ライムが対峙する今回の敵は“電気”。正確には電気を武器にニューヨークを翻弄する敵が相手だ。
普段はその有難みが解らないが、いざ台風や地震で停電が起きるとその大事さに気付かされるのが電気だ。3・11の東日本大震災で計画停電が行われ、当時東京に住んでいた私はネオンサインがない渋谷の街を毎日目の当たりにして、夜闇に乗じて犯罪が起きてもおかしくはないと半ばこの世の終わりのような思いを抱いたものだ。
「電気は、市民の道徳心にもエネルギーを供給しているのだ」の作中の一文には激しく頷いてしまった。
この電気、実は私も仕事で縁がある代物だが、非常に便利であるが反面、非常に恐ろしい物だ。それは本書でも実に詳細に語られている。
いわゆる“見えない凶器”であり、電線のみならず帯電している金属から人間の体内を通って地面に通り抜ける間に絶命してしまうからだ。

さらにライムはキャサリン・ダンスたちがメキシコ警察と共同してメキシコシティに潜伏しているウォッチメイカーの逮捕にも携わる、いくつもの要素が絡まった物語となっている。

そしてそれら一連の事件の絵を描いたのは意外な人物だったことが判明する。
とにかくすごい真相だ。どんでん返しの帝王とも云えるジェフリー・ディーヴァーだが、もう騙されないぞと思いながらもやはり驚愕させられてしまった。
もはやネタは出尽くしたと思ったがこれほどのサプライズをまだ見せてくれるとは、やはりディーヴァーは只者ではない。

ところでディーヴァー自身もこのシリーズを現代のホームズ物と意識して書いているようだ。特に下巻220ページの次の台詞

考えうる可能性を全て排除したあと、一つだけ排除できなかったものがあるとすれば、一見どれほど突飛な仮説と思えても、それが正解なんだよ

はホームズが短編「ブルース・パーティントン型設計図」での台詞

ほかのあらゆる可能性がダメだとなったら、どんなに起こりそうもない事でも残ったことが真実だ

とまるで同じである。もはやこれは確信的ではないだろうか。

No.3 9点 あびびび
(2014/09/29 23:22登録)
ずっとこのシリーズを読んできたが、今作ほどほのぼのとした結末はなかった。しかし、ウォッチメーカーが!!!

四肢麻痺のリンカーンが最後に見せる葛藤は、本当に涙物ではあるが、読者としての思い入れは深い。まさか、このままシリーズ終了ではと、危惧する自分がいる…。

No.2 8点 初老人
(2014/09/17 21:47登録)
このシリーズを一作でも読んだ事のある方なら外せない作品だと思います。
真犯人の正体も十分に衝撃的なもので、久々に寝食を忘れて本に没頭するという体験をしました。
最終的に各々がハッピーエンドを迎えるというのも、このシリーズならではだと思います。

No.1 7点 kanamori
(2012/11/17 10:33登録)
リンカーン・ライム・シリーズの最新作。
今回の相手は”電気を操る男”。インフラとしての電力を標的としつつ、見えない凶器として捜査陣を翻弄するという趣向です。

シリーズも9作目となると、現場で収集した微細証拠を分析し犯人を絞り込む過程にマンネリ感もありますが、オールスターキャストを揃えた脇役陣がそれぞれ活躍しており、今作は読みどころが多いです。
アメリア・サックスをはじめとするライム・ファミリーのほか、もはや準レギュラー化した殺し屋”ウォッチメイカー”と、彼をメキシコで追うキャサリン・ダンス。さらには、「悪魔の涙」の文書検査士パーカー・キンケイドの”友情出演”もあります。(いまどき脅迫状が手書きなのはこのため?)。
そのなかで今回の最優秀助演男優賞は、旧タイプのFBI捜査官デルレイで、終盤の展開は胸のすく思いがした。
お家芸のどんでん返しに加えて、「最後の事件」のオチまで楽しめるシリーズ久々の快作でしょう。

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