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ミステリの祭典

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初老人さんの登録情報
平均点:6.80点 書評数:130件

プロフィール| 書評

No.90 4点 臨床真理
柚月裕子
(2016/02/19 17:46登録)
文庫版(上下二分冊)にて読了。
上巻までは丁寧に読んでいたが、事件の輪郭が大体把握出来てからは、下巻を一気読み。それでも自分の予想範囲内に収まってしまったのには少し呆れた。
何と言うかこのレベルの作品が大賞を受賞したという事実を信じる事が出来ない。おそらく人間の暗い欲望を描き切った、という点が評価されての事ではあると思うが…それにしても悪役の描き方が真犯人も含め俗悪で陳腐だ。


No.89 5点 月蝕の窓
篠田真由美
(2016/01/29 10:38登録)
桜井京介にとってのモリアーティの初登場巻。
彼はその後も再三に渡って暗躍し、その都度シリーズに深い爪痕を残していく事となる。
しかしながら分からないのが彼を駆り立てる行動原理だ。どうやらシリーズ最終巻でも登場する事は確実の様なので、そのあたりの説明としっかりとした決着を切に望む次第である。


No.88 5点 テニスコートの謎
ジョン・ディクスン・カー
(2016/01/22 02:57登録)
登場人物表を開き、まずその人数の少なさに驚かされました。これは作者は余程本作に自信があるのか、或いは手抜き作品のどちらかであると直感的に思いました。
そして徐々に後者の思いが強くなっていき、これは地雷を踏んでしまったかなと多少の後悔の念とともに読み進めて行きました。
そして読了後の結論は…犯人当てと謎解き趣向がどちらも平均的なレベルで両立している標準作(つまり事前に危惧していたほどには悪くない)、というものでした。
無論第一の犯行は被害者が犯人の指示通りにおとなしく、何の不審も抱かずに従ってくれなければ成立しない類のものですし、第二の殺人に至ってはその犯行により作品全体の評価をかなり下げてしまっています。それでもなお、この犯人の本当の貌は一読に値すると言っていいと思います。


No.87 8点 容疑者Xの献身
東野圭吾
(2016/01/07 01:00登録)
石神が花岡親子を守るために考え出したあのトリックについては、圧巻の一言。
石神と湯川の友情はウェットなものでは無く、お互いに認めあっているからこそ生じた堅固で確かな絆であり、だからこそ友人の犯したある罪を暴いていく際の湯川の心中は察するに余りある。
技巧的な部分にも見るべき所は多々あるが、湯川准教授と数学者石神の心理的な駆け引きを堪能するのが吉かなぁと思う。


No.86 6点 杉下右京の多忙な休日
碇卯人
(2015/12/30 13:29登録)
ジャンル分けで警察小説にするか迷いましたが、読んでみると案外真っ当な推理小説だったので『本格/新本格』に区分けする事で決着を見ました。
ご存知相棒の主人公である杉下右京が遠く日本を離れてアラスカのジュノーで活躍する「哀しきグリズリー」、北海道の知床連山で起きた不可解な事象に挑む「天空の殺意」の中編二編が収録されたシリーズ第5弾。
流石に現役バリバリのミステリー作家が執筆しただけの事はあり、一作目では終盤に差し掛かり密室殺人が登場するなどサービス精神旺盛。二作目で扱われているのは悪意の連鎖とでもいったもので、読後なんともやるせない気持ちにさせられます。
重苦しいミステリー作品から離れてひと息つきたい、という時に軽く読むには最適の一冊でしょう。


No.85 6点 災厄の紳士
D・M・ディヴァイン
(2015/12/24 21:14登録)
ディヴァインの作品を読むのはこれが三作目ですが、他の二作に比べて一段見劣る様な印象を受けました。
何よりも残念なのは、真犯人の造形が他の登場人物に比べ浮いている様な感覚を覚えた事です。これでは真犯人に注目するなという方が無理というものでしょう。
ハンドルのロジックは充分に納得のいくもので楽しめはしたのですが。


No.84 7点 鬼畜の家
深木章子
(2015/12/16 19:37登録)
仕掛けられた大きなトリックは、ミステリ読みであれば見破る事は容易でしょう。
途中叙述トリックめいた仕掛けもあり中々楽しめました。最後の犯人の独白で締める所も自分の好みと合っており、納得のいく一冊でした。


No.83 6点 すべてがFになる
森博嗣
(2015/12/07 09:47登録)
十数年前に友人に薦められ、借りたものを読みました。犯人(または被害者)が密室内にどのようにして出現し、そして出ていったのかについては明確な解答が与えられ、まずまずといったところ。犯行の為の時間作りも斬新なアイデアで楽しめました。ただ当時世間を騒がせていたところのこの作品の持つ怜悧さや全く新しい次元のミステリ(正確にはこのような表記ではありませんが、意味するところはほぼ同じであったと記憶しています)といった謳い文句に心を動かされるものがなかったのでこの点数で。


No.82 4点 黒影の館
篠田真由美
(2015/10/26 01:58登録)
うーん…何だろうこのマンガのような現実感の無さは。トリックとかプロット以前の問題。雰囲気だけは楽しめたので一点加点しておく。しかしこの分だと来るべき最終巻の文庫化に過度に期待するのはやめておこう。


No.81 7点 ゴースト・スナイパー
ジェフリー・ディーヴァー
(2015/10/01 09:35登録)
リンカーンライムシリーズ記念すべき10作目はバハマで反米活動家を暗殺したスナイパーと指示を出した国家諜報機関とのライムの対決を描く。
事件の構図が刻々と色を変え変化していく過程を楽しむ事は出来たものの、ライムの推理が神がかり過ぎていて現実味に乏しいし、悪役が余りに小粒で読んでいて充足感を得る事が出来なかった。
とは言えそういった細かい点に目をつぶればストーリーやどんでん返しの妙を味わいたい方にとって最適の一冊。各キャラクターの成長ぶりや心境の変化などが描かれているのでシリーズを通して読んでいる人に特にお勧め。


No.80 6点 化人幻戯
江戸川乱歩
(2015/08/23 12:24登録)
江戸川乱歩全集第17巻(光文社文庫)にて読了。
今まで読んできた乱歩の作品の中ではトリック、物語の骨格共中々しっかりとした出来に仕上がっていると思う。
残念なのは、真犯人の造形が動機も含めて容易く(表層的には)見通せてしまう点だろうか。カマキリの例えも事前に知識として持っていたので新味が感じられなかった。犯人が暴かれる過程も乱歩にしては珍しくややおとなしめで、凄みを感じるに至らなかった。


No.79 8点 レミングスの夏
竹吉優輔
(2015/08/12 17:47登録)
本書は2013年『襲名犯』で江戸川乱歩賞を受賞し作家デビューした作者が、満を持して発表した受賞第一作である。
簡単に言ってしまえば6年前に起きたある事件の記憶から逃れる事が出来ずにいる少年達が、ある計画を立て、それを実行する、といった話なのだが、計画が軌道に乗り始めた矢先の少年達の衝突、警察がいつ迫ってくるかわからない中でのじりじりとした焦燥感など実に良く描けている。
誰しもリーダーであるナギの動向に注意を向ける所かもしれないが、個人的には視点人物である「僕」ことアキラにも注目して頂きたい。
一つキーワードをあげるとするなら「年齢」だろうか。この年齢が物語の根幹に関わってくる。
4年前の夏、中学二年生だった少年が立てた計画がどのような結末を迎える事になるのか、是非その目で目撃して頂きたい。


No.78 8点 吸血の家
二階堂黎人
(2015/08/07 01:16登録)
作品の要となる過去の雪上の犯人の足跡無きトリックはまだこの手が残されていたのかと快哉を叫びたくなる出来、初読時別解に引っ掛かり、思わず苦笑してしまった記憶がある。
もう一つのテニスコートの殺人も軽く平均越え。
あとは浄霊会の密室トリックだが一番解にたどり着くのが容易く、密室の問題が解けると同時に犯人の正体にたどり着く事が可能(残念ながら私の頭では容易に結び付ける事が出来なかった)
トリックが連関していたりお互いに補いあって成立しているわけではないが単独としてのアイデアが素晴らしく、物語の中に無理なく溶け込んでいる。 


No.77 4点 地獄の奇術師
二階堂黎人
(2015/07/29 01:54登録)
ホテルで使われた密室トリックは私程度の者であっても予測出来る程の難易度の低さ。おそらく大多数の読者がトリックの骨子は掴めてしまったにちがいない。
トリックの解明と合わせて犯行を手引きし実行した容疑者としてある人物の名前が上がるが勿論彼(か彼女?)が真の犯人といった安易な結末では終わらず、裏で糸を引いていた人物が判明する。
しかしながらこの最終的な犯人が実に魅力に乏しい人物で、 蘭子に最終局面で再三に渡りミスを指摘される等散々な結果を招く。この作品よりは謎の密度、トリックの質といった点で吸血の家の方がはるかにオススメ。


No.76 7点 蟻の階段
麻見和史
(2015/07/15 23:05登録)
警視庁捜査一課十一係シリーズの第二作目。
頭蓋骨に白い花、掛け時計にスープ皿といった奇妙な遺留品を巡る捜査。捜査は難航し、そこへ新たな事件発生を告げる報が届く。第二の事件現場でも死体は新たな遺留品で装飾されていて…といった内容。
前作よりも数段事件の難易度が高くなり、惹き付けられる内容となっている。惜しむらくは如月と鷹野以外の十一係メンバーの活躍があまり見られなかった事か。そこさえ改善してもらえれば8点だった。


No.75 7点 石の繭
麻見和史
(2015/06/22 20:10登録)
明かされた真相のいくつかには確かに光るものもあり感心させられたのだが、所々作者が物語を自分の都合の良いように解釈して整合性を取ろうとした結果良く出来たお芝居のような感じがしてしまうのは頂けなかった。
そんなに全ての事に辻褄を合わせて決着させなくても良かったのでは、と思う。だがその分この本一冊にかける意気込みのようなものが伝わってきたのも確かで、逆に次作以降に期待を持たせるように作られている。十分水準に達している印象を受けた。


No.74 9点 64(ロクヨン)
横山秀夫
(2015/05/25 10:19登録)
序盤、中盤と地味な展開が続くが、この作品の真骨頂は終盤に差し掛かってから。まるでギアチェンジしたように動的な展開となり、正直ページを捲る手が止まらなかった。
ある人物の十四年(正確には十四年でないが)もの長きに亘る執念の描写にしても流石としか言い様がない。
総合的に考えて、やはりこの作品に低い評価を付けるのはためらわれるが、読後の疲労感も相当なもので、当分再読しようという気持ちは起きそうにない。


No.73 6点 真夏の方程式
東野圭吾
(2015/04/09 22:05登録)
湯川と少年のひと夏の交流が読んでいて心地良い。
ちょっと後味の悪い所もあったが、全体としては好みの作風だった。


No.72 6点 胡蝶の鏡
篠田真由美
(2015/02/27 09:34登録)
本書はシリーズ第三部開幕を告げると同時に、海外出張篇でもある。桜井京介がベトナム・ハノイで起きた二つの事件に挑む。
現在の事件で使用されたトリックはちょっと無理筋かなぁ…という印象。それでもレ家の長老、その孫で医師のレ・ホン・ロンなどちゃんとバックボーンのあるキャラクターをそろえており、一篇の小説として楽しめるし、ちょっとした海外旅行気分を味わうことも出来る大変お得な作品と言える。


No.71 7点 五番目のコード
D・M・ディヴァイン
(2015/02/21 10:20登録)
兄の殺人者と比べると真犯人は明らかにやり過ぎてしまっている感があり、あまり好ましくない。
それでも頭の中のもう一人の犯人候補と今回の真犯人とを天秤にかけながら、終始楽しく読み進めた。事件をきっかけに主人公が自信を取り戻し、ヒロインと結ばれるという結末も、ありがちではありながらも悪くはない。

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