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ミステリの祭典

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虫暮部さんの登録情報
平均点:6.20点 書評数:2254件

プロフィール| 書評

No.1114 7点 冬のスフィンクス
飛鳥部勝則
(2022/01/07 11:24登録)
 夢か現か。“犯人は一人” である根拠が読者への挑戦状だけ(だよね?)だったり、それなりに設定を有効活用している。“あんた、いったい誰なんだ?”と、世界が揺らぐ。
 挑発的な枠組みは好きなんだけど、ぶっちゃけ事件が地味。あと一歩、何か欲しかったなぁ。
 ところで『方舟』は、解説抜きでも面白い絵だと思う。


No.1113 8点 忌名の如き贄るもの
三津田信三
(2022/01/05 14:36登録)
 これはかなり良い。その理由は、推理の試行錯誤が飽きる前に終わって、過剰さがいい塩梅に抑制されていたおかげ、かも。いや、それ言っちゃあシリーズの個性全否定?
 冒頭の儀礼~葬儀の話が滅法怖い。出番少ないけど井津子のキャラが程好くピシッとした感じでナイス。


No.1112 7点 髑髏城
ジョン・ディクスン・カー
(2022/01/05 14:34登録)
 事件の様相について、その構成要素を鑑みればもっと迫力があってもおかしくないのだが、どうも紗が掛かったようなぼんやりしたイメージしか持てない。
 これは半分以上が伝聞として語られるせいではないか。それとも私の読み方が下手なのか。
 それが解決編に至って一気に持ち直す。
 アルンハイム男爵が解き明かす因縁は、ミステリ的な捻りには乏しいがストレートにガツンと来た。と言うか、これは冒険小説的復讐譚で、男爵のパートは “解決編(結)” ではなく “転” なんだね。でも気分的にはバンコランのパートはいっそ無くても良かった。


No.1111 8点 夏と冬の奏鳴曲
麻耶雄嵩
(2022/01/05 14:33登録)
 再読だが面白い。この長さをちゃんと読ませる力量には感服。殺伐気味なラヴコメとしてもOK。この手の密室トリック実は大好き。でも真相探しとか解釈とかは諦めた。

 新装改訂版で読んだが、気になる表記が20箇所くらいあったので版元にメール。何を改訂したのやら。最近すっかり校閲者気取りで新刊を読む私である。


No.1110 7点 人形つかい
ロバート・A・ハインライン
(2022/01/05 14:32登録)
 侵略SF、ではあるが、特殊機関のメンバーを通して描かれるので、いきなり寝返る者が出たりして(下手な)スパイ・スリラーに思えたりもする。そしてそれ以上に、侵略者への対抗策がまるで感染症対策のパロディで、作者の社会学的想像力に拍手。
 SF的世界設定が後出しでシレッと追加されるのには笑った。途中でロマンスを挿んだのは余計な気もする(機関のプロフェッショナリズムが揺らいで見えてアレッ? と思った)。


No.1109 7点 宿命の女
山田正紀
(2021/12/29 12:16登録)
 問題は結末間近で明らかになる “宿命の女” なる芸術作品。私の感受性の欠如か、“そういうものでそういう表現が出来る” と言うことがイメージしづらく “なんじゃそりゃ” と思った。
 思ったがしかし、数ページ読み進むうちにみるみるそれが自分の中で “アリ” に変わって行く。大袈裟に言えば、心の一部が組み替えられたような気分で面白かった。
 主人公が美術雑誌編集者で、アクションに於ける強みがまるで無く、優柔不断なままラストまで流れ着くあたりも苦笑を誘われ良い感じ。


No.1108 3点 白昼の悪魔
アガサ・クリスティー
(2021/12/29 12:15登録)
 何か変だ。
 ネタバレするけれども、加害者には被害者の行動をコントロール出来ない。芝居が終わるまで、見ざる聞かざるで隠れていてくれる保証など無い(被害者にしてみれば、様子を窺っていないと邪魔者が去っても判らないし)。
 であるなら、被害者が計画を知った上で敢えて殺されたと考えるしかない。惚れた弱みで知らぬフリして殺されてあげよう……しかし、そもそもこんな不自然な計画を立てるか? 被害者が協力しないと成立しないことは、事前に見当が付くのでは?
 従って、被害者加害者結託しての、“アリバイ確保の為にこういうトリックで殺されてくれ” “承知したわ” と言う命懸けの殺人劇だった、となる。いや、それなら本人が死体役をやればいいのであって(ポアロは “危険が多すぎる” としてこれを否定しているが、何が危険なのだろう?)、3人目の彼女はいらない。
 つまり、その彼女が発案・主導し、一方で共犯者側としては尻尾切りされない保険として彼女にも口だけでなく手を汚させる為にこの面倒なトリックを組み込んだ、と言うことだ。それはそれで驚きの真相ではないか。


No.1107 7点 裏切りの果実
山田正紀
(2021/12/26 11:02登録)
 それにしても暑い。そして疲れて、空っぽ。返還前夜の沖縄の空気がこれでもかとばかりにリアルに描かれている。いや実物知らんけど、リアルな気が、する。現金輸送車は宿命的に狙われる。
 結末近くで明かされる伊波名の意外な小賢しさと、それによって露わになる志郎の空虚さ(とは大袈裟か)が印象的。ドストエフスキーを持ち出したりして、実はインテリ? 理想に敗れた活動家あがり? “刑務所” ってそういうことか?


No.1106 7点 生存者、一名
歌野晶午
(2021/12/25 10:56登録)
 何しろテーマが “孤島” だから、或る程度パターン通りなのもやむなし? その上で登場人物の気持など、それなりに上手く書かれていると思う。教団についてもっと描写して欲しかった。あっ、“ケモノ” の真相が不明なままだ。


No.1105 4点 誰そ彼の殺人
小松亜由美
(2021/12/25 10:52登録)
 法医学的事案としてはそれぞれ興味深いネタなのに、物語としての書き方がぎこちない。ユーモアを意図しているようなところも効いていない。


No.1104 7点 逡巡の二十秒と悔恨の二十年
小林泰三
(2021/12/24 12:13登録)
 「吹雪の朝」は、クローズド・サークルものに見せかけて実は××+××のミステリ。「侵略の時」「サロゲート・マザー」は作者ならではの哲学的で論理的な狂笑SF。「食用人」、このネタでここまでやった例は初めて読んだ。「メリイさん」は以前にも書いたネタだろ!


No.1103 7点 愛国殺人
アガサ・クリスティー
(2021/12/23 12:54登録)
 加害者と被害者が同じ歯科医を選んだのは都合の良い偶然?
 あと、加害者側にとって、入れ替わりの必然性はさほど高くないよね。どうせ某も殺すんだから(→データのすり替えは簡単なのだから)、と行き掛けの駄賃みたいなもの?
 計画が凝り過ぎな気もするが、妻と秘密の生活を “楽しんで” いた加害者の人物像には合っているかも。この連続殺人も楽しかったんだろうな。結末でのポアロとのやりとりも、そう言っているように私には思えた。


No.1102 8点 三体Ⅱ 黒暗森林
劉慈欣
(2021/12/22 13:23登録)
 前巻で示された氷山の一角をぐいっと引き抜いたら、水面下には予想を上回るスケール感とクネクネした奇怪なフォルムが隠されていた。どっちへ向かうんだこの話。
 但し、エンタテインメントとしては判り易く整理されていて推進剤は充分。“面壁計画” 発動、って実存主義SF? 驚天動地の作戦ながら、個々の戦略はやや物足りないかも(理屈としては妥当な発想なのかもしれないが)。“星艦地球” の行く末に胸が痛くもドキドキした。


No.1101 7点 霧の悲劇
皆川博子
(2021/12/19 10:41登録)
 被害者の過去をほじくり返しているだけでは……? と思っていたら、戦時中の蛮行とかにつながって、島田荘司の社会派作品みたいな流れに。書き方は上手い。
 “プラカード作戦” はなかなか思い切った展開だと苦笑。宗教ネタはサラッと過ぎちゃって残念。古葉が積極的に関わる動機付けが今一つ不明瞭で、課長ではないが “何故そこまで” と言う疑問は残った。


No.1100 5点 虹の悲劇
皆川博子
(2021/12/19 10:34登録)
 二つの話がラストで一つに、と言うのはよくあるパターンだが、本作はかなり強引。それぞれの事件や心理描写は悪くないのに、それを嚙み合わせちゃったせいで首を捻らざるを得ない読後感に。
 なにしろ事件同士はまぁ無関係。その割にバッタバッタと人が死ぬ。“蔓でつながれた小芋” との感慨はなかなかインパクトがあった。
 アイ子の遺体発見時、施錠された玄関の蝶番を外からはずしてドアを開けた、ってそんなドアが普通にあったの?


No.1099 6点 シャーロック・ホームズの帰還
アーサー・コナン・ドイル
(2021/12/14 10:38登録)
 「踊る人形」の “単語ごとの区切り” の印が不思議だ。まず第一に、英文はつなげて書いても概ねきちんと読めるので、暗号を使う側にとっての必然性があまり無い。第二に、あんなに文字数の少ない暗号文で(人形は18種類しか登場しない。印付きは5種類)、印が別の文字ではなく区切りを表すと推理するのは論理的ではない。第三者による解読を読者が納得し易いように作者が用意したヒント、てな感じだ。
 「恐喝王ミルヴァートン」の展開には意表を突かれた。この話、好きだな。

 角川文庫の新訳版。訳者は駒月雅子。時々、“現代風の言い回しに寄り過ぎ” と感じることが無きにしも非ず。


No.1098 7点 星詠師の記憶
阿津川辰海
(2021/12/07 10:55登録)
 一つおかしなロジックが混ざっていて、しかも登場人物の行動に大きな影響を与えちゃっている。

 “星詠師が自分の死期を悟ってしまうキッカケの一つ……ある時点以降の予知を見なくなったとき”

 →それは “ある時点までその人は生きている” ことしか意味しない。“予知はアトランダム” とされているのだから、“ある時点” と “死期” の間のブランクの長さは判定出来ない。
 (→そもそも、時期推定不能な予知が一つでもあれば、“ある時点以降の予知を見なくなった” との判断自体が出来ないので、結構ハードルが高い。)

 緻密なミステリ部分とは別に、〈星詠会〉設立の物語が面白かった。


No.1097 6点 キラレ×キラレ
森博嗣
(2021/12/07 10:47登録)
 事件の流れ、特に適度に空白な部分が、(或る時期以降の森博嗣にはそこでイライラさせられる作品も多いが)本作では面白かった。でも真相に“自作自演”が混ざると説得力が激減しちゃうんだなぁ。そのへんの加減が雑。


No.1096 4点 レオナルドの沈黙
飛鳥部勝則
(2021/12/05 12:00登録)
 事件の様相は強気で “ここまでやって大丈夫?” と不安になる程。真相はがっかり。殺人宣言で誰かが他の名前を挙げちゃったらどうするのか。“偶然同姓” はズルい。


No.1095 5点 背が高くて東大出
天藤真
(2021/12/05 11:59登録)
 文体や人物造形と言った“書き方”は上手い。ところがミステリ的なプロットは、変なところを変なほうに捻ったりして、一本すじが通っていない。真相を知って“そうだったのか!”とピーンと来る度合いに乏しい。
 思えばこの作者は長編にもそういうケースが見受けられる。フレデリック・ダネイと組んでマンフレッド・リー役を務めるのが得策だったのでは、なんて思ってしまう。
 「三枚の千円札」では膝を打ったが、考えてみると三千円の出所は曖昧なままだね。

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