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ミステリの祭典

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虎の首
アラン・ツイスト博士シリーズ

作家 ポール・アルテ
出版日2009年01月
平均点5.29点
書評数7人

No.7 7点 E-BANKER
(2022/11/17 14:18登録)
アラン・ツイスト博士を探偵役とするシリーズの五作目。
相変わらず本家カーを意識(し過ぎ)てるかのような作品世界なのだが、今回は如何でしょうか?
1991年の発表。

~休暇から戻ったツイスト博士を出迎えたのは、事件の捜査で疲れ切ったハースト警部。郊外のレドンナム村で、次いでロンドンの駅で、切断されスーツケースに詰め込まれた女性の腕と足が見つかったのだ。警部の依頼を待つまでもなく事件に興味を持った博士だったが、すぐにその顔色が変わった。駅から戻って蓋を開いた博士のスーツケースから出てきたものは・・・。一方事件の発端となったレドンナム村では、密室でインド帰りの元軍人が殺される怪事件が起きていた。なんと犯人は杖から出現した「魔神」だというのだが・・・~

今回はいつにもまして「不可能趣味てんこ盛り」・・・という雰囲気。あと、割と「ミスリード」がいつもよりも旨く仕掛けられているように思えたのだが、他の皆さんは結構辛口な評価なんだねぇー
本作は、紹介文にもあるとおり①「バラバラ死体が複数のスーツケースから発見された事件」②「レドンナム村で頻発した盗難事件」③「同じ村で発生した密室殺人事件」(by「虎の首」というインドの魔杖)、の三つの筋が同時に走っている。となると、当然にこの三つがどのように絡んでいるのか?というのがプロットの軸になるはず。

タイトルからして③がメインになるのかと思いきや、中心となるのは①の方。
まず③に関しては「密室」が当然にクローズアップされるのだが、そこは「抜け穴」がかなり大胆に用意されていて正直腰砕けでしかない。「虎の首」に関してはある特徴がカギにはなるのだが・・・。フーダニットも動機からすれば自明とも言える程度のもので、ここにサプライズはない。
で③なのだが、終盤に判明する「ある仕掛け」についてが本作一番のサプライズというか、騙しの構図となる。なるほど・・・。これについては伏線も結構あったし、動機についてのアプローチからも旨いと感じた。ただし、これを「連続殺人」としたのは明らかにやりすぎだし、作品全体としても効果は薄かったのではないか?
②は①につながる「偶然」を演出するためのいわば材料とでも言えばいいのか。この偶然があったからこそ、真犯人は複雑な仕掛けを用意しなければならなくなったのだ、という傍証としてあるのだろうけど、うーん。あまり有機的につながっているとは言えない(ただし、作品のオカルト感や不可能趣味を煽るという役割は果たしたかも)。

ということで、いつもどおり「ツッコミどころ」はあちこちにあるんだけど、全体的なバランスやサプライズの大きさという意味では、シリーズでも1,2を争う出来ではないかと思えた。ラストのツイスト博士のとった行動に反感を覚える読者が多そうなのだが、まぁそこはフィクションだしね。
最初に戻るけど、これこそ「カーらしさ」全開で、全然知らずに読んで「カーの作品」って言われれば「そうかな」と思ってしまいそうだった。(これは作者の本意なのかな?)
(トランク+死体+列車っていうと「黒いトランク」とそれに類した作品群が思い浮かぶけど、日欧でこんなにテイストが違ってくるのは、ある意味興味深いし面白い)

No.6 4点 ROM大臣
(2021/09/17 14:32登録)
スーツケースにバラバラ死体を詰めて放置する殺人事件とある村で謎めいた盗難事件騒ぎが続発している事件。この二つの事件をどう結び付けていくかという風に読ませてきて、それがミスディレクションになっているのが巧妙。
気に入らない点は、ロンドンで最初に起きた密室。あれは必要ない。少なくとも密室という現象を起こす必要性が全くない。

No.5 6点 ボナンザ
(2020/12/07 14:33登録)
真相はあっけないが、仕掛けと言い雰囲気と言い、カーを目指している点は買う。

No.4 5点 レッドキング
(2018/09/04 18:31登録)
「トリックのしょぼさ」が売りのアルテらしい

No.3 5点 nukkam
(2014/08/26 16:21登録)
(ネタバレなしです) 1991年発表のツイスト博士シリーズ第5作はアガサ・クリスティーの作品を髣髴させるようなヴィレッジ・ミステリーの雰囲気にアルテならではの猟奇的犯罪や密室殺人事件をからめた本格派推理小説です。魅力的な謎をたっぷり詰め込んだ展開は安定した面白さがありますが、最終章でツイスト博士が解き明かした「運命の悪戯」は美しく着地した謎解きとは言い難いように思います。

No.2 4点 蟷螂の斧
(2014/07/08 10:01登録)
アンチミステリーなのか?。本作のプロット自体が読者にとって面白くはないのでは?。1部、2部と別れているところがミソなのかもしれないが・・・。読み物としては決してつまらなくはない(いろいろな謎が提示される)のですが、読後は脱力感が残ってしまいます。ラストでのツイスト博士の行動もアンチミステリー的なのかも。

No.1 6点 kanamori
(2010/06/17 21:07登録)
バラバラ殺人事件と村の盗難事件に続く密室殺人がカットバック手法で描かれていくプロットは、読者を幻惑させるより謎の核心を散漫にさせ、成功しているか微妙です。
ツイスト博士のトランクに死体の一部が入っていたエピソードや二つの事件の関係がある意味「三つの棺」と類似していたりで、ディクスン・カーの影響が覗えますが、真相の隠蔽という点では邦訳作品内で上位の佳作といえると思います。

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