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ミステリの祭典

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いいちこさんの登録情報
平均点:5.68点 書評数:574件

プロフィール| 書評

No.494 6点 氷菓
米澤穂信
(2023/01/18 13:05登録)
タイトルに秘められた謎だけは拍子抜けであるものの、主要登場人物4人の人物造形、各短編の造り、連作短編集としての構成等、デビュー作としては出色のデキといえるのではないか。
いかにも小品であるゆえに、6点の最下層と評価するが、好感がもてる作品


No.493 4点 謎のクィン氏
アガサ・クリスティー
(2023/01/18 13:04登録)
非常に世評が高い作品であるが、真相解明プロセスに論理性がまるでなく、ファンタジーのような印象を受ける。
読者をかなり選ぶだろう


No.492 6点 ミステリー・アリーナ
深水黎一郎
(2023/01/04 15:40登録)
きわめて個性的なプロット・着想から、「最後のトリック」と同様に、本格ミステリへの深い愛情と、その本質的な限界へのチャレンジング・スピリットを強く感じ取れる作品。
上記作は構想そのものに無理も感じたところ、本作はミステリの従来のありようを、容赦なく、徹底的に考え抜いた先に辿り着いた、そんな印象を受ける。
「伏線だらけ」と銘打っているとおり、これだけの解決を成立させるべく、叙述が周到に、計算し尽くされており、一見して脱線としか思えない蘊蓄までもが伏線になっている。
にもかかわらず、それを感じさせない、よい意味で緊迫感のない筆致も見事であり、完成度の点でもはるかに上と評価。
エンターテインメントとしてみたときには、一定の限界があり、6点の最上位と評価するものの、一読の価値はある佳作


No.491 6点 骨と髪
レオ・ブルース
(2023/01/04 15:37登録)
ムダのない叙述で、サスペンスとユーモアを両立させる作品世界を演出しており、ストーリー・テリングの腕は確かであるものの、真相が非常に見えやすくなっている点は、大きな難点。
トリックの独創性の高さや、真相解明プロセスの論理性で勝負する作品でもないだけに、本格ミステリとしてのスケールの小ささは否定しがたい。
好意的に捉えている作品ではあるが、6点の最下層というところ


No.490 4点 アリバイ崩し承ります
大山誠一郎
(2022/12/22 15:16登録)
そもそもアリバイトリックは、言わばネタが出尽くしている状況にあり、ジャンルそのものが行き詰っているとはいうものの、既視感の強い既存トリックの応用や、他のミステリジャンルとのあわせ技ばかりで、独創性が感じられない。
そして何より、示された真相に合理性やフィージビリティがまるで感じられない。
各話ともに探偵が瞬殺で真相に到達するのだが、その解明プロセスは論理性が皆無で、「このように考えることもできる」というインスピレーションでしかないにもかかわらず、それを指摘された犯人が例外なく自白して事件が解決するという枠組みそのものにも納得性がない。
本作をライトノベルと位置付けるなら、そうしたありようもある程度是認できるのだが、探偵を筆頭に、各登場人物の造形もまるで掘り下げがない。
本作の本質は「アリバイトリック問題集」とでもいうべきものであるが、そのように位置付けても凡庸なデキと言わざるを得ない
4点の下位


No.489 7点 スナーク狩り
宮部みゆき
(2022/12/13 17:56登録)
まるで映像を見ているかのような優れた叙述に加え、私的正義の是非を問うプロットの組み立てが見事。
全体としては、やや軽量コンパクトな印象を受けるものの、著者の充実した力量が発揮された佳作


No.488 6点 逃げる幻
ヘレン・マクロイ
(2022/11/28 20:14登録)
まず事件の発端そのものが、真犯人を大胆かつ巧妙に隠蔽している。
人間の消失と密室殺人の真相そのものには見るべき点がないが、残されたノート、ダイイング・メッセージ(欧米人以外には通じないのが難点であるが)、数式等、数々の手がかりと、巧みなミス・ディレクションは見事で、真相解明に至るプロセスはよくできている。
明かされた真相、そして読後に浮き彫りになるテーマも十分な説得力をもっている。
作品全体としてインパクトには欠けるものの、細部に至るまで確かな構築力を感じさせる作品


No.487 7点 黒牢城
米澤穂信
(2022/11/17 12:27登録)
まず、信長に叛旗を翻し、有岡城に立て籠もる荒木村重を助手、そして村重に幽閉された官兵衛を安楽椅子探偵とした舞台設定そのものが傑出している。
通説との間で違和感が全く感じられず、日本史に造詣がある人ほど抜群の奇想と評価するのではないか。
そのうえで、本作を連作短編集として歴史の流れを追っていくという構成が実に巧み。
村重の息遣い、戦場に立ち込める血の匂いまでも、再現するような筆致は、円熟の極みに達している。
各短編のミステリとしての底の浅さゆえに、評価はこの程度にとどめたが、各賞を総ナメするのも当然で、一読の価値のある佳作


No.486 6点 救国ゲーム
結城真一郎
(2022/11/17 12:26登録)
ミステリとして、真相解明に至るプロセスの論理性はある程度評価する。
ただ、この真相に到達するのであれば、十分な説得材料が必要で、提示された社会派としてのテーマ、課題認識は悪くないものの、そこに特段の主張がある訳でもなく、掘り下げが圧倒的に足りないと感じる。
全体として一定の水準には達しているものの、それ以上の迫力はない


No.485 6点 硝子の塔の殺人
知念実希人
(2022/10/20 08:09登録)
最初に与えられる解決が、フィージビリティを無視した平凡な内容であるのは、言わば当然である。
それにしても提示された謎の不可解性に対して強く見劣りがするのは残念であるが。
ただ、それ以上に、それを覆して与えられる真の解決を評価することはできない。
リアリティがないのはよいとして、納得感がまるでないのである。
これほどまでに特殊な登場人物を置けば、どのような不可解な謎にも説明が付くのは当然で、ある種のファンタジーでしかない。
このファンタジー、すなわち登場人物の存在そのものが、ミステリというジャンルのありようや歴史に対する、深い認識から生まれていることは十分に承知しているが、それは言わばよくできたミステリ評論でしかなく、ミステリとは言えない。

本作に込められた著者の野心、稚気、チャレンジング・スピリットは大いに買うのだが、読者の想像を大幅に凌駕するものではない。
あらゆる変化球が投げ尽くされているなかで、突拍子もない変化球を投げると宣言されれば、打者として十分に読めてしまう球種。
ミステリというフォーマットのなかで、このようなアプローチを試みる限り、これが限界なのであろう。

そのような意味で、本作に対して批判的なスタンスに立つつもりはないのだが、一方で激賞されるべき作品であるとは到底思えず、6点の最下層


No.484 7点 13・67
陳浩基
(2022/10/17 18:36登録)
まるで香港に滞在しているかのように、臨場感・熱が伝わってくる筆致から、抜きんでた筆力の高さが窺い知れた。
一方で、社会派ミステリとしては、警察の正義というテーマそのものがありふれているし、とくに目を見張るような主張もない。
また、本格ミステリとして、連作短編集としては一定の水準には達しているものの、突き抜けた印象はない。
これらを俯瞰すればミステリとしては水準クラスであるものの、言わば香港のドキュメンタリーとして一読の価値がある佳作という印象


No.483 6点 第四の扉
ポール・アルテ
(2022/09/29 14:44登録)
本作の核となる事件と、その真相はトリックを含めて平凡。
プロットはサプライズを演出しているものの、独創性は認められない。
海外ミステリの翻訳とは思えないリーダビリティの高さ、冗長さを廃したスピーディな展開は大いに好感がもてるが、作品全体にご都合主義が強く散見される点は減点。
全体として一読の価値はあるものの、世評ほどの傑作とは思えなかった


No.482 6点 透明人間は密室に潜む
阿津川辰海
(2022/09/22 12:35登録)
表題作がズバ抜けたデキ。
透明人間が他の人物には見えないことを考慮し、透明人間自身を視点とした倒叙ミステリとして構成する等、非常によく考えられているのが印象的。
メインの謎に設定されている隠れ場所も秀逸であるが、それ以上に、そこから明らかになる真犯人の実像、そして動機等、透明人間という特殊な設定を最大限に活かしきった傑作と言ってよい。
それ以外の作品の評価も含めると、短編集としてはこの評価


No.481 5点 ドン・イシドロ・パロディ 六つの難事件
ホルへ・ルイス・ボルヘス
(2022/09/13 19:43登録)
kanamoriさんに同感。
翻訳の影響なのか、とにかく難読で、各話の解決は不条理とも思えるものであり、毀誉褒貶が分かれそうな作品


No.480 5点 ベヴァリー・クラブ
ピーター・アントニイ
(2022/09/02 16:49登録)
(直接的な表現は避けましたが、真相を強く示唆する記載を含みます)
真相そのものが抜群の奇想とは言えないし、この真相であれば、どのような不可能状況にも説明がつくのは当然。
そして、共謀者の死亡が単なる偶然で片付けられているに至っては、ご都合主義の極致であり、無気力と言わなければならない。
世評の高い作品であるが、期待外れのデキ


No.479 5点 ウォリス家の殺人
D・M・ディヴァイン
(2022/08/14 13:54登録)
犯人特定に至るロジックが非常に弱い。
特にアリバイの中核を成す事象は、不自然かつご都合主義的であり、その手がかりも納得感に乏しい。
真相解明の決め手は読者の盲点を突いている点で巧みさも感じられるところ、それだけに最終盤の運び、真犯人が明らかとなってから、その手がかりが指摘されるという手順はいま一つという印象が強い


No.478 6点 列車に御用心
エドマンド・クリスピン
(2022/08/09 19:17登録)
非常に世評の高い作品であり、各短編の堅牢性、豊富なバリュエーションは評価。
一方で、その内容・作風はかなり古さを感じさせ、翻訳のまずさも相まって、エンターテインメントとしてはいま一歩


No.477 4点 盤上の敵
北村薫
(2022/08/02 18:46登録)
ご都合主義としか言いようがない舞台を設定したうえで、さらに著者の都合がよいように一部のエピソードを後出ししているだけ。
加えて本作で描かれるさまざまなエピソードがリアリティ・説得力に欠けるうえ、それらがすべて必要だったようにも思えず、プロットの完成度の点でも難がある。
主人公の犯行計画に至っては、あまりにも杜撰というか、稚拙であり、警察がこれを阻止できないというのはあり得ないだろう。
独特の筆致に読ませるものがない訳ではないが、サスペンスにも乏しく、本格ミステリとしては評価すべき点が見つからない。
3点か4点か、熟慮を重ねたうえで4点の最下層


No.476 7点 medium 霊媒探偵城塚翡翠
相沢沙呼
(2022/08/02 18:45登録)
いずれのエピソードも真相解明のロジックが十分に練られており、本格ミステリとして非常に高い水準にある。
また最終盤には大きなサプライズを演出できているが、本作冒頭からそれを示唆する伏線を貼りすぎており、一部のミステリマニアは相当に早い段階で察知することが可能。
作品全体としてフィージビリティがほとんど顧みられておらず、納得感に乏しい点でも少なくない減点としたい。
以上、相当に毀誉褒貶が分かれる作品であろうが、全体として好意的に評価したい


No.475 4点 第四の核
フレデリック・フォーサイス
(2022/07/24 17:26登録)
フォーサイスの作品群は、執筆当時の世情に対し、著者の政治観を投影した舞台を設定し、そのうえでミステリが展開される。
前者が広く読者の共感を得るもので、かつ後者としても良質であるがゆえに、高く評価されてきたと考える。
翻って本作は、1980年代前半の欧州情勢を背景とする前者の存在感が強く、それを理解できない現代日本の読者にとっては、平凡な作品という印象が拭えない。
読者に著しく同時代性を要求する作品であり、このような評価とした

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