home

ミステリの祭典

login
kanamoriさんの登録情報
平均点:5.88点 書評数:2516件

プロフィール| 書評

No.1556 3点 月明かりの闇
ジョン・ディクスン・カー
(2011/07/09 20:21登録)
百年前の事件と同様の”足跡のない殺人”の再現という、因縁話に絡めた展開はカーらしくていいのだけれど、いかんせん肝心のトリックがパッとしません。事件が起こるまでも冗長で、筆力の衰えが如実に現れていて残念な出来でした。
原書房版の副題には”フェル博士最後の事件”となっていますが、「フェル博士が登場する最後の作品」というぐらいの意味なので、これはちょっとどうなんだろうか。アレコレと変な期待をしてしまう。


No.1555 4点 極点飛行
笹本稜平
(2011/07/07 18:21登録)
南極にある観光基地とチリ最南端の町との間を飛び回る航空輸送機の日本人パイロットを主人公にした謀略冒険小説。
山岳、海洋ときて今回は航空冒険小説なわけですが、極寒の地という魅力的な舞台設定を充分活かしきっていない感じがする。道具立ても、ナチスの残党、隠された黄金伝説、CIAの陰謀など盛りだくさんなのが裏目に出て、焦点がぼけてしまった。
前2作と比べると緊迫感の欠けた凡作と言わざるを得ない。


No.1554 5点 踊り子探偵
コーネル・ウールリッチ
(2011/07/06 18:03登録)
白亜書房版ウールリッチ=アイリッシュ短編傑作集の2巻目。1937年から39年に発表された7編+初期普通小説1編を収録。

なかでは、中編並みの「妻がいなくなるとき」が巻き込まれ型サスペンスの完成形といえる内容で読み応えのある佳作だと思う。
ただ、もともと都会の中の弱者を探偵役にしたサスペンスを得意とする作者とはいえ、「目覚める前に死なば」「踊り子探偵」「黒い旋律」と同じようなプロットの作品を並べたのはどうか。しかも犯人像も共通するので続けて読むとちょっと飽きる。
さらに、「晩餐後の物語」をはじめ創元推理文庫版と4編もダブっているのはいただけない。
ウールリッチは230作もの短編を書いているが、各出版社とも同様の決まった作品を収録するのは、未訳短編や雑誌掲載のままの作品の出来がよろしくないということだろうか。


No.1553 5点 まもなく電車が出現します
似鳥鶏
(2011/07/04 18:45登録)
学園ミステリ、葉山君と伊神先輩シリーズの短編集。
なぜ開かずの間の部室に鉄道模型を出現させたのか?、なぜシチューのなかのジャガイモを食べたように見せかけたのか?など、提示される日常の謎はハウダニットの興味より動機を中核の謎としているようですが、謎そのものに魅力を感じないのでロジカルな解法ながら読後感は微妙。
最終話の「今日から彼氏」だけは、謎そのものが謎のまま終盤にサプライズを仕掛けた編中のベスト作品。しかし、ぼくと柳瀬さんの関係など、シリーズを通して読んでないと作者の意図した趣向が活きないのではと思う。


No.1552 6点 密輸人ケックの華麗な手口
ロバート・L・フィッシュ
(2011/07/01 17:59登録)
訳ありの美術品や宝石類の密輸を請け負うギャンブル好きの自由人・ケック・ハウゲンスを主人公にした連作短編集。
意表を突く数々の税関破りのトリックは、怪盗ニック・シリーズなどと同類のハウダニット・ミステリの面白さがある上に、「ふりだしに戻る」や「一万対一の賭け」などの初期作はラストのどんでん返しがしゃれていて楽しめた。
ただ、設定の特殊性ゆえプロットがマンネリぎみで、後半の作品はネタ切れ、息切れの感がある。


No.1551 6点 真夏の方程式
東野圭吾
(2011/06/29 20:18登録)
被害者がその場所に赴いた理由とか、過去の人間関係や事件が現在の事件の謎をとく鍵になる構成など、細かいプロットが違っていても「麒麟の翼」とよく似たありがちのストーリーかな。
ただ、探偵と少年の交情、少年の成長物語のような味わいの小説が好みなので甘めの採点になった。もっとも、その部分も海外のハードボイルド小説を想起させはしますが。(そちらは「真夏」ではなく「初秋」)

夏休みに中高校生が図書館で借りて読むのに最適な小説だと思うけれど、都内の図書館の予約件数を調べてみて驚いた。刊行後1か月も経ってないのに、世田谷区の720件をはじめ目黒区、大田区も600件を超えていた。


No.1550 6点 フレンチ警部と漂う死体
F・W・クロフツ
(2011/06/27 18:47登録)
長らく絶版だった創元推理文庫の「警視最初の事件」が近々復刊されるようですが、そちらは書評済みにつき、数年前に突如翻訳出版された本書のほうを。
鬼貫警部シリーズ同様、フレンチの登場が後段になる作品ほど捜査小説として物足りない感じを受ける。キャリントン一族を巡る毒殺未遂事件の経緯が語られる物語前半部はちょっと冗長でした。
しかし、地中海の豪華観光客船に舞台を移しフレンチが乗り込んでから面白くなる。数章に渡ってフレンチの仮説の構築が語られる段は読み応えがあるうえ、伏線が少々不足ぎみながら最後に明らかになる犯人像は意外といえば意外。


No.1549 7点 デッドライン
建倉圭介
(2011/06/25 22:53登録)
タイトルが平凡であまり期待してなかったのですが、これは冒険小説の傑作でした。
米国の地で原爆投下情報を知った日系二世の主人公が、米軍の追撃を受けながら、降伏を促すべく日本へ決死の逃避行を決断する、というのがあらすじ。
同じタイムリミットものの冒険小説で、真珠湾攻撃情報をネタにした「エトロフ発緊急電」の日米裏返しのような設定ですが、本書の逃走ルートがすごい。アラスカからアリューシャン列島、千島樺太とつづく雄大な舞台設定で、サスペンス満点の逃避・追跡劇が圧巻の面白さだった。
本書のもうひとつのテーマは少数民族の差別や弾圧。日系二世の主人公を助けるのが、アメリカインディアン、イヌイット、アイヌなどのマイノリティというのがまたいい。


No.1548 5点 芝居がかった死
ロバート・バーナード
(2011/06/24 19:14登録)
「不肖の息子」でも登場したメレディス主任警部が、田舎のホテルで有名な舞台女優が射殺された事件の捜査に乗り出すのは物語の半ば過ぎで、本書も前半は癖のある登場人物たちの造形に筆を費やしています。
アリバイ・トリックを用いた本筋は、クリスティのいくつかの作品を髣髴とさせるもののさほど意外性はない。
エピローグで飛び出す叙述の騙しには驚いたが、よく考えたら、これは物語とあまり関連しない蛇足的なエピソードだからなあ。ミステリの本筋の部分で仕掛けてほしかった。


No.1547 4点 ポリス猫DCの事件簿
若竹七海
(2011/06/23 18:55登録)
湘南・葉崎市にある猫島を舞台にしたコージー・ミステリの連作短編集。前作「猫島ハウスの騒動」でお馴染みの島民が顔を揃えますが、今回の探偵役は島の臨時駐在所巡査と探偵猫。
「ヴィラ・マグノリアの殺人」から始まったこのシリーズ、コージーながら伏線を丁寧に敷いた本格ミステリだったけれど、本書は謎解き・ドタバタともに中途半端で残念な出来でした。


No.1546 6点 幻を追う男
ジョン・ディクスン・カー
(2011/06/22 18:06登録)
ラジオ・ドラマのシナリオ作品集。
表題作の中編「幻を追う男」は、19世紀初頭の英国を舞台にした歴史ミステリ。”幻の女性”に関するトリックは無理があるけれど、展開がスリリングで物語性豊かなところは良です。
ベストはフェル博士ものの「誰がマシュー・コービンを殺したか?」で、オーソドックスな屋敷もののフーダニットかと思っていたら、意外なところから犯人が出てきて驚いた。ラジオ・ドラマならではのミステリ趣向が効いている。


No.1545 5点 黒の回廊
松本清張
(2011/06/21 20:04登録)
女性ばかり20人以上のヨーロッパ観光ツアー団内の連続殺人を扱った、清張としては珍しい正攻法のフーダニット・ミステリ。
デンマーク、スコットランド、スイスと舞台を移動し、最後にアルプスの麓に関係者を集めての謎解きと、トラベルミステリのハシリのようなプロットで、重厚さはないもののそれなりに楽しめましたが、ツッコミどころもある。
いちばん納得がいかないのは、ヒューズ警部が言うように真犯人の動機。「ゼロの焦点」以降の作者お得意のパターンだけれど、今作については殺人の必然性に欠けます。探偵役の女性の説明はちょっと苦しい。それならなんでもアリになってしまう。


No.1544 5点 あの手この手の犯罪
アンソロジー(海外編集者)
(2011/06/19 17:47登録)
アメリカ探偵作家クラブ(MWA)会員作家によるテーマ別年刊アンソロジー第1弾。編者は、シュロック・ホームズや殺人同盟シリーズなどのユーモアミステリでお馴染みのロバート・L・フィッシュ。

収録25編のなかでは、スタンリイ・エリン、ウィリアム・ブリテン、エドワード・ホック、ヘンリイ・スレッサーなど、短編の名手といわれる有名作家の作品がやはり一歩抜きんでているように思える一方で、初読の作家で「これは!」と言えるものがなかったのは残念。
個人的ベストは、再読ながら”奇妙な味”テイストの傑作・エリン「最後の一壜」。この世に一本しかないワインを巡る復讐劇の手段はある程度見当がつくが、その後のラストのツイストが鮮やか。準ベストはマーガレット・ミラー「マガウニーの奇蹟」か、スレッサー「速習記憶術」。


No.1543 7点 絆回廊 新宿鮫Ⅹ
大沢在昌
(2011/06/18 17:49登録)
新宿鮫シリーズの最新作。
近年の単発作品の低調ぶりから推して内容を危惧していましたが、このシリーズに対する作者の思い入れ具合が分かるさすがの出来でした。シリーズを10作書いてクオリティが落ちないというのは大したものだと思う。
ただ、本作ではシリーズ愛読者にとってショッキングな事態があるものの、前作で一区切りつけて新たなステージへのイントロの物語のような感じで、次作に期待を抱かせるという結末は評価がわかれることだろう。


No.1542 6点 悪女イブ
ハドリー・チェイス
(2011/06/17 18:52登録)
英国人作家にもかかわらずアメリカン・ハードボイルド風の過激な暴力描写の作品を書いて流行作家となったハドリー・チェイスですが、そういったギャング小説とは別に”悪女もの”のサスペンスもいくつか書いていて作風は意外と幅広い。創元推理文庫のジャンル分類でいうと、拳銃マークと黒猫マークに分かれて出ていて、黒猫マークの代表作が本書のようです。

物語は、ハリウッドの新進作家「わたし」ことクライブが娼婦イブと出会ったことによって破滅へ向かうさまを描いた心理サスペンス。「蘭」シリーズなどとは全くテイストが異り、暴力描写がないどころか犯罪小説ともいえない内容だが、主人公が一歩一歩破滅への道を歩むさまは生々しく引き込まれる。
しかし、イブは悪女といえるのだろうか。元凶はクライブの盗作であって、イブの行為は娼婦として当然のことだと思えるのだが。


No.1541 6点 天空への回廊
笹本稜平
(2011/06/15 20:42登録)
久々にスケールの大きい日本製の冒険小説を読んだ。
エベレストを舞台にした山岳冒険小説プラス、テロ集団とアメリカの陰謀が絡むという国際謀略小説。まあ全体の構成はステロタイプかもしれないが、プロットがよく練られていて展開が読めないところがいい。
主人公ひとりでそこまで出来るか、というツッコミはこういったタイプの小説に対して常に付き纏うものの、「ホワイトアウト」などが面白かった人にはお薦め。


No.1540 7点 アブナー伯父の事件簿
M・D・ポースト
(2011/06/14 18:50登録)
東京創元社で編まれた”法と正義の人”アンクル・アブナーが活躍する短編集。
この2年前に出たハヤカワミステリ文庫の「アンクル・アブナーの叡智」のほうを読んでいましたが本書は初読み。といっても収録14編中10編が早川版とダブっているのですが・・・・。
”思考機械”などと比べるとトリック一本やりなところはなく、全編”神の摂理”というテーマで統一され物語性が豊かです。アブナーの人物像も魅力的で、代表作「ナボテの葡萄園」はじめ感動的なエピソードが多かった。
ただ、出版社の都合で、有名作の「ドゥームドルフ事件」が収録されていないのは残念。


No.1539 2点 虚構推理 鋼人七瀬
城平京
(2011/06/13 18:57登録)
いったん読み始めたら途中でハズレだと分かっても最後まで読み終えることにしているのですが、これは本当に苦痛だった。
駄作というわけではなく、終盤の展開など作者独特のセンスを感じるところもあります。しかし、この物語の設定・世界観は全く嗜好に合わず受け付けませんでした。
小説ではなく漫画で描くほうが相応しいように思う。


No.1538 6点 思考機械の事件簿Ⅰ
ジャック・フットレル
(2011/06/12 17:43登録)
東京創元社で編まれた”思考機械”ことヴァン・ドゥーゼン教授が活躍する第1短編集。
同じ年にハヤカワミステリ文庫で出た短編集のほうを読んでいましたが本書は初読み。といっても収録11編中8編が早川版とダブっているのですが・・・・。
一世紀前の作品集だけに陳腐になったトリックもあるけれど、特殊な凶器、意外な隠し場所、密室もの、偽アリバイなど、本格パズラーの色々なガシェットを取り揃えていて楽しめた。なかでは、「焔をあげる幽霊」が怪奇趣向と不可能性で編中のベスト。ディクスン・カーがイチオシというのも分かる出来です。
ただ、出版社の都合で、代表作の「13号独房の問題」が収録されていないのは物足りない。


No.1537 4点 新・日本の七不思議
鯨統一郎
(2011/06/10 18:28登録)
歴史の新解釈シリーズの第3弾。
お題は、原日本人のルーツ、柿本人麻呂、空海、写楽の正体、真珠湾攻撃の謎などですが、提示される解釈は「邪馬台国はどこですか?」などと比べるとミステリ的な発想によるものではなく、最後に付された参考文献に寄りかかったものが大半で小説としての面白味に欠けた。

2516中の書評を表示しています 961 - 980