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ミステリの祭典

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ミステリ初心者さんの登録情報
平均点:6.20点 書評数:388件

プロフィール| 書評

No.368 7点 田沢湖殺人事件
中町信
(2024/01/07 02:46登録)
ネタバレをしております。

 この前に読んだ龍神池の小さな死体もそうですが、手に入りづらい名作を復刻してくれるのは非常にありがたいです! 龍神池の小さな死体も大変面白く、その流れでまた復刻レーベルから購入しました。

 始まりは割とスタンダードで、謎の死を遂げた妻の真相を追う堂上と、兄の死の真相を追う奈那。事件を追ううちに15年前の殺人事件が徐々に明らかになっていき…。というありがちなものです。
 途中、15年前の事件を知っていそうな人物が次々に殺され、または交通事故死するというミステリにあり勝ちな展開が続いて(笑)読みづらさはあったものの、密室が出てきたあたりからはかなり速いペースで読むことができました。登場人物こそ多いですが、ほとんどが何かしらで死んでおり、軽いメモ程度でも十分ついていけるレベルでした。


 推理小説的要素について。
 トリックもドンデン返しも盛りだくさんで非常に満足感が強いです。復刻版あとがきには"鮎川哲也+クリスティー"というハードルアゲアゲ文章が書かれていて心配でしたが、ある程度納得できましたw

 トリックとしては、密室・時刻表トリック・電話を使った錯視の3つありました。しかし、個人的にはどれも好みではなかったです…。
 時刻表は個人的にちょっと苦手でしてw 
 密室は多くの人物達の多くの偶然が折り重なっておりますし、ヒントはあれど推理するのが難しく、また真相をみても本当にそれが現実で起こるのか想像できません。
 電話を使ったトリックは仰天しましたが、犯人は危ない綱を渡っている気がしますね。
 鮎川作品もすべて見たわけではないですし、また良いものと悪いものもあるでしょうが、鮎川作品ならばもう少し現実的に実現できそう(と思わせてくれる)トリックがおおいかなぁ~という印象。

 ドンデン返しはとても見事でした! この点についてはクリスティーに匹敵すると思います。
 堂上が妻の死の真相を追う…15年前の殺人事件が出てくる…となれば、十中八九15年前の殺人事件の犯人が現在の事件の犯人と考えるでしょう。よくある展開ですし。それが、丸々ミスリードだったわけですねw
 私は、堂上の登場が最初のみであとは奈那や警察の主観文章ばかりな点、美保の頭痛と堂上の途中の懸念(美保の手術は失敗じゃなかったのか?という文章)をみて、ややメタ的に一瞬だけ堂上が犯人だったらどうなのだろう?と考えましたが、その一瞬だけでしたね;;

 総じて、非常に質の高いドンデン返しものとして評価します。あとがきの通り、添畑や元村死亡時にはまだページ数が残っているので真犯人がいることがバレるのは残念ですが、それでもこのドンデン返しは鮮やかでした。


No.367 5点 袋綴じ事件
石崎幸二
(2024/01/02 18:51登録)
ネタバレをしております。

 あけましておめでとうございます。去年はこれまでよりも読破した冊数が少なくなってしまいました;;

 ちょっと読みづらい海外のミステリや、腰を据えて犯人当てをするミステリを連続で読むと疲れるので、箸休め的にユーモアミステリが読みたくなります。前に読んだユーモアミステリは、なんだがストレス社会!みたいな感じだったのですが、本作品のシリーズではちゃんと明るくて楽しいユーモアミステリになっていて重宝します!
 石崎と瀬尾の関係の発展について無邪気に賭け事をするユリ・ミリア・仁美のシーンが特に面白かったですねw

 今回はなんだか企画もの?なのか、本全体が袋綴じになっていて密室本なるものになっていたようですが、中古で買ったのでもう開いてましたw ただ、特別ななにかがあるわけでもなく、デザイン的なものかもしれませんw 本編の最後らへんでミリアが袋綴じのあるミステリ本を使って犯人を絞りますが、それだけですかねw

 推理小説的要素について。
 発光塗料についての話が面白かったですね。ペンライトにもついてたのはわかりませんでしたが、両手を使うならペンライトを口で持たないといけない事に気づきませんでしたw
 また、私は露骨に瀬尾を疑っていたため、仁美が犯人だと言われた時は驚愕しましたw のちに瀬尾→下柳の順で疑われるのですが、二転三転する展開は楽しいですね。ただ、瀬尾が犯人でも論理的には破綻していない気もしますw

 今回はミリアが良く活躍しましたが、ユリは控えめでしたねw どちらかというとややミリアボケ・ユリツッコミのような立ち位置になったような気がします。


No.366 7点 七十五羽の烏
都筑道夫
(2023/12/28 18:00登録)
ネタバレをしております。

 倉知さんの某作品を読んでいたため、この作品を知りました。

 勝手に、あまり人間味のない冷徹な探偵が出てくるものだと思っておりましたw 
 本作の探偵である物部太郎や片岡直次郎は、とても人間味にあふれた良いキャラクターで好感が持てます。特に物部太郎はやる気がなく、臆病で帰ろうとするし、自信もありません。金も名声もいらなくて(ぼんぼんだから金はいらないのでしょうがw)、法による裁きよりも情を優先させるような人ですね。自信とやる気がなくなったロジャー・シェリンガムみたいなw

 この作品で話題なのは、やっぱり章の初めに作者の注意書きがあることですね。
 推理小説ファンからすると、なにか仕掛けを求めてしまいますが、それほど大きな意味はありません(少々のミスリード程度?)。
 しかし、私はこれを好ましく思えます! 論理的に解決できる作品ほど読み返したくなるものですが、章の初めにこういう文章が挿入されているとそれを見ると簡単にその章のことを思い出します。

 推理小説的な要素について。
 好ましい点とそうでない点が混在しておりますw
 まず、第一の事件では論理的に犯人が当てられると思います。ポンコツの私でも、名刺での注意書きのロジックから犯人は屋敷に長期滞在していなかった人物かつ目が悪い人物だとわかりました。
 しかし、論理的犯人当てを楽しむにしてはミスリードが過剰だと思います。確かに、作者による注意書き通り共犯者はいなかったのですが、第二の事件は第一とは違う人物が行っていますし、偶然の要素も強いです。第三の密室事件は自殺のため、がっかり感がつよいですねw
 私は第二が狙い通りではなかったこと、第三が自殺であったことは何となく読めましたので、本書中の直次郎と同じく早苗犯人説に傾倒してしまいましたw しかし、第一事件のロジックである長期滞在ではなく目が悪いということと矛盾し、そこで推理が止まってしまいました;;

 作者の注意書きもよかったですし、キャラクターも好みです。滝夜叉姫のオカルトや(これ結局なんだったの?)、祭り中の密室殺人も絵的に面白かったです。ミスリード過剰なのが好みではなかったのですが、良い作品でした。ちょっと高すぎる気がしますが、7点としました。


No.365 5点 呪殺島の殺人
萩原麻里
(2023/12/13 19:21登録)
ネタバレをしております。

 読みやすい作品が読みたくなったなら、国内作品のクローズドサークルが安定ですね! ということで、この作品をチョイスしました。
 さらに、呪術師の末裔の一族が住む島が舞台。獄門島みたいで、なんだかわくわくします。
 と、サスペンス性やおどろおどろしいオカルト要素も挟みつつの作品かと思いきや、読んでみると案外普通のクローズドサークルなので拍子抜けしますw 旧家の雰囲気かとおもったら、近代的な洋風の屋敷(それもいいけどw)ですし、呪いがテーマなのに一族が不幸に死ぬ以外では呪いの要素はあまり出てきません。
 最も雰囲気を軽くしているのは、主人公の存在です。主人公が密室内で死体と共に寝ていて、記憶を失っていて、手に凶器が握られている。主人公が犯人と疑われて糾弾される…という、サスペンスに活かされるような魅力ある展開でしたが、真白のキャラクターが漫画的すぎるというか、緊張感がないためサスペンス性を感じられなかったのは残念でしたw 後半では死者が多くなり、流石に緊張感が出てきましたが…。作者はライトノベル中心に活動されているようなので、こういう作品になったのでしょうね。

 推理小説的要素について。
 ややテンプレート感が強い作品でした。記憶を無くした主観人物の使い方も、密室も、真犯人も。私はすべてを推理できたわけではないのですが、まあなんとなくそうだろうなと思う展開が多かったです。
 主人公が記憶をなくすと言えば、真っ先に思いつくのは人物が入れ替わっていることですよねw しかし、それを利用した読者に対する驚きはそれほど大きくなく、他作品のほうがドンデン返しにうまく使われているような気がします。
 密室の謎も、いくつもの偶然が重なっておりますし、既視感の強いものでした。
 また、私の苦手な、腹に一物ある嘘つきばかりな登場人物達が存在し、さらに殺人を犯した人間が多すぎますw こうなると、犯人当ては難しいものになりますねw

 総じて、読みやすく本格の雰囲気が強い作品でした。裏表紙に書かれている"新感覚密室推理"というのはよくわかりませんでしたが、安定感があってよかったと思います。ところで、僕の名前って次回作で明かされるんですかね?


No.364 8点 龍神池の小さな死体
梶龍雄
(2023/12/06 20:06登録)
ネタバレをしております。

 復刻版を購入しました。入手しずらい名作を復刻してくれるのは大変ありがたい!! まだ見ぬ名作をどんどん復刻するといいぞw

 読み初めはなかなかページが進みませんでしたw 
 過去に事故死したと思われていた主人公の弟が殺されたと聞かされ、ちょっと閉鎖的で変わった村へ行き調査するという割とよくあるスタイルで進みます。主人公が事件の当事者でない場合、聞き込みが主になりますので、警察小説のような感じもあり、事件が進むのが遅いため読みづらさを感じてしまうのですよね。
 また、過去の事件を追うこともあまり進みません。皆、20余年前のことは記憶がおぼろげですし、当事者は口を割らずに死んでしまいます。
 さらに、このタイプの小説にありがちな、村ではタブー扱いの事件をほじくり返すことによって村から疎まれ、村全体から敵視される展開でスリリング…というものも本作では実にあっさりとしていますw
 解説が三津田信三氏であり、本の裏のパラメータでは恐怖の値がMAXなため、三津田信三氏の人気シリーズである刀城言耶シリーズのようなホラーな趣があるかと思えばそうでもなく…w
 主人公が殴打されて昏倒したり、20余年前の事件の当事者の吉爺さんが殺されるなどの事件が起こるのはかなりページが進んでからです。

 推理小説的要素について。
 非常に見事でしたw メインのトリックは、吉爺さん殺害トリックと、吉爺さんすり替えによる人物認識をずらすトリック、さらに過去の事件~2度のすり替えを経た黒岩=秀二のドンデン返しかと思います。
 吉爺さん周りでは、主人公がポカをしてしまうことで間接的に犯人に協力してしまっているので、完全には私の好みではないのですが、丁寧に張られた伏線によって一瞬だけ吉爺さんがホンモノではないのではないか?と私でも思いましたw 機械的な仕掛けは好みではないものの、人物・場所・時間の認識を全てずらした名トリックだと思います。ピタゴラスイッチ的仕掛けではないですしねw
 黒岩は露骨に怪しいと思いましたが、まさかここまで過去の事件とかかわりがあるものだと想像できませんでしたw 正直、過去の事件はあっさりめで終わるかと思いましたが、見事に伏線とミスリードが回収されていて、前半の読みづらさは嘘のようでした。
 ラストについては何とも悲しいです…。正直、絶対大熊を殺してると思いましたw 主人公智一より、賢く行動力のあり明るいスーパー探偵佐川美緒が報われない(?)のが残念ですね(??)。やっぱり、ダム決壊は蛇足だったかなw

 総じて、序盤の読みづらさは少しありましたが、推理小説の醍醐味の一つである綺麗な伏線回収とミスリードに裏付けされたドンデン返しを楽しめる名作でした!! どんどん復刻するといいぞ!

 そういえば、頭パープリンな私には、三津田氏の解説に書かれた瑕疵がわからないのですが…検索しても出てこない…だれか教えて…w


No.363 6点 呪い!
アーロン・エルキンズ
(2023/11/27 23:33登録)
ネタバレをしております。

 前に同シリーズの古い骨を読んだことがあります。なかなか読みやすかったし、ギデオンのキャラクターがお堅い学者とか冷血漢という感じではなく、喜怒哀楽がはっきりしている温かみのある人間としていて好印象でした。また、本格推理小説としてもレベルが高く、これからも読んでいきたいシリーズです。
 古い骨よりも人体の骨の知識はあまりでてこず、変にウンチクめいてなかったのもよかったですね(出ててもそれはそれで面白いですが)
 関係ないですが、シリーズ何作目か把握していなかったですw

 今回の舞台はマヤ遺跡みたいです。現地の雰囲気を味わえますw
 絵文書が持ち去られるという過去の事件があります。ギデオンに脅迫状が届いたり、襲われたり、下剤をしこまれたりといろいろなことが起こりますが、いまいちはっきりとした事件が起こりません。200ページを過ぎてからやっと殺人が起こります。過去の事件も殺人といえば殺人ではあったのですが、いまいち考えるポイントがわからず、そのため古い骨よりもやや読みづらさを感じてしまいました。
 論理的に犯人断定をするのは好印象ですが、ほとんどポイントは1点のみ。しかも話の流れ的にあまり重要そうでもない様な点が重要な意味を持っておりました。そのため、私にはあまりにも難易度が高かったです;;

 総じて、キャラクターが魅力的で読後感の良い海外本格として重宝しますw 


No.362 5点 ドS刑事 朱に交われば赤くなる殺人事件 
七尾与史
(2023/11/13 22:26登録)
本作と前作のネタバレをしております。

 一つ前に読んだ本が700ぺージを超えるものだったので、あまり肩の力を入れなくてよいユーモアミステリを求めて買いましたw 
 しかし、前作もそうだったのですが、内容はちょっと暗いです。前作も今作も、主観人物の一人にストレスがかかるような悲惨な場面が多く書かれております;; 前作はそれが事件の原因にもなっていたのですが、2作目でもやたら暗いので、そういうシリーズかもしれませんね;;
 一方で、主要メンバーに、ドMの浜田が加わり、ドS警部がパワーアップしたような感じがあります。なるほど、ボケとツッコミのように、ドSにはドMがいることでより一層存在感が増すのですね!
 内容はというと、推理小説というよりもサスペンス性がある2時間ドラマっぽいです。本のラストでは実はこうなっていた…的な仕掛けはあるものの、驚愕の事実!!みたいな感じではありません(私は予想できませんでしたが)。アリバイ検証がないので論理的な犯人当ては難しいですし、アリバイトリックもありませんでした。

 総じて、本格推理小説としてみると若干パワー不足感があり、ユーモアミステリとしてみるとちょっと内容が暗くてグロ?いです…。


No.361 6点 百器徒然袋 雨
京極夏彦
(2023/11/06 19:40登録)
ネタバレをしております。

 榎木津礼二郎が活躍するスピンオフ的作品と聞いて買いましたw 
 本編は3作読みましたが衝撃的な展開かつやや暗いストーリーが多いです。しかし、この本作は榎木津礼二郎の明るくて破天荒な人物像がそのまま作品になったように、明るくて楽しく読みやすいものでした。なんだか、水戸黄門や暴れん坊将軍に似ているような(?)感じがしましたw

 ユーモアミステリなので評価が難しいですが、事件の秘密が明かされると全体像がひっくり返るような面白さはありました。
 "僕"こと本島が様々なあだ名をつけられることが面白いのですが、一向に名前が明かされないので、実在の人物だったりなにか意味のなることなのかな…?と思いましたが、軽く調べた感じそうでもないようでしたねw 京極夏彦作品人名辞典によると、はっきりと榎木津の下僕とかかれていますねw 下僕になることへの嫌悪感があるように書かれておりましたが、結局下僕になることから逃れられなかったようですねw

 関口は3編目から登場しましたが、やっぱり関口がいじめられているのは面白いですね(?)。語り部の"僕"と若干のキャラ被りをしているためか、関口の活躍が少なかったけれど、やっぱり関口にはもっと出ていただきたいです。

 スピンオフにもかかわらず700ページを超える立派な匣みたいな本でしたが、本編よりも京極堂の蘊蓄がしつこくなく、非常に読みやすかったです。また少し時間をおいて次の百器徒然袋雨を読みたいです…がその前に読むべき本編がまだありますね;
 そういえば、1編目でオカマを差別するほど毛嫌いしていたはずの櫻井の手下がゲイのようになってしまって櫻井を襲い始めた(?)のですが、京極堂は何をしたのでしょうかねw 今ではコンプラなどで書けない小説ですね。


No.360 7点 聖女の救済
東野圭吾
(2023/10/17 19:29登録)
ネタバレをしております。

 たぶん、容疑者Xの献身以来?の探偵ガリレオシリーズを読みましたw ガリレオの湯川は個人的にはあまり好きになれない人物ですw ただ今回は(今回も?)安楽椅子探偵的にちょくちょくでる感じで、あくまで草薙と内海が主人公格な視点で進んで行くため、ほとんど気になりませんでしたw
 非常に読みやすかったです。アリバイトリック系の推理小説として完成度が高いです。少し違うかもしれませんが、鬼貫警部シリーズのような感覚で読めました。あまり無駄な点がなく、アリバイトリックを楽しむことに特化した文章が心地よかったですw
 エピローグの使い方も非常にうまいですね。物語の最後に、犯行直前の会話ではなく、殺意が芽生えた1年前の会話だったことが明かされるほのかな叙述トリックのノリで(?)、亜ヒ酸の袋の存在がミスリードになっておりますね。この文を読むと、まるで、殺害直前に毒を仕込んだように錯覚しますw 

 推理小説部分について。
 私は毒殺トリックに飢えておりますw 単に犯行方法が毒殺というものではなく、どうやって毒を入れたとか、どうやって特定の人物だけに飲ませるとかそういうトリックが読みたいのです。本作品は毒殺トリックとして満足の出来でした!
 トリックについては、現実にはかなり難しいのではないかと思います。やはり、誰かが浄水器を使うと破綻してしまいますし。ただ、小説上はそれが可能に思えるような細かい伏線が張られており、作者の実力の高さがうかがえました。
 ただ、あの毒の仕掛け方では宏美が巻き添えになってしまう可能性もあった気がするのですが、どうなのでしょうかね? 読んだ感じでは、絶対に宏美が浄水器を使わないとは言えない気がするのですがどうでしょうか。綾音は宏美を巻き添えに真柴を殺すような人物には書かれていないと思うのですが。

 総じて、非常に本格度が高く無駄な点が少ない質の高い推理小説でした! 容疑者Xの献身や、短編での探偵ガリレオシリーズはあまり好みではなかったのですが、この作品は私の好みでした。


No.359 7点 炎舞館の殺人
月原渉
(2023/10/12 21:43登録)
ネタバレをしております。

 ツユリシズカシリーズですが、本格色が強いにもかかわらず非常に読みやすいです。この作品もほぼ一瞬で読み終えられました。クローズドサークルであり、本筋とは関係ない無駄な話がないのも当シリーズの特徴で、それも読みやすいと感じる要素ですが、それだけでは説明がつかないほど読みやすいですw きっと、この作者は読みやすい文章を書くのが上手なのでしょうね!
 本作もクローズドサークルですが、館自体がとっても変わっております。陶芸家の館だけあり、なんだか館全体が窯のような感じでオシャレ(?)です。
 登場人物も一癖あり、手や足を失っている人、目が見えなかったり声が出せなかったりします。それがうまくトリックにかかわってきます。
 ラストシーンは少し悲しいですが、どことなく美しく、少ないページ数でもきちっと決まった良いラストでした。心に残りますねw

 推理小説部分について。
 長編にしてはやや弱いトリックでしたw 顔無し死体→入れかわりは何度も繰り返されてきたトリックですねw ただ、自分はわかりませんでしたw 自分のあまりのあほさに絶望しました。 いくつか伏線もあり、フェアだと思います。

 以下、好みで無い部分。
 あまり無駄な部分がない作品ですが、それゆえか、犯人や協力者の動機がやや弱く感じました。
 偽シズカ登場のためか、これまでのシリーズよりもシズカ活躍シーンが少ないです。少しだけシズカの過去が明らかになりましたが、論理的な推理を展開するシズカのシーンは少なめです。

 総じて、非常に読みやすく美しい作品でした。一方で、長編にしてはやや弱いトリックが不満です。結構甘い得点ですが、ラストが気に入ったため7としましたw


No.358 7点 レイトン・コートの謎
アントニイ・バークリー
(2023/10/06 19:59登録)
ネタバレをしています。

 国書刊行会版を読みました。たしか、私が読んだ中では4作品目のバークリー作品です。
 ロジャー・シェリンガムシリーズを中心に読んでおりますが、この探偵は割と感情を表に出す探偵で皮肉屋っぽくもあり正義感や友情に熱い良いキャラクターで、シリーズ全てで読みやすいです。ただ、本作は舞台の図や殺人現場の図がなく、少々ページが進みませんでしたw それでも、シェリンガムとアレックがコンビを組んで捜査をしだしてからはわりと苦にならなくなりました。
 途中、謎の凶悪な巨漢のプリンスを追うシーンは面白かったですw あとがきにも書かれておりましたが、あのドタバタぶりはH・M卿を思い出しますね!

 推理小説的部分について。
 早い段階で殺人はすぐに起こります。自殺に見せかけた密室殺人なのでわくわくしましたが、密室自体はさほど面白くなかったですw
 徐々に登場人物の秘密が明らかになっていくのですが、ほぼすべての人間に隠し事があり、読者が犯人を当てるのは難しいでしょうねw アリバイ検証もあまりされていないようですし。
 一番魅力的なのは、やはりワトソン役としてシェリンガムの相棒を務めたアレックが犯人だった意外な犯人でしたね! 私は花壇の足跡が消されたタイミングと、バーバラの突然の婚約解消のフラグを回収していない点から、わずかながらにアレックを疑いましたw ジェファスンの告白によって犯人候補が居なくなったことから、より疑いが強まったのですが、真相が明らかになった時はやっぱり驚いてしまいましたw

 総じて、バークリーらしい明るくて読後感のよい良い作品でした。密室トリックが小粒なことや、衝撃の犯人の役柄などは現在では珍しくないことはありますが、それを差し引いてもよい作品と感じました。
 今、他の方の書評を拝見しましたが、この作品ってバークリーのデビュー作なのですね! なんだかベテラン作家の往年の作品のように感じましたw


No.357 7点 図書館の殺人
青崎有吾
(2023/09/30 01:46登録)
ネタバレをしております

 絶対に書評を書いたと思ったていたのに、見たところ書評に自分の名前が無く、記憶力のなさに絶望しました;;
 読了から大分時間が経ってしまったため、思い出しながら書きます。間違っていたらすいません。

 このシリーズは、明るくてユーモラスな登場人物が多く登場して読みやすく、かつクイーン国名シリーズを思い出させるような論理的な犯人当てが魅力です。本作もそうでした。
 漫画的な感じで読める反面、漫画的すぎてちょっと登場人物の性格が変人っぽくなっていることもありますが、3作目にして登場人物のキャラクターや配役の数と立ち位置が決定してきたと思います。
 これからも大変期待!…なのですが、23年9月現在ではこの作品を最後にシリーズが止まってしまっているのですね;; このまま殺すにはあまりに惜しいシリーズです;;

 推理小説的要素について。
 前作、前々作よりも洗練されていると感じました。前作は、個人的にはあまりにも細かい要素が積み重なりすぎて犯人を当てるのが不可能に感じてしまいましたw しかし、本作は完全にすべてを当てられなくても、犯人にたどり着けるようにできております。ちゃんと作者が読者に解かせようとわかりやすくヒントを書いていると感じました。頭パープリンの私でも犯人を当てることができました(すべての謎は解けなかったですがw)。
 ただ、細かいところに少しだけ不満がありました。いろいろあるのですが、例えば犯人がカッターで髪を切るしかないみたいに言われてますが、いきなり血の付いた部分だけ切ると違和感がすごいので逆に危険かと思いますw

 総じて、読みやすく論理的な犯人当ては希少価値が高く、この作品も好きです。早くシリーズ最新作がみたいですね;;


No.356 6点 殺人喜劇の13人
芦辺拓
(2023/09/25 13:53登録)
ネタバレをしております。

 実は、紹介文から勝手にクローズドサークルだと思って買いましたw 一つの洋館でほぼ話が完結しますし、連続殺人事件なので、クローズドサークル風味が味わえます…が、いつでも泥濘荘から出入りできます(なんで誰も逃げないんだ…?)。
 作中作の形態をとった作品ですが、その作者の十沼が面白い人物というか、間抜けというか、ふざけ気味な文章を書くので、すこしユーモアミステリの感じもあります。

 推理小説的部分について
 すさまじく多くのミスリードからの衝撃の犯人でしたw 実は私は、みさとが誘拐された事件をみたとたんにみさとを疑い始めましたw 狂言誘拐くさいですよね…。しかし、どうやって錆田を釣ったのか全く分かりませんでしたw

 好みではなかった部分。
 登場キャラクターがどうも似ていて見分けがつきづらかったです。3人ぐらい死んでからは苦がなくなりましたが。
 クローズドサークル風味と書きましたが、登場人物たちに仲間を殺された怒りや悲壮感や危機感もまるで感じられませんでしたw そのため、クローズドサークルの魅力であるサスペンス感は感じられませんでした。
 密室殺人が多いのですが、ほぼほぼ偶然に起こったものであり犯人の意図した密室が少ないです。
 事件が多くおきますが、犯人の協力者が多いです。また、加宮ー錆田の事件とその後の事件は犯人は別です。出来れば、単独犯による一貫性のある事件が読みたいですね。

 総じて、全体的に、多くの要素とミスリードが詰め込まれておりますが、それによって犯人当てはできない気がしますw また、密室も暗号も作中作による叙述トリック(なのか?)どれをとっても小粒でした。盛りすぎるよりももっとスリムにして、質を高めてもらった方が好みでした。


No.355 6点 永遠の館の殺人
黒田研二
(2023/09/12 20:03登録)
本作品とシリーズ過去作のネタバレをしております。

 少し前に千年岳を読み終わりましたが、KillerXシリーズを忘れないうちに読んだほうがいいという意見を目にし、あまり間を置かずに読みました。外伝を除けばシリーズ最終作品ですし、KillerXの正体に迫る、まさに最終作にふさわしいラストでしたw
 このシリーズはクローズドサークルが多く、展開も標準的なそれで、次々に人が殺されていきます。犯人当てなどはそれほど期待できませんが、ややグロいシーン以外では非常に読みやすく、すぐに読了できます。本作もわりと早く読み終えることができました。

 推理小説的要素について。
 読者からすれば、"今回の嶋山佳織"は誰だ!? と考えてしまいます(私は全力で疑ってみてましたw)。途中で女性がホルモン剤投与で髭を生やす話が露骨に怪しかったので、髭描写がある真咲大だったのか! からの、大きく時期が違っていて、瑠那が嶋山佳織だったのですねw 
 また、どこか異常な館と霧山の異常行動が、全て瑠那に死の概念を学ばせないようにするためだったのもなかなか衝撃的ですし、それがKillerX誕生に深くかかわっているのもよかったです。

 以下、好みで無かった部分。
 叙述トリックが魅力な本シリーズですが、この作品に関してはややパンチが足りない気がしました。男←→女錯視トリックは本作品の核ではないとはいえ、またかよ…感はありました。
 また、瑠那が嶋山佳織になるということもあり得そうなことですし(たくさん想像したものの一つですがw)、死の概念を知らない人間の話がでる推理小説もすでに存在しますねw 死の概念を知らない人物を推理小説に活かしたという点では、この作品よりも活かされていると思います(他にもあるのかわかりませんがw)

 総じて、シリーズ最終作品としてはKillerXの正体が知れて満足です。ただ、推理小説としてはちょっと小粒感がありました。


No.354 6点 連続殺人事件
ジョン・ディクスン・カー
(2023/09/01 18:54登録)
ネタバレをしております。

 連続自殺事件というタイトルはインパクトがあって気になっておりましたw あまり前情報を調べずに買いましたが、どうやら連続殺人事件からの改題だったのですね。読んでみると、やっぱり自殺のほうがしっくりきますね。
 
 海外翻訳物に若干のアレルギーがあり、作品によっては読むスピードが著しく落ちる私ですが、この作品はわりとサクサク読めました。
 アランとキャスリンは、最初はいがみ合っていましたがのちに婚約する仲になり、高橋留美子の漫画並みな感じがしましたw アランは酒に酔った時、キャスリンに何を言ったのですかねw 愛の告白でしょうか?
 さらに、火酒キャンベル家の破滅を飲んで酔っ払ったコリンとアランと気の毒なスワン達のドタバタはユーモアミステリ―的に面白かったです。


 推理小説的要素について。
 密室が2つ出てきます。事件は3つですが、最初の2つは同じトリックなので。
 私は、ドライアイスの特性を知っていた(詳しくはないですが…)のですが、全く盲点でした! アイスクリーム事業の話の件でドライアイスがほのめかされており、一瞬ドライアイスを想像しましたが、どうやって何に使ったのかさっぱりわかりませんでした。ただ、あれでアンガスの計画が成功する(自殺成功や殺害成功)のは本当にできるのかわかりませんw 
 2つ目の密室ですが、これも盲点でしたw ただ、ちょっと強引で古さを感じますし、部屋の図は欲しかったところですw 好みではなかったです。

 以下、難癖点。
 カー作品には多く見られますが、証言者がイマイチ信用できないんですよねw エルスパットおばさんの心理の変化は丁寧に説明されていて、証言を急変させたのは理解できますが、私の好みは証言者が嘘や誤りがないことですねw
 さらにちょっと腹が立つことに、フェル博士が保険金詐欺(?)に加担するためか、序盤ではアンガスを殺人と断言していることなんですよねw やっぱり、探偵は間違ったことをしゃべらないほうがすっきりとしていて好きです。

 総じて、これまで見たことがない密室だったのでその点は満足ですw 作風も明るくて読みやすいですし、佳作な印象でした。ただ、密室の大名作!と呼ぶにはちょっとトリックがパワー不足だと思いました。6点で!


No.353 5点 長く短い呪文
石崎幸二
(2023/08/22 19:25登録)
ネタバレをしております。また、シリーズ過去作品のネタバレも一部しております。

 非常に読みやすいユーモアミステリとして重宝しているシリーズです。ユリ・ミリア・石崎の会話はほとんど漫画のように読めます。特に、"小野妹子は叙述トリック"にはなるほどそうか!と思いました。初めて叙述トリックを読んだとき、それこそ男女の性別の錯視のタイプを読んだときには驚き騙されましたが、我々日本人はすでに小野妹子で一度それを味わっていたのですね!

 推理小説的部分について。
 前作は殺人もあり、推理小説として厚みもあったのですが、今回はすこし薄味です。これだけ左右の話が出ていて、右手左手などのワードも出ると、いろいろ考えてしまうのですが、初めから左右を逆に教えられていたとは全く思いませんでした(これもブラフでしたがw)。
 また、最後にどんでん返しがあったのもよかったです。"飛行機に包丁やハサミを持ち込めない"というロジックからブラフを暴くのも論理的ですね! 私はこれに気づかなかったですw 石崎によるヒントもあったんですけどねw

 総じて、読みやすい作風と、どんでん返しの前の論理的なヒントが良い作品でした。ただ、過去作よりもやや本格度はおち、短編にギャグを練りこんで長編にした感じはありますね;


No.352 5点 煙か土か食い物
舞城王太郎
(2023/08/16 20:17登録)
ネタバレをしております。

 前情報なしで買いましたが、最初はこの文体に面食らいましたw 改行がなく、!や?の後にもスペースもない、まるまる文章のみでぎっちりつまったページは初めて見ましたw
 主人公が癖のある人物で、その主観文章なので、そうとう癖のある本ですねw かなり狂暴で喧嘩っ早く、一方でちょっとニヒルっぽかったりするプレイボーイなのですが、熱くなる時には熱くなり、また家族愛にも満ちておりますね。かなりせわしなく動き回る活動的な主人公で、また感情の起伏も激しいため、本全体的に疾走感があります。
 推理小説的要素はあまりなく、どちらかというと2時間ドラマのように事件を追います。祖父・大丸の自殺や、二郎失踪は密室事件なのですが、あまり価値はありませんでしたw 

 好みではなかった部分。
 疾走感がある本と書きましたが、事件が進むのは遅いです。半分ぐらいの?ページが奈津川四郎の幼少期~二郎失踪までの話になります。前半にあった疾走感は一度100~150ページ前後で失速します。丸雄の暴力シーンや、歪んで育ってしまった二郎の非行のシーンはしつこくて読むのがつらかったです。また、二郎がそれほど事件にかかわってこなかったので、もっとカットしたほうが良かったような気もしますw
 過去編があらかた終わった後、四郎による捜査が再開され、また一気に疾走してラストまで行きます。四郎は家族を救い、求めていた愛する女性を手にして?、わりと爽やかでハッピーエンドで終わります。その辺はよかったですね! 二郎の件は決着がついておりませんが…。

 総じて、途中の暴力シーン以外は読みやすく疾走感がありました。推理小説としてみるのではなく、普通の本としてみたなら楽しめます。主人公の心の文章が多いので、主人公を鬱っぽくしてユーモアっぽさを消すと、なんだか純文学っぽくなるかもしれませんねw 純文学は一冊も読んだことが無くて恐縮ですがw


No.351 6点 古い骨
アーロン・エルキンズ
(2023/08/10 22:55登録)
ネタバレをしております。

 スケルトン探偵と呼ばれる人類学の博士が探偵で、遺骨から推理するユニークさに惹かれて購入しましたw よく調べていなかったため、シリーズ初作ではなかったのがちょっと惜しかったですw 

 読み初めは、なかなかページが進まずに苦戦しましたw 横溝正史的な名家骨肉の争い系…とまでいかなくても、登場人物も多くてその立場も複雑でした…。なんだか名前も似ている人が多いように思えました(私がフランス人の名前に慣れていないのか?)。家系図が欲しいところですね!
 ギデオンが登場し、骨を調べだしてから少しずつページが進むようになりました。流石スケルトン探偵だけあり、骨から事件の全容がすこしずつわかっていきます。専門的な話もでますが、ちゃんと説明があるし、しつこくもなくていい感じです。

 推理小説的な要素について。
 論理的な犯人当てや、アリバイトリックはないのですが(小規模なものはありましたが)、地下から出てきた骨の正体が明らかになると事件全体が一変するようなどんでん返しが見事でした。クリスティーが一番近いような感じがします。
 私は、骨の正体がギヨームであることがわかりませんでした。それが明かされた時、やっと事件の全容がすこしわかりましたw ジュールの発言から、怪しい人物は大体はわかりましたが…。思えば、アラン←→ギヨームの入れ替わりは推理小説では割とよく見る類であり、ヒントもあったのに、なぜわからなかったのか悔しい思いをしましたw

 総じて、アメリカ探偵作家クラブ賞にふさわしい、本格度の高い推理小説でした! ギデオン・ジョンらのキャラクターも明るく気に入りました。買えるならば、1作品から買いそろえてみようかなと思いました。


No.350 7点 千年岳の殺人鬼
黒田研二
(2023/07/30 20:03登録)
ネタバレをしております。たま、シリーズを通しての若干のネタバレもしております。

 連続殺人と、殺人鬼側の視点書かれるグロいシーンが多めなKillerX。今回ももちろんありましたが、過去作よりも気持ちグロさが抑えられているかな~?

 いくつかの視点で書かれております。初めはあまりつながりがないのですが、ラストでつながってきます。
 メインの視点はクローズドサークルの連続殺人。ワームホールのよる時間移動の要素があり、誰かが書いた預言の書めいた日記が面白いです。
 前半のグロシーン以外ではとても読みやすく、すぐに読了できました。

 推理小説部分について。
 今回もいつくかの叙述トリックが使われております。警察の視点で書かれる連続殺人と、シズコ・ニコライの視点で書かれる雪山での連続殺人です。
 警察のほうは、明らかに男装した女性が犯人っぽく、初めからそんな感じでしたねw 途中で私立探偵が女装した話まで入っておりますので、作者としてもバラしている感じがあります。
 メインは、シズエ・ニコライの視点で書かれた人物たちが、同一人物だった叙述トリックです。私は、ニコライとヒロミ妹(自称)が会って復讐を誓う時点で、やっとのことで全体像が見えてきました。話の流れから、チサト・コーリャがニコライ・ヒロミ妹(KillerX)と気づきました。
 しかし、どう考えても日記の謎と乾いた服(ジニー証言)の謎が突破できず、悔しい思いをしましたw 星占いと日記の謎→ビデオをみせてラッキーカラーやアイテムを固定することは圧倒的盲点でしたw 乾いた服の謎→液体窒素を使う…のは、被害者に証言させるためにそこまでやるかwって思いっちゃいましたw

 不満点。
 チサトとコーリャの計画は、やっぱりすべてうまくいくとは思えませんねw 
 結局、ワームホールはあったのですかね? あと、ラストがちょっとよくわかりません。フミコはワームホールを使って10日前にとんでチサトと対峙。返り討ちに合い、ナイフで顔を傷つけられて死亡。チサト(KillerX=カオリ)は生きて逃げている…ってコトォ!?

 総じて、これまでよりもやや小粒なドンデン返しな印象もあります。少々、成功率が低そうなトリックと感じましたが、叙述トリックや日記のトリックをひっくるめて好みでした! 7点は高い気もしますが、7点で!


No.349 6点 死との約束
アガサ・クリスティー
(2023/07/22 23:30登録)
ネタバレをしております。

 方舟の犯人当てを考えている最中、読書がストップしてしまうので、こちらの作品を読みながらやっておりましたw
 海外作品とは思えないほど読みやすく、またアリバイ検証や細かいタイムテーブルなどを考える必要がないミステリなので一気に読了できました。
 心理的な推理と、少々のトリックがあって、佳作な感じです。ものすごいトリックなどはないのですが、本全体に張られた伏線が余すところなく回収されていて見事でした。そして、きっちり意外な犯人でした。
 あと、雰囲気がややユーモアミステリ…というといいすぎですが、明るかったのもよかったですね。ラストが大団円なのもよかったですし。少し違うかもしれませんが、どことなくアントニー・バークリーの作品のような趣がありました(?)

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