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ミステリの祭典

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飛行士たちの話
旧題『昨日は美しかった』

作家 ロアルド・ダール
出版日1973年01月
平均点5.50点
書評数2人

No.2 6点 mini
(2016/08/05 09:29登録)
発売中の早川ミステリマガジン9月号の特集は、”ロアルド・ダール生誕100周年”
さらに早川文庫から『飛行士たちの話』の新訳版が刊行された
私の私的読書テーマをパクったな早川(笑)

* 私的読書テーマ”生誕100周年作家を漁る”、第6弾はロアルド・ダールだ
奇遇な事に異色短編作家の2大巨頭と言ってもいいスタンリー・エリンとロアルド・ダールは同い年なのである
もっとも異色短編作家の多くは活躍年代が近いから、生年が被っていたとしてもそれほど珍しい事ではないが、やはりエリンとダールですからねえ
今年の生誕100周年作家は、異色短編作家の当たり年と言っても過言は無いでしょう

ダールは第2次大戦で英国空軍のパイロットとして戦闘機でドイツ空軍などと戦ったが、その経験を買われて米国空軍の言わばコーチ役みたいな待遇で招かれる事になる
つまり英国人のダールがアメリカに移住して執筆活動する元は、ダールの飛行機乗りの経験が理由だったのである
昔『グレムリン(ダンテ監督スピルバーグ製作指揮)』という映画が有ったが、あれに出てくるのは本来のグレムリンとは別物で、本来は飛行機乗りの間で伝説になっていた小鬼を元にダールが創作したものをディズニーが映画化権を買い取ったのが最初であり、ダールはハリウッドで脚本の仕事をしたことも有る
さてアメリカに移住したダールだが、そこで当時人気の海洋冒険小説作家C・S・フォレスターから取材を受ける
フォレスターは当初はダールから話を聞いて記事を書くつもりだったが、ダールに文才が有るのを見抜き、ダールの原稿に手を加えずそのままダール作として掲載させた
何という偶然、ダールの飛行機の経験とたまたまの取材とで後の短編作家ダールが生まれたわけだ、このエピソードで1つの短編小説が書けそうじゃないか

『飛行士たちの話』はダールのデビュー短編集だが、後の人を喰ったような作風とは若干違い、飛行機の話が中心なのはこうした事情からなのである
『飛行士たちの話』は抒情的に描かれているが本質ははっきり言って一種の戦争文学である、後の短編集『あなたに似た人』や『キスキス』などは問題無くミステリーの範疇だと言い切れるが、『飛行士たちの話』はミステリーとしては多少広義に解釈すべきだろう
後のダールの片鱗は見られるものの、異色短編作家としてのダールのイメージからは若干異色に感じられても仕方のないところで、同列には評価し難い
むしろ最初から戦記文学とミステリーとの境界線上の作品として見るべきで、元々が切れ味勝負な作家じゃないだけにそういう視点で見れば流石はダールである

No.1 5点 蟷螂の斧
(2014/07/22 16:43登録)
(再読)処女作品集(1946)で、第2次世界大戦を経験したパイロットたちの話です。「あなたに似た人」以降の<奇妙な味>はまだ登場せず、序章(片鱗を感じる作風)といった感じです。この作品集の中に「あなたに似た人」があり、次作(1953)の作品集の題名になっています。本作中の「彼らは年をとらない」が、宮崎駿氏の「紅の豚」の一シーンに引用されていました。

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