home

ミステリの祭典

login
殺意は必ず三度ある
鯉ヶ窪学園探偵部シリーズ

作家 東川篤哉
出版日2006年05月
平均点6.69点
書評数13人

No.13 6点 ミステリ初心者
(2020/01/16 21:12登録)
ネタバレをしています。

 本棚を整理していたら、この本が出てきました。実は発売日近くに買った…ような気がします。当時、自分の中で東川篤哉ブームがあり、新作がでたら買うような感じでした。なぜかこの本の中盤あたりでブームが去り、今の今まで本棚の奥に眠っていました(笑)。

 この作者の文章は非常に読みやすく、字を読むというより漫画を読む感覚で読めます。今作もすぐに読了しました。
 野球がテーマのミステリです。野球場で殺人がおこっていたり、野球の見立てがあったりします。ところどころに野球のネタがあったりします、私は野球に関してはほぼ無知なのですが、ギリギリでついていける程度のネタなので、あまり知らない方でも読めると思います。

 ミステリ部分もなかなか楽しめました。
 第一の野球場での殺人が、この本での最も大きい謎です。私は、野球場に芝生がないことと、事前にベースが盗まれていることからなんとなく真相に近いもに気づきました。大がかりであり、やや現実離れしたトリックで、しかも共犯ありなのですが、楽しめました。
 また、ミスリードに叙述トリックが使われており、味付け程度ながら読者の裏をかく要素もあってよかったです。

 以下、好みで無い部分。
・このトリックには、1塁側と3塁側の目撃者が必要ですが、やぱり私は共犯は好みではありません(笑)。
・2人目と3人目(未遂)の殺人はいらなかったかもしれません。また、途中で犯人が入れ替わるのを隠すための見立てはたびたび登場するため、あまり意外性はありませんでした。

No.12 6点 メルカトル
(2019/05/13 22:25登録)
連戦連敗の鯉ヶ窪学園野球部のグラウンドからベースが盗まれた。われらが探偵部にも相談が持ち込まれるが、あえなく未解決に。その一週間後。ライバル校との対抗戦の最中に、野球部監督の死体がバックスクリーンで発見された!傍らにはなぜか盗まれたベースが…。探偵部の面々がしょーもない推理で事件を混迷させる中、最後に明らかになる驚愕のトリックとは?
『BOOK』データベースより。

殺人事件が起こるまでは非常にユーモアに富んだ文章で笑わせてもらいました。それ以降は、まあ普通の本格ミステリの範疇に収まると思いますが、全体的に緩い展開で緊張感はあまり感じられません。
問題のメイントリックに関しては、色んな意味で無理がありそうです。その奇想は認めざる得ませんが、現実味が薄いと個人的には言うしかありません。下手をするとバカミスになりそうなのですが、盲点を突いているのは確かです。しかし、わざわざ危険を冒してまでそんな面倒なことをするかという疑問は残ります。そりゃあフィクションだから、ミステリだから別にいいじゃん、みたいな意見は否定しませんけど。

一方、見立て殺人の理由は概ね納得の行くものであり、こちらはなるほどと思いました。
決して派手な作品ではありませんが、野球好きの方はさらに楽しめるでしょうし、そうでなくても老若男女誰でも気軽に手に取ることのできる好編ではないかと。肩が凝らなくて笑えるのがいいですね。

No.11 9点 mediocrity
(2019/03/25 00:03登録)
探偵部の「馬鹿トリオ」(作者の命名)が主人公のシリーズ第2弾。前回はやたらと野球ネタが随所に挿入される密室物でしたが、今回は野球そのものがミステリになってしまいました。
相変わらず、いや前作以上の緩さとギャグ満載で進みますが、第5章に入ると突然本格推理の世界に早変わり。油断していた所に突然大きなトリックがガツンと来たのでそれは驚きました。
後から考えると、球場の外野が芝生でないとか、必要最小限の設備しかないとかの細かい描写も伏線として機能しており、細部の配慮も抜群です。2つ目、3つ目の事件があまり面白くないという欠点はありますが、全体としてみれば非常によくできた作品だと思いました。
ただし野球のルールが一通りわかるくらいの予備知識は必要ですので、野球に全く興味のない人にはお薦めできません。というか、ギャグも野球がらみネタが多いので、とことん楽しめるのは野球好きだけのような気がします。
東川さんは他のシリーズが大売れしてしまったらしく、このシリーズの長編はこれを最後に出ていないとのことで残念。このトリオ大好きなので採点は甘いです。

No.10 8点 青い車
(2016/06/24 19:40登録)
 冒頭、鯉ヶ窪学園野球部の弱小っぷりを説明する文から噴き出してしまいました。ユーモアとして見てもミステリーとして見ても、かなり冴えていると思います。
 発端となるホームベース盗難事件という極めて小規模な犯罪が、実は本筋の事件に不可欠な要素となっていることが初読時には驚きでした。叙述のテクニックと視覚的な錯覚を与えるトリックを組み合わせ、新鮮な事件と謎を生み出すことに成功しています。そして、見立て殺人は数あれど、「野球見立て」というのもありそうでなかった新鮮な題材です。総じて見て、様々なアイディアが詰め込まれ、かつギャグも邪魔にならない程度に楽しめる快作。

No.9 7点 505
(2015/10/30 20:47登録)
野球尽くしの本書の肝は、〝野球見立て殺人〟という連続殺人事件。
東川篤哉らしいギャグを交えつつ、本格ミステリをしている本書のトリックは非常に良く出来ている。バックスクリーン殺人に関するトリックは秀逸である。密室状況かつ監視下に置かれた不可能状況を絡ませたトリックは大技的。
フーダニットの部分は、トリックの性質上弱いのは否めないが、不可能状況を可能にさせる荒業は痛快の極み。
また、本書の見所としてある〝野球見立て殺人〟は見立ての『意味』は良く出来ている以上に見立てた『理由』が実に技巧的。その〝見立て〟を支えているベースの使い方は徹底的であり、1つの用途で終わらせず、更なる意味合いを含ませる使い回し方が憎らしい。トリック自体に何重の理由を絡ませることで、〝単発で終わらず〟にオリジナルティの強いトリックになっている。
ユニークに溢れた本格ミステリである。

No.8 4点 E-BANKER
(2014/11/22 17:13登録)
「学ばない探偵たちの学園」に続く、鯉ヶ窪学園探偵部シリーズの第二弾。
今回も探偵部の三馬鹿トリオ(?)が大活躍を見せる、作者ならではの本格ミステリー。
2006年発表ということで、プロ野球に纏わる話もやや古め・・・

~連戦連敗の鯉ヶ窪学園野球部のグラウンドからベースが盗まれた。我らが探偵部にも相談が持ち込まれるが、あえなく未解決に。その一週間後、ライバル校との練習試合の最中に、野球部監督の死体がバックスクリーンで発見された! 傍らにはなぜか盗まれたベースが・・・。探偵部の面々がしよーもない推理で事件を混迷させるなか、最後に明らかになる驚愕のトリックとは?~

何とも緩~い本格ミステリー。
まずまずの分量の長編だけど、煎じ詰めればたった一つの大型トリックに行き着く。
要はそれだけなのだ。

このトリックをいかに有効に使い、ミステリーファンに納得感を持たせるか・・・
見立てやら、寒い(?)ギャグやらを散りばめながら、読者を引きずり込んでいく。
この辺りは作者の得意技。

でもねぇ・・・こんな手の込んだトリックわざわざやります? っていうのは野暮なのだろうか。
こういう作風だし、それが嫌なら読まなきゃいいだけだけど、もう少しプロットに拘ってもいいんじゃないかという気にはなった。

これで作者の既読作品は十二作目になったけど、結局一番良かったのはデビュー作(「密室の鍵貸します」)だなぁ・・・
今のままでは長編を次々発表していくのは危険。
(クオリティはどんどん落ちていくだろう)
トリックのアイデア自体は良いのだから、むしろ短編の方が安心して読めるのかもしれない。

No.7 7点 いいちこ
(2014/10/03 20:53登録)
まずベース盗難事件という冒頭の掴みが強烈。
第一の犯行は局面が限定され過ぎていてほぼハウダニットと化している中、秀逸なトリックで切り抜けた。
加えて見立てを活かしたベースの処理が抜群。
完成度にはやや難があるものの、鮮やかなインパクトを残す佳作。

No.6 5点 蟷螂の斧
(2014/02/19 13:04登録)
(ネタバレあり)                      アリバイトリックのある動作は秀逸です。しかし、好みでない点が1つあり、残念ながらこの評価。ユーモア(ギャグ)については、天藤真氏を読んだ後なので、比較してしまい、ほとんど笑えませんでした。大人?のユーモアと高校生のギャグを比較してはいけませんが・・・(苦笑)。見立て殺人、アリバイトリックは高評価です。

No.5 8点 makomako
(2014/01/10 20:51登録)
 このシリーズは作者が代表作というだけあってユーモアもミステリーも出来がよい。
 物語のはじめは抱腹絶倒といってよい面白さで、何度も声を出して笑ってしまった。電車の中などで読むと変な人と勘違いされそうなので一人で読んだほうがよいかも。
 途中から本格推理小説となりこれも実にきちんと書かれている。トリックも大胆で周到と思います。個人的には作者がブレークしたディナーシリーズよりずっとよい出来だと思います。

以下多少ネタバレ。
 減点はご主人が亡くなったのにえらく冷静で悲しみなどほとんどみせずに謎を解いていく車椅子の婦人。悪くかかれてはいないのですが実際の行動としてはとても冷たく違和感を感じたところです。

No.4 8点 アイス・コーヒー
(2013/10/25 13:34登録)
鯉ヶ窪学園野球部のベースが盗まれた。犯人の目的の見当もつかない事件を探偵部の三人組、部長の多摩川と謎の関西人・八橋、語り手の赤坂は捜査するが、後に鯉ヶ窪対飛龍館の試合が行われた飛龍館の野球場で死体が発見される。探偵部シリーズ第二弾。
密室ものだった前作に対し、今回は設定も細かく全体のクオリティも上がっている。詳しく書くとネタバレになってしまうが、自分は巧みな伏線でミスリードしてしまい、後半の展開には理解が追い付かなかった。さらには野球場を舞台にした大技トリックが仕掛けられ唖然というより納得。「そして誰もいなくなった」を代表とする見立て殺人がここまで進化できるとは…。探偵部の滑稽のところも、また楽しい。

No.3 6点 まさむね
(2011/01/18 22:56登録)
基本構成としては,完全に「本格モノ」に該当するでしょう。
トリックもなかなか面白かったですね。
で,その表現手法(ギャク満載。シリアス感ゼロ。)については,人それぞれ好き嫌いがあるでしょうが,私は大いに支持します!

No.2 7点 isurrender
(2010/10/06 00:11登録)
あのギャグのセンスは人によって好き嫌いが分かれると思うが、残念ながら自分には大分ハマってしまった(笑

殺人そのもののトリックも良作だし、ネタバレになるが、予想外のトリックもあったりして、なかなか楽しめた作品

No.1 6点 江守森江
(2009/05/24 03:37登録)
主人公達は猿回しの猿で事件を解決するのは別人。
同世代にしか通用しないギャグを学生物で連発する作者に拍手。
ミステリとしても本格してる。

13レコード表示中です 書評