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ミステリの祭典

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七十四秒の旋律と孤独

作家 久永実木彦
出版日2020年12月
平均点8.33点
書評数3人

No.3 8点 ことは
(2024/07/15 20:53登録)
ミステリではないが、いや、これはいいなぁ。
表題作と以降の「マ・フ クロニクル」は、同じ世界線で”マ・フ”についての物語。”マ・フ”の設定がかなり魅力的で、分類するならロボットものだろう。よいロボットものの常として、ロボットを通して人間について考察している。
描写されている映像も、魅力的にイメージにあふれている。きれいな絵でアニメ化したら、じつに映えそう。
ぜひ、”マ・フ”視点でなくてもいいので、同じ世界線の別の物語を読んでみたい。

No.2 9点 虫暮部
(2021/11/30 12:44登録)
 一話目の段階では、リリカルな世界を巧みに描いている、けどあくまで雰囲気モノかな~、と思っていたが、一話ごとに飛距離を伸ばしてとんでもないところへ。私のツボ(変な宗教の成立過程)を突かれて戦慄。均質から個性が生じる流れも面白い。
 余計な知識:“ソウビ”を漢字で書くと“薔薇”です。

No.1 8点 糸色女少
(2021/08/23 22:49登録)
マ・フと呼ばれる人工知性体を主人公にしていた連作短編集で、表題作は2017年の創元SF短編賞受賞作。タイトルは宇宙空間で物体がワープ移動する際に生じる74秒間の空白に起きた、ある事件を描いている。
続く連作「マ・フ クロニクル」は、既に人類は滅んでしまった遠い未来を描いているが、マ・フたちは人類が残した規範である「聖典」にのっとって秩序正しく行動し、宇宙観測を続けている。マ・フは劣化しないボディーと無限の電力を生む螺旋器官を備えたほぼ不老不死の存在。機械なので規格的に同質で、個性や感情は持たない。しかしさまざまな事態に対処するうちに「聖典」に反して死にかけていた生物を助け、愛や憎しみを抱くようになる。
無垢な賢者のようなマ・フたちが「人間的」に変化していくさまは美しく切なく、ハラハラする。

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