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ミステリの祭典

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レオナルドの沈黙

作家 飛鳥部勝則
出版日2004年08月
平均点6.83点
書評数6人

No.6 7点 E-BANKER
(2023/11/18 14:07登録)
作者の作品はデビュー長編の「殉教カテリナ車輪」以来となる。
本作は名探偵・妹尾悠二シリーズの第一弾でもある(とのこと)で楽しみ!
単行本の発表は2004年。

~「私は遠隔のこの地にいたまま、目的の人物を思念によって殺して見せる」。交霊会の夜、霊媒師によって宣言された殺人予告とその恐るべき達成。すべての家具が外に運び出された状態の家の中で首を吊って死んでいた男。密室状態の現場。踏み台にされたレオナルド・ダ・ヴィンチの手稿本と鏡文字の考察。第二の不可能犯罪の勃発。そして読者への挑戦・・・。本当に犯人は霊媒師なのか? 違うとすれば果たして誰なのか? 逆さまずくしの大胆不敵な事件に挑むのは美形の芸術家探偵~

かなりガチガチの本格ミステリー。しかも、かなり「出来の良い」。
何より出てくる「謎」が魅力的だ。
“今どき”交霊会が舞台。不気味な霊媒師が殺人を予告し、そのとおりに起こってしまう殺人事件。なぜか家具がすべて外に出された現場。そして再び起こる殺人事件。しかも、またもや遠隔殺人の様相を呈している・・・
と、枚挙にいとまがないほど奇怪な謎が押し寄せてくる。
そして登場する「読者への挑戦」。うーん、なんて魅力的なんだ! 実にクラシカルでフォーマットに則った本格ミステリーである。

当然ながら問題はその解法にかかってくる。
第一の事件の解法はなかなか見事。探偵役の妹尾の言うとおり、不確実な事柄を排除していくと残ったものが厳然たる事実ということになる。
これについては作者もかなり念入りに伏線を張っているので、途中で気付く人もいるだろう。ただ、一見すると不可思議な遠隔殺人を如何にして現実的な事象に下ろしていくか、この辺りは何となくだが、連城の「暗色コメディ」を彷彿させるところがある。
で、問題が第二の事件。
これは・・・バカミスと呼ばれても仕方ないのでは? なにせ被害者が〇〇〇マで〇〇るなんて・・・(もはや爆笑!)
ただし、このフーダニット。これには意表を突かれた。ズルいといえばそうかもしれないけど、個人的には「そうきたか!」と思わせるに十分だった。

ということで、トータルで評価するなら、大変良くできたミステリーだと思うし、作者のトリックメーカーぶりが伺える作品になっている。
ただ、突っ込みところは多いよ。この手のミステリーに共通する「偶然の連続」とか。
でも好きだな。好みに合った作品なのは間違いない。

No.5 7点 メルカトル
(2023/11/05 22:31登録)
「私は遠隔のこの地にいたまま、目的の人物を思念によって殺してみせる」降霊会の夜、霊媒師によって宣言された殺人予告と、その恐るべき達成。すべての家具が外に運び出された状態の家の中で首を吊って死んでいた男。密室状態の現場。踏み台にされたレオナルド・ダ・ヴィンチの手稿本と鏡文字の考察。第二の不可能犯罪の勃発。そして読者への挑戦―。本当に犯人は霊媒師なのか、違うとすれば果たして犯人は誰なのか?“さかさま”尽くしの大胆不敵な事件に挑む美形の芸術家探偵・妹尾悠二の活躍を描いた、鮎川哲也賞受賞作家の鮮やかな本格探偵小説。
『BOOK』データベースより。

これは確かに超能力を疑いたくもなる様な、不可解過ぎる事件の連続です。関係者全員にアリバイのある遠隔殺人とも言える、家具の何もかもが家の外に出された密室状態での首吊り死体。それを霊媒師が予告していたとは、流石にやり過ぎの感があります。そんなのアリかと疑心暗鬼な心持で読み進めるも、更に起こる逆立ち殺人。こちらも全員にアリバイがあるという不可思議さ。

この強烈な謎をどう収めるのか、好奇心と不安とが絡み合い、真相に辿り着いた時は偶然に頼った感はあるものの、確かな手応えを感じました。
第十六章の途中で「読者への挑戦」が挟まれ、これは挑戦しない訳にはいかないと無い知恵を絞りました。第一の事件に関しては、結果的に予想が当たってしまいました。まあそれしかないだろう位の気持ちでしたが。ただ家具一式全てが放り出された理由はとても想像出来るものではありませんでした。第二の事件はまさかの真相に唖然。伏線の回収も見事なフーダニットとして完成された逸品だと思いました。又、終章で二度吃驚、やられたなあ。

No.4 4点 虫暮部
(2021/12/05 12:00登録)
 事件の様相は強気で“ここまでやって大丈夫?”と不安になる程。真相はがっかり。殺人宣言で誰かが他の名前を挙げちゃったらどうするのか。“偶然同姓”はズルい。

No.3 7点 レッドキング
(2018/07/25 12:02登録)
テレパシー連続殺人の本格トリックもの。島荘大技とまでは行かなくても中技トリック炸裂しロジック伏線もしっかりしている。仲間由紀恵「トリック」思い出す。

No.2 8点 蟷螂の斧
(2012/08/09 13:01登録)
遠隔殺人?、異常な現場(さかさま)の謎から始まり、途中、探偵小説作法13箇条や読者への挑戦もあったりして、なかなか凝っている作品だと思います。真相はまず解らないと思いますが、解決編では、しっかりした伏線があったこと(フェア)を証明しています。「題名の由来」ならびに「世界の反転」(さかさまがテーマ)の講釈は画家でもある著者ならではのものかもしれません。終章で若干言い訳じみたものがありますが、海外有名作品のオチとは違いますよということでOKだと思います。

No.1 8点 いけお
(2009/04/27 09:23登録)
芸術家で上手く比喩し、夢中になる展開と意外なラストがありかなり満足。

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