証拠が問題 |
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作家 | ジェームズ・アンダースン |
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出版日 | 1991年11月 |
平均点 | 6.75点 |
書評数 | 8人 |
No.8 | 6点 | ミステリ初心者 | |
(2025/02/24 19:50登録) ネタバレをしております。 2時間ドラマ調のミステリです。細かいアリバイ検証や、大規模なトリックなどは楽しめませんが、物語を読むと読者の犯人候補から自然と真犯人を外してしまうようなミスリードに富んだ構成と初期の段階からある豊富は伏線が魅力です。 中盤までアリソンやロジャーによる捜査は警察小説のようでもあり、すこしダレるような感じがして、読むスピードが遅くなりました。ただ読了してから思い返すと、あまり無駄なページは無かったように思えます。何かしらの要素やセリフが、伏線とミスリードになっております。 私は実は、ただの勘だったのですが、とても早い時点でアリソンを疑っておりましたw プロローグはなぜか女性的な犯人を想起させましたし、夫の突然の帰りにびっくりするアリソンはどこか怯えているようにも感じました(読み返すと例の手帳を見ているのは素晴らしい伏線ですね!)。また、リンダのフラットに泊まっているロジャーの下に手紙と手帳が届けられてからはアリソンが犯人だと確信しましたw 私がアリソンが犯人だと狙い撃ちしたためか、多くの伏線とミスリードを理解きるようになり、なんだか過剰に評価してしまいそうですw 冷静に全体を考えたとき、まあ6点かな?という感想です。7点でも悪くないのですがw |
No.7 | 7点 | 人並由真 | |
(2024/12/28 05:35登録) (ネタバレなし) その年の8月。英国はロンドンから自動車や電車で一時間前後の海岸沿いの町ファーマス。そこで自称モデル業の美女リンダ・メアリー・マシューズが、何者かに殺害された。リンダと不倫関係にあった、出版界のエージェントで38歳のスティーヴン・グラントが容疑者として逮捕されるなか、スティーヴンの妻で33歳のアリソンは夫の嫌疑を晴らすため奔走する。やがて事件にはリンダの兄であるスコットランドヤードの首席警部ロジャー・ピーター・マシューズも介入。ロジャーはアリソンを女性ワトスン役に非公式な独自の捜査を始めるが、事件は意外な進展を見せていく。 1988年のアメリカ作品。 海外ミステリ、同SFその他の名ガイドブック「100冊の徹夜本」の中で紹介されていた一冊で、しかも作者があの『血染めのエッグ・コージイ事件(血のついたエッグ・コージィ)』のジェームズ・アンダースンだというので以前から気にはしていたが、今夜、勢いをつけて読んだ。 現代日本の中堅作家の新本格ミステリか!? と言いたくなるほどの強烈なリーダビリティで、400ページ近い本文を3時間ちょっとでイッキ読み。これだけページタナーな「読ませる」パワーを誇るという点、すでにそれだけで価値がある。 帯付きの初版をブックオフの100円棚で購入し、その帯に「真相は(中略)……!」とあるので期待したが、ソノ辺に突入するのは比較的あとの方で、ストーリーの中盤まではヒッチコックの良くできた映画みたいな感じで、イベント続きで話が転がっていく。 作品の結構もサプライズの成分もむろんここでは語らないが、適度に、読む側に「もしや……」「ああ、これは……」などと種々の仮説やヘボ推理を呼び起こさせる内容で、そこら辺がメチャクチャ楽しい。初球から上級まで幅広いミステリファンが楽しめる、おもちゃ箱みたいな一冊。 なお中盤のある展開で、そこもまた「あ、これ……」と思わされたが、作者は確信行為だったんだろうね? 最後の最後、創元文庫判のP385に出て来る固有名詞は、そこでわかってくれ、という読者に向けての作者のサインか? ■なお本サイトのこれまでのレビューですが、誠に恐縮ながら、こうさん、kanamoriさん、完全にネタバレです(汗)。 (あびびびさんのレビューは事前に警告されているから良心的ですが、やはり作品を読み終わるまで、見ない方がいい。) 老婆心ながら、これから読む人、その点、ご注意を(大汗)。 評点は8点でもいいんだけど、良くも悪くも軽快な感じでその数字がつけにくい。その年の新刊として読んでいたら、SRの会の年度ベスト投票(本サイトと同様に10点満点での各作品評)には確実に8点つけたと思うけど。 |
No.6 | 7点 | あびびび | |
(2018/06/09 23:02登録) (ネタバレ?)一転二転する結末は十分に楽しめた。これが叙述トリックと言う奴かと、改めて苦笑するしかない。まあ、確かに、登場人物の色々な視点から見れば当然そうなるわけで、決して反則技と言うわけではない。さらっと読めて、満足感も十分なら、それで良いではないか。7.5という点数があれば…。 |
No.5 | 7点 | 蟷螂の斧 | |
(2014/04/03 09:41登録) 物語の展開は判り易いし、文章も読み易い。よって深読みをすることもなくスラスラ読んでしまいました。犯人はまったく判りませんでした(笑)。登場人物表で「?」のつく人物は初めてで、その人物かと思われる者が途中から登場するのですが、うまく騙されました。全体の印象はスマートということですね。また、物語とは全く関係ないのですが、警部をどのような呼称にすればよいのか?が全編を通して出てきます。こういったユーモアも好きです。 |
No.4 | 6点 | nukkam | |
(2011/01/11 18:16登録) (ネタバレなしです) 1988年発表の本格派推理小説の本書の特徴は2人の男女がコンビを組んで謎解きに挑戦というよくありそうな設定で、このパターンだと往々にしてユーモアミステリーになりがちですが本書は全く違う様相を見せます。重要容疑者の家族だったり被害者の親族だったりと微妙な立場にあり、その探偵活動は決して足並みが揃っているわけではなく次の展開が容易には予想できません。最後のロマンスは唐突かつ余計な気もしますが緊迫感漂うプロットは魅力的です。 |
No.3 | 6点 | kanamori | |
(2011/01/07 18:06登録) 殺人容疑で逮捕された夫の潔白を証明するため、被害者女性の兄とともに調査に奔走することになる妻・アリソン。 「黒い天使」を連想させるプロットで、天使の顔・アルバータと本書のヒロインが重なるところですが、アイリッシュ風の叙情性はなく、アリソンは現代的で芯の強い女性として描かれていて、小説のテイストも明るめです。 登場人物が限られており、途中真相はなんとなく見えてきますが、巧妙な叙述のテクニックで核心はうまく隠蔽されています。 小粒ながらスマートな叙述トリックものでした。 |
No.2 | 7点 | 給食番長 | |
(2009/05/19 23:49登録) これはピリッとトリッキー |
No.1 | 8点 | こう | |
(2008/08/10 23:56登録) 叙述トリックものの秀作です。プロローグで殺人がおこり、一章目で一人で家にいた主婦の描写があり、そこに出張中の夫が予定より早く帰宅する。その夜中に刑事が訪問し(冒頭の)殺人現場で目撃された夫を容疑者として逮捕して、という展開のストーリーです。 その後夫の無実を証明するために妻が奔走し、ストーリーが二転、三転してゆきます。 解説は有栖川有栖氏が書いていますが、解説通りで作品に示された叙述トリックを見破れるかが主眼でしょう。犯人自体の見当はつきやすい作品ですが、叙述トリックを見破って疑えるかどうかだと思います。個人的には犯人の予想はつきましたが叙述トリックには初読時全く気付きませんでした。 結末もありきたりの展開ではなく、皮肉が利いています。 尚、ある登場人物の行動が有栖川氏のある作品の犯人の行動に非常に似ていると思われこの作品がモチーフとなっているかもしれません。そういう意味でも有栖川氏が解説しているのもわかる気がします。 またジェームズ・アンダースンの他の作品も言えることですが殺人事件を扱っているのに全く暗さがなく明るい作風の中物語が進行してゆきます。 全作品お薦めの作家だと思います。 |