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ミステリの祭典

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蜜の森の凍える女神
ヴィッキーシリーズ

作家 関田涙
出版日2003年03月
平均点6.00点
書評数2人

No.2 7点 人並由真
(2021/07/05 18:08登録)
(ネタバレなし)
「僕」こと横浜の風夏学園中等部3年生の男子・菊原誠は、同じ学園高等部2年の姉「ヴィッキー」そして姉の友人の同級生・森下吉乃とともに、その年の冬、群馬県にある父の知人の別荘に泊まりに行く。3人だけの宿泊の予定だったが、吹雪の中で遭難しかけた大学生たち、栄京大学サッカー同好会の男女6人が救いを求めて現れる。かくして9人の若者たちは、閉ざされた雪のなかで推理ゲームなどをして過ごすことになった。だがそこで、本当の殺人事件が発生した。

 第28回メフィスト賞受賞作品。
 本サイトでも、パズラーの鬼(もちろん褒め言葉です)のnukkamさんを除いて誰もレビューしていないマイナー作品で、自分もこの作者の著作は以前から気にはなっていたが、このたび初めて手にとってみた。
 
 探偵役のヒロインJK「ヴィッキー」は、本名は不明(苗字は菊原だろうが)。この物語世界中の人気ファンタジーミステリシリーズの主人公の魔女探偵「ヴィクトリア・ウィッチスプーン」にあやかって「ヴィッキー」と自称して(周囲にそう呼ばせて)おり、すでに難事件も解決しているアマチュア名探偵らしい。

 さて、大仕掛けのひとつは自ずと見え見えだが、さらにその奥があるのであろうと思いながらページをめくったが……そう来たか!
 いかにもメフィスト賞らしい大ギミックで、ほとんど反則技ギリギリ、という気もするが、一方でとにもかくにもコレを最後まで貫徹した力業は評価したい。いやまあ振り返れば不自然な叙述、リアリティの希薄な描写は山ほどあるとは思うが、ウソは書いてないでしょう、たぶん。

 謎解きと同時のドラマの決着は賛否を呼びそうだが、これはこれで真相の解明と渾然一体になった終焉だということはよくわかる。だから文句には当たらない。まあ部分的な描写だけ取り出すと、いろいろ思うところもあるけれどね。
 ただまあ、この大技はある意味ではコロンブスの卵ではあったよなあ。個人的にはそれなり以上にホメておきたい。
 8点にかなり近い、という意味で、この評点で。

No.1 5点 nukkam
(2011/09/06 10:15登録)
(ネタバレなしです) 関田涙(1967年生まれ)が2003年に発表したデビュー作で、ファンタジー小説みたいなタイトルが印象的ですが内容は「読者への挑戦状」付きの王道的な本格派推理小説でした。文章について厳しい評価を受けているようですが(「読者への挑戦状」の中で自虐的に「中学生の作文みたいな文章」と言い訳しているのが可笑しい)語り口はスムースで、個人的には悪文とまでは思いません。ただ挑戦状を付けるからにはフェアな謎解きかどうかは気になるところで、あの仕掛けは(一応理由も用意してありますが)ちょっとアンフェアではという気もしました。とはいえ個人的には真っ向勝負の謎解きは大好きなので、全体としては満足しています。

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