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ミステリの祭典

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彼と彼女の衝撃の瞬間

作家 アリス・フィーニー
出版日2021年08月
平均点7.50点
書評数6人

No.6 9点 蟷螂の斧
(2024/11/20 15:23登録)
折原一、リチャード・ニーリィの両氏の大ファンとしては、たまらんサスペンス作品でした(笑)。「信頼できない語り手」と合間に挿入される「犯人の独白」。冒頭の「視点はふたつ、真実はひとつ。あなたはどちらを信じるのか?」に翻弄されてしまいました。また、過去の事件や、人物の繋がりを小出しにするテクニックや、妖しい(怪しい)女性警察官の絡ませ方など巧い。

No.5 7点 ことは
(2024/08/26 00:30登録)
作風は、暗く、不安定なトーンで、リチャード・ニーリィを思い出した。
序盤は、ふたりの別々の視点から事件が語られていき、これがなにか裏がありそうで、深読みを促すのだが、読み終わってみると、あまり深読みしなくてよかった。この作品は、流れにのっていっきに読むほうがよいと思う。
おおくの章の終わりにフックをかけ、「これはこういうこと?」、「あの人が?」と匂わせてくる。匂わせた内容が違ったり、合っていたり、なかなか予想を絞らせない。なかには(フリが全く無いので「気づけるかっ!」というものだが)かなり意外な展開もぶち込んでくる。しかも、中盤から後半にかけて、これがどんどん加速する。流れにのれれば、かなり楽しめると思う。私はかなり楽しめた。
読み終わってから振り返ると、偶然が過ぎるところや、辻褄があわないように思えるところがおおいので、すこし減点。
あとは、ある人物の過去エピソードがきつすぎるので(こんな経験があったらトラウマ)、その手のものがだめな人はやめたほうがよい。

No.4 7点 文生
(2022/10/31 02:25登録)
元夫婦のニュースキャスターと刑事が並行して殺人事件の謎を追う物語であり、サスペンス小説としてもそれなりに面白いのですが、本作がその真価を発揮するのは終盤です。どんでん返し・オブ・どんでん返しで話が二転三転四転五転倒し、ラストで意外な真相へと着地するさまはまるで新本格のよう。
本格好きな人にもおすすめの逸品です。

No.3 8点 HORNET
(2022/10/20 21:15登録)
 完全に作者の目論見にはまり、手玉に取られた一人です(笑)
 「彼(ジャック警部)」と「彼女(アナ)」の2人の視点から交互に描かれる物語の中で、2人ともそれぞれに秘密があり、「どっちかが最終的に真犯人なのか?」と思って読んでいたら、それ以外の登場人物もすべて腹に一物を抱えた人物ばかりで…。「信頼できるのは誰?」「結局、真犯人は?」という謎が最後まで引っ張られ、ページを繰る手が止まらなかった。
 誰も彼もが怪しく見える構成は、かえって「誰が真犯人でも意外ではない」ということにもなるため、「意外な犯人、どんでん返し」という印象はよい意味で消えてしまったが…

<ネタバレあり>
 唯一、キャサリン(キャット)の首吊り死体(のふり)で、「口の中にミサンガ」が入っていたことがあとの真相では説明がつかない気がするのだが。

No.2 7点 YMY
(2022/06/03 22:08登録)
舞台はロンドン近くの小さな町。殺人事件の真相を追う女性記者と男性刑事それぞれの視点からの語りに、殺人者と思われる人物の独白が挿入される。
二人の過去、この町での過去が徐々に明かされて、やがて予想外の展開を経て、皮肉で忘れがたい結末へと着地する。意外な展開に説得力を持たせつつ、巧妙な演出で読ませる。

No.1 7点 人並由真
(2022/01/05 04:52登録)
(ネタバレなし)
 ロンドンから車で2時間ほどの地方の町、ブラックダウン。その森の中で、まだ若い美人の殺害された死体が発見される。BBC放送のニュースキャスター、アナ・アンドルーズは、前任者キャット・ジョーンズの欠場を機に2年間もの間、人気の報道番組「ワンオクロック・ニュース」を受け持っていたが、その輝かしい実績はキャットの突然の復帰で無に帰してしまう。そんなアナは、ブラックダウンでの殺人事件の取材仕事を、上司の「ミスター・パーシバル」から命じられた。かたや現地では40代のベテラン刑事ジャック・ハーパーが、若手の女性刑事プリヤ・パテルとともに、美女殺人事件の捜査を開始する。

 2020年の英国作品。
 昨年の翻訳ミステリの中で、どうもなかなか評判がいいようなので、読んでみた。
 創元文庫の表紙の折り返しに登場人物の一覧がなく、ソコを読み手から隠すということで、これはある種の技巧的な作品かと予見させる。
 それで読み終えてみると(以下、ネタバレにならないように注意しながら書くが)、実際のところはソコまで(登場人物一覧を割愛するまで)しなくても良かったんじゃないかとも思えたね。
 まあ一部のキャラクターについては過剰なことを書き過ぎたら確かにマズイが、その辺は良い意味で曖昧にしながらフツーに人物表を作っても、やはり良い意味での詐術(嘘は書かない)で何とでもなりそうな。
 あと、二人の主人公の証言の食い違いがどうとかって、実際には特に筋立てに関係ないような……。

 本文は約450ページとやや厚めだが、ほぼ全編のストーリーをアナとジャック、それに謎の? 殺人者、その3人の視点を交錯させながら叙述。ハイテンポな筋立てのリーダビリティは最強で、数時間でいっきに読み終えてしまった。

 なお評者は、終盤、お、これは久々に真相を当てられたか? と強気になったが、最終的には……。ただまあ、結構なサプライズだとはたしかに思うものの、コレは色んな意味で(中略)。個人的には、昭和30~40年代にリリースされた某国産ミステリ作品を思い出した。正直、バカミスに一歩足を踏み込んでいる。でもキライじゃない(笑)。

 読後にAmazonのレビューで見かけた「読んでる間は面白かった」という一言が、一番ピッタリである。マーガレット・ミラーほどの文芸性も深みもないけれど、オモシロさだけなら割と張り合えるかも。
 この作家、少し注目してみよう。

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