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ミステリの祭典

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ミステリ初心者さんの登録情報
平均点:6.20点 書評数:388件

プロフィール| 書評

No.188 7点 開かせていただき光栄です
皆川博子
(2019/10/19 17:48登録)
ネタバレをしています。

 前から気になっていたものの、読んでいなかった作品です。なぜかというと、解剖や1700年代のロンドンが舞台と聞くと読みづらいかもしれないと思っていたからです。しかし、まったくそんなことはありませんでした。解剖のシーンも登場人物の魅力のためか、まったく苦にならなかったです。ロンドンの描写も、まるでその時代に書かれた小説のように感じ、かつ翻訳物でよくある日本語の読みづらさもありません(その時代のロンドンに関しては無知なので、正しいかどうかは知りませんが(笑))。唯一読みづらかったのは、主観の一人であるネイサンが悲惨な目に合うシーンでした。

 ダニエルとその弟子たちの視点と、その少し前のネイサンの視点が交互に書かれているスタイルでした。ロンドンの治安が悪いこともあり、ネイサンが悲惨な目にあっています。ネイサンの主観はエヴァンスの家から抜け出し、エドとナイジェルに助けを求めて解剖教室に向かうところで終わっています。渡るロンドンは鬼ばかり!地獄!救う神なし!とおもいきや、最後にどんでん返しがあり、読後感が非常に良いものとなりました。

 推理小説的要素だけでなく、通常の小説としても楽しめる要素が多かったです。ロンドンの風俗の話、友情物語、ユーモラスなダニエルの弟子たち(アル・ベン・饒舌の人はもうちょっと登場しても良かった!)。私の買った文庫版には、解剖ソングが譜面付きで乗っていました(笑)。私に音楽の心得がないため、だれかうたってみた動画上げてほしいですね。

 以下、難癖ポイント。
・どんでん返しはすばらしかったですが、このトリックはよくあり、あまり驚きはありませんでした。時間と主観が違う人物を交互に書くと、やはり入れ替わりを疑います。そして墓荒らしで死体がよく手に入るとくれば・・・。しかし、全ての伏線を回収できたわけではありませんので、偉そうなことは書けませんが(笑)。某有名作品も同様のトリックでしたが、こちらの作品のほうがはるかに小説として優れていたため、加点しました。


No.187 6点 最初に探偵が死んだ
蒼井上鷹
(2019/10/12 06:30登録)
ネタバレをしています。

 タイトルに惹かれて買いました(笑)。
 非常に読みやすかったです。王道クローズドサークルものの流れを踏襲していて、テンポがいいです。かなりの人数が死ぬにもかかわらず、文も雰囲気が明るいです。
 タイトル通り探偵が最初に死ぬこと、死んだ人間が幽霊になって小説に居続けることがユニークです。
 真犯人やその狙いが意外でした。また、笛木の存在にも秘密があり、おどろきました。

 ただ、推理小説としては、読者に推理させるような類の謎に乏しかったです。主に動機探しが最も大きな謎で、どうやって殺したか・誰が殺したかを楽しめる作品ではありませんでした。
 幽霊の視点や探偵が死ぬこの作品特有の個性をもっと活かした、大きなトリックを期待していました。しかし、あまり個性的などんでん返しは無いように感じました。
 樹里が助かったことはよかったのですが、館の自家発電がとまったことによってG達もこの世に留まることができなくなると思うので、ちょっとさみしいエンドでした(居続けても問題ですが)。


No.186 6点 シェルター終末の殺人
三津田信三
(2019/09/28 02:24登録)
ネタバレをしています。

 この本を読む前に、海外作品を読んでいたのですが、あまりの読みづらさに三津田信三に浮気(笑)。さすが三津田さんの文は読み易い!終わりまで一瞬でした。
 核ミサイルが落ちてきて急いでシェルターに入ったという、かなり特殊な状況のクローズドサークルですが、読み進めると王道クローズドサークルの流れを踏襲しています。出られないという状況での連続殺人。最後に残った一人は犯人ではない・・・ならだれが?という感じです。
 殺人が多く起こりますが、密室が多いです。ほぼ全て物理トリックであり、私は好みではありませんが、案外楽しめました。密室であることの理由は良くわかりませんが、まああの結末なんでどうでもいいか(笑)。
 割と初期の段階でこの本が三津田による記述であることが明かされます(というかこのシリーズはメタミステリだが今回はノートパソコン持参)。記述に嘘があるパターンもありますが、今回は記述者がひそかに代わるといった驚き要素もありました(主観を曖昧に書いてごまかす系叙述と似てますね)。
 結末はかなり意外なものでした。それを構成させるために、結構無理をしていると思います。作中作にすることや、三津田が頭を打ったことなどでギリギリ成立しているような。しかし、仮面の探偵(これも三津田の妄想?)による指摘で、三津田が一人でないとおかしい点が伏線として残されており、その点は見事でした。星影に引き継がれた後、その最後の文はどうやって星影が書いたのか?という疑問以外はさっぱりわかりませんでした。

 以下不満点。
・ミステリやホラーの映像作品の衒学?が多めでした。何作品かはメモさせてももらいました(笑)。ただ、ちょっとだけしつこかったかもしれません。
・この結末に近いような作品は結構あると思います。近くは無いけれど、主観の精神が不確かなものは、夢落ちや記述に嘘がある系と同じような系統だと思います。つまり、オリジナリティーは感じませんでした。
・自分が犯人で無いことは自分でわかっているッ という文は作中作の時点で効力がないと思う。


No.185 6点 殺人方程式
綾辻行人
(2019/09/22 18:19登録)
ネタバレをしています。

 ずっと前に読了していて、当然書評を書いたつもりでいたのですが、いま見たところ書いていなかったようです(笑)。
 当時、綾辻さん=館シリーズ=○○トリックというイメージがあり、この作品を読んで驚いた記憶があります。また、主人公達のキャラクターが明るく、非常に読み易いのも良かったです。
 大掛かりなトリックですが、フェアに書かれていると思います。んなあほな的バカミス感は無いと思います。ただ私の好みは、このシリーズの次の作品ほうが好みではあります(笑)。


No.184 6点 いくさの底
古処誠二
(2019/09/16 17:31登録)
ネタバレをしています。

 戦争中のビルマの村という、やや特殊な環境が舞台のミステリです。しかし、本の中での説明が簡潔で読みやすく、難なく物語へ入っていくことができました。
 賀川少尉と村長(偽)が殺害され、村長の真の姿が明らかになるにつれて、犯人の動機が分からなくなります。村長は殺されるとき無警戒である→村長は華僑であり重慶軍とパイプがある→日本軍ではなく、村の人間が殺した可能性が高い→しかし賀川少尉はなぜ殺されるのか? と考えが堂々巡りします。最後まで読んだとき、犯人の意外な正体と動機に納得しました。
 犯人につけられた(と錯覚させた)あだ名"イシマツ"のミスリードが見事で、自然と賀川少尉がつけたものと勘違いしてしまいました。しかも、このイシマツは、犯人の正体を推測する伏線にもなっていました。

 以下難癖。
 登場人物の名前がフルネームでないので、なんとなく感情が入らない。このへんはあだ名関連があって難しいのかもしれませんが。
 犯人の賀川少尉に対する殺意を抱いたシーンが淡々としすぎている気がする。もうすこしドラマティックでもよかったかも(?)


No.183 6点 羊の秘
霞流一
(2019/09/14 01:17登録)
ネタバレをしています。

 キャラクターが明るく、始めはユーモアミステリかと思いました。しかし、ページが進むにつれて、過去の自殺者と現在の被害者の関連が明らかになるにつれて暗い出来事やオカルトのような感じが強くなりました。見立て殺人が3つ続きますが、羊に関連した呪術的なものであり、その説明の衒学?のページが多くやや読みづらかったです。

 本格推理小説としては、不可能犯罪2つと犯人当てがあり、満足しました。
 不可能犯罪はどちらもまったく当たりませんでした。足跡のない殺人は、図がほしかったし、偶然が強く絡み、犯人が意図しないものなのでいまいちでした。3番目の殺人は、死体の状況からピタゴラスイッチ的な要素があるとは思いましたが、自分には当てたれる気がしませんでした。
 犯人当ては、かなり細かく小さい出来事から当てているのでかなり難易度が高いように思いました。しかし、説得力があってよかったです。

 ラストはホラー?のような感じで終わりましたが、犯人断定の推理を覆すものでないので、邪魔にならないと思います。


No.182 8点 吸血の家
二階堂黎人
(2019/09/01 22:53登録)
ネタバレをしています。

 今まで、なぜか敬遠していた二階堂黎人作品で、今作が長編では初めてです。これほど濃厚な本格を書くとは知らず、これからはまりそうです(笑)。
 旧家の雰囲気(?)や、過去のおどろおどろしい怪談じみた伝説。その遺伝子を受け継ぐ人々。美しい姉妹…などなど、どこか横溝作品を思わせ、そのためか非常に読み易く、厚い本にも関わらずさほど時間がかからず読了しました。横溝作品の素晴らしい雰囲気に、さらに本格度を加えたような作品で、好みです。また注釈が丁寧で、ミステリに対する愛も感じました。この本にでてくるタイトルも何冊か気になりました。

 本作の謎も、不可能犯罪3連発という、豪華で魅力たっぷりな物となっています。
 井原殺しについて。実は、私が唯一当てる事のできたのがこれでした。私が当てられるということは、難易度が低いということですが、3つの事件中もっともフェアであることかもしれません(伏線もたくさんありましたしね)。私はこの謎が一番好みでした。
 瀧川殺しについて。時計を壊したのは、瀧川の時計が壊れていることを知らない人物ではないか?ということを思った以外、あとのことはさっぱり(笑)。様々なミスリードによって、自然と犯行時間がずらされているのが見事でした。結末は犯人以外に協力者がいて、犯人を庇っていたというものですが、まあ笛子一人でもできないことはないし(?)、物語の色どりを加えるという点でありでした。
 大権寺殺しについて。これもさっぱりわかりませんでした。凍ったテニスコートに足跡がつかない具合や、石灰?をまいた具合がよくわからず、いまいちな印象を持ちました。注釈で説明はありますが、私は警部とおなじ"石灰をまいたら目立つんじゃ?"とか思ってしまいました(笑)。

 以下不満点。
 不可能犯罪ものにはつきものですが、やはり協力者の存在は不満です。井原殺しの真相や、話の流れ的に笛子がイト子と親子なのは察したし、何かしらやっているとは思いましたが、協力者がいるとやはり難易度が跳ね上がりますね(笑)。しかし、それを示唆するような伏線を残してあるのが流石です。
 瀧川殺しの死体放置は大胆であっぱれですが、犯人にとって危ない橋を渡りすぎなのでは…?
 過去の名作のネタバレはやめてほしです(笑)。


No.181 6点 鬼面村の殺人
折原一
(2019/08/19 20:58登録)
ネタバレをしています。

 とても明るいキャラクターたちが、非常に読みやすい作品でした。主人公の黒星警部、相方の虹子は魅力的でした。
 メインのトリックは、建物が消失するという大掛かりなもの。あとは小粒目の密室が2つ。大がかりなものだと、やはり大人数で行わなくてはならず、馬鹿ミスの香りが漂います(笑)。黒星と虹子の主観が入れ替わり、読んでいると別々の位置にいることをわかりにくくさせるミスリードが良かったです。

 以下、不満点。
 別作品のネタバレはやめてほしいです。ビニールハウスの密室は私の盲点で、はっとさせられましたが、これも前例があるんですね(笑)。

 黒星警部が気に入ったので、いつかまたこのシリーズを読みたいと思います。


No.180 7点 仮面舞踏会 伊集院大介の帰還
栗本薫
(2019/08/12 01:54登録)
ネタバレをしています。

 私はチャットについての知識がありません、そのため、序盤は読むのに苦労しました(笑)。しかし、中盤からは一気に惹きこまれ、すいすいページが進みました。
 これまでに読んだことのないジャンルであり、本格推理小説としてではなく、純粋な小説としても楽しめました。
 中盤にある、「男性が作ったの理想の女性キャラクター」やその逆の話がありましたが、これはとてもよく共感します(笑)。漫画やアニメだけでなく、推理小説の女性探偵とか当てはまる部分が多いともいます(笑)。

 以下、不満点。
 犯人のだいたいの正体、姫野が怪しいということはすぐに気づきました。しかし、犯人が精神病?をわずらっていて行動に予想しづらいことと、犯人が姫野の意図しない行動をしてしまっているため、犯人当てやアリバイトリックという楽しさはありませんでした。事件は、すべて犯人の思い通りにいく小説のほうが好みです。
 やや後味の悪いラストでした。姫野になにも罰が与えられていないのが不満です。


No.179 5点 白い僧院の殺人
カーター・ディクスン
(2019/07/30 21:24登録)
 ネタバレをしています。

 かなり昔、創元推理文庫のやつを購入していました。しかし、そのときは訳の文章の合わなさと、文字の小ささや印刷の汚さのため、一度読むのを挫折しております。このあいだ読んだ新訳版の"緑カプセルの謎"や"ユダの窓"などは非常に読みやすかったので、新訳版の"白い僧院の殺人"を再購入(笑)。しかし、よく理由はわかりませんが、これもちょっと読みづらさを感じてしまいました。館の見取り図ぐらいはほしかったなぁと思いました。

 今作は、ミステリ初心者の私でも3~4作品はみたことのある"雪の密室"。犯人はどうやって足跡を残さずに現場を去ったのか…という問題は、ちょっと考えただけでもわくわくします。しかし、実は雪の密室に良い思い出がありません(笑)。雪の密室ものには犯人に有利な偶然や協力者が多すぎる印象があります(そもそも雪が降ること自体が偶然だし)。今作もそんな感じです。この作者の作品は、素晴らしいアイディアとそれを成立させるための強引な要素が混じっている印象ですが、今回は強引さが勝っていると思います。


No.178 6点 ○○○○○○○○殺人事件
早坂吝
(2019/07/20 00:34登録)
ネタバレをしています。

 非常に読み易く、読み始めてから2日で読了しました。
 南国モードには笑いました(笑)。みんなに認知されているのもウケる。ただ、これも微妙に伏線だったんですね(?)。
 包茎だの剥けているだの、六とんを思い出すワードがでて、メフィスト臭がするな~と思ったら、本当にメフィストだったんですね(笑)。らいちとのチョメチョメシーンも読んでいるときには"ここいらないだろ"と思ってましたが、結局推理に絡んでおり、雰囲気はギャグ調でも案外無駄がない印象でした。登場人物がヌードだということを隠した叙述トリックのひとつだと思いますが、そのメイントリックと物語全体がマッチしててよかったです。
 "挿話 井の中の蛙"で、まるで挑発のような文章がかかれていて腹が立ちますが(笑)、仮面=入れ替わりという鉄板ネタをミステリオタクの沖が気づかないはずがないというヒントが与えられていて良いですね。まあそれでも、叙述トリックと挑戦状は相性が悪いと思います(笑)。
 ビッチ探偵は非常に新しいですね(笑)。いま作者の作品ページをのぞいてみると、シリーズ化されていますね。この作品のレベルなら他も読んでみたいです。

 以下、難癖。
 仮面入れ替わり系は、知人ではバレると思います・・・。顔以外の要素が多いですよね。体の見た目や声や体臭、雰囲気や動作とかやはり仮面つけただけでは難しいのでは(似ているという描写はありますが)。包茎問題も、剥けば同じってわけでもないだろうし・・・。
 タイトル当てであって、犯人当てでないとのことですが、純粋論理思考で犯人を当てられると書いてあります。到底そうは思えないのですが。らいちの"ナニやアレにアイスピックを入れる"説も主観が否定したわけではなく、解決編後で明かされた要素。ヌーディストでなくても話が通用するように、どっちとも取れるように書かれているのが叙述トリックであって読者には判断が付かないと思います(偉そうに書きましたが、もしかしたら読み落としているかも・・・ヒントはあったと思いますが絶対に裸でないと通用しないシーンはないかと)

 いろいろ書きましたが、良い叙述トリックのアイディアとそれを活かした良作品だと思います。


No.177 6点 黒い白鳥
鮎川哲也
(2019/07/18 02:35登録)
ネタバレをしています。

 犯人の緻密な計画や、アクシデントを利用しそれを計画に組み込む機転に感服しました。また、私が今までに読んだ鮎川作品よりも今作のほうがより犯人について細かく書かれており、小説としての厚みを感じました。

 しかしながら、鬼貫警部が登場するまで、個人的に好みではない展開でした。そのため、なかなかページが進みまず、読みづらさを感じました。社長の死~動機探し~犯人候補のアリバイ検証→候補から外れるという繰り返しは苦手です(笑)。労働組合と会社側の対立、宗教団体との対立も面白さは感しませんでした(宗教団体のほうは、非常に怖かったです)。
 さらに、犯人にやや都合が良い証言者や、予期せぬ偶然の要素はどちらも好みではなく、その点では期待はずれでした。


No.176 5点 高原のフーダニット
有栖川有栖
(2019/07/09 19:07登録)
ネタバレをしています。

 短編2つ、ショートショート1つが収録されていました。

・オノゴロ島のラプソティ
 作中のアリスの"叙述トリック"への思い(?)が面白かったです。メイントリックはまったく見当もつきませんでした。三毛猫ホームズはヒントなのか(笑)。主観のアリスも読者も同時に驚き、なおかつ文に嘘は書かれていません。がメイントリックが若干のバカミス的?な大掛かりなものでした。

・ミステリ夢十夜
 夢の国の人形の中に入っていてアリバイが言えない容疑者や、迷路すぎる館がおもしろかったです。味覚障害者のあつまる毒殺は、なにやら長編に使っても面白そうな話でした。第六夜は、私のパープリンな脳ではいまいち理解できませんでした。

・高原のフーダニット
 殺しあった双子のうち、どちらがどちらか見分けられたものが犯人ということはわかったのですが、バードウォッチングの機材の性能やどの程度遠くをみられるのか(雨上がりなら湿度が高くあまり遠くまで見られないのでは?)が想像できませんでした。フーダニットは好きですが、この作品はいまいち。
 ※今調べたら、雨上がりのほうが良く見えるらしいです(笑)。失礼しました。


No.175 7点 首無館の殺人
月原渉
(2019/06/28 19:17登録)
ネタバレをしています。

 昔ながらの、コッテコテの推理小説要素満載で、満足しました(笑)。孤島、記憶喪失の主人公、首無し死体、空飛ぶ首の怪奇、謎の幽閉された人…最高ですね…。これだけの要素を詰め込んだにもかかわらず、どれもしつこくなく、非常にテンポ良く読めました。横溝作品のような雰囲気がありましたがどうでしょう。
 首無し死体というと、その死体と犯人が入れ替わっていて、死んだとみられた人が犯人…という展開はよくありますが、この作品はそれを逆手に取り(?)、さらにその前に全員入れ替わっているという構成が面白かったです。
 私は、空飛ぶ首の怪奇の正体がなんとな~く予想できたので、大体の展開は読めました。ただ、フーダニットや、アリバイトリックと楽しむ類の作品ではないので、当てたことよりかはそれが好きかどうかだと思いますが。

 好みで無い点をあえて挙げるとすれば、この作品ならではの強い個性はなかったように思えます。昔ながらの展開は大好物なのですが、それにプラス大トリックの個性が加われば8~9点でした(笑)。
 今見たら、シリーズものなのですね! シズカさん探偵物の

 ※追記 他の方も書かれていますが、絶対館図がほしいですよね(笑)。 無いから、用意できないトリックがあるのかと思いましたが、あっても困りませんよね?


No.174 7点 緑のカプセルの謎
ジョン・ディクスン・カー
(2019/06/24 21:10登録)
ネタバレをしています。

 新訳版を買いました。中学生ぐらいの時分、訳の古いカー作品を読むのを断念した記憶があります。しかし、最近は読みやすい日本語に訳された新訳版が発売されていて、非常に助かります!

 消える犯人、録画したビデオと食い違う証言…という魅力たっぷりな謎があり、この作者特有の安定して面白い不可能犯罪を楽しむことができ、満足しました。

 このトリックと、マーカスによる観察力を試す実験を絡めたところが、この作者の頭のいいところですね! 犯人以外の人間が、無意識に犯人に協力してしまっているのですが、それをほのめかすヒントがちりばめられており、好感が持てました(というか、ヒント過剰気味であり、普段さっぱり当てが外れる私でさえ察してしまうほど)。

 最後はハッピーエンド?で読後感がよかったです。こういうパターン多い気がしますね(笑)。

 この本を購入したときについていた帯のあおり文には、"毒殺ミステリの最高峰"ということが書いてあったのですが、毒殺ミステリっぽくなくてびっくりしました(笑) たしかに毒殺ではあるんですが…。なんか毒殺というと、いかにして特定の人物だけに毒をもることができたのか~みたいなものだと思っていたので。

 好みでない点を挙げるとすれば、フェル博士の紛らわしい発言と、後半の銃暴発事故です。いらないと思いました(笑)。


No.173 6点 本格推理①新しい挑戦者たち
アンソロジー(国内編集者)
(2019/06/19 00:02登録)
ネタバレをしています。

 柳之介の推理:密室講義的なものがあったにしてはいまいち。
 鳥:マジシャンで嫌な予感がしたが、当たってしまった。絶対成功するかわからないが面白かった。
 藤田先生と人間消失:実際にやるとバレる気もするが、面白かった。他作品も読みたい。
 信州推理紀行:ちょっとバレバレだった。
 愛と殺意の山形新幹線:あまり印象に残らなかった。
 砧未発表の事件:叙述トリック?のような書かれ方をしているので、話が前後しているのはすぐにわかった。どうやって死体を運んだのかが面白かった。
 仮面の遺書:この手のミステリは初めて。登場人物が少ないので、ラストが読めたが、短編なのでしょうがない。
 静かな夜:やっぱり、多すぎる共犯者は好みではない。
 氷点下7度Cのブリザード:倒叙形式。この本でベストだった。アリバイトリックとしても面白かったが、どこをミスしたのかも面白かった。料金所・被害者の死因・被害者の死ぬ直前の抵抗、全て予想外だった(笑)。
 桑港の幻:最後に大きな驚きがあった。
 牙を持つ霧:ドライアイスしかわからなかった;; 偶然が強く好みではなかった。
 赤死荘の殺人:鮎川氏の言う通り、カー先生の短編を翻訳したといっても通用しそう。1ページ目から伏線があって面白かった。殺人ではなかったけど・・・


No.172 6点 黒白の囮
高木彬光
(2019/06/15 01:17登録)
ネタバレをしています。

 男女関係・会社内の権力争いから動機を探す物語の序盤が好みの展開ではなかったため、やや読みづらかったです。しかし、捜査する側が主観の小説にありがちな仮説→新事実による否定の連続する展開がミスリードになっており(私だけそう思っているだけかもしれないが)、犯人が警察をだましたように読者もだまされます。タイトルの"囮"もいいですね。

 自分は、犯行現場で目撃された友子のブルーバードが怪しかったので、まず島岡を疑いました(犯人の偽装としても、確実に目撃者がいないと無意味)。その車は、老人の証言が曖昧なせいもあって解釈が微妙だったのですが、老人が実際見たとすると2台あることになります。さらに、島岡にはアリバイがあったので、友子と共犯を予想しました。しかし、前に"一度わざと疑われておいて裁判で無罪を勝ち取る"という行動をどった犯人の小説を読んだ事があったため、友子犯人説をふわっと思いつきました。なので、当てたとは言えません。

 物語の構成もトリックも面白かったのですが、沢本が犯人のおもう通りに動いてくれるかはちょっと疑問。あと、共犯は好みではありませんでした。

 新装版のため、短編が2つ付いていました。殺意の審判の、胃に残った寿司の話は非常に面白かったです。


No.171 5点 魔術の殺人
アガサ・クリスティー
(2019/06/08 15:50登録)
ネタバレをしています。

 少々、読むのに苦労しました(笑)。登場人物の名前がカタカナなのは、いまいち記憶しづらいんですよね。さらに、頭の中で家系図が想像しづらかったです。
 事件が起こったシーンでは、読んだ瞬間嫌な予感がしたんですが、あたってしまいました(笑)。メイントリックはちょっと物足りないと感じますが、アガサ・クリスティーというビッグネームのせいでハードルが上がってしまった感じもあるかもわかりません。
 この作品に限ったことではありませんが、犯人と共犯者以外にもアリバイが無さそうな人物もいました。また、犯人に物的証拠もなさそう(私が理解していないだけならごめんなさい)。


No.170 4点 黄金色の祈り
西澤保彦
(2019/06/01 06:23登録)
ネタバレをしています。

 ちょっと好みではない作品でした(笑)。
 主人公の半生が書かれていますが、少々嫌な奴で、興味を持てませんでした… ここいる??っていうページも多かったです。教子さんにしても、何がしたかったのかよくわからず…(性格のいい奴しかみとめないというわけではありません)。
 自分は、音楽の知識がまるでなく、楽器の名称が出るたびにyoutubeで見てみました。が、意味がなかったような気もしました(笑)

 推理小説としてみた場合も、あまり好みではありません。読み始めから、"僕"の主観がなにか隠しているが、文として嘘を書いていないような、叙述特有の臭いがぷんぷんしていました。さらに、そういう類の小説にありがちな、"部分的な要素は隠してはいるが、主観(犯人)自身も事件の全体像を把握していない"や"偶然が絡む"のはパターンとしてよく見るし、マンネリしています。最初に"僕"が盗んだアルトサキソフォン?の事柄ははっきりとは書かず、"僕"のトランペット盗難は犯人以外の仕業、殺人は偶然(ほぼ事故死)と、私が好みではない要素がてんこ盛りでした。似た作品を見たことがありますが、そちらのほうがハイレベルだったことも、この小説がイマイチに感じてしまう一因かもしれません。

 もしかしたら、私の頭がパープリンのせいで、この小説特有の大トリックを見逃していたら大変申し訳ありません。


No.169 6点 孤島の鬼
江戸川乱歩
(2019/05/30 20:54登録)
ネタバレをしています。

 いろいろな要素が入った力作だと思いました。純粋な推理小説ではないため、評価点をつけるのが難しいです。
 最初の展開は、本格色の強いミステリ。密室殺人や、逆に大衆がいる中での殺人など不可能犯罪系です。私の日本家屋?に対する知識が浅かったためか、すべてはわかりませんでしたが、まあ大体のところは予想できました。しかし、推理小説としての出来は微妙かとおもいます(笑)。
 中盤からホラーになっていき、スリリングな冒険があり、最後には意外(?)にもハッピーエンドで、一気に読んでしまいました。ある意味今では販売できなような内容でしたね。唯一、道雄だけはかわいそうな最後でした。

 以下は好みの話です。
 一冊の小説としてはそれほど不満はないですが、読者の思考の裏を突く要素や、意味深な伏線とその回収、ミスリードなどがあればもっと好みの作品でした。殺人前に現れていた老怪人について、いろいろ妄想したのですが、いまいち拍子抜けしました。
 深山木があっさり死亡したんですが、花瓶の謎に気づいておきながらなぜ子供に警戒しなかったんでしょうかね? それとも、それ自体には気づいていなかったんでしょうか?

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