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ミステリの祭典

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婚活中毒

作家 秋吉理香子
出版日2017年12月
平均点6.50点
書評数6人

No.6 5点 E-BANKER
(2024/08/31 13:21登録)
~運命の出会いは命懸け。「暗黒女子」の作者が贈るサプライズ満載の傑作ミステリー~
月刊ジョイ・ノベル誌に不定期に連載された作品を集めた連作短編集。
単行本は2017年の発表。

①「理想の男」=これが一番ドンデン返しがうまく嵌っている。アラフォー女性が藁をもすがる思いで入会した結婚相談所。紹介された男は思いのほか高スペックの「上物」。でも、過去の女性たちを辿っていくうちに不穏な空気が押し寄せてくる・・・。ラストはまさに暗転。
②「婚活マニュアル」=これもラストに軽くひっくり返される。婚活BBQで知り合ったとびっきりの美女と付き合うことになった幸運な男。しかし、その美女はどんでもなく金遣いの荒い女性だった。でもって、「ブサイク」な方の友人、でも料理がうまくて、切り盛り上手な女性に徐々に惹かれていくのだが、実はその女性は・・・。で更なる災厄が迫る。
③「リケジョの婚活」=そういや最近見なくなったな、ナイナイがやってた「大規模お見合い番組」(コンプラ的な問題があったのかな?)。それを完全にパクったのが本編。最後の告白タイムで見事にフラレてしまうのだが、実はその後にもリケジョらしい魂胆があって・・・
④「代理婚活」=実にイタイお話である。いわゆる親どうしが代理でお見合いをする婚活。子供にとっては「大きなお世話」である。普通は。しかも本編の父親。あろうことか先方の母親に恋してしまう。そして、何とかその母親に会うためにイタイ行動を繰り返すことに・・・。でも、最後はいい話になる。なぜ?

以上4編。
なかなか面白くはあった。でもちょっと安直かな。
全体的にネタの安易さが気にはなった。それと、ミステリー要素は極めて薄味。捻りもそれほどなし。
だから評点としてはこんなものになるんだけど、読み物としては気軽に読めて、そこは良い。
(一番シンパシーを感じるのは、②の美女に振り回される男。男は結局ルックス重視からは逃れられない、でしょ?)

No.5 5点 ことは
(2023/10/21 19:04登録)
婚活を絡めて、きっちりキャラクターをたてて、最後にはきれいに反転を決める。よくできた短編集。なのに、何故かあまり刺さらなかった。
ということで、刺さらなかった要因を自己分析してみた。
まず、キャラクターについて刺さらなかったのは、作品をコメディ・タッチにしようとして、キャラクターも少し戯画的になっているためだったと思う。「日常の謎」には好きな作品も多いが、私の場合は、それはキャラクターに共感できてこそだが、本作は戯画的になっているので、共感というより、一歩引いて眺めるようになっていたからだと思う。
反転については、新本格以降の「どんでん返し」というより、ヘンリー・スレッサー風の「ラストを気の利いた反転で締める」とというものだったからだと思う。ヘンリー・スレッサー風は、そんなに好きではないんですよね。
(もう、ヘンリー・スレッサーがわかるのも、年寄しかいませんね。違いをもう少し補足すると、新本格以降の「どんでん返し」は、伏線を丁寧に張り「これしかない」感を強く出し、物語全体のイメージを変更するものという感じ。ヘンリー・スレッサー風といったのは、そこまで伏線が強くなく、物語全体のイメージは変わるほどではないが、「あ、そういうことか」と物語がきれいに収束するといったところ)
私には刺さらなかったが、キャラクター/ストーリーとも、刺さる人には刺さると思うので、気になる人は読んでください。あと、リーダビリティは抜群です。

No.4 7点 パメル
(2023/09/30 19:10登録)
婚活に伴う切実さをリアルに描きつつ、ブラックな味わいたっぷりの4編からなる短編集。
「理想の男」結婚相談所に登録した沙織。相談所から理想の条件に合う男性を紹介されるが、彼が今まで付き合ってきた女性が全て亡くなっていたことが分かる。彼の本性が明らかになると思いきや、まさかのオチに思わず唸った。
「婚活マニュアル」圭介は、気軽に婚活出来そうな街コンに目を付ける。そして初心者向きというBBQ街コンに参加する。ある女性と付き合うことになるが、女性たちの策略に踊らされる結果に。計算高い女の怖さが実感できる。
「リケジョの婚活」テレビのお見合い番組「ミッション縁結び」に出ていた、次回参加者男性に一目惚れした恵美は、その男性目当てに参加を決意する。シミュレーションし分析、修正を繰り返すデータ主義にゾッとさせられる。
「代理婚活」益男の息子・孝一は、恋愛に興味がなさそうで、それを心配して息子に代わり妻と代理婚活に参加するが、あろうことか益男は、相手の母親に心を奪われてしまう。本質を見抜くしっかりした息子に拍手。ホッとするオチ。益男にはいい薬になったのでは。
本音と建て前、理想と現実、計算と打算が暴かれる。いずれも皮肉な結末だが、考えさせられる部分もあり、イヤミス好きな人には特にお勧めしたい。

No.3 8点 ミステリーオタク
(2023/04/01 22:34登録)
 そういうジャンルがあるのか知らないが「婚活ミステリ」短編集。全4話。

《理想の男》
 失恋した主人公が結婚相談所の紹介で理想の男性と出会うが、やがて疑惑の数々が・・・どうまとめるかと思えば、そうきたか・・・これはヨメなかった。

《婚活マニュアル》
 出会いパーティーから始まり、割とありがちなラブ・ストーリーかと思いき・・・・・・これはヨメた。

《リケジョの婚活》
 昔、こういう出会いの場をセッティングして、多くの男女に恋愛バトルを繰り広げさせるTV番組あったよね。今でもあるのかな。でも本作のような泊まりがけのプログラムで、尚かつ相手の実家に行ったり、そこで家族がゾロゾロ出てきたりというのは今も昔もないんじゃないかな。しかし本作ではそれが伏線に・・・

《代理婚活》
 何年か前にテレビなどで話題になっていた、親による「代理婚活」。今でも盛んなのかな。まあ、結婚は両者の家族の実情を切り離してできるものではないから悪くはないと思うが・・・


4話とも現実的な婚活話で始まり(第1話以外は)とてもミステリなど出てきそうもないストーリーが、やがて現実ではほぼあり得ない展開を見せるところが凄い。

(ネタバレ的感想)
 

 前半の2話は完全にイヤミス。3話目はハッピーエンドともバッドエンドとも言えないがちょっと気持ち悪い。最終話は唯一「いい話」と言えるだろう。


私は30回婚活パーティーに出席して20回見合いをして10年前の4月1日に結婚しました。

No.2 7点 メルカトル
(2022/12/20 22:23登録)
沙織が地元の結婚相談所で紹介された男・杉下はハンサムで真面目、収入も十分だ。しかし、相談所に入会して三年たっても結婚相手がみつからないという。何か裏があると感じた沙織は、これまで杉下が紹介された女性たちに会いに行くが、驚愕の事実が…(「理想の男」)。婚活をめぐり、運命のどんでん返しが待ち受ける、サプライズ満載ミステリー!
『BOOK』データベースより。

昨今、婚期が男女とも年齢的に上がっている現代だからこそのテーマに挑んだ傑作短編集。四編収録されていますが、どれも甲乙付けがたい逸品ばかりです。そして何と言ってもそのオチが素晴らしい。勿論そこに至るまでのストーリーも十分に楽しめます。流石に実力者だけの事ありますね。

婚活と一言で言っても様々な形態がある事に気付かされました。中には本人の代わりに両親同士が話し合いの結果、利害が一致すれば親子三人で改めて会うというのは初めて知りました。
結局本質はあくまでミステリであり、婚活という形を借りたに過ぎません。サスペンス風の物語あり、美女に振り回されながらなかなか離れられない男の悲しい性の話あり、男親が逆に婚活を通じて恋してしますパターンありと、作者はキレのあるストーリーテラーぶりを発揮していると思います。お薦めです。

No.1 7点 HORNET
(2018/08/05 18:08登録)
 「婚活」をテーマにした短編集。結婚を渇望する男女が、いろんな思惑で婚活をする中で騙し騙されるというミステリ。
 「理想の男」「婚活マニュアル」「リケジョの婚活」3本は、何というか「女の怖さ」を描いたミステリ。いかにもありがちな婚活風景の中で、上手く仕掛けを施していて、読み易いし面白い。最もミステリ的なのは最初の「理想の男」かな。
 「代理婚活」は、本人はその気がないのに親が息子の婚活に励む話。父親が暴走して危うい展開になるのだが、ラストにどんでん返しがある。
 それぞれに技巧が感じられる、良質な短編集だと思った。

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