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ミステリの祭典

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鬼畜の家
榊原聡

作家 深木章子
出版日2011年04月
平均点7.27点
書評数15人

No.15 7点 mozart
(2023/07/26 07:47登録)
少し前に図書館で借りて読んだので(手元にないので)あらすじサイトで記憶を呼び覚ました上での感想。
伏線や誤認のさせ方とかオチについてもそれなりに面白かったです。家族のありようとかややステレオタイプではあるものの社会性も十分にあったと思います。ただ本格モノとしてのインパクトという点ではちょっと物足りなかったかな。

No.14 8点 八二一
(2020/03/18 18:45登録)
タイトルからして「黒い家」を想起させるが、それも企みのうち。並々ならぬ仕掛けに満ちており、聞き込み調査というスタイルで炙り出されるグロテスクな犯罪劇を堪能できる。

No.13 7点 あびびび
(2019/02/07 12:48登録)
語り口調でこれだけ読まされるのだから、かなりレベルの高い作品だと思う。ひと昔前なら、『こんな家族おらんやろ~』と突っ込む所だが、今の時代、同調する部分がかなりある。あの尼崎の事件とか…。

図書館で本を探すときに、深木ーふかきで名前がなく、何度もふの列を見た。まさか「みき」とは!自分もまだまだ修行が足らない。

No.12 7点 虫暮部
(2018/11/16 12:41登録)
 なかなか見事に決まっている。ただ少々キャラクターが紋切り型。どんな人にもひとつふたつ変な癖ぐらいあると思うが、本作はレッテルをそのまま戯画化したようなつるっとした登場人物ばかりに感じる。実はそれって島田荘司にも通じる書きっぷりで、そんなところがツボに嵌って有利だったのかも? 島田荘司選第3回ばらのまち福山ミステリー新人賞受賞作品。

No.11 8点 パメル
(2018/08/30 01:23登録)
第30回ばらのまち福山ミステリー文学新人賞受賞作。デビュー作とは思えない程、完成度は高い。新人とはいえ60歳を超えていますが・・・。「弁護士を定年退職したから執筆でもしようか」なんてそんな感じで上手くいくなんて羨ましい。
異常としか思えない家族の人間像がモノローグ、インタビュー形式で語られ露になっていく。とにかく読み進めば進むほど、おぞましい気持ちになっていく。
人物構成や悪行の数々、そしてある人物の死を不可解さを提示しながらストーリーは進み惹きつけられる要素は多い。
分類としてはイヤミスになると思うので万人向けではないが、リーダビリティが高く展開は二転三転し楽しませてくれるし、最後に明かされる真相には騙された快感が残ると思います

No.10 8点 sm556s
(2018/05/02 08:45登録)
ネタバレあり
この物語は、語り手?である探偵と依頼者との公園での会話+7人の関係者の証言という2元構成となっており、関係者の証言の中に物語の真相を示す材料があること容易に推察できる。一番やられたと思ったのは、7人の関係者の証言の聞き手がすべて探偵だと無意識に思わされていたところだ。実は、そんなことはどこにも書いていなくて、その中の一つが犯人が聞き手になった証言であることが最後にわかる。このアイデアは面白い。また、なぜ、ゴン太を飼ったのか、という理由も(確かにこのアイデアは前例はあるのだが・・・)面白い。但し、人の入れ替えが分かった理由が利き腕のことだけだというのは少々さびしい。また、本当にこんな入れ替わりが周囲に全く分からないか、という点にも疑問は残る。とはいうものの、最後の部分のどんでん返しと探偵と犯人の駆け引きは非常に面白い。全体としてはレベルの高い作品だと思う。

No.9 7点 tider-tiger
(2017/06/17 20:13登録)
深木章子女史の作品二冊目を読破。
こちらが作者のデビュー作です。

おそらく私は作者の思惑通りに読まされていたと思う。この人物配置だと、あいつがああで、こいつはこうでと人物像や一筋の展開が見えていたのだが、だいぶ外していた。ただ、そんなにうまくいくかなと疑問には思った。ちょっと強引な気がする。
小説としてのうまさは前回書評した『衣更月家の一族』が勝っているように感じた。衣更月家は細部の良さ、他にも手札を隠し持っている可能性や進化の可能性を見事に示した二作目だったと思う。また、鬼畜の家では誤用とまではいわないが、ちょっとひっかかる言い回しが散見された。人間の描き方は、あまり変わっていない。本作でも類型から先に踏み込むことをあえてしていないような気がした。

本作はどんどん読めるが、深くのめりこむことはできなかった。途中までは。
終盤の畳みかけは非常によかった。いくつか違和感があったが、それらが納得できる形で解消されたし、意想外の展開もあった。鬼畜の人物像もよかった。人格障害だのなんだのと言い訳せず、自分は鬼畜だと言ってのけるその潔さ。そして、好むもの、嫌悪するものに一貫性があり、筋が通っていた。
鬼畜は勝負に負けた。死をもって償うより他にない悪人。
とっとと絞首台に向かって欲しい。でも、なぜか軽蔑はしていない。

No.8 8点 HORNET
(2016/09/24 20:31登録)
 面白い。
 事故死した家族の保険金が降りるよう、調査を依頼された探偵。探偵の調査相手の話をつないでいく形の中で、次々に分かってくるのが「異常な」家族の物語。調査を進めるにつれ、事件や事故で依頼者以外の全ての家族を失った、ことの真相が明らかにされていく。
 真相が明らかにされるにつれて何度もひっくり返される前提。細かいことを挙げれば突っ込みどころはあるかもしれないが、気にせずにこの仕掛けを楽しんだほうがいい。
 深木氏の作品は、総じてクオリティが高い。好きな作家の一人になった。

No.7 7点 まさむね
(2016/09/24 12:25登録)
 法律知識に裏打ちされた安定感、そして人生経験の豊富さを感じずにはいられない人物描写。長年弁護士を務められた作者ならではと言えるのですが、決して法律的なガチガチ文体ではなく、リーダビリティも高いです。60歳を超えたデビュー作ですので、単なる「デビュー作」ということで比較してよいものか、迷うところではありますが、若手には難しいであろう、青春小説では表しようのない人間の感情が滲み出ていて、この点では段違いの感があります。
 全体構成や仕掛け自体は、決して目新しいものではないのですが、潜在能力の高さを感じることができます。(60歳を超えた人生の先輩に対して大変僭越な言い回しですが。)島田荘司氏も解説で述べておりましたが、法曹界など、社会の役割を勤勉に支え続けてこられた方々が、退職後にミステリー界でもう一役担う時代になっているのかもしれません。

No.6 7点 斎藤警部
(2016/08/25 11:20登録)
いっやー読めた読めた、速く愉しく読めた。 結局二人の勝負師が主人公だったって事か?
ある事が九年も続いたのか。。。ふぅん。 しかし恋ってやつの軌道狂わせパワーと来たら大(てぇ)したもんだ。 叙述欺瞞の肝ン所がある人物のこの上ない救いに直結してたとはなぁー !! こんだけの心理スプラッタ暴虐の末に、もはやある種のハッピーエンドかと目を疑う〆っぷり。 探偵役が媒介ぽくありながら要所で格好良いのはGood。  ところで、アレの数が違う事をそこで露骨に読者にバラさなくてもいいんでないか、とは思いましたけどのう。
文庫巻末の島荘檄文が濃いこと濃いこと。

No.5 6点 蟷螂の斧
(2016/07/22 19:03登録)
読み易いし、内容も面白い。しかし、若干白けてしまう部分もあった。年齢的なもの(早熟)と探偵が出来過ぎか?。

No.4 7点 メルカトル
(2016/05/19 22:22登録)
明快で分かりやすい文章でグイグイ読ませる。イヤミスと本格ミステリの融合というか、イヤミスと見せかけて実は本格だったというのが本当のところか。
ほとんどが事件の関係者の証言により構成されているが、実はこれがメイントリックを支えている大きな要因となっている。そのトリックだが、意外性はあるものの、いささか強引と言えるのではないだろうか。島田荘司氏による解説にもあるように、決して目新しいものではないが、作者なりに咀嚼し、しっかりと自分のものにしているのは褒められてもよいとは思う。が、やはり無理がある。警察が本格的に関与すれば即座に暴かれるトリックというのはどうなんだろうか。
そうは言っても、面白い小説であるのは間違いないし、私などがケチをつけてもその輝きが失われるものではあるまい。ただ、後味が良いとは言えないねえ。

No.3 8点 パンやん
(2016/04/04 11:16登録)
面白い!その滑達な文章、描写のうまさに舌をまく、実にノンストップに読ませる快作であろう。イヤミス度も、エログロ度も薄く、第三章のなんとも言えない違和感からの急転感が堪らない。伏線回収もうまく、気持ち良く騙されました。深木女史、他作品も楽しみですな。

No.2 7点 初老人
(2015/12/16 19:37登録)
仕掛けられた大きなトリックは、ミステリ読みであれば見破る事は容易でしょう。
途中叙述トリックめいた仕掛けもあり中々楽しめました。最後の犯人の独白で締める所も自分の好みと合っており、納得のいく一冊でした。

No.1 7点
(2012/10/14 14:10登録)
4章に大きく分けられたうち、第1章と第3章は証人たちが話した内容のみで構成されています。その最初の証人である医者の話で読者の興味を引きつけておいて、二人目の証人の話で、タイトルの意味が示されます。さらに三人称形式の第2章で私立探偵の依頼人が登場してくると、事件の全体像が見えてきます。ここまでが、異様な家族の人間関係を描き出していておもしろいのです。人によっては、こんな不愉快なのはいやだというかもしれませんが。
その後、それまで築き上げてきたものに疑問を持たせ、意外な結末を付ける段取りになってきます。読み進んできて面食らうのが、第3章における某証人の話。最後にこの証人の話が二重の意味でうまく回収されているところには、感心しました。
ちりばめられていた手がかりはあまり冴えませんが、元弁護士らしい相続や慰謝料の問題も絡めていて、全体的にはなかなかよくできていると思いました。

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