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ミステリの祭典

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虫暮部さんの登録情報
平均点:6.20点 書評数:2149件

プロフィール| 書評

No.969 5点 クロウ・ブレイン
東一眞
(2021/05/21 14:52登録)
 確かに第一章末尾、“カラスの脅迫”シーンでは背筋がゾクッとした。それは単に鬼面を見せて驚かせたのではなく、幾つかのエピソードを重ねて編み上げた中身のある怖さだ。しかし物語としてはここが(早過ぎる)頂点だったかなぁ。
 主人公は馬鹿として上手く描けている。そしてそれ故に、共感するのは難しい。行動原理がマスコミの特権意識に基づいている感じもマイナス。作者も業界の人で、ならば“記者がやってはいけないこと”は判っている筈で、つまり狙って書いたのだろうか。匙加減を多少間違えている気がする。


No.968 8点 殉教カテリナ車輪
飛鳥部勝則
(2021/05/18 11:56登録)
 第Ⅱ部の視点人物である矢部直樹は、なんだか変な奴だ。
 絵のモデルが妻に似ていたので画家を調べ始める。画家の妻と話しているうちにぞっとする。事件の状況を聞いて驚いて大声を出す。――これらの場面を実際にストーリーに沿って読んでみると、なぜそこでそう動くのか、よく判らない。唐突に感情が沸点に達して、また唐突に平静に戻っているように感じられる。そういう不安定な類の人なのだろうか。
 但し、これはこれで“操縦不能のロボットに私の脳だけ搭載されている”みたいでなかなか得難い感覚ではあった。
 一方で、東条寺桂の手記は臨場感があり、謎の画家は見事に解体された。一見常識人の矢部がよく判らないままなのとは対照的だ。


No.967 6点 空棺の烏
阿部智里
(2021/05/13 11:38登録)
 長い話の分割ではなく、一冊ごとに趣を変え、しかもシリーズであることを逆手に取った背負い投げ。群像劇としてのキャラクター配分は相変わらず上手い。ラストの猿のくだりが付け足しみたいになっちゃったのは悩ましい。


No.966 4点 亜シンメトリー
十市社
(2021/05/13 11:34登録)
 文体がいかにもしゃらくさい。なにがしかのヴィジョンに基づく作戦なのだろうが空回っている。回りくどい書き方のせいで物語自体が腑に落ちないものに見えては本末転倒である。素直になろうよ。


No.965 6点 エッシャー宇宙の殺人
荒巻義雄
(2021/05/12 12:02登録)
 “幻想の都市/夢探偵”がキーワード、さまざまな齟齬が寧ろ作品の核を成している逆説的ミステリ。いつかこの本を夢の中に持ち込んで読み返したい。夢の論理ならスッキリ筋が通って楽しめるだろう。視覚的イメージをもっと鮮やかに読み取れると良かった。私も蜥蜴タクシーで階段を登ってみたい。


No.964 5点 幻の女
ウィリアム・アイリッシュ
(2021/05/12 11:56登録)
 一人の冤罪に対して、清廉潔白ではないにせよ極悪人と言う程でもない人たちが何人も亡くなる(バーテンダーは“事故”とされているが、なかなか悪質な追い詰め方だったと思う)。数の論理で言えば、おとなしく死刑になったほうがマイナスは少なかったわけで、サスペンスと言うより、思考実験めいたブラック・ユーモアの小説。

 私は、人間関係の偶然については狭量なので、犯人があんな渡りに船の状況で事件に関わる展開には頷けない。
 裁判で検察側が示したのは状況証拠ばかり。あれで死刑判決?
 死刑囚との面会の描写(監房に直接入って二人きりになれる)は史実?


No.963 5点 蟬かえる
櫻田智也
(2021/05/09 10:46登録)
 能力のある人が能力通りのものを書いた、との印象。いや、それは全然悪いことじゃないよ。作者の狙いはそれなりに読み取れたと思う。その狙いは充分に小説として具現化されていると思う。ただ、出来の良さに感心はしたが、心はそこまで弾まなかった。なんかもう一つ欲しいな~。虫のネタは色々面白かったけれども。


No.962 7点 けものたちは故郷をめざす
安部公房
(2021/05/07 10:35登録)
 敗戦と満州国崩壊を背景に、少年の苦行のような道行き。心身が蝕まれ歪になって行くさまや、執拗に描かれる荒野が、読者をも苦しめ苛立たせる。その筆頭は指を切る場面か。
 私なんぞは山田正紀の秘境冒険小説を思い浮かべて全然負けてないと呟いたりする。ん? どっちがどっちに?


No.961 6点 舞田ひとみ11歳、ダンスときどき探偵
歌野晶午
(2021/05/07 10:26登録)
 ひとみが推理しているわけじゃなくて刑事が勝手にヒントを読み取るのは赤川次郎“三毛猫ホームズ”方式? 小粒ながら良質な短編を巧みに並べて中粒くらいにはランクアップさせている。子供の描き方の匙加減も上手く、雰囲気の良さで勝ちだ。
 『名探偵、初心者ですが 舞田ひとみの推理ノート』として再刊。新作かと思った。こういう改題はやめて欲しいな。


No.960 5点 出版禁止
長江俊和
(2021/05/04 12:05登録)
 こういう入り組んだ構成も今となっては一つのスタイルとして確立されちゃっているので、先行例を踏まえた上での工夫が求められると思うのだ。前半のルポ部分は素直に楽しめたが、風呂敷を最後まで畳み切らないまま放り出してしまったような結末だ。
 取材の依頼者って誰。私が見落とした?


No.959 5点 櫻子さんの足下には死体が埋まっている ジュリエットの告白
太田紫織
(2021/05/04 12:01登録)
 鹿やブレーキの雑学が面白いのでもっと引っ張ってもいいのに。第弐骨の殺伐とした心象なども、ワン・パターンながら微妙な差別化を図っているようで、話の転がし方としては悪くない。


No.958 5点 親友記
天藤真
(2021/05/03 13:21登録)
 書き方が巧みなので、途中でネタが割れても最後まで楽しく読める。一方で、品の良さが災いしてか、強いインパクトには欠ける。
 そんな中では「誓いの週末」が、ジュヴナイルの枠組みに作風が上手く嵌まった佳作か。


No.957 7点 カンタン刑 式貴士 恐怖小説コレクション
式貴士
(2021/05/01 12:50登録)
 第一作品集と同題で紛らわしいが、こちらは著者の没後に編集された傑作選。短編「カンタン刑」が代表作なのは間違いないだろうし、目を引く字面なので止むを得ないか。さりげなく示される“刑の作り方”が怖い。かつて一通り読んだ身で言うと概ね妥当なセレクトだと思う。
 “怪奇小説”と謳ってはいるが、一般的に言われるところのそれではない。不快感を楽しむ小説? 奇天烈な設定やそれを深化させる展開部と比して、オチがあまり利いておらず、“物語”と言うより“絵”を見せるような芸風だ。幾分かの吐き気と共に拍手を送ろう。


No.956 9点 暗闇坂の人喰いの木
島田荘司
(2021/05/01 12:39登録)
 島田荘司作品で一番好きかも。
 私は、物理的な偶然には寛容なので、あのトリックはOK。但し位置関係が把握出来ず、あまり驚けなかったきらいはある。あと、水の溜まった空間が火事で熱せられたら水蒸気で破裂しない?
 死刑談議がいいね。私も将来ギロチンに掛けられることがあれば実験に協力したい。
 もとより名文美文の人ではないが、英国紀行はなかなか健闘していると思う。


No.955 6点 黄金の烏
阿部智里
(2021/04/30 12:10登録)
 悪役の血を吐くような叫びが胸に刺さった。浜木綿の何でも見透かしたような物言いも嫌な感じで良い。世界の謎を提示だけして全く畳まず、導入部の怪しい薬の件もいつの間にか吹っ飛んだのは物足りないが、まぁミステリじゃないからね。雑食性のファンタジーって感じで、そこも良い。


No.954 7点 櫻子さんの足下には死体が埋まっている 蝶の足跡
太田紫織
(2021/04/30 10:58登録)
 第弐骨。いつになく‟他人の事件に鼻を突っ込んでいる”感が強い。放っておけば某が巻き込まれて死ぬことは多分なかった。‟そういう事にもっと無関心になった方がいいよ”と言う台詞には胸を突かれた、良い意味で。
 このシリーズ、いつの間にか、語り手の揺れ動く心情の描写が鼻に付かなくなってきたな~。


No.953 7点 蒼海館の殺人
阿津川辰海
(2021/04/30 10:53登録)
 語り手の揺れ動く心情の描写が四角張った感じで煩わしい。ユウトの家での一幕は良かった。あなたが蜘蛛だったのですね。
 幾らかの齟齬と言うか記述の不備が含まれる気はするが、これだけ長々と読まされた後ではなんかもう検証する気力も失せた。この分厚さの狙いはそれか? とりあえず一点:文中とタイトルとで館名の表記が違うのは何故?


No.952 7点 ツングース特命隊
山田正紀
(2021/04/27 10:48登録)
 はみ出し者の愉快で不機嫌なチームの珍道中、と御馴染みの設定ながら、エンタテインメントのツボを押さえた書きっぷり。主人公のカラーが薄い気はするが、死に行くキャラクターをドライに描いて切なく読ませる技に酔いしれた。異国や魔境の旅情も満載。ところがこれでも山田正紀作品群の中では地味な方なのである。


No.951 4点 敗者の告白
深木章子
(2021/04/27 10:17登録)
 素人は論理的ではないダラダラした話し方で証言するものだなぁ、対して法曹関係者は正確を期して回りくどい説明をするものさ、と言うジョーク? 
 足引きの山鳥の尾の垂り尾の長々しい文書を読まされたけれど、それに見合う結末(主眼はトリックではなくホワイダニットだと思う)ではなかった。
 いかに子供とはいえ、手書きではなくPCを使っているのだから、あのメールの文章の設定(中途半端な漢字変換)は噓っぽい。わざわざ“山なし”とか、却って面倒だろうに。


No.950 7点 掟上今日子の鑑札票
西尾維新
(2021/04/24 11:47登録)
 ミステリとしては“書かないことで書く”みたいな感じで、ジャンルの枠組みを批評、と言うのはこの作者が何度もやっていることだが、今回は深読み必至。ただ、他のシリーズと重複しそうなネタを承知の上で書いたっぽいのはどうなんだろう。私は愛読者なのでニヤリと出来るけど。あーでも羽川翼みたいなキャラクターが『十二大戦』に出て来たりもしているから、単なる手癖?

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