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ミステリの祭典

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狐火の家
防犯探偵・榎本径

作家 貴志祐介
出版日2008年03月
平均点6.12点
書評数16人

No.16 6点 パメル
(2024/01/10 06:53登録)
セキュリティの専門家・榎本径と、弁護士・青砥純子の掛け合いが楽しい、密室の謎に挑む4編からなる短編集。
「狐火の家」地方の一軒家で起きた事件は、現場の状況から殺人事件と断じられたものの、密室状態であったことがネックとなり、第一発見者である父親が容疑者に。いわゆる多重解決ものだが、解決のつけ方以外にも、犯人の思考や密室にも見るべきものがあり完成度が高い。二転三転するプロットの密度が濃く、長編として読みたかった作品。
「黒い牙」蜘蛛愛好家が蜘蛛に噛まれて亡くなってしまう。扱いには慣れていたはずなのになぜか。とあるものに仕掛けられたものには唖然とするしかない。
「盤端の迷宮」殺された棋士・竹脇の部屋は密室状態だった。なぜ密室にしたのか。そこから導き出される犯行動機こそが眼目というべきだろう。謎を解くヒントは将棋であり、将棋に対する作者の思いが込められている。
「犬のみぞ知る」以前扱った事件で知り合った、松本さやかが所属する劇団の代表が殺された。被害者はよく吠える犬を飼っており、その犬が意図せずして密室を構成する要素になるのだが。脱力もので馬鹿馬鹿しさが光る。

No.15 5点 いいちこ
(2021/07/30 21:02登録)
表題作のみが及第点のデキ。
「黒い牙」のフィージビリティは相当に疑問であり、強く不満が残る。
「盤端の迷宮」「犬のみぞ知る」は平凡な作品

No.14 7点 nukkam
(2020/12/25 21:38登録)
(ネタバレなしです) ホラー作家としての地位を築き上げた作者がたまには他のジャンルも書いてみるかと思ったか、本格派推理小説の「硝子のハンマー」(2004年)を発表したのは本格派好きの私にとっては嬉しい驚き以外の何物でもありませんでしたが(しかも傑作だったので嬉しさ倍増)、続けて同じ探偵役のシリーズ第一短編集である本書を2008年に発表したのでまたまた嬉しい驚きです。収められたのは3つの中編と1つの短編ですが個性派揃いです(しかも全部密室を扱っている)。「狐火の家」はワトソン役の青砥純子が怒涛の勢いで次々に推理を披露しては探偵役の榎本径が片っ端から否定していく展開は中編とは思えぬ密度の高い謎解きです。「黒い牙」は毒蜘蛛に殺されるという設定もさることながら、ホラー作家ならではの演出と独創的なアイデアとしっかりした推理が用意されていて最も印象的でした。これに続く「盤端の迷宮」はややインパクトが弱く感じますが、榎本が最初から捜査に参加し純子が後から登場して榎本を攻め立てる、いつもと逆の展開が新鮮です。これまで読んだ作品で純子が榎本に苦手意識を感じているのはわかりますが、意外にも榎本の方もだったというのがおかしいです。「犬のみぞ知る Dog Knows」は何とユーモアを通り越してギャグ連発の楽しい本格派。こんな笑える作品も書けるとは。

No.13 6点 まさむね
(2019/12/15 21:58登録)
 防犯コンサルタント探偵・榎本経と弁護士・青砥純子のコンビによるシリーズ第2弾。短編ごとに簡単な感想を。
①「狐火の家」:魅力的な謎に比して真実は…という面も無くはないですが、謎はなかなかに魅力的。この分量で(一応の)ダブル密室を持ち込みつつ、反転を噛ませる心憎さ。
②「黒い牙」:トリックにはちょっと無理があるような気もしますが、ラストが印象的。
③「盤端の迷宮」:ハウと見せかけたホワイ。一方で偶然性の強さは気になる。
④「犬のみぞ知る」:箸休め的なユーモアミステリー?
 個人的には①が好みだけれども。独創性と印象深さでは②に軍配かな。

No.12 5点 HORNET
(2018/07/28 15:29登録)
 密室殺人を題材とした、トリック重視の短編集。防犯探偵・榎本&女性弁護士・青砥純子のシリーズ。謎解き主体のミステリをお手軽に楽しむにはよい一冊。
 私としては2つめ「黒い牙」と3つめ「盤端の迷宮」が面白かった。どちらも、トリックとそれが解明されていくプロセスが、本格ミステリらしいものだった。
 最後の「犬のみぞ知る」は完全にギャグ。読んでいて笑いが止まらない。「硝子のハンマー」で登場した元秘書が登場するのだが、その元秘書も含めて劇団のメンバーがホントにおバカで・・・読んでいると、一人で笑ってしまう。さぞかし周りからは変に見られるさまだっただろう。

No.11 5点 青い車
(2017/01/23 23:49登録)
 丁寧な推理のプロセスとよく練られた構成がすばらしかった長篇の『硝子のハンマー』は好みでしたが、この短篇集はアイディアは良くても爆発力に欠けるものが多いように感じました。遊びの少ない文章も、今回は長所というより短所に見えてしまった感があります。強いてベストを挙げるならどう密室を作ったかよりも動機が鍵となる『盤端の迷宮』でしょうか。

No.10 6点 りゅうぐうのつかい
(2015/10/13 19:38登録)
貴志さんの本を読むのは、これで7作目だが、過去に読んだ6作品はどれもがすばらしく、私にとっては10割打者であったが、初めて、読んでも読まなくてもどちらでも良かったと感じた作品。
「狐火の家」と「黒い牙」は、どちらも真相が拍子抜け。
「盤端の迷宮」は将棋の棋士の発想が随所に盛り込まれており、コンピューターやITの出現に関する問題提起もあり、この作品集の中では一番面白いと感じた。ドアチェーンがかけられていた理由は、ちょっと苦しくもあるが、この作品らしい真相。
「犬のみぞ知る」は筒井康隆作品に出てくるような登場人物たちによるドタバタ劇だが、たった一つの事項の気付きによって、真相が指摘されているのが面白い。

No.9 6点 あびびび
(2014/11/02 23:32登録)
表題作は、密室が見る角度によって難解度が異なる点が興味深かった。ちがう切り口から推理すれば、その犯行現場は、密室ではなくなるからなあ。

最後の「犬のみぞ知る」は、何もかもが浮かれすぎ。その劇団がいくら変人揃いと言っても、限度がある…。でもそれを意図してできた作品だから仕方ないか…。

No.8 7点 りらっくま
(2014/05/06 18:40登録)
ネタばれあり







狐火の家 8点
警察犬が臭いを追えなかったとあったけど
厠のところまでは追えたんじゃないかと・・・

黒い牙 7点
純子が現場に行くまでネコと勘違いしてたのが笑えたw
裁縫好きが伏線だったとは・・・

盤端の迷宮 7点
菜穂子が現場に呼ばれた最初に(1六桂)マグネット盤の駒を取ったのが引っ掛かってた・・居酒屋での携帯の話の時の菜穂子の様子も引っ掛かってた・・・

犬のみぞ知る 4点
余興的小説。

No.7 7点 mohicant
(2013/08/05 22:43登録)
 二話目の黒い牙がミステリとしては今までに読んだことがないタイプの話で面白かった。

No.6 7点 白い風
(2012/08/28 21:58登録)
大野くんのドラマを見てから読みました。
4作品ともドラマで見てたけど、楽しました。
キャラはテレビとは違ってましたね。
個人的には原作の方が好きかな。

No.5 6点 haruka
(2011/11/24 19:53登録)
榎本・青砥コンビの軽妙なやり取りが楽しめる作品。このコンビは重厚な長編よりも、本作のような手軽に楽しめる中短編向きかもしれない。黒い牙のトリックはこの人にしか書けないだろう。

No.4 7点 E-BANKER
(2011/10/05 22:32登録)
作者唯一の本格長編ミステリー「硝子のハンマー」に続く、防犯探偵シリーズ第2弾。
セキュリテイ会社社長且つ犯罪者(?)でもある榎本と、美人弁護士・純子とのコンビが「密室」の謎に挑む。
①「狐火の家」=田舎にある古い日本家屋で起こった密室殺人、って書くと、何だか「本陣殺人事件」を思い起こさせますが、そんなに精巧(?)な密室ではありません。1箇所だけ空いていた窓がどういう意味を持っていたのかが事件の鍵に・・・
②「黒い牙」=これは「何とも言えない」・・・ある意味相当グロい作品。気味の悪いある生き物と、その生き物を愛でるマニアの間で起こる殺人事件。これってやっぱり「遠隔殺人」になるんでしょうね。しかし、このトリックを実行できる「犯人」には恐れ入る。
③「盤端の迷宮」=鍵どころかチェーンまで掛かったホテルの部屋での密室殺人。これが一番本当の「密室」らしい作品でしょうか。将棋界の裏側で起こっている問題(本当?)を絡ませ、真犯人&被害者の心理から発生した「密室」・・・なかなか面白い作品。
④「犬のみぞ知る」=これは、作者らしからぬバカミス! ただ笑うしかないオチとキャラクター。こんな作品も書けるんですねぇ。
以上4編。
本シリーズらしく、すべて「密室殺人」を扱った作品集。
ただ、「密室」とはいっても「硝子のハンマー」のように「ハウダニット」に拘った堅牢な「密室」というよりは、「ホワイダニット」に焦点を当て「密室」を構成するに至った過程に拘っている印象。
榎本&純子のコンビもすっかり板についていて、こんな軽いタッチの作品も楽しませてくれる作者の力量に改めて感服しました。
こういうホラー以外の作品もたまには出してほしいね。
(②は個人的にとにかくグロかった。夢に出てきそう!)

No.3 5点 3880403
(2011/05/12 14:51登録)
密室殺人の短編集で読み易い。
「硝子〜」のほうが面白かった。

No.2 6点 minii
(2009/12/03 23:51登録)
おなじみのコンビ、いろいろな密室トリックが楽しめた。

*少々ネタばれ*
特に気に入ったのは3話目、勝手な棋士のイメージを見事にミスリードされた気分。

2話目は、私も生理的に受けつけずかなり流し読みになってしまい悔しい。

あえて、欲張ったことを言えば、せっかくの続編、2人の関係にもうちょっと進展やら絡みが欲しかった。

No.1 7点 江守森江
(2009/06/24 09:08登録)
「硝子のハンマー」の続編になる連作短編集。
この探偵達には「密室」はお約束。
無理やりかなと思えるトリック、犯人との対決、犯行の決め手等、内容がバラエティーに富む。
探偵達のユーモラスなキャラが前作以上に立ってきた。
探偵達の登場場面が多い短編集での続編が待たれる。

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