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ミステリの祭典

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倒錯のオブジェ 天井男の奇想 
改題『天井男の奇想 倒錯のオブジェ』

作家 折原一
出版日2002年10月
平均点6.14点
書評数7人

No.7 7点 ミステリーオタク
(2020/07/01 21:50登録)
登場人物も場面も少なくて、(シビアな作品でない時の)折原らしい漫画チックな文体でとても読みやすいし、彼の作品に時々出てくるキャラ・・・腰が曲がって小汚くてシワクチャだけど実は頭はしっかりしているババア・・・もよかったが、それでもネタの割りにはチョッと長すぎる感は拭えなかった。

それに20年近く前の作品ではあるが、当時でもこのメイントリックはさほど斬新なものではなかったのではないだろうか。

でも、まあ読んでる間は楽しかった。

No.6 7点 ミステリ初心者
(2020/05/11 17:37登録)
ネタバレをしています。

 江戸川乱歩の短編?を思わすような、天井裏にひそむ男がいる話です。穴から毒薬を垂らして口を狙うシーンなど、オマージュ的な要素があります。序盤の天井男は、時子の妄想なのか実在するのかがはっきりとはわからず、その正体をいろいろと妄想するのが楽しいです。
 また、登場人物もキャラクターが濃くて惹き込まれました。ボケているのかボケていないのか、あるいはとても賢いのか、しかし意味不明な行動をとる時子。夫からDVを受け、かわいそう…だが出会った男を即利用する直美。DV糞夫。そして小野寺(笑)。登場人物が全員どこか狂っていて、おもしろ(?)かったです。途中、ややダレる展開もありましたが、全体として読みやすかったと思います。

 推理小説的要素は、いくつかの叙述トリックがありました。
" まず大きなものが、時子の主観の話と直美の主観の話では同じ時間軸ではありません。プロローグに、飯塚家2階で女性の密室殺人が起こり、それを時子が発見し、自分でそれを解き明かすことを決意します。そして天井男の主観となります。これを最初に入れることで、このシーンが物語の時系列の最初にきていると勘違いしてしまいます。また、このシーンの天井男の文章を太字ではなく、本の後半に登場する時子によって書かれた天井男ノートではないことが示唆されていて、よいミスリードと伏線になっています。
 小野寺は時子と直美の両視点に登場し、それがまた同時系列と混同させるように書かれています。それだけのために登場させただけでなく、天井男の正体にするところも大きな驚きであり素晴らしいと思いました。
 時子が密室を解けないでいることも伏線であると思います。読者にはプロローグや(天井裏)のパートの文章で天井男の存在を知らされているし、時子もまた天井男を挑発するシーンが多々あり天井男を認識しています(いるように読めます)。読者には、密室にした犯人が天井裏に逃げたに決まっているとわかりきっているので、なぜ時子が密室を解けないでいるのかが疑問だと思います(笑)。時子のボケ具合と推理能力はどうとでも取れるのですが…。これは物語前半の太字部分には天井男がいなかった伏線だと思うのですがどうでしょう??"
 その他の叙述トリックとしては、時子の正体はその娘の春江でした。これは味付け程度の叙述トリックでしたが、この小説に厚みをもたらす意味ではよかったです。正直、時子にはその伏線も多く、また時子の物語の文章では時子のことを”彼女”と表記しているし、春江しかないと割と早い段階で思っていました(笑)。直美が時子になる展開も妄想しましたが、30代が80代になるのはやはり不可能ですね(笑)。勝男を天井裏に住まわすというのも、なかなか狂っていて好みだったのですが(笑)。

 私は割と早い段階で、密室殺人の被害者が直美であり時系列がずれていることに気づきました。しかし、天井男の正体に気づけませんでした(涙)。登場人物の中であり、飯塚家の中を知ることができたのは小野寺ぐらいなので、よく考えればわかったはず。非常に悔しかったです(笑)。

 以下、好みではなかった部分。
・時子の妄想天井男がないとこのトリックは成立しませんが、一方でボケてはいないので、やや作者に都合がよい妄想と頭脳をもったキャラクターだと思いました。
・小野寺の犯行後の行動は意味不明だと思います(笑)。それも狂っていてまた良しですが。

 ちょっと甘めかもしれませんが7点にしました。
 長ったらしい文章を書いてしまってすいません(笑)。

No.5 4点 蟷螂の斧
(2017/08/11 10:54登録)
同じような題名が多く紛らわしい。また改題も多いし・・・。てっきり読んでいるものと勘違いしてました。天井裏の男、一階の大家の老女、二階の暴力男から逃げている人妻の各視点で語られるのですが、遅々として話が進みません。繰り返しの表現が著者の特徴でもあるのですが、本作はサスペンス感がないため、かなりイライラ(苦笑)。叙述もスッキリ感がなかったので辛目の評価です。

No.4 7点 名探偵ジャパン
(2017/07/25 23:14登録)
折原一の作品ほど、語るに困るものはないのではないでしょうか。
いえ、「叙述トリックだよ」というのは、そもそも折原作品にとってはネタバレになりえないのですが、内容についてどう語ったらいいのかが分かりません。
「それじゃあ無理に書くなよ」と言われればそれまでなのですが、私も中には「読んだけれど特に語りたいこともないため書評を書かない作品」というものも結構あります。ですが、折原作品については、何か触れておかないといけないような。それほど力のある作品ばかりですから。
折原一。もっと有名になってもいいのではないでしょうかねぇ。ミステリファンの中では当然ビッグネームですが、一般の人にも浸透してほしいというか。ガチガチのミステリってアレルギーを持つ人も多いでしょうが、折原作品みたいなのは好きな人も多いでしょう。作風から映像化可能な作品が少ないせいもあるのでしょうが。

あ、本作については、かなりの技巧を凝らしている割には分かりやすい構造をしているのではないでしょうか。折原レベルの作家であれば、いくらでも構造を複雑にすることは出来るでしょうが、読者に伝わらなければ意味がありません。その着地点を折原はよく分かっています。さすがです。
折原作品を読み慣れている人は「天井男なんて妄想でしょ」読み慣れていない人は「天井男の正体って何?」そう思いながら読み進めることでしょう。そのどちらに対しても驚きの結末が用意されています。

No.3 7点 測量ボ-イ
(2016/06/12 09:27登録)
作者名だけで、ある程度手の内は判る?方なので、今回はどう来るか
と思って読みましたが・・・なるほど、今度はそう来ましたか。
でもオチを変にひねっておらず判りやすいので、そこを好感して
甘めの採点で。

No.2 5点 E-BANKER
(2010/10/02 00:12登録)
「倒錯」シリーズのやや外伝的作品。
舞台はシリーズでお馴染みの(?)東十条は「メゾン・サンライズ」近くの古めかしい一軒家。
この作品、例によって時間軸がズラされており、それに気付かないまま読んでいると、「どういうこと?」と思わずにはいられない作りになってます。
「天井男」という発想は以前の作品でもありましたが、今回は2階の住人まで巻き込んで、「1階に住む老婆」⇔「天井男」⇔「2階の住人」という三重構造でより複雑化しています。
ただ、今回はちょっと(かなり?)クドイ!
「倒錯」シリーズの特徴といえばそれまでですが、登場人物が勝手な行動をし、それを読者が追い回させられ、最終的には「なんじゃそりゃ?」というラスト・・・
折原らしいといえばそれまでですが・・・

No.1 6点 vivi
(2008/06/23 21:09登録)
とにかく折原ミステリの技巧をすべて詰め込んだような作品。
読み終わって、ちょっと呆然とするくらいの。

気持ちがもやもや~っとなりそうな読後感ですので、
精神的に余裕のないときには読まないほうがいいかもしれません(^^;

折原作品を幾つか読んでいれば、プロットも読みきれるけれど、
その後に残る作品世界の余韻が、今回は重かったです・・・

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