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ミステリの祭典

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HORNETさんの登録情報
平均点:6.34点 書評数:1234件

プロフィール| 書評

No.554 4点 悪霊島
横溝正史
(2018/09/17 12:40登録)
 島、「本家」が幅を利かせるムラ社会、過去の謎の事件、カギを握る妖しい魅力の美女、男女の愛憎劇、双生児、洞窟……といった、「横溝テイスト」をふんだんに、悪い意味で「バランスよく」盛り込んだ無難な一作という印象。そういう意味では、集大成と言えなくもない。
 トリックやアリバイというミステリ的な謎解きは皆無に等しく、謎の中心は「隠された人間関係」。推測はできるが推理とはいえず、しかも勘のいい読者なら上巻でほぼ全貌が見えてしまうだろう。それが裏切られるのならまだしも、結局予想通りの真相をなぞる後半になってしまい、謎解きの面白さはほとんどない。
 先にも書いたように、横溝テイストがたっぷり盛り込まれていることは間違いないので、その作品世界や雰囲気自体が好きという読者にはそれなりに好まれる作品かもしれない。


No.553 6点 地獄の犬たち
深町秋生
(2018/09/11 21:28登録)
 暴力団に潜入した刑事、潜入捜査官の話だが、正体を知られないために極道に染まりきるレベルがハンパない。たとえ捜査のためとはいえ、刑事がこんなにも人を殺していいのか?(まぁ、いいわけないわな)
 とはいえそんな正論を吐いていては物語は楽しめないので(まぁ主人公・出月のその葛藤も物語の核ではあるのだが)、読者としてはそうした倫理観は一旦脇に置いておいて、ハンパないレベルの切った張ったの世界を楽しむとよい。

 裏切りに次ぐ裏切り、騙しに次ぐ騙しの中で、真相は何なのか?と展開を追いたくなる点では、ミステリとしても十分に面白い。「こいつは本当に味方なのか?」「どこまでを知っているんだ?」という探り合いの臨場感はぞくぞくするほどで、ページを繰る手が止まらないスピード感はある。
 ただこういう暴力団の裏のかきあいではえてして思うのだが、あれだけ裏切りや謀略に敏感な連中が、メインの仕掛けに対してはひっかかるのがちょっとご都合主義に感じるところがある。本作で言えば、拷問の末に阿内が白状した言葉を一も二もなく信じて、その場に駆け付けるくだりは、それまでの慎重さと対照的な短絡さを感じてしまった。
 他にも、たかが7年で広域暴力団のトップになれるのか?などさまざまな非現実性を感じる部分はあるが、そこはエンタメとして楽しめばよいかな、と思って楽しんで読んだ。


No.552 7点 宿命と真実の炎
貫井徳郎
(2018/09/11 21:00登録)
 警察を馘になり、一度はホームレスにまでなった西條が、兄の計らいで会社勤めに復帰し、捜査一課の捜査のアドバイザーとなる、「後悔と真実の色」に続くシリーズ。期待に違わぬ面白さだった。
 今回は女性刑事・高城理那が新たな登場人物として加わり、先輩村越らの勧めを受けて西條に相談をする。その構図により西條が事件解決に関わっていくという展開だが、西條が社会復帰後に通うようになった古本屋の主人がそこに絡んでくる物語構成も面白く、作者の腕を感じる。
 事件は警官の連続殺人事件だが、その首謀者(つまり真犯人)解明に関する仕掛けも練られていて、ミステリとしてもきちんとした体をなしている作品であり、前作同様いろいろな要素で楽しめる一冊である。
 氏の長編を読むのは4作目だが、最後を一件落着で終わらせない、ダークな結び方はひょっとして彼の特徴なのか?救われなさが一定程度必ずあるのは、デビュー作「慟哭」以降ずっと感じるなぁ。
 十分に面白かったが、7点止まりなのは前作「後悔と真実の色」に8点をつけており、それと比較したときに、犯人の動機に若干の薄弱さを感じたため。


No.551 8点 後悔と真実の色
貫井徳郎
(2018/09/11 20:17登録)
 東京の下町の空き地で女性の死体が発見された。通り魔の犯行かと思われたが、死体には右手の人差し指が欠損しているという妙な特徴があり、同じ特徴を持った女性の殺害事件がその後続いたことにより、警察は同一犯による連続殺人事件と断定、捜査本部を立ち上げての捜査に乗り出す。
 そんな中、インターネット上に<指蒐集家>の名で自らを犯人と名乗る人間が登場。その記述内容から、<指蒐集家>は真犯人と分かる。警察を挑発するように、犯行の様子を書き込んだり、次の犯行を予告する<指蒐集家>。警視庁捜査一課の西條輝司は、捜査本部の一員としてその捜査に奔走するが―

 真相の仕掛けにも唸らされるし、西條という刑事の凋落と矜持を描いた刑事物語としても骨太の内容。必要以上に二転三転して冗長な印象も少しあるが、全体としてミステリとしての面白さと、刑事の人間物語としての面白さと両立されている秀作。
 面白かった。


No.550 5点 消人屋敷の殺人
深木章子
(2018/09/11 19:59登録)
 人里離れた岬の先に立つ、江戸時代末期からの別荘で次々に起こる事件。いわゆる「嵐の山荘」パターンで、こういう類の作品は筆者には珍しい方なのでは?んなこともないか。

 仕掛け自体は面白いと思うのだが、読み進めていく中で時制の前後が混乱してきて、理解するのに時間を要した(まぁそれが仕掛けなのだが)。全く私的な事情で申し訳ないが、ここ最近の自分の読書が、このテの仕掛けの作品がたまたま続いたので、思った以上の衝撃は受けず、「ああ、そういうことか」と冷静に感心するような読後感になってしまった。
 好みは人それぞれだが、私としては氏の作品は法廷モノのほうが好きだ。


No.549 7点 乱反射
貫井徳郎
(2018/09/02 09:09登録)
 発想・着想の面白さ。複数の無関係な人たちの「ちょっとした」日常が、一つの事件に収斂していくという形は、奥田英朗の作品にちょっと似ている気がする。

 「自分一人ぐらいいいだろう」「これくらい、誰だってやっている」・・・そんな誰もがもっている人としての弱さ・醜さからの行為が連鎖して、ついには幼児を死なせる大事故に。我が子の死の真相を知ろうと、その連鎖を手繰っていく新聞記者・加山が、当事者に対面し、その行為を問い質す度に「自分は悪くない!」と開き直る様には不快感と怒りしか感じないが、自分に火の粉が降りかかりそうになったら必死で殻を閉じようとするのは、今の日本社会の本性なのかもしれない、とも思う。

 前半は個々バラバラのストーリーがいくつも同時進行するので、誰がどの人だったのか、混乱しがち。間を置くと余計に思い出せなくなるので、一気読みするのがオススメです。


No.548 8点 慟哭
貫井徳郎
(2018/09/02 08:57登録)
<ネタバレ>

 大きく2つの意味での「どんでん返し」がある作品だと思った。

 一つ目は当然、交互に描かれる場面が、実は同じ時間軸ではなかったという叙述トリック。こちらについては、特に最近ではよく用いられる手法なので、ミステリに読み慣れている人ならばひょっとして途中で気付くかもしれない。私もそうだった。

 ただ、仕掛け自体はなんとなく推理できても、その真相、真犯人は予想外だった。それは、読者の主人公への共感をひっくり返すという、もう一つの意味での「どんでん返し」があるからだ。
 孤立しながらも冷静さを失わず、自身の信念のままに捜査を進める捜査一課長・佐伯にほとんどの読者が共感するだろう。そして、最後には周りの風評をひっくり返して事件を解決し、留飲を下げるという展開を期待して読み進める。
 そういう読者の期待を完全に打ち砕き、真逆に落として物語を絞めるという、こちらこそが本作の「どんでん返し」のメインではないか。
 これまでの書評にあるように、この展開は非常に賛否両論であろうことが予想される。「読後感が悪い」という感想もうなずける。
 だが、ある意味「孤軍奮闘する刑事が、最後に真相にたどり着く」というオーソドックスな不文律をぶち破った本作は、なかなかない読者への(私としてはよい意味で)裏切りで、傑作だったのではないかと思う。


No.547 4点 彼女は存在しない
浦賀和宏
(2018/09/02 08:15登録)
 ありがちな多重人格モノ、というのが正直な感想。
 多重人格をネタにしている時点でだいたいの目論見は分かるし、そうじゃない結末だったらスゴいのだが、実際その通りだったのでなんとも。
 解離性障害の種類をとりあげてトリックに絡めている点はなるほどと思えたが、途中の主人公の言動や、携帯のストラップの描写のくだりでだいたいは分かった。

 策を弄しすぎて「ややこしいな」と感じさせてしまうところもある。物語の描写自体は面白く、読ませるところもあるので、著者の他作品も機会があれば読んでみたい。


No.546 6点 顔に降りかかる雨
桐野夏生
(2018/08/25 19:08登録)
 ストーリーテラーとしての才はこのころから十分に感じられる。話、文章としては苦痛なく読み進められるリーダビリティがあり、その点では十分面白い。ただ、ミステリとして評価するとなると、やや厳しい評価になってしまうのも否めないかな。
 でも自分は、一旦決着がついたかに見える終盤のくだりで結構騙されていて、その後の「真犯人」は予想外ではあった。つまり騙された。そのことが推理できる伏線もちゃんとちりばめられていた(気がする)ので、よく練られた作品であったことは素直に感じた。

 それにしても、何をもって「ハードボイルド」というのか?昔からよく理解できていないが、本作が「ハードボイルド」と冠されることでますますわからなくなった。(決して「違うでしょ」という意味ではない。何せ、分かっていないので(笑))


No.545 7点 法月綸太郎の新冒険
法月綸太郎
(2018/08/25 17:21登録)
 他で読んでいた短編が結構あったので、今回読んだ感想とそのとき読んだ記憶と混ぜた書評になるが、少なくとも謎解きパズラーが好きな御仁であれば一定の満足感は得られる改作集。

「背信の交点・・・作中にも書いてあるが、清張の「点と線」を思い起こさせるような、駅での列車のすれ違いを題材にした話。どんでん返しもあり、◎。
「世界の神秘を解く男」・・・綸太郎が仕掛けたフェイクの実験の、真の狙いのくだりに感心した。〇。
「身投げ女のブルース」・・・後半の急展開、ひっくり返し方はこれが一番◎。「偶然が過ぎる」点には目をつむって楽しみたい。
「現場から生中継」・・・これもまた(というかこっちのほうが)「偶然が過ぎる」が、ネタの発想が面白い。◎。
「リターン・ザ・ギフト」・・・単純な交換殺人に見せかけて、その裏に複雑に絡んでいた仕組みの解明が面白い。〇。

と、少なくとも△はない。楽しめる短編集だった。


No.544 6点 幻夏
太田愛
(2018/08/19 22:22登録)
 「天上の葦」を読んでから、遡って読んでいる。
 鑓水たちが調べていくうちにどんどん謎が深まっていって、「何だ?真相はどういうことなんだ?」と早く知りたくなりページを繰る手が止まらないリーダビリティはある。
 ただ、「被害者がやむを得ず加害者になってしまった」ことに同意・共感できるのも限度があり、ためらいなく無辜の人間を屠ったり、唯一無二の肉親を屠ったりするところまで行くと、本作のテーマである「冤罪被害者」への思いも薄れてしまう。
 一方で、その冤罪を生み出した警察組織側の人物の終末も消化不良で、まぁそれが現実と言えば現実なんだけど、ある程度の勧善懲悪ぶりを貫いてほしかった。


No.543 9点 天上の葦
太田愛
(2018/08/19 11:00登録)
 正午の渋谷交差点で、歩行者が皆渡り終え、歩道へと引いていった後、中央に一人の老人が残って立っていた。車のクラクションが飛び交う中老人はまっすぐに点を指差し、そのまま絶命。奇しくもその様子は、いつも冒頭映像として渋谷スクランブルの中継映像を流している正午のニュースにより、全国にライブ中継されていた。
 「老人が何を指差していたのかを解明せよ」―訳あって倒産目前となっていた鑓水探偵事務所に、そんな依頼を持ち込んできたのは天敵ともいえる政治家の使い。依頼元には不本意な思いしかないが、鑓水はその依頼を受け、仲間と共に真相解明に乗り出す―

 上記の老人の死の真相解明と並行して、失踪した警察庁公安刑事の行方を追うストーリーが描かれる。やがて両者は交差し、日本の暗黒の歴史を背景とした物語へと広がっていく。
 非常に読み応えがあり、厚みのある内容に満足した。今の政治社会情勢を鑑みると、いろんな意味で考えさせられる作品。


No.542 5点 ドロシイ殺し
小林泰三
(2018/08/19 10:35登録)
 このシリーズも3作目。別世界の住民と、アーヴァタールという関係で同一人物(?)としてつながっている、という設定にも慣れてきて、読み易くなったが、同時にトリックも見えやすくなってきた。
 今回のトリックも、当然この世界設定を生かした一種の叙述トリックだが、予想の範疇で「あぁ、やっぱり」という感じだった。

 登場人物のおバカなキャラクターと、その呑気なやりとり中に淡々と描かれる残酷な描写、というミスマッチな感じが読んでいて楽しいが、ミステリとしては1作目以上の驚きをもたらすのは難しいのではないかと思う。


No.541 5点 罪びとの手
天祢涼
(2018/08/19 10:24登録)
 廃ビルで中年男性が、頭部を打撲して死んでいた。争った形跡もなく、事故で処理されようとするが、現場に駆け付けた一課刑事・滝沢は、死亡推定時刻よりも2日も前で止まっている腕時計に不審を抱く。そんな中、身元不明だった遺体の身元が偶然判明する。一時保管のために遺体の引き取りに来てもらった葬儀社の社長・御木本が、「この遺体は私の父だ」と言ったという。この奇妙な偶然に、ますます滝沢の疑念は深まる。これは事故ではない、殺人だ、だとすれば犯人は―?

 生前に「俺の葬式は挙げないでくれ」と言っていた父の意向を無視して、大々的な葬儀を行おうとする御木本、遺体と対面した際に強い違和感を感じた、長男である御木本の兄など、謎めいた登場人物の言動により不可思議さは膨らんでいく。
 しかしそれを受け止めるラストがやや期待外れだった。「それはナシになったんじゃなかったのか?」と感じられるネタだったのと、葬式の場での参列者を前にした真相解明というのがパフォーマンス感が強すぎて、鼻白んだところがあった。


No.540 7点 悪魔を憐れむ
西澤保彦
(2018/08/19 09:57登録)
 匠千暁シリーズの中・短編集。本格志向の作家さんらしい、趣を凝らした作品ぞろいでよかった。
 私としては4作品のうちの後半2作品が気に入った。
「意匠の切断」は、3人が殺された殺人事件で、そのうちの2人だけが頭部と両手首を切断され、別々のところに遺棄されていた謎から真犯人を追う。遺棄されたそれぞれの場所と、第一発見者の共通点を糸口にしてその意味を解明し、真相へと辿りつく過程は読み応えがあった。
「死は天秤にかけられて」。ボアン先輩と飲んでいた時、店の公衆電話で話している男の言葉が聞こえてきた。男の話す内容も気になるものだったが、さらにその男は千暁が先日あるホテルでも見かけ、印象に残っていた男であることを思い出す。その時の様子と、今聞こえてきた男の言葉から、状況を推理しだす2人―と、「9マイルは遠すぎる」的なスタイルの話。これは、ありがちな人間の心理を非常に上手く取り上げて仕掛けがされていて、作者の着眼点の面白さに楽しませてもらった。


No.539 7点 殺意の隘路
アンソロジー(出版社編)
(2018/08/05 21:40登録)
青崎有吾「もう一色選べる丼」
赤川次郎「もういいかい」
有栖川有栖「線路の国のアリス」
伊坂幸太郎「ルックスライク」
石持浅海「九尾の狐」
乾 ルカ「黒い瞳の内」
恩田 陸「柊と太陽」
北村 薫「幻の追伸」
今野 敏「人事」
長岡弘樹「夏の終わりの時間割」
初野 晴「理由ありの旧校舎」
東野圭吾「ルーキー登場」
円居 挽「定跡外の誘拐」
麻耶雄嵩「旧友」
若竹七海「副島さんは言っている 十月」

・・・とまあ、少しでも近年の国内ミステリに通じている人ならば、目を見張るような豪華布陣。
どれも他誌に掲載されたものを集めているので、ひょっとすると既読のものもあるかもしれないが、当然すべて一定の質が担保されていて間違いはない。
青崎有吾、今野敏、初野晴などは、著者の一つのシリーズ物の短編なので、もちろんそれを知っていなくても内容は分かるが、読んでいるシリーズだとなお面白さが深まる感じはあると思う。


No.538 8点 希望が死んだ夜に
天祢涼
(2018/08/05 18:57登録)
 古い空き家の洋館で、女子中学生・春日井のぞみが首吊り死体で発見された。警察は現場から走り去ろうとした冬野希(ネガ)を逮捕。ネガは「自分が殺した」と言い、それを受け入れればそのまま翌日には送検となる。ただ、ネガは犯行を認めつつも、その動機に関しては一切語らない。捜査を担当した捜査一課の真壁は、初陣となるこの件にケチをつけたくないという思いで全容解明に臨む。しかし一緒に捜査をすることなったのは、生活安全課の女性警官、仲田。少年犯罪を多く手掛けてきた仲田は、何かにつけて当事者であるネガら若者たちの心情を「想像」することを重んじる。そんな仲田のやり方に歯がゆさを感じる真壁だったが―

 スタートは動機を探る「ホワイダニット」のようでありながら、実際はそれにはとどまらない奥深さがありそうなのが読み進めるにしたがって分かりだす。少年少女の気持ちを汲み取ることを重んじる仲田に始めは反発を感じていた真壁だが、事件の真相に迫るうちに次第に彼女を信頼していく。
 一旦事件が収束したように思わせた後のひっくり返し方も見事で、よく練られた構成と、瑞々しい十代の世界を描き切る筆致に吸い寄せられて一気に読めた。


No.537 7点 婚活中毒
秋吉理香子
(2018/08/05 18:08登録)
 「婚活」をテーマにした短編集。結婚を渇望する男女が、いろんな思惑で婚活をする中で騙し騙されるというミステリ。
 「理想の男」「婚活マニュアル」「リケジョの婚活」3本は、何というか「女の怖さ」を描いたミステリ。いかにもありがちな婚活風景の中で、上手く仕掛けを施していて、読み易いし面白い。最もミステリ的なのは最初の「理想の男」かな。
 「代理婚活」は、本人はその気がないのに親が息子の婚活に励む話。父親が暴走して危うい展開になるのだが、ラストにどんでん返しがある。
 それぞれに技巧が感じられる、良質な短編集だと思った。


No.536 8点 硝子のハンマー
貴志祐介
(2018/07/28 15:45登録)
 「密室トリック」というのは既にやり尽くされてしまったという諦観を、吹き飛ばしてくれた。こんな斬新なトリックが生まれるのなら、まだまだ捨てたもんじゃないなぁ、と思った。数ある密室ものの中でも、印象に残る作品。
 作者としても満を持して臨んだ様子がうかがえ、前半では別解が一つ一つ丁寧につぶされていく。ミステリとして非常にフェアだとは思うが、ちょっとその部分が長いなぁとは感じた。
 後半は犯人の視点から、犯罪を犯すまでの過程が描かれていくのだが、こちらは非常に引き込まれる展開で、長い作品ながらも飽くことなく読み進めることができた。

 「鍵のかかった部屋」や「狐火の家」などのシリーズの後発作品を先に読んでから読むと、榎本と青砥弁護士の関係性(というか榎本の青砥への態度)が、始めは微妙に違うなーと感じた。簡単に言うと、青砥弁護士の評価(能力的にも女性としても)が、結構この最初の作品では高い感じがする。後発作品ではどちらかというと、「トンデモ推理をする天然弁護士」と「理知的で冷静な泥棒探偵」というイメージが強いのだが・・・

 何にせよ、本作品の密室トリックはとてもよかった。介護ロボット等、周辺の設定も無理なく、そして必然性をもって筋に絡んでいて、非常に上手いなぁと感じた。


No.535 5点 狐火の家
貴志祐介
(2018/07/28 15:29登録)
 密室殺人を題材とした、トリック重視の短編集。防犯探偵・榎本&女性弁護士・青砥純子のシリーズ。謎解き主体のミステリをお手軽に楽しむにはよい一冊。
 私としては2つめ「黒い牙」と3つめ「盤端の迷宮」が面白かった。どちらも、トリックとそれが解明されていくプロセスが、本格ミステリらしいものだった。
 最後の「犬のみぞ知る」は完全にギャグ。読んでいて笑いが止まらない。「硝子のハンマー」で登場した元秘書が登場するのだが、その元秘書も含めて劇団のメンバーがホントにおバカで・・・読んでいると、一人で笑ってしまう。さぞかし周りからは変に見られるさまだっただろう。

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