宿命と真実の炎 西條刑事シリーズ |
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作家 | 貫井徳郎 |
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出版日 | 2017年05月 |
平均点 | 7.33点 |
書評数 | 3人 |
No.3 | 7点 | レッドキング | |
(2019/03/08 17:00登録) 連続警官殺しのフーダニットホワイダニット。偽の連続と真の連続、連続と不連続、思い込みと操り、「レクター博士とクラリス捜査官」・・・。 「後悔と真実の色」の続編で相変わらず面白いが、前作では それぞれ一癖あって「犯人」の可能性さえ匂わせていた刑事達も すっかり「善玉」にキャラ付けされて、その分だけ緊張感がなくなってしまった。またタイトルのダサさは前作を一回り上回った。 が、ヒロイン女刑事の設定が良い。「容姿が平均に満たなく」て、「陰でブス呼ばわりされて」いて、「可愛げのない三十路女」ってのが良い。普通、ヒロインには、とびきりの「いい女」をキャラ立てして来るだろうに。 |
No.2 | 7点 | HORNET | |
(2018/09/11 21:00登録) 警察を馘になり、一度はホームレスにまでなった西條が、兄の計らいで会社勤めに復帰し、捜査一課の捜査のアドバイザーとなる、「後悔と真実の色」に続くシリーズ。期待に違わぬ面白さだった。 今回は女性刑事・高城理那が新たな登場人物として加わり、先輩村越らの勧めを受けて西條に相談をする。その構図により西條が事件解決に関わっていくという展開だが、西條が社会復帰後に通うようになった古本屋の主人がそこに絡んでくる物語構成も面白く、作者の腕を感じる。 事件は警官の連続殺人事件だが、その首謀者(つまり真犯人)解明に関する仕掛けも練られていて、ミステリとしてもきちんとした体をなしている作品であり、前作同様いろいろな要素で楽しめる一冊である。 氏の長編を読むのは4作目だが、最後を一件落着で終わらせない、ダークな結び方はひょっとして彼の特徴なのか?救われなさが一定程度必ずあるのは、デビュー作「慟哭」以降ずっと感じるなぁ。 十分に面白かったが、7点止まりなのは前作「後悔と真実の色」に8点をつけており、それと比較したときに、犯人の動機に若干の薄弱さを感じたため。 |
No.1 | 8点 | 初老人 | |
(2017/08/26 15:52登録) 本書は第23回山本周五郎賞を受賞した前作『後悔と真実の色』の続編として執筆された作品である。 前作をよく知っている立場の私としては物語の行方は勿論、西條のその後を知りたくて手に取った次第だが、期待を裏切らない出来に仕上がっていた。 この作者の特徴として物語の流れを多少悪くしてでも主要な人物に過酷な体験をさせてその人物の心情を深く掘り下げる、というものがあると思う。『後悔と真実の色』ではそれが西條の転落、という形を取って現れていたが、本作でもそのテクニックは健在であった。 前作から登場しているメンバーのうちのある一人が、その特異な能力によって事件解決に寄与するというのも堪らない。 全体として前作同様面白く読めたのでこの点数とした。 |