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ミステリの祭典

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64(ロクヨン)

作家 横山秀夫
出版日2012年10月
平均点7.00点
書評数19人

No.19 8点 猫サーカス
(2021/12/12 18:24登録)
D県警警務部の広報官、三上義信警視は元捜査二課に所属する、辣腕の刑事だった。それが人事抗争の余波で刑事畑をはずされ、広報官に回されたことで、内心鬱々たるものがある。しかも一人娘、あゆみが家出して行方不明、という悩みを抱えている。こうした状況のもとで、三上はしたたかな記者クラブを相手に、交通事故を起こした妊婦の匿名問題や、警視庁長官の緊急視察問題を巡り、体を張って対峙する。長官視察には、14年前に発生した未解決事件、「ロクヨン」と符丁で呼ばれる少女誘拐事件が関わっている。作者はデビュー以来、犯罪捜査を主体とする従来の警察小説に、斬新な視点を持ち込んできた。本書もまた、記者クラブと警察広報のせめぎ合いを、臨場感あふれる迫力で描き出し、あますところがない。加えて、キャリアと地方警察官の対立、刑事部と警務部のすさまじい軋轢など、さまざまなコンフリクトが同時進行で絡み合う。終盤の、新たな誘拐事件の追跡劇は、圧倒的なスピード感をもって展開され、息を継ぐいとまもない。やや強引な結末も、その熱気の余韻によって、十分なカタルシスとなる。

No.18 10点 sophia
(2020/03/28 16:44登録)
斜め読み不可の複雑精緻な大作で、読むのにかなり時間をかけてしまいましたが、それだけの価値のある作品でした。警察ミステリーの到達点と言っても過言ではないでしょう。もっと早く読んでおけばよかったです。警察の内紛劇ばっかりでロクヨンあんまり関係ないじゃないかと思わせることが布石なのですね。最後はロクヨンに帰ってくるんじゃないかという漠然とした予想はしていましたが、それでも終盤の急展開にはやられました。事件も家庭の問題も安易にハッピーエンドにまとめなかったのがまたいいですね。残された余白によって物語に深みが出たと思います。

No.17 6点 バード
(2019/03/09 14:27登録)
終始はらはら感があり読みごたえがあった。
打算的に動く連中のぶつかりあいは神(読者)の目線から見るとこっけいね。
読んでて血のかよったキャラが多かったという印象。ただ見せ場のないキャラも多く少し数を出しすぎかな。そのせいでかなり長くなり前半は間延びしている。一方後半のテンポはすばらしいと思う。

読んでると主人公側に感情移入してしまうが、刑事も警務もどっこいどっこいさね。

本書はタイトルが気になり手をだした。こういう選び方もたまにはいいだろう。

No.16 6点 文生
(2017/11/11 07:05登録)
横山作品は骨太の人間ドラマとミステリーとしての仕掛けが両立している点が魅力であり、本作でもそれを十分に堪能することができる。ただ、いささかくどすぎる感もあり、ここまで長くする必要があったのかは疑問が残る。肝心の誘拐事件に関しても本格的に動き出すのがかなり終盤になってからなので、ミステリーと人間ドラマのバランスを欠いているようにも思う。半分の長さにすればもっと引き締まった作品になったのではないだろうか。

No.15 5点 いいちこ
(2017/08/23 10:45登録)
著者の各作品は、組織の論理に対する個人の葛藤を延々と抉り出す内面描写が特色であり、それが作品の奥行きに繋がってきたし、私自身も愛読してきた。
しかし、本作では叙述があまりにも演出過剰であり、かつボリュームもやたら多く、いくら何でもクドすぎる。
過剰な情感を込め、著者はお涙頂戴に盛りあがっているのだが、私には大袈裟な表現・演出に映り、シラけて置いてけぼりになってしまった。
読んでいて疲労感を感じるし、作品の余白にも乏しく、何よりリアリティ・臨場感が感じられない。
ミステリとしては、犯人特定のプロセスがあからさまに無理筋であり、主人公の娘の失踪が結果として当該プロセスを成立させるためだけのご都合主義的な設定に終わってしまった点でも減点。
散々批判したものの、作品全体としては一定の水準に達していることも事実だが、期待外れの印象も強く、本サイト上における毀誉褒貶の激しさも、さもありなんという印象

No.14 10点 E-BANKER
(2016/12/11 21:06登録)
乱読も積もりに積もって、ついに1,300冊目の書評となる今回。
(いつも薄っぺらい書評で申し訳ないのだが・・・)
ということで、満を辞してセレクトしたのが、今年映画化もされた横山秀夫久々の長編。
2012年に発表され、その年の「このミス」第一位にも選ばれた大作。

~元刑事で一人娘が失踪中のD県警広報官・三上義信。記者クラブとの匿名問題で揉めるなか、<昭和64年>に起きたD県警史上最悪の翔子ちゃん誘拐殺人事件への警察庁長官視察が決定する。だが被害者遺族からは拒絶され、刑事部からは猛反発をくらう。そして視察前日、最大の危機に瀕したD県警を更に揺るがす事件が起きる! 驚愕、怒涛の展開、感涙の結末。ミステリー界を席巻した著者の渾身作~

とにかく、もう、何ていうか、「圧倒的な筆力」(!)
一言で表現するなら、それに尽きる。ひとつひとつの台詞や行間までもが読者の心にビシバシ伝わってくる感覚。
これは作家・横山秀夫のひとつの到達点であり、日本の警察小説史上最大級の傑作といっても差し支えない。
(あくまでも私見ですが・・・)

物語は冒頭から終章まで、主人公・三上広報官の「葛藤」が描かれる。
一人娘が失踪したことへの「葛藤」、妻とのギクシャクした関係に対する「葛藤」、記者クラブとの軋轢に対する「葛藤」、キャリア上司や警察組織の矛盾に対する「葛藤」、そして自分の身の上や広報室の部下との関係に対する「葛藤」・・・・・・
横山作品ではデフォルト的に描かれる警察組織内の争い。
本作でも強烈に描かれてるし、三上もそこに最大の「葛藤」や「悩み」を抱くことになる。
以前の作品でも書いたように思うけど、作者の作品って、もはやミステリーの枠組みを超越して組織論の話に近い。
如何にして「上」は組織を掌握するのか、当然ながらそのためには「人事権」を最大限利用しなければならない・・・etc
同じく組織の中で生きている私にとっても実に身につまされる話の数々・・・って感じだ。

今回はラストが実にミステリーっぽく、伏線まで鮮やかに回収してくれる。
あの人物のあの言葉、あの行動が最後になって繋がっていくのだ。この辺りもさすが!
他の方も触れているとおり、D県警といえばあの「二渡参事官」を重要な役柄で再登場させているのがニクイ。
とにかく、これは我が国ミステリー界の財産といっても過言ではないのではないか?
それほどの傑作だと感じた。当然評価は満点しかない。
(『警察職員二十六万人、それぞれに持ち場があります。・・・大半は日の当たらない縁の下の力持ちの仕事。・・・それでも誇りは持っている。一人ひとりが日々矜持を持って職務を果たさねばこんなにも巨大な組織が回っていくはずがない。広報室には広報室の矜持があります!』・・・今回この言葉が一番響いた)

No.13 5点 測量ボ-イ
(2016/06/04 12:18登録)
いや-長かった。
特に前半は、警察内人間関係の軋轢を延々と書いていて、
少々辟易。
高評価の方にとっては、そこが良いのでしょうけど。

No.12 5点 蟷螂の斧
(2016/03/22 09:34登録)
前半は、マスコミ対策、内部権力闘争、家庭問題に割かれ、求めているもの(期待したもの)と違っていました。後半は、やっと誘拐事件になり緊迫感は十分伝わってきましたが、肝心の犯人特定の手段(誉めている人が多い)がどうも?・・・という感じです。ラストで、登場人物のその後の動向をもう少しきっちりした形であらわしてほしかったです。

No.11 5点 パメル
(2016/03/05 10:24登録)
昭和64年の誘拐事件が警察内部で隠蔽されそれを主人公が
暴いていく所が読みどころ
刑事部と警務部との確執そして自分の家庭問題に苦悩しながら
部下に気を配り権力に立ち向かっていく主人公
組織内の争いがくどいしストレスを感じる
また主人公の正義感を前面に押し出した感じがどうも好きになれない

No.10 9点 初老人
(2015/05/25 10:19登録)
序盤、中盤と地味な展開が続くが、この作品の真骨頂は終盤に差し掛かってから。まるでギアチェンジしたように動的な展開となり、正直ページを捲る手が止まらなかった。
ある人物の十四年(正確には十四年でないが)もの長きに亘る執念の描写にしても流石としか言い様がない。
総合的に考えて、やはりこの作品に低い評価を付けるのはためらわれるが、読後の疲労感も相当なもので、当分再読しようという気持ちは起きそうにない。

No.9 2点 makomako
(2015/03/29 22:12登録)
 皆さんの評価が高いのにこんな採点してすみません。
私はこんな根暗で、いやな人ばかり出てくるはなしに付き合うのは御免です。
せめて主人公がもう少しすっきりしていればよいのですが。
誰かが何か言うと悪いところばかり見るようで、全く楽しくありませんでした。

No.8 9点 アイス・コーヒー
(2013/07/07 13:55登録)
2012年の「このミステリーがすごい」一位を取った作品。D県警広報官で元刑事の三上は家庭内では娘の家出、職場ではマスコミと対立するという悩みを抱える。そんな中、昭和64年に発生した誘拐殺人事件、通称「ロクヨン」の操作激励のために警察庁長官が視察に来ることとなる。そして、訪問の許可を頼みに行った被害者宅で事件に対して三上は違和感を感じ、捜査を始める。
主人公・三上が刑事部と警務部の間で双方からの圧力に悩み、情報公開を求めるマスコミに対応できなくなり、娘の生死もわからない状況下で広報官という視点から、父親という視点からロクヨン解決を模索する点は面白いと思った。最後の真相も予想外のもので完成度も高い。長編であったが一つ一つのシーンは作者・登場人物のおもいが伝わってくる演出で満足している。
ちなみに上の初出版が「2001年10月」となっているが2012年の間違いであり、本作は今現在の横山氏の最新作である。

No.7 6点 ムラ
(2013/06/13 18:59登録)
[影の季節]より主人公の二渡が今度は敵として登場。
しかし、善も悪も曖昧いなルールとルールのぶつかり合うこの小説で敵と言う表現もおかしいかな。
警察がメインの小説と言っても、事件そのものではなく、内部で働く警察官の知られていない仕事を書ききる作品でした。単に犯行を追う刑事の作品ではなく、さらにその背景で活躍する警察官を書ききる力強さはやはりこの作者ならでは。
刑事と警務とさらにマスコミとの綱渡り的な立ち位置を乗りこなさなきゃならない主人公の苦悩がありありと書かれていて面白かった。
しかし、やはりすごかったのはプロットの綿密さ。一歩間違えれば詰め込みすぎと言われてもおかしくないこの作品を、綺麗に着陸させた手腕はお見事です。
ただやっぱり警察の敵は犯人とマスコミという感想は拭えない。

No.6 6点 バックスクリーン三連発
(2013/06/10 18:22登録)
よく、会社の常識は社会の非常識といいますがこれを読めばほんとにそう思います。
体面ばかり気を使う、警察内でお互いが疑心暗鬼になる
言葉の裏を読む。どれも馬鹿らしい。
本部長抗議文に何の意味があるのか
警察庁長官の権威など微塵も伝わらないだ
後半のあらたな誘拐事件が起こったときの
ライブ感は圧倒的です、そこはさすがの著者。
600ページを超える長編。読み応えありました
さすがはこのミス1位に選ばれただけはある

No.5 8点 haruka
(2013/01/29 23:42登録)
満を持して発表された作品だけに、完成度の高さに圧倒される。前半から中盤にかけて丁寧に伏線が張られている反面、若干中だるみするきらいもあるが、物語が一気に収斂する終盤の盛り上がりは、さすが読ませる。D県警ものということで、おなじみのキャラが要所で効果的に顔を出すのも、ファンにとっては嬉しい演出。

No.4 8点 kanamori
(2013/01/22 23:07登録)
わずか1週間で終った昭和64年に発生し、今も未解決のD県の少女誘拐殺害事件。時効を1年後に控え現在でも”ロクヨン”の符丁で呼ばれるこの過去の事件を巡って、D県警の広報官・三上は警察内部の未曾有の暗闘劇に巻き込まれることになる-------。

この圧倒的な筆力はすごい! わが娘の失踪という家庭問題を抱えながら、広報室vs記者クラブ、警務部vs刑事部という二つの対立軸から派生する諸問題で三上が窮地に追い込まれる様は、一種の企業小説さながらで読み応え十分です。また、そういった人間ドラマだけで終らず、そのなかに敷かれた伏線から急転する終盤のスリリングな展開、全ての疑問点がつながり明らかになる構図の意外性も鮮やかです。
今回脇役で再登場の、警務調査官・二渡や捜査一課長・松岡もいい味を出しており、本書の読了後は、多くの読者が「陰の季節」を再読したくなるに違いない。

No.3 6点 白い風
(2013/01/09 19:42登録)
14年前の誘拐事件と警察広報官が主体とする警察内部闘争の話だが、最初は大きな展開がなかった。
600ページを越える長編だったけど、正直やっぱり前半が間延び感があったと思う。
トータル的には楽しめたけど、個人的には横山さんは短編の方が好きですね。

No.2 10点 HORNET
(2013/01/04 19:57登録)
 待ちに待った横山秀夫の新作。相変わらずの力強い筆致、読ませる文章。刑事部畑でやってきた自負をもちながら、広報官という職務にあたる主人公の葛藤、行方不明の娘を抱える夫婦の苦悩、刑事部と警務部の水面下での綱引き、そして表題でもある昭和64年に起きた未解決誘拐殺人事件「64」の真相・・・多くのストーリーが複線的に進行しながら、それらが見事につながっていく大仕掛けは「さすが」としかいいようがない。警察ドラマのように物語は進行していきながら、全てが謎解きへと向かっている。それがわかったときの背筋の震え、読後の満足感は太鼓判。やっぱり横山秀夫はすごいとただただ感嘆する作品。

No.1 9点 あびびび
(2012/12/26 14:41登録)
今年のミステリナンバーワンとしてかなり増刷しているらしいが、十分な充電期間、その間に何度も書き直しただけあり、本当におもしろかった。

腕利き刑事から広報担当になった男が主役だが、第一線で活躍できないジレンマ、警察詰めの新聞記者との軋轢、身内だが一線を画しているキャリア組との闘い…。

64(ロクヨン)とはD県で起きた未解決の誘拐事件のことで、これを巡る当時の関係者の悲哀がよく書けているが、最後はちょっとしたどんでん返しがあり、ミステリの部分でも満足させてくれた。

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