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ミステリの祭典

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乱反射

作家 貫井徳郎
出版日2009年02月
平均点5.83点
書評数6人

No.6 5点 八二一
(2020/01/23 20:09登録)
誰でも、いつでも殺人者になりうるというリアルなイヤさ満載。私たちが生きることの世界そのものの実相を描いた作品。

No.5 7点 HORNET
(2018/09/02 09:09登録)
 発想・着想の面白さ。複数の無関係な人たちの「ちょっとした」日常が、一つの事件に収斂していくという形は、奥田英朗の作品にちょっと似ている気がする。

 「自分一人ぐらいいいだろう」「これくらい、誰だってやっている」・・・そんな誰もがもっている人としての弱さ・醜さからの行為が連鎖して、ついには幼児を死なせる大事故に。我が子の死の真相を知ろうと、その連鎖を手繰っていく新聞記者・加山が、当事者に対面し、その行為を問い質す度に「自分は悪くない!」と開き直る様には不快感と怒りしか感じないが、自分に火の粉が降りかかりそうになったら必死で殻を閉じようとするのは、今の日本社会の本性なのかもしれない、とも思う。

 前半は個々バラバラのストーリーがいくつも同時進行するので、誰がどの人だったのか、混乱しがち。間を置くと余計に思い出せなくなるので、一気読みするのがオススメです。

No.4 4点 いけお
(2012/05/27 00:10登録)
ミステリ要素が無いのはいいとして、ラストまでの展開にもう少しひねりがあっても良かったのでは。

No.3 5点 3880403
(2011/04/05 23:32登録)
ミステリというよりモラルやら社会派ストーリー…
うまくできているが、ミステリ要素を期待していたので残念

No.2 7点 VOLKS
(2011/01/19 14:54登録)
重たい・・・。
これぞ貫井節、とにかく重たい。
「親の因果が子に報い」という言葉をまずは思い浮かべたが「子」の身に起こった「報い」は親を苦しめる。
「悪因悪果」という言葉の方が適切なのだろうか。
ただ、おそらく「これくらい」「自分くらい」という気持ちによる行動をしたことがない、という人はいないだろう。
その「これくらい」のことで子を亡くしてしまうとは、思いもしないだろう。
聖人君子として生きるのはなかなか難しく、かといってそこまで清く正しく生きることが出来るか?と問われると難しいが、問題定義の多い、辛く悲しく憤りを感じる作品だった。

No.1 7点 シーマスター
(2009/05/27 23:05登録)
粗筋だけを追うと強引で御都合な展開だし、細部のリアリティ面での粗雑さも目立つ・・・が、そんなことは些細なものに感じさせる貫井氏らしい人間臭濃厚なストーリーテリングと圧倒的なリーダビリティで一気に読まされる作品だった。

本作はある幼児の死亡事故を巡る物語だが、様々な形で死亡の原因の一端を担ってしまった多くの「関係者」は皆「善良な一般市民」であり、事故後司直に委ねられた唯一の人物を除いた彼らの「行い」は、褒められたものではないが到底「死の責任」を問えるものでもなく、常識に悖るとは言えそれぞれの「行い」に至るまでのそれぞれの生活背景や人生の描写は、それが愚かしくも悲しいどこまでも普通な人間達の行為以外の何物でもないことを実感させる。

また、この幼児の死は一見数々の偶然が天文学的に低い確率で重なって生じた悪魔的に不運な現象のようにも映るが、現実の日常的な事故や事件も掘り下げれば無限の場合分けと無数の組み合わせの交点として発生しているのだろうし、結局、世の中の全ての事象は過去のあらゆる因子の乱反射が結ぶ必然の像であり、その運命から逃れることはできないのだろう。

本作品の主旨が、日本人のモラル低下を嘆き「悔い改めよ」と啓発することにあるのかは分からない・・・・・・・・が、ラストは涙なしに読むことはできなかった。

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