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ミステリの祭典

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遭難者

作家 折原一
出版日1997年05月
平均点4.20点
書評数10人

No.10 5点 ミステリ初心者
(2020/04/01 20:34登録)
ネタバレをしています。

 追悼集という、作中作的な文章が2つ入った、凝った趣向でした。地図はもちろん、はがきや登山届など手書きで書かれたものが載っています。
 笹村雪彦の死に疑問を持った母親が、その真相を調べるために慰霊登山へゆき、また死んでしまう。それを今度は笹村雪彦の妹千春と南が事件を調べなおす…そしてまた死人が~という構成で、あまり無駄なところがなく読みやすかったです。

 ただ、雪彦・時子の死について、登山記録と登場者のインタビューが細かく書かれている割にはあまり読者が考える点が少なかった印象です。
 そして、本の内容のうちの大部分を占める、N子とSは誰か?という謎の存在もそれほど本筋とは関係なく、肩透かしを食らった感じでした。

 凝った趣向のわりに、内容は普通だった。全体的にはそんな感想でした。

No.9 5点 蟷螂の斧
(2020/02/04 22:41登録)
本作(1997年)は松本清張氏の短篇「遭難」(黒い画集・1959年)の本歌取り、またはオマージュかと思って手にしたのですが違っていたようです。1982年に実際にあった山岳事故の追悼集にヒントを得たとのことでした。遭難事故からのミステリーなので、あらすじはどうしても似通ってしまいますね。比べながらの読書で楽しめました。あらためて清張氏の偉大さに感じ入っています。

No.8 5点 名探偵ジャパン
(2017/08/03 20:41登録)
うーん。凝った構成の割には……。
逐一挿入される様々な書類。登山計画書、検死報告書、登山行程地図。はたまた、写真まで。これらが何かトリックに意味を持ってくるのだと信じて疑いませんでした。
決してつまらないわけではないのですが、ちょっと乱暴に言うと、これくらいの内容であれば、ここまで凝る必要はなかったのでは。と思ってしまいます。
ミステリ(サスペンス)として一定の水準は当然クリアしているのですが、我らが折原はこんなものではないんだ。と言いたくなるのです。

No.7 7点 斎藤警部
(2016/04/18 12:26登録)
【敢えてネタバレをはさみつつ】

登山登録、各種届、捜索記録、哀しみの手記、告別式次第 等々。。 凝りに凝った構成(オリジナルハードカバーでは製本意匠にまで及ぶ)は叙述の罠に非ずして、物語に奥行きを与えるための温情ある一種賑やかしのギミックだった。。従って山岳ミステリそのものに興味薄い人にとっては最後にガックリ来るのも致し方無し。 自分も、お山のお話が好きだからこそ、このまさかの逆反転(!)に感慨(逆感慨?)もあったし山岳ならではのサスペンスやミステリ興味に引き摺られて7点も献上したものの、そうでなかったら「ぬるい結末だなぁ~、でも途中まぁまぁだったから」と5点も行きゃいい所だったことでしょう。

某氏こそ怪しいんじゃないか、名前からして。。 などと目星を付けつつ読者目線の捜索は進行。中途より「探偵役」「引き継いで第二の探偵役」と見える人物による叙述群が不穏な雲行きを告げるが。。 ラストシーン近くの「聞いてくれたかしら」には明るい気持ちで泣けました。本当に、こだまのように繰り返し泣けたなあ。。勢いで参考資料のページまで泣けて来るよ。一々の叙述ギミック(言葉を換えて繰り返すがトリックではない)が感動のラストシーンに収斂してくれて本当に嬉しい。
一君にありがちなしゃらくさい叙述引っ掛けとは一線を画する渋い作品でもあるし、ぜひ山好きの老い先短い父に読ませたい所。文庫解説を、山と渓谷誌元編集長神長幹雄氏が書いてらっしゃるのがまた泣かせる。彼がミステリに相当の理解と洞察を見せてくださったのも最高だ。

また繰り返しっぽくなっちゃうけど、前述の”凝りに凝った構成”に絡まってもしや/まさかと思った性別錯誤云々。。が全くの読者勇み足だったのは。。そりゃあ構わないが、そこだけでなく全くヒネリの無いナニだったのは。。ま個人的には結末良しで全て良いんだけど、またまた繰り返しになりますが、叙述トリックに引っ掛かって愉しみたい人で、且つ山岳ミステリに興味の無い人(私の場合は前者にのみ該当なのでセーフ)には薦められません。本サイトでの低評価(私が採点する直前で平均3.33点!)にも不思議は無し。

No.6 3点 E-BANKER
(2011/10/21 14:11登録)
長らく続いている作者の「~者」シリーズの1つ。久々に再読。
2分冊「箱入り」という何とも珍しい本。(出版社泣かせじゃない?)
~北アルプスの白馬岳から唐松岳に縦走中の難所で滑落死した青年・笹村雪彦。彼の山への情熱をたたえるため、彼の誕生から死までを追悼集にまとめることになった。企画を持ちかけられた母親は、息子の死因を探るうち、本当に息子は事故死なのだろうかと疑問を抱き始める。登山記録、山岳資料、死体検案
書などが収められた追悼集に秘められた謎、謎、謎・・・~

実に変わった本です。
本作の他にも、『前からでも後ろからでも読める本』(「倒錯の帰結」や「黒い森」)などもあり、「変なこと考える」作家ですよ、折原は!
ただし、本作はこのアイデアのみといってもいい凡作。
いつもの折原作品らしく、リポート風の手記やら昔の文集やらといったものがつぎつぎ登場し、いかにも「罠」が張ってますよというニオイ・・・
でも、この真相では「騙され感」がまるでない。
伏線が張られてるというわけでもないので、読者が予測できる材料も乏しくて、何となく「怪しい奴」と思っていた人物が、予想通り「意外な犯人」として究明される始末とは・・・
「~者」シリーズは、まあまあの佳作と凡作が入り混じってますが、本作は明らかに「読むだけ時間の無駄」というべきレベル。
(まぁ、ファンなら「珍品」としてどうしても手に取ってしまいますけどね)

No.5 3点 こう
(2010/04/07 23:15登録)
既に書かれている皆さんと同様ですが読み初めは形式というか構成が真新しかったですが追悼集にいつもの叙述トリックが仕掛けられて別冊で反転して、と勝手に期待して読んでいたので読み終わってなんじゃこりゃと思った記憶があります。発売順に読んでいたので「折原一らしくない」なあと初めて思った作品でした。

No.4 3点 おしょわ
(2008/01/14 14:37登録)
確かに新しいアプローチでその点は評価できますが、中身がついていってなさ過ぎ。

No.3 2点 o3345
(2005/08/19 13:07登録)
形式を思いついたのに2点。内容はひどいもんです。

No.2 4点 T・ランタ
(2005/07/30 18:44登録)
ほんの外見で妙に期待してしまいましたが、期待外れでした。たぶん本の形式から先に思いついたのでしょう。話が追いついていませんし、中身の資料も生かしきっていません。
別に普通の本にしてもそれほど差し障りは無かったのではないかと思います。

No.1 5点 アデランコ
(2002/04/01 14:59登録)
文庫版で読んだのですが、2冊に別れていて、おもしろい作りだなと思い、読んでみました。
やはり動機がいまいちでした。

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