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ミステリの祭典

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蟷螂の斧さんの登録情報
平均点:6.10点 書評数:1701件

プロフィール| 書評

No.301 6点 死の命題
門前典之
(2012/10/16 22:12登録)
<ネタばれあり>(屍の命題)最初の頁で読者への挑戦状あり。ここでは「そして誰もいなくなった」とあり、興味をそそられます。プロットについては笹沢左保氏(既読)、泡坂妻夫氏(未読)他に前例があるようですが、挑戦状にある「蘇る死者?」の奇想をプラスしているところは評価できると思います。「確率がゼロでない限り-偶然的であっても-それは偶然ではなく必然なのです。」をどう評価するのかということでしょう。奇想は評価しつつも、やはり偶然が2つも重なると、やはり「バカミス」っぽいか?


No.300 7点 薔薇密室
皆川博子
(2012/10/14 09:19登録)
300冊目の書評は皆川博子ワールド。世界大戦中のドイツの山奥にある僧院。ここで薔薇と人間を合体させる研究が実施されていた。実は作中作なのですが、現実と作中作が交錯し幻想的な雰囲気を醸し出しています。(というより「ドグラ・マグラ」に似た混乱・・・でもそれほど難解ではない)同時に、時間軸の感覚も混乱させられます・・・。「<ヴィーナスの病>の病原体・・・研究」を誰が書いたかという謎と、この本に翻弄される二人(迫害された少女ミルカと薔薇と共生するとされた元男娼)を中心に物語が進みますが、淡い恋、怪奇幻想、異形人物、ポーランド情勢等々てんこ盛りの歴史幻想ミステリー(?)の大作。でも好みは分かれるかも・・・。


No.299 6点 未熟の獣
黒崎緑
(2012/10/09 10:54登録)
公園で少女が殺害され、手には「1+1=」のダイイングメッセージ?が握られていた。さらに少女の行方不明事件が発生し、フーダニット風なミステリーが展開します。しかし、それが主題ではないような感じもします。主な登場人物は、近隣の付き合いができない不審な行動をとる主婦、オタクな兄弟、主人公(女流作家)とその恋人(優男)ですが、それぞれがどこかネジが外れているような・・・。心の闇をのぞくようなサスペンス風味の色濃い小説で、雰囲気は良く楽しめました。


No.298 4点 仮面劇
折原一
(2012/10/07 13:21登録)
叙述トリックは、まあまあです。しかし、ストーリーがトリカブト事件になぞった保険金目当てのもので、完全犯罪には程遠く、面白みが感じられなかった。後半、話の展開がガラッと変わるのですが、サスペンス感や深みがなかったのが残念です。


No.297 6点 おやすみラフマニノフ
中山七里
(2012/10/05 22:19登録)
小説で音楽を奏でてしまう筆力に脱帽です。ミステリーとしては「さよならドビュッシー」には及ばないと思います。動機が「どす黒いエゴ」のかたまりのようなものだったので、殺人に発展すればサスペンス感は盛りあがったような気がします。どうも「カエル男」(かなりどす黒い)と比較してしまいますが・・・。まあ青春小説風なので致し方ないところなのでしょう。


No.296 9点 さよならドビュッシー
中山七里
(2012/10/04 19:12登録)
映画化決定(2013年春公開予定)。これは絶対観に行きますね!。著者の作品は「カエル男」しか読んでいませんが、強烈な印象(採点9)が残っています。それにひきかえ、本書は音楽感動ものらしいとのイメージしかなかったので、これまで敬遠してきました。しかし、読んで大正解でした。ミステリーのことなどすっかり忘れ、音楽にのめり込んでしまいました。今、ギターを弾きたいがために指のリハビリ中(かなり痛い)なので、主人公に感情移入してしまいました(笑)。他の方と違い、かなり単純なので、ミステリーのオチ、こんなラストが待ち受けていようとは思いもよりませんでした。ビックリです。


No.295 6点 伯林-一八八八年
海渡英祐
(2012/10/02 16:02登録)
設定(森鴎外やビスマルクなど実在の人物が登場)は評価できると思います。ミステリー部分の二重の密室(密室+雪)の真相はそれほどの驚きはありませんでしたが、ビスマルクの存在は深みを醸し出していると思います。また青春小説部分(林太郎の恋)も楽しめました。


No.294 5点 聖女の島
皆川博子
(2012/09/30 10:43登録)
修道会により孤島に建てられた強制施設。31人の少女が暮らしてたが、3人が死亡し、ホームは火事となる。しかし、28人のはずがどう数えても31人いる。修道女(園長)のもとへ、マ・スール(女性)が助けに現れる。幻想的な文学の香りが漂い、雰囲気はなかなかのものです。ただし、ミステリーとしては?マークでした。


No.293 5点 トリック狂殺人事件
吉村達也
(2012/09/28 20:27登録)
警視庁捜査一課の烏丸ひろみに「トリック卿」からの招待状が届く。招待された7人の中に「トリック卿」本人もいる。出題されたクイズをすべて解くと賞金六億円になるというゲーム(実は殺人劇)が開始される。クローズサークルもので楽しめましたが、トリック自体はそれほどの驚きはありませんでした。警官が裁定役として招待されていることがポイントとなっており、これは評価できると思います。


No.292 4点 花嫁は二度眠る
泡坂妻夫
(2012/09/26 12:48登録)
犯人が意外というほかは、あまり印象がないような作品です。アリバイトリックも驚くようなものはありませんでした。主人公(男)の行動(従妹との風呂場シーンとラストの教会シーン)は理解しがたいものでした。


No.291 4点 ラミア虐殺
飛鳥部勝則
(2012/09/25 09:24登録)
本格+○○を狙ったものと思いますが、果たして成功か?といった感じです。本格部分は、雪の山荘での連続殺人で、犯人の設定など面白く読みごたえはあります。しかし、○○部分が後半の主体となり、本格部分が薄れてしまったのが残念です。○○は、序章から明らかなので、個人的には嫌な感じを持って読み進みましたが、逆に○○ではないオチがあるのではと期待したのですが・・・・・。


No.290 5点 fの魔弾
柄刀一
(2012/09/24 14:18登録)
カーの古典的傑作(密室)の現代版のような印象です。法廷ミステリー部分(求刑○日前という形で進行)と現在(探偵役が被告と同じような立場になり、危機を迎える)が交互に語られます。探偵役が閉じ込められた部屋から外に脱出できない状況(犯人が外にいる)になり、密室のトリックを解いてゆく場面はスリルがあります。文章がやや読みにくいことと、被告が隠している謎がそれほど驚くようなことではなかったので、この採点となりました。


No.289 8点 彼女が追ってくる
石持浅海
(2012/09/23 14:06登録)
倒叙ミステリーです。中条夏子は、愛した男の命を奪ったかつての同僚黒羽姫乃を刺殺した。証拠隠滅を謀ったつもりであったが、死体はなぜかカフスボタンを握っていた。これはいったい何を意味するのだろう。この真相には、かなりの高評価をつけたいと思います。探偵役の碓氷優佳も、クールでなかなかいい味を出しています。特にラストシーン。だだし、犯人の「眠たくなって部屋に戻り、30分後に月を見たくなって外へ出た。」という言葉を「はい、終了」(名セリフ?)として嘘と決めつけてしまうのは、かなり強引ではないでしょうか(笑)。


No.288 4点 そして今はだれも
青井夏海
(2012/09/22 21:05登録)
名門学園で相次いで退学者が出る。その退学に関し、謎の教師Xが関係しているらしい。ミステリーとしては、そのXを探すのですが、割合簡単に判明しちょっと拍子抜けがします。作者としては、青春物としてのラストに一工夫したと思うのですが、それもあまり響いてきませんでした。読者には、あることを期待させるのですが、当事者にとっては当たり前のことであるので、読者にとっては期待を裏切られたことにはならないのです。


No.287 6点 螺旋館の殺人
折原一
(2012/09/19 08:41登録)
作中作ではなく、もっと凝った構成(綾辻行人氏の館物1988.08と同様の構成を意識した?)。著者自身の「倒錯のロンド」をパロディ化した感じがします。二重のどんでん返しがありますが、最後のどんでん返しはほほえましいものです。叙述のお手本みたいな作品でした。


No.286 5点 黒白の囮
高木彬光
(2012/09/18 13:15登録)
アリバイトリックなど途中までは大変面白かったのですが、ラスト(犯人像)が好みではありませんのでこの評価。動機についてはあまり気にしないのですが、計画犯罪の場合はしっかりした動機の説明があって欲しいと思います。解決編で動機、方法、証拠などが不明のままでスッキリしませんでした。


No.285 8点 誘拐
高木彬光
(2012/09/16 15:00登録)
誘拐された子供の生死を確認しようとしないで、身代金を渡してしまうのは誘拐物語としてどうなのか?そして金銭の授受方法も、完全犯罪を狙う犯人としてはズボラでありすぎるのでは?と疑問だらけでしたが・・・。裏があったのですね。やられました。犯人逮捕へ向けて、弁護士の妻の仕掛けにはビックリ(賛否分かれる?)。まあ、妻は「投機の鬼」なのでいいのでしょう。そして、犯人にとっての意外な法律の罠(落とし穴)が用意されたり、また犯人は犯人で逮捕された時の準備を怠りない(前半の法廷場面が以外と長い~伏線)など楽しめました。


No.284 8点 透明人間の納屋
島田荘司
(2012/09/15 14:30登録)
(ミステリーランド)もはや子供向けではないと思います。ミステリーランドの主だった作品の11冊目ですが、さすが島荘という感じですね。抜きん出ています。透明人間のオチをどうつけてくれるのか?一応、子供向けなのでSFチックで終了?と思いきや、キッチリと処理されています。アメリカを批判している意味もラストで解明。スッキリした読後感です。


No.283 5点 私の愛した悪党
多岐川恭
(2012/09/14 16:35登録)
「変人島風物詩」とカップリング。プロローグで誘拐事件が起こり、引き続きエピローグ(20年後)となる。そしてエピローグに至る経過が描かれるという構成です。ミステリー度は高くはないのですが、ユーモア(オチャラケ系ではない)があり楽しめました。


No.282 6点 変人島風物誌
多岐川恭
(2012/09/13 16:00登録)
変人達が住む島での殺人事件が、のんびりした独自の雰囲気で描かれています。トリックは若干無理があるように思いますが、伏線はきっちりとありますので許容範囲でしょう。語り手(主人公)の飄々として、かつ助平で罪悪感を持っていない性格が、ユーモラスな雰囲気をかもち出しています。

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