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ミステリの祭典

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地獄の犬たち
「ヘルドッグス」/改題『ヘルドッグス 地獄の犬たち』

作家 深町秋生
出版日2017年09月
平均点5.67点
書評数3人

No.3 5点 八二一
(2020/08/09 14:36登録)
登場人物をとことん追い詰め、地獄を見せることで人間の本性を暴き出すノワールの真髄が感じ取れる作品。

No.2 6点 HORNET
(2018/09/11 21:28登録)
 暴力団に潜入した刑事、潜入捜査官の話だが、正体を知られないために極道に染まりきるレベルがハンパない。たとえ捜査のためとはいえ、刑事がこんなにも人を殺していいのか?(まぁ、いいわけないわな)
 とはいえそんな正論を吐いていては物語は楽しめないので(まぁ主人公・出月のその葛藤も物語の核ではあるのだが)、読者としてはそうした倫理観は一旦脇に置いておいて、ハンパないレベルの切った張ったの世界を楽しむとよい。

 裏切りに次ぐ裏切り、騙しに次ぐ騙しの中で、真相は何なのか?と展開を追いたくなる点では、ミステリとしても十分に面白い。「こいつは本当に味方なのか?」「どこまでを知っているんだ?」という探り合いの臨場感はぞくぞくするほどで、ページを繰る手が止まらないスピード感はある。
 ただこういう暴力団の裏のかきあいではえてして思うのだが、あれだけ裏切りや謀略に敏感な連中が、メインの仕掛けに対してはひっかかるのがちょっとご都合主義に感じるところがある。本作で言えば、拷問の末に阿内が白状した言葉を一も二もなく信じて、その場に駆け付けるくだりは、それまでの慎重さと対照的な短絡さを感じてしまった。
 他にも、たかが7年で広域暴力団のトップになれるのか?などさまざまな非現実性を感じる部分はあるが、そこはエンタメとして楽しめばよいかな、と思って楽しんで読んだ。

No.1 6点 小原庄助
(2018/01/29 23:00登録)
物語は、東京のやくざ組織・東鞘会に所属する兼高昭吾が、弟分の室岡とともに、ターゲットの男を殺す場面から始まる。兼高は警視庁組織犯罪対策部に所属する潜入捜査官で、警視庁を揺るがす秘密の排除が目的だった。その秘密とは何なのか。
刑事がやくざ組織に潜入して捜査をする話といえば、映画「インファナル・アフェア」など先行作品の通俗的な二番煎じと思うかもしれない。しかし読者の予想をはるかに超える緊密さと強烈なテーマに把握がある。
読者を釘付けにするのは、次第に見えてくる対抗する組織の熾烈な闘争であり、凄惨な暴力であり、そして善も悪も正義もない混沌とした世界でのたうつ者たちの狂気と絶望と慟哭だ。
タイトルの「地獄」とは(表紙から見ればわかるように)「地獄の黙示録」からとられている。事実、闇の奥でしか見つからない真実を求める探索行は、どこまでも血みどろでありながら崇高さも帯びている。

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