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ミステリの祭典

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我が家のヒミツ
平成の家族小説シリーズ

作家 奥田英朗
出版日2015年09月
平均点6.00点
書評数5人

No.5 5点 いいちこ
(2022/07/13 19:07登録)
同様の作風の他作と比べ、各短編の核を成す課題認識が共感性に乏しい。
それゆえに相変わらず達者ではあるものの、軽量コンパクトな印象が強く、見劣りすると言わざるを得ない

No.4 7点 HORNET
(2021/02/07 15:50登録)
 大ファンのピアニストが患者としてやってきた歯科事務員の主婦、ライバルとの出世競争に敗北の終止符が打たれた会社員、本当の父親が著名な劇作家であることを知った女子高生、母親を亡くして激しく気落ちしている父親を心配する息子…など、市井の一般家庭に起きた波風を軽妙なタッチで描くシリーズ第3作。ラスト「妻と選挙」には、「我が家の問題」でも出てきた作家先生の家庭が再び搭乗する。
 いずれも家庭内、あるいは職場でのゴタゴタを描きながらも、すべて心温まるハッピーエンドなのが良い。特に私は「正雄の秋」が、心に沁みた。

No.3 6点 まさむね
(2019/05/19 21:26登録)
 「家日和」、「我が家の問題」から続くシリーズの第三弾(なのだと思う)。
 驚きの反転があるという訳ではなく、むしろ「分かるなぁ…」と頷いてしまう作品が多いのがミソ。ミステリ要素はさて置き、安心して読める短編集って個人的には貴重だったりするのです。(特に疲れ気味の時とか…)
 前半の4作品「虫歯とピアニスト」「正雄の秋」「アンナの十二月」「手紙に乗せて」が、考えさせられもして、良かったですね。「正雄の秋」のパターンって、結構他人事ではないし、「分かるなぁ…」って感じでしたね。

No.2 6点 haruka
(2018/11/01 01:20登録)
前作のテイストそのままに安定の面白さ。
「正雄の秋」と「アンナの十二月」がよかった。

No.1 6点 E-BANKER
(2018/07/13 22:19登録)
2013年以降、小説「すばる」誌に断続的に掲載されてきた短編をまとめた作品集。
日頃の何気ない家族の姿を切り取った名短編集「我が家の問題」の続編的位置づけの作品。
2018年の発表。

①「虫歯とピアニスト」=確かに、プランBの人生でもプランCの人生でも、自分が納得して幸せだったらNo Problem。間違いない! でも何かと他人と比較してしまう弱い自分がいる。
②「正雄の秋」=ライバルとの出世競争に負け、子会社に都落ちすることとなった正雄。よくある話、世間にはこういう男性は吐いて捨てるほどいる(に違いない)。そんなとき、なぐさめてくれるのが何と奥さん!(我が家だったら有り得ない!)
③「アンナの十二月」=幼い頃に別れて顔も知らない実の父親が著名人! しかもかっこよくて金持ち・・・当然心動くよなぁー。で、心は動いたんだけど、よ~く考えてみたら・・・って話。
④「手紙に乗せて」=今度は妻に先立たれて猛烈にふさぎ込んでしまった悲しき中年男の話。息子の上司が同じ経験をしたとのことで、いろんな心使いをするうちに・・・。もし自分の身に同じことが起こったら、ここまで悲しむか?(決して・・・)
⑤「妊婦と隣人」=妊婦になってずっと家にこもっている主人公。隣に引っ越してきたいかにも怪しい夫婦。時間を持て余した主人公の想像力はどんどん膨らんで・・・ついに!っていう展開。既視感ありあり。
⑥「妻と選挙」=シリーズ前作(「我が家の問題」)、前々作(「家日和」)にも登場したある直木賞作家の物語。今度はついに市会議員選挙に出ることになった妻と、妻にまたまた振り回される某直木賞作家。でも意外な展開に・・・

以上6編。
読んでてしみじみ感じたけど、「作者も老成したねぇ・・・」
もちろん旨い。日常の何気ないヒトコマっていうか、どこにでもありそうだけど実はない、っていう絶妙なストーリーテリング振り。
これはもう他の作家の追随を許さないほど。
でも、老成したよね・・・
本作はどれも最終的にはハッピーエンドというか、どれも後味がよい作品ばかり。
「毒」らしきものは何一つなし!
それぞれが小さな幸せを得て、明るい希望を抱いて終了してしまうのだ。

それの何が悪い!って言われればそのとおり。皆さんも本作を読んで、何とも言えないほのぼのとした幸福感を味わってください。
(好みで言えば⑥。次点は②かな)

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