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ミステリの祭典

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伽藍堂の殺人~Banach-Tarski Paradox~
堂シリーズ

作家 周木律
出版日2014年09月
平均点5.80点
書評数5人

No.5 5点 ミステリ初心者
(2025/04/27 00:21登録)
ネタバレをしています。また、シリーズ通してのネタバレもしてしまってるかもしれません。


 数学うんちくと、ダイナミックな仕掛けの館物クローズドサークルが魅力の本シリーズ。今回もすさまじく大掛かりな仕掛けが存在しました。大掛かりであればあるほどバカミスと呼ばれる宿命がある(気がする)ので、こういった作風のシリーズは貴重ですね。
 また、今回では非常に衝撃的などんでん返しも用意されていました。それ自体は良い事ですが、個人的には残念に思えた点もありました;

 今回は(今回も?)評価が難しいですw
 とても大掛かりな仕掛けがあり、その意味では満足なのですが、これって気づかないものなのでしょうかね? よく読むと、登場人物が気づかないように注意して書かれていることがわかりますが…。
 多重解決の偽の真相とはいえ、大きな空間の上下が逆になり墜落死する推理が披露されました。これって本当にこうなるのでしょうかね? 私は以前、これに近いトリックのミステリを読んだことがあり、その時にも思ったのですが、墜落死する前に手を離せば滑り台のように下に滑り降りることができると思うんですよね。かなり急な斜面になっても、死を免れると思うんです。なぜ垂直になるまでマイクスタンドにしがみつくのでしょうかね?

 この小説で最も評価できる点は、宮司百合子による真真相ですね。十和田の説の反証は論理的でよかったですw わたしは、唯一、大石の顔面の陥没は殴打によるもので、十和田の推理と合致しないということだけは気づきましたw あとはさっぱりです。

 総じて、数学うんちくやクローズドサークルによりとても読みやすく、またダイナミックな仕掛けが楽しめる推理小説でした。ただ、十和田を真犯人にしてしまった展開は、ただただ数学にしか興味のない純粋数学者から自分の欲のために人を殺す俗物になり下がったように私には思えます; モデルの放浪の数学者がかっこいいだけに残念です。

No.4 6点 E-BANKER
(2023/12/09 13:52登録)
「眼球堂」「双孔堂」「五覚堂」に続いて出された「堂シリーズ」の第四弾。
シリーズも方向性が見えて、そろそろ佳境に入るのではないかという雰囲気も漂ってきている。
さて、どうだろうか? 2014年発表。

~警視庁キャリアの宮司司は大学院の妹・百合子とともに宗教施設として使われた二つの館が佇む島・・・伽藍島を訪れる。島には数学史上最大の難問である「リーマン予想」の解法を求め、「超越者・善知鳥神、放浪の数学者・十和田只人も招待されていた。不吉な予感を覚える司をあざ笑うかのように講演会直後、招かれた数学者たちが姿を消し、死体となって発見される。だが、その死体は瞬間移動したとしか思われず・・・張り巡らされた謎が一点に収束を始めるシリーズの極点~

いやいや、これはなかなかたまげた!
そう言っていいレベルの大型物理トリック。
前作(「五覚堂」)の物理トリックも結構大掛かりなものだったことを考えると、こんなトリックを連発できるあたり、作者の只者ではない感が相当増してきている。
もちろんリアリテイは全くない。新興宗教の怪しげな教祖を登場させて話の雰囲気作りもしてはいるけど、日本海の真っただ中にこんな施設をつくったら、さすがに気づくだろ!っていうツッコミは封印しておく。

でもまあ、このメイントリックに尽きるよなあー
結構伏線はあった。特に「色」の問題。間違いなくヒントだろうという「扱い」だった。
それに「はやにえ」を模した二つの死体。圧倒的な力が加えられたとしか思えない・・・ってことはー
いやいや、読後もちょっと興奮している。
それでも評価がそれほど高くないのはなぜか? それはもう、トリック以外の魅力が少なすぎることに相違ない。
ラストでの百合子の驚くべき「推理」(いや、「指摘」だろうか?)。これは本シリーズを揺るがしかねないような「爆弾」か?
それでも、淡々と流れる物語は私の心の奥には響いてこなかった。(そもそも作者はそんなことを気にしてないのだろうが・・・)

蛇足ですが、本作のサブタイトルにもなっている「バナッハ・タルスキのパラドックス」。
数学の世界ではメジャーな定理?のようだが、コテコテの文系人間である私は初めて聞いた「ことば」だった。(ついでに「リーマン予想」も) でも、不思議だ!!

No.3 5点 nukkam
(2023/04/30 21:07登録)
(ネタバレなしです) 2014年発表の堂シリーズ第4作の本格派推理小説です。孤島ミステリーで登場人物は限られており、もちろんお約束の風変わりな建物も用意されています。謎の魅力はこれまでのシリーズ作品の中でも1番かと思うほどインパクトがあり、猟奇的な死体をグロテスクに描写していないのも好ましく思います。そしてスケールの大きいトリックが図解入りで説明されるのですがこれは賛否両論かもしれませんね。あまりにも非現実的にトリックを成立させていると感じる読者もいるでしょう(島田荘司の1990年代の某作品を連想しました)。しかしもっと読者を揺さぶるのはエピローグで披露されるとんでもない推理で、シリーズの今後はどうなってしまうのかと心配になるほどです。次作を購入させるためのプロモーション手段としては悪くないかもしれませんけど(笑)。

No.2 6点 makomako
(2019/01/27 11:27登録)
 堂シリーズも4作目となり、建物トリックはさらにスケールアップしたようです。私は堂の図面が示された時点で(今回は島の見取り図のようなものですが)何とかトリックを見つけようと考えるのですが、やっぱり分かりませんでした。謎解きをされる非常に壮大な仕掛けにびっくり。いつも作者がのべているように本当はこんなことはできそうもないと思われますが、理屈上はできないことはないということで、これはこれで良しとしたいですね。
 これもいつものお話の進め方なのですが、きちんと解決したと思っていたところで、ちょろっと最後のおまけがついていて、これがまたとんでもないどんでん返しとなっています。
 今回のどんでん返しは納得はするのですが、結論はこれでよいのかなあといった印象はぬぐえません。

No.1 7点 虫暮部
(2014/11/05 20:07登録)
 高まる期待に応えて、ちゃんと前作を上回る大仕掛けの変な建築物を提示してきたのは見事。もしかして既にトリックのネタは全て用意してあって、それを下から順に出してる?(それはそれで凄い)
 ただ4作目ともなると、被害者達がわざわざ殺されに集まっているような印象になってしまう。
 また、百合子の謎解きで“リモコンで十分”のあと、名前の言葉遊びで一足飛びに犯人を特定しているのはいただけない。
 
 あと冒頭部分で突っ込みたくなった。船酔いは船酔いの話をするとオエッと来るんだよ。

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