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ミステリの祭典

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愛国殺人
エルキュール・ポアロ

作家 アガサ・クリスティー
出版日1955年07月
平均点5.82点
書評数17人

No.17 7点 虫暮部
(2021/12/23 12:54登録)
 加害者と被害者が同じ歯科医を選んだのは都合の良い偶然?
 あと、加害者側にとって、入れ替わりの必然性はさほど高くないよね。どうせ某も殺すんだから(→データのすり替えは簡単なのだから)、と行き掛けの駄賃みたいなもの?
 計画が凝り過ぎな気もするが、妻と秘密の生活を “楽しんで” いた加害者の人物像には合っているかも。この連続殺人も楽しかったんだろうな。結末でのポアロとのやりとりも、そう言っているように私には思えた。

No.16 5点 文生
(2021/10/06 09:50登録)
歯科医院を舞台にした殺人はなかなかユニークですし、複数の小粒なトリックを上手く活用した仕掛けもクリスティらしくて悪くないのだけど、なぜかのれない作品でした。やはり、クリスティのミステリーに政治的なテーマはそぐわないということでしょうか?機会があれば再読に挑戦してみたい作品です。

No.15 7点 蟷螂の斧
(2020/07/05 17:40登録)
本書は江戸川乱歩が選んだクリスティ作品ベスト8の一冊。「惜しげもなく大胆なトリックをいくつも織り込んだ、よく考えられた複雑な筋」と絶賛しています。何気なく読むと、大したトリックでもないような気がしますが、実は一点一点よく見ていくと本当に手の込んだトリックと分かります。

ベスト8(マイ評価・本サイト平均点)
「そして誰もいなくなった」(10点 8.67点)
「白昼の悪魔」(7点 7.08点)
「三幕の殺人」(5点 6.27点)
「愛国殺人」(7点 5.67点)
「アクロイド殺し」(10点 7.83点)
「ゼロ時間へ」(8点 6.38点)
「シタフォードの秘密」(6点 5.20点)
「予告殺人」(5点 5.74点)


【ネタバレ】
邦題は米国版「The Patriotic Murders」より。ダブルミーニングで大変良いと思います。

No.14 4点 レッドキング
(2020/04/11 00:36登録)
「従僕に英雄なし」ならぬ「歯医者の前に英雄なし」の話。顔無し死体トリックの一捻り発展形。これも「マザーグース物」って言えるのかな、でも見立て殺人でない所が良い。マザーグース見立ての始まりってヴァンダイン「僧正殺人事件」なんだろうか。「誰が殺したコックロビン」「小さな兵隊さん10人」始め、見立て殺人を面白いと感じたことがない。我が横溝の手毬唄見立て(あれは怖かった)を除いて。

No.13 6点 makomako
(2016/07/16 22:00登録)
 初めはやや退屈でしたが、中盤になり俄然面白くなった。最後にポアロの推理が来るのですが、内容はかなりこみ入っており分かりやすいとはいいがたい。つるつると読んでしまったが、本当は事件の真相がしっかりわかりませんでした。きちんとすじを通して読んでいかないとわからない気がします。
 昔は表にしてでも理解しようと頑張ったのですが、年のせいかこの頃はまあこれでなんだかよく分からないが解決したということでしょうといったかんじです。犯人が指摘されたらああそうですか、きっと正しい推理なんでしょうねえとすることとしています。
 でもまあ面白かったです。

No.12 8点 青い車
(2016/06/11 20:11登録)
 気に入らない人がいるのもわかります。批判する論者の意見で多くを占めるのが政治絡みの描き方が薄っぺらいというもので、それは至極もっともです。
 しかし、アガサ・クリスティーにそんな面白さを求めるのはナンセンスではないでしょうか。本作に関してはいくつものトリックを贅沢に盛り込んだ凝った謎解きを喜んで読むべきです。特に関心したのは顔の潰された死体の扱いで、その答も作者らしいさりげないヒントがあり好ましく感じました。
 そして、もうひとつ話題になるのが犯行の動機です。スケールがでかいようでいて詰まるところ実に卑しいもので、不思議な読後感を残します。そういう意味で『愛国殺人』はよくできた邦題と言えます。今日BSでドラマ版の再放送を観ましたが、そっちではポアロの犯人に対する糾弾の言葉があり、なかなかに爽快でした。

No.11 1点 クリスティ再読
(2016/02/21 21:17登録)
あれ、なんでこんなに評判いいの? 評者に言わせれば迷作「フランクフルトへの乗客」の前哨戦みたいな作品なんだけどな。昔ハヤカワで「世界ミステリ全集」ってあったけど、それで読んで全然ワケわかんなかった記憶があるよ(ちなみにクリスティの巻収録の残りは「そして誰も」と「フランクフルト」。いやはや)。
そりゃ体裁はポアロ登場の本格ミステリ風の作品だけど、犯行プロセスも納得しがたいものだし、動機に到っては...殺人じゃない解決方法がいっくらでもありそうな犯人なんだけどなぁ(嘆息)。
要するに、クリスティって人は政治オンチも甚だしいから、単にアイデアで考え付いた逆転ネタが、実社会ではトンチンカンなファンタジーでしかないことに理解できなかったようだ....チェスタートンならこれを「批判性のあるファンタジー」で造形できるんだけど、これはもうそもそもの素養の差だよ。チェスタートンならば「戦略的にカトリックというマイノリティの立場に自分を置いて、その視点で社会を切って」みせる冴えがあるんだけど、クリスティの根底にあるのはマジョリティの保守性だからチェスタートンの真似ができる、と思うのがそもそもの大間違い。
クリスティでも評者は無かったことにしたいくらいに嫌いな作品。ふう。

No.10 7点 ロマン
(2015/10/20 23:09登録)
老いも若きも地位も名誉も関係ない場所、それは歯医者。半年に一度の定期健診を嫌々受けにいったポアロ。晴れ晴れとしてそこを去った数時間後に歯医者が死んだ。一見自殺に見える現場だが、患者に英国随一の経済界の重鎮がいたことで殺人の疑いも出てくる。医者はテロに巻き込まれたのか、それとも…。複雑に織られた布の中の1本の糸を辿っていくような事件だった。

No.9 3点 斎藤警部
(2015/06/24 06:02登録)
数年前のこと、評判がいいので勇んで読んでみましたが、う~~ん、いったい何処が合わないんだろう、不思議だ! トリックもミスディレクシションも何だかなあ、悔しい事にさっぱり面白くなかった! 時を置いて再読したい。

No.8 7点 あびびび
(2014/07/08 22:44登録)
悪人が悪人ではなく、善人が善人ではなく…。人間社会の複雑さを浮き彫りにさせる作品だったが、決め手は題名どおりの「愛国殺人」だった。

ミステリを読み始めて10年余り。このサイトを知ってから有名作ばかり読んで来たので、読んで後悔する作品はほとんどなかったが、それでも自分に合わない本の後には必ずクリスティーを読んで満足感を得た。

もう50冊に近いから心細くなっている。

No.7 5点 メルカトル
(2014/04/14 22:38登録)
再読です。
翻訳物独特のしゃちほこばった文体が自分にはやはり合わないと、再認識させられた。とは言うものの、こなれた文章ではないにしても、決して読み難いわけではないと思う。ただ、なんとなく上滑りして、内容が頭の中にすんなりと入ってこない感覚を覚える。相当昔に翻訳されたというのも一つにはあるだろう。これを面白がって、感心しながら読んだ幼少期の自分を褒めてやりたい。既に私の灰色の脳細胞も老化現象が始まっていると思われる。
さて、事件は自殺か他殺か判然としない歯科医師の死体に始まり、かなり複雑な人間模様が繰り広げられる。途中まではさすがのポアロもお手上げ状態だが、ふとしたことから天啓を受け、そこからは一気に事件解決へとなだれ込む。途中顔を潰された死体も登場し、一見単純な入れ替わりかと思わせて実は・・・という、ミステリ読みの達人をも唸らせるようなさすがのトリックを弄したりして、クリスティの名に恥じない作品に仕上がっているとは思う。
やや真相が複雑なだけに、あまりインパクトがなくカタルシスも生まれてこなかったのは心残りだが、犯人の「愛国」心とポアロの信念がもたらす、表裏の心理を上手く表現するラストは印象深いものがある。

No.6 8点 りゅう
(2011/11/19 19:54登録)
 この作品の謎解きにはお手上げでした。私が読んだクリスティー作品の中でも最高の複雑さです。最初の殺人が行われた歯科診療所に出入りする人物の動きも複雑ですが、真相が複雑で、ちょっと考え込まないと理解できませんでした。大胆かつ大技のトリックや、些細な違和感から展開されるポアロの推理には感心しました。殺人動機に錯誤があって中々見えてこないのですが、その意外性にも驚かされました。タイトルも秀逸。ミスディレクションになっており、真相そのものでもあります。設定には多少無理があると思いました。

(完全にネタバレをしています。注意!)
 ネット検索して、他の人の書評を読んでなるほどと思ったのですが、歯科診療の順番を犯人の計画どおりに調整するのは無理ではないでしょうか。また、犯人が医療行為を行なって、患者に気付かれないというのも難しいと思います。

No.5 6点 E-BANKER
(2011/02/12 21:00登録)
エルキュール・ポワロ作品のNO.19
いつもより多めの登場人物ですが、この登場人物の中に「欺瞞」が仕掛けられている・・・
~憂鬱な歯医者での治療を終えて一息ついたポワロのもとに、当の歯科医が自殺したとの連絡が入る。しかし、自殺の兆候を示すものは何もなく、本当に自殺なのか、それとも巧妙に仕掛けられた殺人なのか? マザーグースの調べにのって起こる連続殺人事件の果てに辿り着いたポワロの推理とは?~

ということですが、マザーグースは特に本筋とは関係なし。
実にクリスティらしい作品だなというのが読後の感想ですね。「動機」の謎から始まった自殺(殺人)事件が第2・第3と連続し、さらに複雑化していくうち、作者の術中に見事嵌っていく・・・そんな感じです。
動機も「顔をつぶされた死体」も、ミスリードするために読者に示された「手品のタネ」なんですよねぇ・・・まぁ普通騙されます。
ポワロの推理により、事件の構図がガラッと一変させられるラストのカタルシスが本作の白眉でしょう。
ポワロ物も中期に入ると、派手な展開よりは緻密な構成とでも表現すべき作品が多くなりますが、本作もその例に漏れず、円熟した作者の手技を堪能できる作品だと思います。ただ、ちょっと中盤ダレるのでそこがやや不満かな。
(タイトルの「愛国」っていうのはやっぱり違和感がある。けど、二重のミスリードになってるので、そういう意味ではうまいタイトル?)

No.4 7点 seiryuu
(2010/12/30 11:39登録)
トリックも面白く、犯人のキャラも魅力的。
ポアロもかっこいい。
タイトルも意味深で面白かった。

No.3 6点 toyotama
(2010/10/26 17:27登録)
最後のほう、めまぐるしい展開で楽しめたはずなんだけど、ややこしくて難しすぎる。
Aという名は世を忍ぶ仮の姿、実はBという名であって、その正体は実はC、というのは海外の名前だとなかなか理解が困難。

No.2 5点
(2009/03/28 10:12登録)
この内容に対してこのタイトル(原題もその直訳邦題も)を付けるってどうなんだろう、とちょっと気になります。全く異なるもう一つの原題"One Two Buckle My Shoe"は、日本語にはしにくいですが。
最初の殺人の動機と第2の殺人の犯行方法が意外で、それをうまく組み合わせた工夫はさすがだと思います。ただし、その後がありきたりな手法を使っていて、そのために犯人だけは見当がついてしまうという点が不満です。また、この犯人のキャラクターなら、このような犯行方法をとるだろうかと疑問に思えるところもあり、評価は少々低めにしています。

No.1 7点 dei
(2008/01/29 17:27登録)
次々に明らかになる事実を見ても、読者には理解不能。
その後のポワロの解説で、やっといくつかの事件がつながる。
めちゃくちゃ面白いわけではないが良作だろう。

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