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ミステリの祭典

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蟷螂の斧さんの登録情報
平均点:6.09点 書評数:1660件

プロフィール| 書評

No.600 8点 果断
今野敏
(2014/05/15 11:46登録)
1作目の隠蔽捜査より楽しめました。エンタメ系と捉えているので、細かいことには目をつぶりましょう(笑)。警察関係の方から見れば、題名にかかる判断や行動等は大いにクエッションマークがつくものと思いますが、それはそれで楽しめればいいのでは・・・。金融関係者としては、半沢直樹シリーズ(TV)は食指が動かなかったのですが、妻や子供たちは大いに楽しんでいました。そんな感じで本作を捉えています。普通のことを普通に言うと「変人」扱いされることはよくあることですね。大昔の話ですが、金融機関は融資をするため企業の決算分析に力を入れるのですが、自分の会社(金融機関)の分析をほとんど行っておりませんでした。これではおかしいと言うとよく「変人・奇人」扱いされたものでした。竜崎の心情が理解できます(笑)。今や金融庁検査はこれが主流となっています。かなり横道へ逸れてしまいましたが・・・。このサイトに投稿を始めたころは、ミステリーは謎である、よって謎のない小説は低評価としていましたが、ジャンル別が導入(発案者ならびに管理人の方に感謝)されてからは、考えが変わってきました。本格系、サスペンス系、エンタメ系などジャンルを考慮するようになりました。また作品が書かれた年代も考慮するようになって来ました。進歩か?。この書評が600冊目となり、ちょっと関係ないことを書いてみたい気分でした。


No.599 9点 ポッターマック氏の失策
R・オースティン・フリーマン
(2014/05/13 12:07登録)
裏表紙より『英国の田舎に住む紳士ポッターマック氏。彼の生活は執拗なゆすりに耐える日々だった。意を決した彼は、綿密な計画のもとに犯人を殺害する。完璧とも思える隠蔽工作だったが、その捜査に乗り出したのは科学者探偵ソーンダイク博士だった。ソーンダイクはいかにして見破るのか…。』           1930年の作品。倒叙ものの隠れた?名作ではないかと思います。主な登場人物は4人と少ないのですが、その構築・関係性は魅力的でした。検視方法などは時代を感じさせますが、当時としては妥当なのでしょう。科学者探偵ソーンダイクと犯人とのやり取りは緊迫感がありましたね。ラストも好みです。


No.598 6点 赤い拇指紋
R・オースティン・フリーマン
(2014/05/11 17:38登録)
1907年作品。科学者探偵ソーンダイク博士初登場。~『ロンドンの貴金属会社で、ダイヤモンド盗難事件が起こった。現場に落ちていた紙には、血染めの指紋がくっきりと残されていた。この指紋が経営者の甥ルーベンの左手の親指の指紋とぴったり一致した。無実を叫ぶルーベンに科学者探偵ソーンダイク博士が立ち上がる。』~殺人事件は起こりません。当時の証拠としての「指紋」万能主義に一石を投じた作品であるような気もします。科学的探偵の初登場ということで敬意を表したいと思います。事件と並行して語られるジャーヴァス(語り部・博士の友人)の恋も楽しめました。


No.597 7点 隠蔽捜査
今野敏
(2014/05/07 12:58登録)
ミステリーというより警察官僚の生き様を描いた作品でしたね。「変人」と捉えられているようですが、普通の人間と思います。正義感が強い一方、非常に打算的な考えも持ち合わせています。最初から違和感なく受け入れられました。願わくば、犯人の心情、およびヘロイン売人の顛末にも触れてほしかったと思います。氏の作品は2冊目ですが、非常に読みやすいですね。


No.596 5点 消えた玩具屋
エドマンド・クリスピン
(2014/05/06 16:34登録)
(英・米ベスト100ランクイン作品)原題はTHE MOVING TOYSHOP ユーモアミステリーに分類されるのかも。ドタバタ調系ではあるのですが、日本人に受けるかどうかは疑問です。ミステリーの謎設定は面白いのですが、解決篇では事前に犯人が判明し、それを追いかける方に重点が置かれていました。もったいない気がします。 


No.595 4点 幻影城の殺人
篠田秀幸
(2014/05/05 20:56登録)
密室の組み合わせのうち一部については楽しめましたが、犯人像で低評価になってしまいました。前半はアトラクションの解説本を読んでいるようで味気ない。またアトラクションの説明として「本陣殺人事件」のもろネタバレをする姿勢に疑問を感じました。


No.594 5点 コールド・ロード
T・ジェファーソン・パーカー
(2014/05/02 20:03登録)
サンディエゴ市の実力者ピート・ブラガが撲殺された。トム・マクマイケル部長刑事が担当となるが、彼にとって、それは皮肉なものであった。ブラガ家とマクマイケル家の間には3世代におよぶ確執があった。トムの祖父はピートに射殺されたが正当防衛となっていた。その後、ピートの長男が襲われ、知能の発達が止まる。それはトムの父親の仕業と思われている。そしてトムもピートの孫娘パトリシアと10代のころ恋に落ちたが、両家の確執で恋は終わった。ピートの身の回りの世話をしていた看護婦サリーが容疑者となるが、トムはサリーを愛してしまう。~2つの家族の確執、親子の葛藤、元恋人との関係、容疑者との恋、警察内部の暗部等々盛りだくさんで600ページを超える長編です。読みごたえはありましたが、事件と恋くらいで納めてくれれば、ちょうどよかったかも。


No.593 7点 暗闇へのワルツ
ウィリアム・アイリッシュ
(2014/04/28 16:38登録)
「音のない音楽が流れ、踊る人影二つ そっと寄り添い、ワルツがはじまる。」「音のない音楽が絶え、踊る人影は崩れるように床に落ちて、ワルツが終わった。」・・・「俺たちに明日はない(ボニーとクライド)」(1967主演フェイ・ダナウェイ)を思い起こしました。主人公の名前も同じですしね。ほぼ2人だけの心理描写で、これだけの長編を書き上げた筆力に感心しました。


No.592 4点 ムーンズエンド荘の殺人
エリック・キース
(2014/04/23 18:52登録)
エンタメ系として評価すれば6点を計上できるくらい楽しめました。しかし、本格ものとするなら、好みの問題でポリシー通り辛目の4点といったところです。本書の前がカーの有名作品で同様の理由で同様の評価をしたので致し方ない。本文とは関係ないが、ムーンズエンド荘の表紙のイラストと荘の概略図がかなり相違しています(笑)。


No.591 4点 プレーグ・コートの殺人
カーター・ディクスン
(2014/04/21 14:24登録)
雰囲気はいいのですが、2大トリックは拍子抜け(好みの問題)でした。凶器についての知識がないのでただ唖然とするだけでした。もう一つは許容範囲外(昔の物語では何回かお目にかかっているが・・・)ということで辛目の評価となりました。H・M卿の推理が出来過ぎで、もう少し悩んでほしい(笑)。


No.590 6点 殺意の団欒
ジェームズ・アンダースン
(2014/04/18 20:15登録)
裏表紙より『シルヴィアが夫を殺そうと決心したのは、ある水曜日のことだった。ところで彼女は知らなかったが、夫のエドガーは火曜日、すでに妻を殺す決意を固めていたのだった。・・・・・』          ユーモアミステリーです。心理描写と会話のギャップが楽しめました。行動のすれ違いも面白い。落としどころはまずまずといった感じです。


No.589 7点 五番目のコード
D・M・ディヴァイン
(2014/04/15 22:40登録)
人間造詣が巧みで、ラブストーリーにもなっており楽しめました。主人公が犯人扱いされるのですが、これを最後まで引っ張っていれば、もっとサスペンスフルになったと思います。いつもは深く考えずサラッと読んでいるのですが、どういう風の吹き回しか今回はじっくり読もうと思いました。その結果、犯人の独白(2P)と第1部の1(10P)で、物語の全体の構図が思い浮かびました。さて、当たっていたのでしょうか?。途中であれ?間違っているのかと思わせる記述があったのですが、いやこれは絶対ミスリードと言いきかせながら・・・。しかし、こういう読み方は疲れます(笑)。やはり作者の意向に沿って騙されるのが向いているようです。


No.588 6点 デス・コレクターズ
ジャック・カーリイ
(2014/04/14 20:37登録)
シリーズ1「百番目の男」、同4「ブラッド・ブラザー」と比べるとおとなし目。そういう意味だと物足りない。どちらかといえばフーダニットに重点か。囚人の画家が指揮をとっている(他人にはそう見える)描写が、なぜか印象に残りました。主人公はダリが好きだったんですね。


No.587 5点 血染めのエッグ・コージイ事件
ジェームズ・アンダースン
(2014/04/12 09:21登録)
高評価で期待し過ぎたのか、残念。まず題名が活かされていないというよりあまり意味がなかった。殺人までと解決篇、それぞれ長すぎる。単純な事件であるが、パズラーを喜ばすため、現場に多くの人物を登場させた?。複雑にし過ぎの感。登場人物が多すぎ覚えきれない(苦笑)、そして裏のある人物が多すぎる。1人で十分。探偵役の視点が3人以上に移ってしまっているため集中できなかった。過ぎたるは及ばざるがごとしの感。なお伏線がほとんどなく犯人像は唐突な感じを受けた。等々あまり感心するところがありませんでしたがユーモアセンスは買っています。「証拠が問題」が楽しめたので、「殺意の団欒」(ユーモアミステリー?)は読もうと思っています。


No.586 6点 画商の罠
アーロン・エルキンズ
(2014/04/09 19:21登録)
題名通り、画商が仕掛けた罠は?がストーリです。レンブラントとレジェの2枚の絵についての真贋が語られます。物語の構図は絵画の寄贈にまつわるもので「楽園のカンヴァス」(2012原田マハ氏著)と似ています。勉強になったのは、例えば画家Aの弟子が描いた模写(素晴らしい出来栄えでAの描いたものと見分けがつかない)が発見された場合、科学的分析(年代識別や絵具素材)では真贋の区別がつかないということでした。14.4.3イタリア発。ゴーギャン発見!!。盗難~列車に置き忘れ~競売~台所に40年間飾られる~15億円の価値~「事実は小説より奇なり」でした。


No.585 5点 真犯人
パトリシア・コーンウェル
(2014/04/07 13:18登録)
シリーズ4作目。1作目から読まないと背景(人物関係)が判らないのが欠点(説明が後付)。人物像描写(前回作より数年後?)で、主人公の姪、大学時代の教授の様子・変化は細かく描かれているが、肝心の相棒の刑事と元恋人のことがよくわからない。コンピュータ(指紋システム)の話が冗長であった。全体として死んだ人間の指紋が新たに殺人現場で発見されるという謎で引っ張り過ぎの感。主人公ケイが犯人として疑われる場面は盛り上がるが、真相部分はあっけない幕切れとなる。黒幕的存在は暗示されているので判り易い(動機は不明)が、真犯人の動機・心理などは触れられていないので、すっきり感がなく物足りない。結局次回作?へといった感じになり、単独で読むのはお勧めできない作品ですね。


No.584 8点 摩天楼の身代金
リチャード・ジェサップ
(2014/04/04 14:33登録)
1981年の作品です。同年、日本では「コンピュータの身代金」(三好徹氏著)が発表になっています。「コンピュータ」を”人質”にするアイデアでしたが、本作は「超高層ビル」をということで、日米での時代背景など、何やら興味深いものを感じます。緊迫感・スピード感では本作のほうが断然上回っているように思いました。”身代金”受け取り方法のアイデアは斬新ですが、回収にかなりのリスク(杜撰さ)があるのでは?。ラストはニヤリとしますが、西村京太郎氏の作品(1977)が先陣を切っていましたね。たまにはクライムサスペンスもいいものと思いました。


No.583 7点 証拠が問題
ジェームズ・アンダースン
(2014/04/03 09:41登録)
物語の展開は判り易いし、文章も読み易い。よって深読みをすることもなくスラスラ読んでしまいました。犯人はまったく判りませんでした(笑)。登場人物表で「?」のつく人物は初めてで、その人物かと思われる者が途中から登場するのですが、うまく騙されました。全体の印象はスマートということですね。また、物語とは全く関係ないのですが、警部をどのような呼称にすればよいのか?が全編を通して出てきます。こういったユーモアも好きです。


No.582 6点 偽りの名画
アーロン・エルキンズ
(2014/04/01 18:25登録)
絵画ミステリーで、どちらかといえばエンタメ系でした。ちょっと長いですね。もう少しコンパクトになればと思います。展示絵画のうちの贋作を調査する物語ですが、真相についてのアイデアは楽しめました。フェルメールと贋作については「フェルメールの闇」(田中純著)の方が詳しく描かれていると思います。シリーズ2作目の「一瞬の光」に期待。


No.581 6点 百番目の男
ジャック・カーリイ
(2014/03/29 16:58登録)
(タイトル・男⑫)4作目を先に読んでいたので、登場人物、背景はよく頭に入りました。しかし、シリーズものはやはり順番通りの方がよいかも。死体に書かれた意味不明の文字が、こうくるとは思いもよりませんでしたね(笑)。一面バカミスっぽい感じもしますが、やはり犯人の異常性を際立たせているものと解釈します。まあ、よくこのようなことを考えついたものと感心します。

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