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ミステリの祭典

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容疑者Xの献身
探偵ガリレオシリーズ

作家 東野圭吾
出版日2005年08月
平均点7.90点
書評数105人

No.105 1点 ALFA
(2024/04/08 09:24登録)
まあ今さらの感もあるが・・・

ミステリーであるからには、落ち度もない人間を何かの都合で殺すことはあり得る。だからこの作品の胸くそ悪さはそこではない。

アリバイ作りのために身寄りのない人間を殺し、一方で自らの「献身」に酔う鈍感な犯人の造形や、一連の行為を純愛ものと読ませてしまうプロット。つまりは作者東野圭吾のアザトさが見えてしまう。
ミステリーとしての完成度が高くない上に、純文学風味のマーケティング志向が鼻につく。

No.104 8点 みりん
(2022/12/17 15:52登録)
映画ではカットされたけど小説には「なぜ数学を学ぶのか」という不良生徒の問いに対する石神の解答が非常に納得のいくものでした。

No.103 9点 ぷちレコード
(2020/11/20 19:25登録)
中心に据えたアイデアを成立させるために計算し尽くされた人物像と設定、事件の捜査につれて予想外の展開をみせるサスペンスの妙。テーマの複数解釈を可能にさせる狡猾な筆致。
驚天動地な仕掛けを用いながら、それが本格初心者にも容易に分かる単純明快な構造である。さらに人間ドラマとしても充分に楽しめる。

No.102 8点 じきる
(2020/08/23 19:28登録)
トリックも中々だけど、これは演出の勝利。
ストーリー含め、魅せ方が非常に上手いですね。

No.101 8点 文生
(2020/07/27 09:54登録)
メイントリック自体はそこまですごいというわけではないのですが、倒叙風のプロットとの合わせ技で効果的に演出されているのが見事です。クセのある犯人像もインパクトがあり、さすがは代表作の一つに数えられているだけのことはあります。

No.100 7点 okutetsu
(2020/07/24 19:42登録)
ミステリとしてはまったくと言ってもいいほど無関係な方向で推理してしまって完全に騙された。
(靖子が自分は美しくないと思っているのに石神をはじめ周りの人間は美しいと感じているというギャップが別人のことを語っている伏線ではないかと勘違いした)
東野圭吾らしく物語としても面白くもっと点数高くてもいいところだが、やっぱりトリックの道義的な部分がどうしても納得できない。
あんなことやって感動的なラストとか言われても殺されたほうが可哀想で白けてしまう。
しかもあそこまでした割に結局全員不幸になってしまっている。
こんなことなら最初から自首を勧めたら良かった。運が良ければ正当防衛もありえたのではないか。

映画は見てないけどあんな無茶苦茶をどうやって感動的に描いたのが逆に見てみたいなと思った。

No.99 9点 Gorgonzola
(2020/05/05 12:20登録)
天才同士の対決を純粋に楽しめた。読みやすく、トリックとストーリーも綺麗だった

No.98 10点 雪の日
(2020/04/09 14:14登録)
ミステリにハマるきっかけとなった作品

No.97 9点 猫サーカス
(2020/01/27 18:28登録)
この物語において、その中心にあるのは「愛」であり「献身」。こんなに犯人側に感情移入できる作品は、今まで出会っていません。彼の行動には疑問を挟む余地が何もありません。ただただ愛ゆえの行動であり、誰も否定することのできない犯罪。その犯罪に至る過程と、全てを織り込み済みの計画、この物語の構成するすべてが美しい。そしてなんと言っても一番美しいのは結末。本当に美しいとしか言いようがありません。100%完璧なトリック、絶対に綻ぶことのない完全な計画。それが、たった一つの計算違いによって崩れてしまった。その計算違いは紛れもなく、「愛」が招いてしまったもの。報われなくていいと本気で思っていたからこそ、計算違いが生じてしまった。この物語の読了感は本当に独特であり、また人によって感じ方が違うのだと思います。メリーバッドエンドであり、また誰に感情移入するかも読み手によって全く違ってくる。この本の感想を友人と語り合った時、お互い全く異なる解釈で驚いたのを覚えている。しかし、それほどまでにこの物語は深い。深くてどんな解釈するにせよ、何かを私たちの心に残してくれるのです。

No.96 8点 もち吉
(2019/08/27 08:48登録)
映画のほうは見たことがあったので内容はほぼ分かっていたが、普通に楽しめた。アリバイを作るために新たな殺人をするというのはやはりインパクトがある。せっかくのトリックも明かし方が下手だと台無しになってしまうがこれは本当によく出来ている。

No.95 9点 mediocrity
(2019/02/21 20:54登録)
本格物でこの本のトリックが使われても驚かなかったでしょうが、推理小説であることも忘れるような雰囲気の中で、あのトリックですからそれは驚きました。

No.94 7点 レッドキング
(2018/05/29 18:48登録)
小説も映画も両方楽しめた稀有な作品。でも、Ⅹの「献身」、ぜひ達成させたかったなあ。 なんで日本の探偵って、杉下右京みたいに変に遵法意識に凝り固まってんだ?「オリエント急行」のポアロみたいな結末でいいじゃん。

No.93 7点 ねここねこ男爵
(2018/02/08 15:26登録)
映画を見てから小説を読みました。
採点には映画も含めています(映画は文句なしに面白かった。ましゃ兄かっこいい)。
小説を読んでみて、こりゃあ意見が割れるだろうなと思ったら、容疑者X論争なるものがあるのですね。ごく最近知ったので論争の細かい内容は分かりませんでした(リンク切れなど)ので、ひょっとしたらすでに論じられていて解決済みのことを言うかもしれません。何卒ご容赦を。
作者は突っ込まれそうな際どい部分には一応の理由を持たせているのでいいのですが、はっきりごまかしを感じたのは、

『現場の自転車の(人為的な)パンクの件が解決していない』こと。

コレに触れている書評が見当たらなかったので…。自転車を残す必要性は湯川先生が語っていて、誰かに乗り逃げされないようにパンクさせたのはいいとして、石神は意図を悟られないために「自転車の存在そのものを知らなかった」と嘘の供述をしています。そうすると警察は「パンクさせたのは誰か?」という問題を解決する必要が出てくることになりますが作中コレに触れた部分はありません。勿論やったのは石神ですが、彼は上記のことからパンクさせたことを主張できません。被害者がやるはずもありません。自転車は死体のそばにあったと書かれているので(死体と関連付けるためそばに置かざるを得ない)、自転車をパンクさせ死体に気づかないということはないでしょう。「犯行後、無関係な誰かが現場に来て面白がってパンクさせたがそばの死体に気づかなかったか、気づいても通報せずスルーした」というのは苦しく、これだけで草薙の言う「一つでも矛盾があれば」に相当すると思うのですが。
作者はこのことを忘れていたのではなく、解決法が無いので触れないことにしてごまかしたものと思われます。

それから、これは個人的なイチャモンですが、雰囲気づくりのため物理だの数学だのに触れる割に、石神の思考法が数学者的ではないように感じます。
石神はブルートフォース的な証明を良しとせず、本質を押さえればすべてが明らかになる「美しい」証明を理想とする古いタイプの数学者として描かれているのに、彼のやったことは原理的にそうなる、というものではなく蓋然性を高めるだけのもの、現実の処理にはコレで十分という方法で、どちらかと言うとエンジニア的です(と思ったら、作者はエンジニア出身なんですね、納得)。そもそも数学以外興味がないとされる石神が、警察の捜査の深さ杜撰さ思考法を見切っていた、というのもらしくないし、蓋然性を高めるだけのことで論理的思考とは言えず、とにかく数学者らしくない。(念のため富樫の生家などから臍の緒を手に入れて鑑定しよう、となったらどうするつもりだったのだろう)

おそらくこの作者は「本格原理主義者」を読者としては端から相手にしておらず、ライト層向けの商売に特化しているのでしょう。それはそれでうなづけるスタンスですし、本格原理主義者からの批判もどこ吹く風だとは思います。

No.92 9点 ミステリーオタク
(2017/06/28 17:05登録)
惜しくもMWA受賞を逃した逸品。
やはり現時点までの作者の最高傑作との呼び声も高い。
ミステリー小説としては非常に稀有だが映画化作品も十分満足できた。

No.91 6点 邪魅
(2017/02/28 01:08登録)
今にして考えると、この作品はある種典型的な顔のない死体ものトリックのいわば応用というわけですね
そこにアリバイ工作をかませる構成は見事、と云わざるを得ません

No.90 8点 青い車
(2016/09/21 23:50登録)
 オールタイムベストの上位に食い込むほどの高い評価を得た東野圭吾氏の代表作ですが、長いこと読み落としていました。感想としては、とにかく話の運び方がうまいです。ふつうの作家なら愛情が過剰にエスカレートした殺人犯の偏執性を描いたりしそうな題材で、僕も中盤で嫌な予感がありました。しかし、最終的にそれがタイトルのとおり「献身」だったと判明する流れからはさすがのストーリーテラーぶりを感じさせます。説明するのは簡単でも、これを効果的に見せるのはなかなか真似できるものではありません。トリック屋の二階堂氏の指摘した細かい粗などものともしない、圧倒的なクオリティの小説だと思います。

No.89 8点 MS1960
(2016/05/28 19:09登録)
「◎◎違い」「▲▲違い」という2つのミスリードは恥ずかしながら最後まで気づきませんでした・・。難点をあげれば石神が女性を一目見ただけで好きになったという部分が人物の特性上恋愛の動機としてはやや弱いこと、中盤部分で登場人物の誰が事件に関する情報で何を知っていて、何を知っていないの、という部分の整理が煩雑なこと、石神が●●を犯すということへの違和感、でしょうか。でも、推理小説として十分に楽しめる作品です。

No.88 7点 tider-tiger
(2016/05/21 10:16登録)
本サイトで評価の高い本作と白夜行を購入。とりあえずこちらの方が薄いので先に読んでみた。文章は明晰。興味を惹きつけるネタの出し方や話の運びは申し分ない。おそらくこの人は多少プロットが弱くとも読ませてしまう力があると思う。
湯川と石神の会話はなかなか面白かった。石神がストーカー化した時は「あーあ、こうなっちゃうわけね」とゲンナリしたが、その後の展開には驚いた。やや強引だが、巧い。東野圭吾のアイデア、プロット、展開力の三本柱は素晴らしいと思う。
ただ、無駄なことを書かないのが仇となって骨格が透けて見えてしまう。序盤でどのようなことが起こるのかが予想できてしまった。うまさ故の弊害か。無目的な描写をだらだらと垂れ流す方が真相を隠蔽するには好都合なのかもしれない。

東野圭吾に欠けているもの。
東野圭吾の文体は好きではないが、欠点だとは思わない。
だが、人物造型がいま一つなのは明らかに欠点だと思う。
人物描写がぎくしゃくしているため、感動とか純愛以前に読後にモヤモヤとしたものが残った。聖女でも悪女でも聖人でもサイコパスでも構わない。ただ、一貫性がないのは困る。読み手は戸惑う。
そもそも東野圭吾は人物造型の必要性をあまり感じていないように思える。プロットに人物を当て嵌めている印象が強い。特に女性。この人の書く女性を面白いと思ったことは一度もない。
靖子は善人でもないし、悪女でもない。プロットに従ってプカプカ浮いているだけで中身がない。一貫性がない。
例えば、石神の献身によって自分が拘束されること、真っ先に思いつくべきことなのに後々までこの点に思い至らない。これほど頭の悪い女性ではないはず(別に賢くもないが)。
美里は靖子よりは意思を感じられたが、やはりプロットに操られている。美里をもっとうまく使えば物語にさらなる深みを与えられたのではなかろうか。
もちろん石神は靖子たちよりは遥かに興味深く描かれていたが、やはりちぐはぐな印象。
石神の採用したトリックの非人道的な性質に関しては、石神の性格とは親和性があり、それほど不自然ではなかった。好き嫌いはともかくとして、この点は批判しない(もちろん批判するのも自由だと考える)。
私はむしろ石神がかつて自殺を図ったという件がどうにも納得がいかない。この男が自殺をするとは思えない。プロットに合わせて猫の目のように人物象が変化する、その一貫性の無さを端的に示していると思われる。
そして、大きな問題。石神は完全犯罪ではなく正当防衛を主張するよう薦めるべきだった。
被害者は加害者を脅迫している。そのうえ「殺してやる」とはっきり口にして、馬乗りになって中学生の娘を殴りつけている。コードで首を絞めているので正当防衛は難しいかもしれないが、大幅な減刑、執行猶予も期待できるし、加害者を責める者はほとんどいないと思われる。
なぜ石神のような頭の良い男があえて茨の道を選んだのか? 自分の行為がちっとも献身になっていないことに気付かなかったのか。
その後の展開からすると献身の名の元に靖子を拘束することが目的であったとは考えにくい。故に富樫殺害のシーンは書き直した方がいいと思う。

No.87 9点 sophia
(2016/05/04 03:54登録)
天才数学者が人の心は計算できなかったという悲劇を描いた作品。
警察の身元確認が杜撰なのはご愛嬌。
しかしこういう「芝居でした」的なギミックが好きですよねこの方は。

No.86 7点 風桜青紫
(2016/01/18 01:05登録)
パーツひとつひとつは古典的なものでも、演出によっては傑作足りうる好例。他人の命をゴミのように扱っておいて愛もクソもあるかという話だが、そのような「いい子ちゃん」の思考の裏をかいて、ポンとトリックを仕掛けていくところに東野圭吾の嗅覚の鋭さがうかがえる。これを読んでて手放しに「感動した!」だの「純愛!」なんて言う人間はちょっとどうかと思うけども、ミステリ小説としては確かに切れ味のよい一品だ。どっかの人工美が好きなハゲも、「本ミス1位としてふさわしくない〜」なんて騒いでる暇があったら、こういう作品に挑戦してはいかがだろうか(仮にも手塚治虫のファンなんだから、プロットでインパクトを与える術を学ぶべきである)。

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