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ミステリの祭典

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黒白の囮
近松検事シリーズ

作家 高木彬光
出版日1967年01月
平均点7.00点
書評数14人

No.14 7点 ◇・・
(2022/12/19 18:46登録)
時はまさに高度経済成長の真っただ中。名神高速道路で起きた自動車事故のシーンから幕が上がる。やがて第二の事件が発生し、社長の座をめぐる骨肉の争いが炙り出されると、企業小説や社会は推理の雰囲気も漂い始める。
作者は大小さまざまなテクニックを駆使しているが、本格推理として見事なのは、スケールの大きなアリバイトリックと、捻りの利いた真犯人の設定。しかも、充分に長編を支えられるだけのトリックを、いわば捨て駒に使っていることに驚かされる。

No.13 7点 ねここねこ男爵
(2020/04/08 21:40登録)
面白い。そして惜しい。

犯人の企みと仕掛けはなかなかに素晴らしいし、登場人物も整理されており読みやすい。
まず惜しいのは読者への挑戦を取り巻く状況で、挑戦後に重要証拠がどんどん後出しされること、中でも決定的なものが幸運な偶然であること、その発覚のタイミングが(作者に)非常に都合がいいこと、つまりは論理的な犯人の指摘が基本的に不可能なことなど(メタ視点で当てるのは容易)。挑戦が無ければ良かったのに。
そして犯人側にミスらしいミスはないのでそこを突くわけでもなく、誰もが盲点となっていた急所を突くわけでもなく、やたら有能な脇役が勝手に証拠を集めてきてくれるのを黙って見ているだけなのが残念。あと、容疑者のあの人が素直に警察に通報したら犯人はどうするつもりだったのだろう…検事が言う通り通報しても別に問題ないと思うのだが。

それらが修正不可でもなく少し工夫すればなんとでもなりそうなので、それだけに惜しい。それらの疵を踏まえてもかなり面白いので。

No.12 6点 ミステリ初心者
(2019/06/15 01:17登録)
ネタバレをしています。

 男女関係・会社内の権力争いから動機を探す物語の序盤が好みの展開ではなかったため、やや読みづらかったです。しかし、捜査する側が主観の小説にありがちな仮説→新事実による否定の連続する展開がミスリードになっており(私だけそう思っているだけかもしれないが)、犯人が警察をだましたように読者もだまされます。タイトルの"囮"もいいですね。

 自分は、犯行現場で目撃された友子のブルーバードが怪しかったので、まず島岡を疑いました(犯人の偽装としても、確実に目撃者がいないと無意味)。その車は、老人の証言が曖昧なせいもあって解釈が微妙だったのですが、老人が実際見たとすると2台あることになります。さらに、島岡にはアリバイがあったので、友子と共犯を予想しました。しかし、前に"一度わざと疑われておいて裁判で無罪を勝ち取る"という行動をどった犯人の小説を読んだ事があったため、友子犯人説をふわっと思いつきました。なので、当てたとは言えません。

 物語の構成もトリックも面白かったのですが、沢本が犯人のおもう通りに動いてくれるかはちょっと疑問。あと、共犯は好みではありませんでした。

 新装版のため、短編が2つ付いていました。殺意の審判の、胃に残った寿司の話は非常に面白かったです。

No.11 6点 パメル
(2017/04/30 00:59登録)
捜査陣を攪乱するためにあの手この手を使って周到に練られた計画殺人
様々な確執や人間関係が露になっていき全ての人間が怪しく思えてくる
読者への挑戦も盛り込まれておりフーダニットとしても意外性があるし二転三転する展開力で飽きさせません
冤罪者を一人も出さないをモットーとする「グズ茂」こと近松検事も味があって良い
ただしあるトリックは特殊な知識が必要だしアリバイの崩れ方が偶然以外の何物でも無い所が不満

No.10 5点 いいちこ
(2016/02/25 16:03登録)
真犯人を隠蔽するための大胆な仕掛けが光るが、それ以外には傑出した点は見受けられない。
犯行に至る動機や犯行の全体像の解明プロセスが曖昧であり、その点にも弱さを感じる

No.9 9点 斎藤警部
(2015/06/16 13:37登録)
うん、ガツンと来ましたね、これは。
第一の殺人、第二の殺人、巧みに噛み合わせられた手掛かりと伏線の妙。偽装トリックを破り、アリバイトリックを破り、満を持して瞠目の解決篇へ。。その道程の全てが、熱の籠もった質感たっぷりの文章で描かれる。高木氏の良い所ばかり凝縮された感があります。
言っちゃ何だが、鮎哲ファンにはお薦めしたい。

No.8 8点 測量ボ-イ
(2015/01/31 09:18登録)
神津恭介ものでないので、さして期待せずに読みましたが、
想像以上に良かったです。
書かれた時代は社会派全盛時だっただけに、「読者への挑戦」
付きは貴重でしょう。
氏の作風から、犯人はこのあたりでは・・・と推理しました
が、外れでした(苦笑)。
(解決編を読んで、「う-ん、そう来るか」という感じ)
でも、十分楽しめました。

No.7 7点 ボナンザ
(2014/09/20 23:13登録)
隠れた傑作の一つ。
読者への挑戦状をたたき付ける意気込みと高木ならではの刑事実務への言及も見事なエッセンス。
クラシック談義も楽しい。

No.6 5点 蟷螂の斧
(2012/09/18 13:15登録)
アリバイトリックなど途中までは大変面白かったのですが、ラスト(犯人像)が好みではありませんのでこの評価。動機についてはあまり気にしないのですが、計画犯罪の場合はしっかりした動機の説明があって欲しいと思います。解決編で動機、方法、証拠などが不明のままでスッキリしませんでした。

No.5 7点
(2011/05/09 21:41登録)
高木彬光久々の読者への挑戦(たぶん『人形~』以来?)は「読者諸君に」としていて、社会派全盛時代だけに初期みたいにはったりめいてはいません。しかしそれでもやはり本作のアイディアには自信があったのでしょう。実際、これはよくできています。一方の謎であった自動車事故偽装トリックは明かしてしまい、アリバイ崩しまでやってのけた後の挑戦。この偽アリバイに加えてクラシックを聴かせる音楽喫茶が出てくるあたり、鮎川哲也を思わせるところもあります。
最後の皮肉な結果と、それに対する近松検事の幕切れ台詞もいいですね。最初の容疑者に任意出頭を求める場面のユーモラスな感じ(刑事たちは苦い顔をしていますが)も意外に記憶に残っていました。
ただし、今回再読してみて動機に説得力があまりないのが気になりました。また推理の後半については、納得はいくものの、挑戦まで入れるにはちょっと論理性不足かなとも思います。

No.4 7点 kanamori
(2010/09/17 18:30登録)
近松検事シリーズの第2長編。
前作はどちらかというと脇役に甘んじていた近松だが、本書は堂々の(といっても登場は物語の半ばから)名探偵ぶりでした。
ダミーの犯人にアリバイトリックを誘導させる手際とか、証拠を提示するタイミングなど偶然の多用が気になりますが、被疑者が二転三転するプロットは楽しめた。
ネタバレになるが、弁護士が張りきりすぎて、結果的に依頼人である真犯人を追い詰める決め手を提示してしまうという結末が皮肉に満ちていて面白い。

No.3 9点 makomako
(2010/04/29 19:59登録)
この作品は高木氏のなかでもとりわけトリックがさえるすばらしいものだと思います。時刻表トリックとしても秀逸なのに、じつはそれが隠し味のようなものでさらに意外な結末が用意されている。複雑なストーリーを明快に読ませた上に読者への挑戦もあり(私としては当然犯人が当てられなかった)解決方法も納得いくものであった。作者の力量と本格推理への情熱が感じられ読み応えのある本格推理小説でした。

No.2 7点 江守森江
(2009/10/01 04:33登録)
近松検事(グズ茂)シリーズ(光文社文庫の作品紹介ではシリーズ第一長編となっているが実際は「黒白の虹」が第一長編)
自動車事故に見せかけるトリック看破~冤罪を晴らす為のアリバイ証明~時刻表を用いたアリバイ崩しを捨て駒とした展開の先に“読者挑戦”を付したフーダニットが待ち受ける構成で、作者の本格に対する情熱がほとばしる作品。
神津を起用せず新たな探偵役を構築し読者挑戦したのにも作者の狙いが潜んでいた!(解決編で狙いに触れている)
しかし、好き故に高木作品を読み込んだ為か、作者の好きな犯人隠蔽技法(何度となく使用している)のアレンジだと察してしまった(私的事情なので採点には反映させていない)
証拠が後付けされる解決編が少々残念で満点(8点)には及ばないと判断した。

No.1 8点 E
(2009/03/14 16:51登録)
「石橋をたたいて渡らない」超慎重検察・近松茂道シリーズ。
読むに従って深まる疑惑、容疑者が次から次へと移項して犯人は一体誰なのか?と思ったら、最後に「お前かッ!」と叫びたくなる結末。
トリックと犯人の緻密さに驚く。流石は高木氏!!!
このシリーズ他作品も読んでみたい。

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