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ミステリの祭典

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下町ロケット

作家 池井戸潤
出版日2010年11月
平均点7.83点
書評数6人

No.6 7点 風桜青紫
(2016/01/27 00:15登録)
骨組みは単純な勧善懲悪でも、徹底して王道を貫けば面白くなる好例。登場人物が善玉なり悪玉なり、どいつもこいつもポジティブで見ていて気持ちがいい。ソクラテスのいう「最良と思うことを固守すべし」の魂がどの人間にも行き届いており、それによって敵役だった財前なり、会社の人事部連中なりが味方になってしまうような有り様がなんとも面白い。「佃がラッキーマンすぎやしないか?」と思うし、あまりにご都合主義な面も目立つのだが、ストーリーテリングの高さを維持するため、そのようなところで腰引けしないところに、池井戸潤の強さがあるのだろう。なんともハッスルした元気な作品だ。

No.5 8点 haruka
(2014/08/28 00:39登録)
さすが直木賞受賞作。読みやすくて面白い。

No.4 10点 初老人
(2014/07/26 00:33登録)
この作品に巡り会えた事に感謝!

No.3 7点 こう
(2012/11/19 00:05登録)
 中年社長が主人公で勧善懲悪、正義が勝つ作品として「空飛ぶタイヤ」同様楽しめる作品でした。この作品の方が主人公の言葉遣いはマイルドで相手も「空飛ぶタイヤ」よりは小物感はします。
裁判メインかと思いきや前半と後半でストーリーが展開している所は面白いですがちょっと「空飛ぶタイヤ」ほどアクが強くないのが少々不満でした。また家族との交流場面がもう少し合ってほしいなあと思いました。
 ワンパターンでもこういう作品を書き続けてほしいですね。

No.2 5点 ムラ
(2012/04/29 06:31登録)
直木賞だけあって、専門用語をなるべく使わず、読者にわかり易く書かれている文章なのでさくさくと読みやすい。
地元下町の泥臭い男たちの逆転物語は見ていて面白いですね。特にひ弱なイメージを持たせる殿が率先して向かう様は素敵。
次々にピンチや葛藤が押し寄せてくるので飽きず、簡単に問題を解決できないので、それを抜けたときの爽快感もいい。
残念なのは娘の描写とか会話が少なかったように思えたので、最後の娘とのやりとりに感動を抱けなかったこと。

No.1 10点 E-BANKER
(2012/04/28 22:15登録)
第145回の直木賞受賞作。
今や作者の独壇場となった感のある「勧善懲悪系熱血企業小説」(そんなジャンルあるか?)。本作もまさにそのド・ストレート作品。

~「その特許がなければロケットは飛ばない」・・・。大田区の町工場が取得した最先端特許を巡る中小企業vs大企業の熱き戦い。かつて研究者としてロケット開発に関わっていた佃航平は、打ち上げ失敗の責任をとり研究者の道を辞し、親の跡を継ぎ従業員200名の会社・佃製作所を経営していた。モノ作りに情熱を燃やし続ける男たちの矜持と卑劣な企業戦略の息詰まるガチンコ勝負。夢と現実、社員と家族・・・かつてロケットエンジンに夢を馳せた佃の、そして男たちの意地とプライドを賭した戦いがここに!~

いやぁー、不覚にも読みながら涙が出てきた。
熱い(熱すぎる)オヤジたちの物語なのだが、「夢とは?」「会社とは?」「人生とは?」など、いくつもの疑問符を私自身に突き付けられたような気がして、なんとも胸が詰まるようなシーンがいくつもあった。
(『会社とは何か。なんのために働いているのか。誰のために生きているのか・・・』 中盤のこの台詞が胸を突いた・・・)
「佃製作所」の従業員として登場するキャラクター1人1人が、作品の中で生き生きと主張し、悩み、そして喜び・怒る。そして、何より主人公である佃航平の姿が「モノつくり日本」の矜持を体現しているようで、何とも心強い。
(日本という国はこういう拘りや仕事へのプライドがあるからこそなのだ)

もちろん、現実はこんなうまくいかないことばかりだし、今時こんな絵に描いたような会社なんて絵空事だろっていう感想を持つ方もいらっしゃるだろう。
仕事柄、中小企業の経営者と話す機会がままあるのだが、会社の規模を問わず、経営者が背負っている責任というのは私のようなサラリーマンとは比べ物にならないほど大きい。
普段、アホな上司や使えない部下に嘆いたり、逆に優秀な同僚に囲まれ劣等感を感じたり、サラリーマンにはサラリーマンなりの苦労もあるけど、詰まる所、自分の仕事や会社にプライドを持とうよってことだろう。

さすがに直木賞受賞作という看板だけのことはある作品。
まぁ「空飛ぶタイヤ」とプロットが完全に被っているが、そんなことは関係なし!
たまには、こういう「泥臭い」「男臭い」作品を読んで、忙しい日常生活の中で忘れがちな「夢」や「エネルギー」を思い出すのもよいのではないでしょうか。
ミステリーではないし、ちょっと甘い評価かもしれないが、久しぶりに10点を進呈。
(久しぶりに読書で興奮してしまった・・・ちょっと青いね)

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