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ミステリの祭典

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水の迷宮

作家 石持浅海
出版日2004年10月
平均点5.70点
書評数10人

No.10 7点 パメル
(2023/09/21 19:38登録)
三年前、水族館を良くしようと尽力していた片山が死亡してから、職員は力を合わせて水族館の発展に努力してきた。その片山の命日に水族館で事件は起こる。館長あてのもとに携帯電話が送られて、その携帯電話に次々と送られてくるメール。メールの内容は、水槽に何らかの危害を加えることを告げ、さらに金銭の要求もしてきた。死んだ片山の繋がりをにおわせる犯行に、職員の中に犯人がいるのではという疑心暗鬼に陥る。その状況下で、職員の一人が死体で発見される。
次々と水槽にいたずらを仕掛け、さらに観客に危害を加えることまで暗示する犯人の要求により、警察は物理的に介入できるが、そうすると問題が生じるという設定で自然とクローズド・サークルが成立している。
犯人の巧妙な仕掛けや、細かい手掛かりの配置、犯人確定の消去法の緻密さなどミステリとして優れている。キャラクターもそれぞれ水族館を支えようとするスタッフの思いがよく描かれ、そうした人たちの想いが事件と深くかかわっているため、推理の面白さが増している。また、この水族館という舞台で事件を起こさねばならなかったという必然性を十分に備えているし、ラストは深い余韻を残す。結末に賛否両論のようだが、個人的には大満足。
ミステリ小説でありながら、水族館の経営にも多くの工夫やアイデア、大胆な発想が不可欠ということが伝わってくる。イルカショーをはじめ、施設やイベントの運営についても知ることができ、この作品を読んで水族館に行けば、きっと新しい世界を垣間見ることが出来るだろう。

No.9 6点 ミステリ初心者
(2020/05/02 01:02登録)
ネタバレをしています。

 水族館のなかで始まり、そのまま水族館の中で終わります。やや特殊な状況での事件です。
 序盤は水族館の説明や、登場人物の説明があり、すこしだけ読みづらい感じがありましたが、電話での脅迫が始まってからはテンポが良かったです。
 胸を打つ感動…というほどでもないのですが、読後感は非常に良いものでした。タンカーを丸々水族館化し、地球を再現するアイディアは、私も見てみたいと思いました。

 推理小説としても、論理的に真相を予想できるようなヒントがちりばめられており、なかなか面白かったです。大島殺害の際に処理をしなくてはならなくなったボラから犯人を推測するところが一番よかったです。

 ガチガチの本格推理小説としてみた場合は少々軽い印象もありますが、広義でのミステリーとしては質が高かったです。

No.8 5点 ayulifeman
(2013/08/18 20:08登録)
結局の落としどころのこの大円団はどうなんだい?と。
心情的な部分が置き去りかなあと。
ただ嫌いかって言われると嫌いじゃない。

No.7 7点 yoneppi
(2011/09/22 21:44登録)
水族館好きなのでプラス1点だが楽しめた。本格ミステリとしてパズルに拘るより、もっと違う表現でもよかったんじゃないかと思えるくらい。

No.6 6点 E-BANKER
(2011/07/20 21:40登録)
「アイルランドの薔薇」「月の扉」に続く第3長編。
氏の作品らしく、特殊設定下での脅迫&殺人事件がテーマ。
~3年前に不慮の死を遂げた水族館職員の命日にその事件は起きた。羽田国際環境水族館に届いた1通のメールは、展示生物への攻撃を予言するものだった。姿なき犯人の狙いは何か。そして、自衛策を講じる職員たちの努力を嘲笑うかのように殺人事件が起きた。すべての謎が解き明かされたとき、胸打つ感動が読者を襲う!~

氏の初期作品らしくて、好感の持てる作品というのが読後の感想。
確かに「甘い」かもしれませんし、ラストはあまりにも「作りもの」っぽさが目立ち、安手のドラマを見ているような感覚にはさせられますが・・・
ただ、前2作や他の作品でも感じたことですが、日常の世界ではあまり知ることのできない、こういう特殊設定を持ってこられ、登場人物たちの会話や心の動きを見せられながら、ついつい作者の「手練手管」に引っ掛かっているような気にさせられるのも事実。
今回の「水族館」という舞台もなかなかよく練られていると思います。(薀蓄も楽しい)
まぁ、プロローグからして伏線があからさまなので、事件全体の構図がやや分かりやすいのと、殺人の動機が相当弱いとういか理解不能に近いのが割引ですかねぇー
トータルで見れば、十分楽しめる作品だとは思いますし、水準級+αといったところでしょう。
(実際、片山の「夢」は実現可能なのでしょうか? 実現したらかなりスゴイことになるでしょうけど・・・)

No.5 6点 nukkam
(2010/09/10 10:26登録)
(ネタバレなしです) 水族館に何者から脅迫じみたメールが届き、水槽に悪質な悪戯が仕掛けられ、ついには殺人事件が起きてしまう2004年発表の本格派推理小説です。光文社文庫版の(辻真先による)巻末解説の通り、これは「甘い」です。賛否両論あるでしょうが、否定派は「感動の押し売り」を感じてしまうかもしれません。甘口なのでこの種の結末を何冊も読まされれば辟易してしまいますが、たまに読む分にはメロドラマもいいのではと思います。事件の真相は偶然頼みの部分もありますが本格派推理小説としての謎解きはしっかりしています。

No.4 3点 りんちゃみ先輩
(2009/10/25 15:53登録)
総ての職員が長期にわたり嘘をつき通せるものだろうか?ハッピーエンドは良いけれど、集団による隠蔽工作、これは大犯罪ではないのだろうか。とにかくこの作者、「月の扉」でも感じたのだが現実離れした架空閉鎖空間での推理劇を表現しているように思う。

No.3 6点 江守森江
(2009/06/02 10:27登録)
この作者は、犯人を論理的に推理する過程を楽しんで貰うのがミステリだと考えているのだろう。
読者も犯人当てに挑むよりも推理過程を楽しみながら一気に読み切りたい。
(結末が暗くならず)読みやすさも手伝って楽しい読書を満喫した。

No.2 5点 こう
(2008/05/25 02:50登録)
 いかにもな石持作品。水族館に脅迫状が届き職員が対応している内に殺人事件が起こり、何故か館長は警察にはすぐには届けない。たまたま遊びにきていた職員の友人が探偵役で、犯人など一連の謎を解き明かすという作品。
 映像化されれば視聴者でも犯人はわかるかもしれませんが読んでいるだけでは犯人はわからないと思います。
 ミステリと勝負して真相を当てたい、推理したいという人向きではないかもしれませんがスタイルは個人的には好きです。

No.1 6点 いけお
(2007/12/30 09:45登録)
結局みんないい人で、逆に予想外だった。ボラの処理による犯人の特定はこっちにはわからない。

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