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ミステリの祭典

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テニスコートの謎
ギデオン・フェル博士シリーズ /別題『足跡のない殺人』『テニスコートの殺人』

作家 ジョン・ディクスン・カー
出版日1959年01月
平均点4.50点
書評数18人

No.18 5点 レッドキング
(2020/08/22 21:56登録)
テニスコートの中央に横たわる絞殺死体。現場は被害者以外の侵入痕跡なき「密室」状態だった。衝動的に死体に接近して足跡を残してしまった女。女の窮地を助けるために偽装工作を練る男。恒例のフェル博士と警視庁警視、怪しげな杖男や軽業師などを交えて、ブラックなシュールギャグのようなサスペンスドタバタ劇が展開する。不可能トリック解明のダミー解釈・・「ロングジャンプ」「手に靴はいての倒立接近」「ネット綱渡り」・・が実にファンキーで、真相解明など、もうどうでもいいような気にさえなった。

No.17 5点 クリスティ再読
(2019/04/11 07:29登録)
原題だと「The Problem of...」で揃えた同年の作品だから、「緑のカプセル」とペアにする意図があったんだろうか。怪奇味を抑えた「純パズラー」みたいな志向の共通性を感じるが、細かい趣向を凝らした名作「緑のカプセル」と比較するとこっちはヤッツケみたいに見えるのが難点だな。
とはいえ、中盤のヒュー&ブレンダが証拠偽装を図って、他人の介入で偶然うまくいったけど、ハドリー警視にお見通し、というあたりはちょっとしたサスペンスでうまく書けるような雰囲気がなくもない。キャラがありきたりでなくて、ブレンダとか「現代っ娘」に造形できてたらアリだったのかも...とは思うんだよ。ここらはカーの弱点だな。
で問題の「足跡のない殺人」トリックは、「これ長編でやるの?」というようなネタ。二番目の殺人の不可能興味なんて強いていえばくらいのものだし、ハウダニットとしてはがっかりするような腰砕け。犯人が意外、との声があるけども、本作の設定の特殊性からは十分読める範囲じゃないかな。そういえば本作のネタは横溝正史の例の作品と共通するね。正史が研究してても不思議じゃなくて、あっちは1/3のネタだから弱さを補う上等のアレンジ。
(けどさ、中盤で否定される「逆立ちして...」はある意味ナイス。絵を想像して笑える)

No.16 4点 弾十六
(2018/11/11 05:10登録)
JDC/CDファン評価★★★☆☆
フェル博士第11作。1939年出版。創元新訳(2014)で読みました。
創元旧訳(1982年)文庫出版時に読んで、印象が良くなかったのですが、新訳で再読してみると結構面白い話。被害者をちゃんと描き込んでるのが良いですね。でも冒頭はもっと小説的にスリリングになる(想いを寄せる美人が、好きでもない小生意気な若造と結婚しようとする)のに、そこには興味のないアンチノヴェリストJDCです。小ネタは効いていて中盤までは非常に良いのですが最重要容疑者の態度が変で、いつもの通り2回目の犯行はテキトー路線。そして大ネタは「はぁ」という感じ。p322のタイムラインを冒頭の記述と照らし合わせると完全にアンフェア。手がかりは色々あったよ、と作者が主張しても、効果が薄い伏線では… 思いつきばかり先行して詰めを怠るJDCの悪い面ですね。
では恒例の歌のコーナーです。
p138 <鎮まれ、暴れ馬>ジーパーズ クリーパーズ: Jeepers Creepers 映画Going Places(1938年12月公開)が初出。
p228 彼はらくらくと空を漂う/空中ブランコの勇気ある若者/…: The Daring Young Man on the Flying Trapeze 原曲は1867英国ミュージックホール発祥、Walter O’Keefeが一部改変してヒット。映画「或る夜の出来事」(1934)でも歌われた。ここに出てくる歌詞はO’Keefe版。ところでp269「でも つれない彼女/おれはしがない空中ブランコ乗り…」(But I never could please her one quarter so well/As the man on the flying trapeze!) 厚木訳「しかし彼女はテコでもなびかなかった/空中ブランコの上の人のように」はいずれも間違いで、空中ブランコの男と比べると俺は全然あの娘を喜ばせられなかった、という意味だと思います。
p265 ウィリアム テル 序曲: むしろローンレンジャーのテーマとして有名かも。ラジオドラマは1933年から。
銃は45口径リヴォルヴァー(間違いなくSAA)と正体不明の22口径が登場。

No.15 6点 青い車
(2016/12/13 19:49登録)
 このサイトでは散々な評価が目立ちますね……。僕はバカバカしくもカーらしさ満点なのがお気に入りで、一定の水準はクリアしていると思います。被害者の操りの口実が書かれた年代を考えると無理がある気もしますが、犯行の瞬間をヴィジュアルで想像するとなかなか派手です。ただし、前半のテンポの良さと比べて後半に失速を感じますし、第二の殺人に至っては明らかに水増しで、説明がおざなりになっているのが大きくマイナスです。まあ、とはいってもそんな粗さもカーらしいといえばカーらしいのですが。

No.14 3点 ニックと車の展示会
(2016/09/08 21:09登録)
ネタバレになるかも知れません。また、駄文お許し願います。
検死はしっかりやろうよ。結局、後で別の物探してるし。(何を探しているかは分かり難い)
検死できちんと調べれば、最初に特定された凶器とは別の痕跡が残ってるはずだと思いますよ。
情報を出さない事によって、読者に犯行の特定を難しくさせているという印象。この作者は、実際の犯行方法から目を逸らさせるのが上手いですよね。
犯人の予想はついたがどうやったかは想像できず、仰天の犯行を期待していたが…
あっさり読めるので、どうしようもなく暇な時には良さそう。

No.13 5点 nukkam
(2016/08/05 08:32登録)
(ネタバレなしです) 1939年発表のフェル博士シリーズ第11作です。足跡のない殺人がテーマですがトリックメーカーとして名高い作者だけあって「三つの棺」(1935年)ともカーター・ディクスン名義の「白い僧院の殺人」(1934年)とも「貴婦人として死す」(1943年)とも異なるトリックが用意されているのはさすがですが、実行面で難易度が高そうだし何よりもリスクが大きすぎるような気がします。あと犯人を追い詰める最後の証拠は確かに決定的だと思いますがプロット上必要だったのでしょうか?いきなりこれを犯人に突きつけて解決していたら本格派推理小説のお楽しみである推理による謎解きが台無しになるので後出しにしているのですが、どこか不自然を感じますね。

No.12 5点 ボナンザ
(2016/07/24 13:00登録)
カーの狙いはトリックというよりは犯人の意外性だと思うが、今読むとあれが犯人でもそれほど意外には感じないのが難点。

No.11 5点 初老人
(2016/01/22 02:57登録)
登場人物表を開き、まずその人数の少なさに驚かされました。これは作者は余程本作に自信があるのか、或いは手抜き作品のどちらかであると直感的に思いました。
そして徐々に後者の思いが強くなっていき、これは地雷を踏んでしまったかなと多少の後悔の念とともに読み進めて行きました。
そして読了後の結論は…犯人当てと謎解き趣向がどちらも平均的なレベルで両立している標準作(つまり事前に危惧していたほどには悪くない)、というものでした。
無論第一の犯行は被害者が犯人の指示通りにおとなしく、何の不審も抱かずに従ってくれなければ成立しない類のものですし、第二の殺人に至ってはその犯行により作品全体の評価をかなり下げてしまっています。それでもなお、この犯人の本当の貌は一読に値すると言っていいと思います。

No.10 5点 ロマン
(2015/10/20 11:21登録)
30年代の作品にしてテニス・ロボットの開発云々とアホなことぬかしよるが、それが伏線であるとはあまりに意外だ(ただし全く褒めてないけど)。そして、相変わらずハリウッドのメロドラマかロマンチック・コメディみたいだ。

No.9 7点 斎藤警部
(2015/05/25 14:14登録)
(ネタバレ気味)

「消えた足跡」トリックですが、往路の足跡が無いのはほぼ心理トリック、復路の方は物理トリック、という組み合わせの妙ですよね。 ただちょっと推理クイズみたいな仕上がりです。 でも物語は面白い。

犯人は確かに意外ですが、創元推理文庫さんが冒頭句で「犯人が意外」と言い立てるので、トリックとの連関性も含めてピンと来てしまうかも知れないな。。

No.8 6点 了然和尚
(2015/03/15 18:16登録)
不可思議な状況のトリックとしては、まあイマイチかなという感想があるのですが、なぜそのような状況に至ってしかるべきかという構成は、細かく構築されていて本格推理として、素晴らしい。(とでも言わなければ、殺されるものがわざわざ自分の首にロープをまかない)フェル博士にあれだけヒントを頂いても、私には犯人の見当はついても詳細は?でちょっと情けなかった。それにしても、70年前の作品で自動テニス練習ロボットとは、なんか怪奇屋敷並みに怖いぞ。

No.7 2点 mini
(2014/07/22 09:56登録)
創元文庫からディクスン・カー「テニスコートの謎」の新訳版「テニスコートの殺人」が刊行された、予定では本日刊行だったはずだが早まったみたいだね、創元で着々と進められているカー新訳切り替えの一環だろう

舞台は雨上がりのテニスコートだが、密室もののヴァリエーションとして実質的には”雪上の足跡テーマ”の部類だろう
本格派の価値はトリックの巧拙だけで決まるものではないのだが、でもこのトリックはなぁ
完璧に見抜いたわけではないが、大体こんな感じのトリックなのでは?と予想してたら、まぁそんな感じだった、真犯人もカーの癖に慣れているので当てちゃったし
実は久生十蘭に殺害方法が似た某短編があって、短編ネタではあるのだが十蘭の某短編トリックの方が切れ味とユニークな面白さを感じるのは私だけ?
もちろんトリックだけで評価が決まるわけじゃないけど、じゃあトリック以外にカーらしい見所が有るかというと、オカルト風味も無く物語的にも平坦
カーには結果的には失敗作だが当初の狙いとアイデア自体は決して悪くないという作も時々有るのだが、「テニスコート」の場合は結局何が狙いなんだかもよく分からんし、狙いがトリックだとしたらショボいし、要するに全てに面白くない駄作にしか思えないのであった

No.6 2点 文生
(2012/04/05 14:41登録)
カー作品における足跡のない殺人ものといえば、『白い僧院の殺人』と『貴婦人として死す』、それに本作が挙げられるが、この作品は他のふたつと比べて出来は大きく劣る。
肝心のメイントリックが全く面白味がない上に推理小説として他に見るべき点もない。
カーの長編の中でもかなりつまらない部類の作品である。

No.5 4点 E-BANKER
(2012/02/16 22:45登録)
フェル博士を探偵役に据えた長編第11作。
いわゆる「足跡のない」雪密室ならぬ、「砂密室(!)」を扱った作品。

~雨上がりのテニスコートの中央に倒れていた死体。しかしコートには被害者の足跡しか残されていなかった。それ以外の人間がコートに出入りした形跡は皆無。屋外の密室とでもいうべき第一の殺人に続いて、再び第二の殺人が発生する。この場合も、殺人現場の建物に出入りした第三者はなく、居合わせた関係者は相互に共通のアリバイがあった。この2つの奇跡の殺人は、まさに不可能犯罪そのものである。しかし、何者かの仕業でなければならない。この奇跡を受けて立つのは天才フェル博士~

確かにこれは「いただけない」箇所が多いなぁ。
謎の提示については、さすがに巨匠カーらしく魅力的な設定そのもの。
なんたって、「足跡のない密室殺人」という超一級の不可能犯罪ですから・・・
ラストに明かされる真犯人は、一応サプライズ感もあり、それなりに良質なミステリーたる資格があるようには見える。

ただなぁ、トリックがかなりヒドイ。
フェル博士の説明を読む限り、一応リアリティは感じるのだが、こんなトリックをもったいぶって書く必要があるのか?という気分にはなった。
(このトリックが成立するうえでの、真犯人=被害者の関係というのは分かるが・・・)
第2の殺人の方はさらにヒドイのでは。

ということで、他の有名作並みのクオリティを期待すると肩透かしをくうかもしれません。
(まさかカーの作品で大笑いするとは思わなかった。特に、ローランドの父親の部下がテニスコートで何回も転倒させられる場面・・・ローランドも笑いすぎだろ!!)

No.4 4点 kanamori
(2010/07/01 23:31登録)
フェル博士ものの第11作目。
足跡のない殺人がテーマですが、物語がとりとめないものになっていてリーダビリテイがない上に、トリック自体が平凡で面白味に欠けます。

No.3 5点
(2008/12/29 12:48登録)
この足跡のない殺人を実現する方法について、ああでもないこうでもないと仮説を立てた挙句、最後に明かされるトリックは、確かに怒り出す人がいても仕方がないものだと思います。何といっても、被害者をある意味で罠にかけるための口実が、あまりにもいいかげんなのです。
ただ、そのトリックを使うことによって生じる犯人の意外性は、なかなかのものです。また、第2の殺人の手順の方は、ごく単純なアイディアではありますが、ちょっとした勘違いを利用していて悪くありません。

No.2 1点 Tetchy
(2008/12/23 23:20登録)
これはひどい・・・。

雨に濡れたテニスコートの真ん中に横たわる死体。しかも周囲には発見者の足跡しかないという、傑作『白い僧院の殺人』の向こうを張るような不可能状況なのに、このトリックはひどすぎる。

しかも犯人は奇抜さを狙いすぎて全く納得の行くものではない。解けんだろ、普通!

また早々に事件は起きるのに、そこからが回りくどく、読中退屈だったのもマイナス要因。

No.1 7点 あい
(2008/03/24 17:44登録)
まぁこんな感じだろうとは思ってたけど・・・まぁ不可能じゃないし、否定も出来ない

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