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ミステリの祭典

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生霊の如き重るもの
刀城言耶シリーズ

作家 三津田信三
出版日2011年07月
平均点6.13点
書評数15人

No.15 7点 ALFA
(2023/06/26 09:30登録)
「魔偶」「密室」を含め刀城言耶シリーズの短編はどれもホラー風味のミステリーとして気軽に楽しめる。ただこれはという傑作には行き当たらなかった。この作者の世界観で刃のように鋭い短編を読みたいものだ。

中編「顔無」はなかなかの読みごたえだが、この真相は無理がある。これはむしろダミーの捨て解として使った上で、ある想定外の人物を犯人にしたら面白いと思うが・・・

No.14 6点 じきる
(2021/07/24 23:19登録)
シリーズお馴染みの多重解決を活かした短編が多く、ファンには嬉しい作品群に仕上がっています。

No.13 6点 よん
(2021/07/16 17:25登録)
怪奇短編集としてバラエティに富んでいるし、非合理の交ぜ方も効いている
視点人物の記憶やアイデンティティという作品世界全体を揺るがすよりも、刀城言耶という固定的・客観的な視点から歪みを見出す方がホラーとして効果的なのも興味深かった。

No.12 7点 ボナンザ
(2020/11/11 22:06登録)
どれもアイディアとそれを馬鹿馬鹿しくしない雰囲気作りがマッチした良作だと思う。

No.11 7点 人並由真
(2020/10/29 02:20登録)
(ネタバレなし)
 以下、メモ&感想(寸評)

・死霊の如き歩くもの
……民俗学見地による怪談を並べるくだりは、この短編集ぜんぶがこういう作りのエピソードかと思わず腰が引けたが、そうではなくて良かった。トッポいトリックが楽しいといえば楽しいが、真相で思い切り作品の格が下がった感も。

・天魔の如き跳ぶもの
……これと並行してアリンガムの長編『判事への花束』をたまたま読んでいたので、双方ともに<天空に消えたがごとき人間消失>という主題が共通していたのに苦笑。本書のなかではいろんな意味で無難な出来では。

・屍蝋の如き滴るもの
……二転三転する真相の解明が鮮烈。(中略)トリックの組み立て方は、それで成立&関係者に公認されるか微妙な気もするが、一方で<そういうロジック>が通用してしまう話の流れは好み。

・生霊の如き重ぶるもの
……いかにも表題作らしい、量感の豊かな一編。もう少し話を膨らませてキャラクターを足して長編にしても良かったかとも思った。まあ実際に長編化したら水っぽくなってしまうかも知れないけれど。いくつかの細かい伏線の張り方など、そういう面でも評価できる。

・顔無の如き覆うもの
……真相が暴かれると海外の某・名作短編の影がよぎるが、それだけに終わらない凄みを感じさせてくれたコワイ話。最後を締めるに相応しい一本。これも長編にしても良かったかもしれないねえ。

 個人的には結構、楽しめました。

No.10 4点 雪の日
(2020/04/13 14:53登録)
やっぱり短編より長編だね

No.9 6点 八二一
(2020/01/10 19:39登録)
ホラー要素は若干薄目なものの本格要素が充実で解決シーンの読み応えは抜群。冒頭の三篇が、足跡の謎という挑戦的なところも評価できる。

No.8 7点 名探偵ジャパン
(2015/08/07 11:03登録)
刀城言耶シリーズ短編集第二弾。
・死霊の如き歩くもの
 この世ならざる怪異と、その正体である馬鹿馬鹿しいトリックのギャップが楽しい。

・天魔の如き跳ぶもの
 探偵刀城言耶のヒーロー性がよく現れた傑作。自分が引いて事が収まるなら、それでいい。何よりもまず被害者の身を案じ、しかし、悪には敢然とした態度を崩さない。本人がどう思おうが、刀城言耶はまぎれもない名探偵なのだ。トリックと、それにより派生した後始末など伏線も綺麗にまとまっている。

・屍蝋の如き滴るもの
 密室プラスアリバイ。ここら辺から、本シリーズ売りの多重解決が顕著になる。出来る? 出来ない? 出来るかも。運任せの博打ではない、確実な犯行方法が最後に現れてすっきりする。

・生霊の如き重ぶるもの
 表題作でもあることから、もっとも重厚な一作。とうとうドッペルゲンガーという西洋の怪異も登場。多重解決の先に待つちょっと切ない結末。

・顔無の如き覆うもの
 ちょっと無理があるように感じるが、当時の世相、市井の人々の意識などからすると、成立してしまうのだろうか。

 どの作品も、最後にあからさまに「怪異っぽいもの」の存在を匂わせて終わる。
 クロさんこと阿武隈川の滅茶苦茶なキャラ、父親のことを話されると表情が変わる刀城言耶など、お約束的キャライメージも確立してきた。
今後ますます期待されるシリーズだ。

No.7 7点 E-BANKER
(2014/08/27 21:15登録)
「密室の如き籠るもの」に続く刀城言耶シリーズの短篇集。
学生時代の若い言耶が遭遇する五つの怪事件を集録。

①「死霊の如き歩くもの」=ズバリテーマは「足跡のない雪密室」ということで、“四つ家”と呼ばれる特殊構造の「館」が登場してくる。これだけでも本格好きには堪らないが、殺害のトリックが更に強烈。ここまでの物理系トリックには久々に遭遇した・・・。もちろん、現実性云々という問題点はあるのだろうが、ミステリーはこうでなくては、と思わされる。
②「天魔の如き跳ぶもの」=こちらも「足跡のない密室」がテーマ。で、こちらのトリックも実にビジュアル的に映える! でもまぁ一歩間違えるとバカミスって言われるんだろうなぁ・・・。阿武隈川先輩がかなりウルサイ。
③「屍蝋の如き滴るもの」=本シリーズらしく、終盤は刀城言耶の畳み掛けるような推理が本編の読みどころ。捨て筋の推理が三つも披露された後に解明される“本筋”の真相は相当意外なもの。「屍蝋」の正体はかなり強引なものだが・・・
④「生霊の如き重ぶるもの」=本編のテーマはいわゆる「ドッペルゲンガー」という奴。となると、H・マクロイの「暗い鏡のなかへ」が想起させれるが(実際、作中にも言耶が言及している)、他の方も触れているとおり、実際には「犬神家の一族」へのオマージュというのが正解なのだろう。そう、ズバリ「犬神家」の助清=青沼静馬の関係が見事にトレースされているのだ。ドッペルゲンガーの正体自体は腰砕けなのだが・・・
⑤「顔無の如き覆うもの」=これまた特殊設定下の「密室」がテーマ。「旅芸人」というと「山魔の如き嗤うもの」でも登場してきたが、今回もかなりの活躍ぶり(?)。でもそこまで連帯感ってあるのだろうかという気はした。密室からの脱出についてのアイデアそのものはそれほどのサプライズはなし。

以上5編。
さすがに粒ぞろいの作品集だ。
刀城言耶シリーズは今どき珍しいくらい高水準の本格ミステリーだけど、短編になってもその面白さは損なわれてはいない。

大掛かりな物理トリックやら密室などというガジェットを詰め込むと、どうしても無理矢理感やリアリティの欠如が目に付くのだが、本シリーズでは適度なホラー感や時代設定がそれを覆い隠しているのだろう。
それが他の作家との違い。
重量級の作品集だけど、ミステリー好きなら十分楽しめる。間違いなし!
(ベストは①③④のいずれかで迷う。②⑤は一枚落ちるかな・・・)

No.6 6点 ミステリ初心者
(2012/05/28 14:09登録)
 新書を読みました。好きなシリーズなのでちょっと厳しく6点。あと、密室の如き~のほうが好きというのもあるかも。

 どの作品も読みやすく、雰囲気も最高でした。図をのせてくれるのもよかったです。短編には阿武隈川がもっと出てほしかったです。

 ミステリでは犯人をほとんど当てることのできない自分ですが、この作品では2作品当たりました。なので難易度はやさしいかもしれません。ミステリ玄人の方では物足りない可能性が。

 この作品中、一番おもしろかったのは顔無しの如き~でした。ホラーの怖さも顔無しが一番でした。真相も怖い。 動機に関しては強引というのも分かりますが、短編ですし、まあミステリに動機はおまけかなぁと

No.5 6点 makomako
(2012/01/29 21:27登録)
 刀城言耶シリーズは長編が向いているように思います。あの特異な雰囲気が短編ではもうひとつ味わえない。阿武隈川のばかばかしいほどの傍若無人も短編だと余計に鼻につく。
 全体としてなずまず粒ぞろいといえる内容でしたが、いずれも一応すっきりした解決が提示された後でわざと(と思いますが)割り切れないお話が追加されています。作者の好みなのでしょうが私はなくても良いような気もしました。
 作品としては「生霊」が一番良かった。「天魔」はあまり好みでない上にどうもどこかで読んだ気がすると思ったら、「凶鳥」のおまけのようについていた作品でした。
 

No.4 7点 虫暮部
(2011/11/25 10:03登録)
 一話目の“四つ家”の構造について、“東西の廊下の中央を開けて出入りできるようにした”のに、何故そこを出入り口に使わず他人の室内を通る習慣が維持されているのかが謎。

 総合的にはとても濃い短編集だと思います。

 タイトルの“重る”は上手い当て字ですね。

No.3 4点 マニア
(2011/11/19 20:53登録)
刀城言耶、学生時代の事件簿。独特の民俗ホラーテイストは長編に比べるとややパワーダウンか?

『死霊の如き歩くもの』・・・最も魅力的なひとりでに歩く下駄の謎に対する解決が微妙だったので残念。
『天魔の如き跳ぶもの』・・・1話目のように屋敷の図面が欲しかったかな。真相にもがっかり。
『屍蠟の如き滴るもの』・・・お得意の一人多重解決にはやはり迫力を感じた。真相も前2話と比べ納得のいくものだったかな。
『生霊の如き重るもの』・・・旧家の跡継ぎ争いにドッペルゲンガーが絡んでいくという魅力的な物語。登場人物も自分好みの濃い人物が多数登場して楽しめた。
『顔無の如き攫うもの』・・・真相はかなり強引で苦しいところがあったと感じる。

No.2 5点 mozart
(2011/08/31 22:06登録)
図書館で予約後、暫く待たされた後、ようやくゲットして1日で読了。
中・短編集なので、驚愕の謎解きやカタルシスはそれほど望めないが、「密室の如き・・・」よりは楽しめた。
「死霊の如き・・・」例によって建物などの配置が文章だけでは分かりにくいが、ちゃんと見取り図もあって、その点は親切。ただ、あの殺害方法はちょっと確実性も低く、現実的ではないような・・・。
「天魔の如き・・・」最後の(お約束の)ホラー部分の出来はイマイチだと思う。
「屍蠟の如き・・・」最後の方でダミーの解を列挙して悉く否定していく様子が刀城言耶のいつものパターンとして楽しめる。
「生霊の如き・・・」中編。内容的にも一番充実している。最後の「解決」->「否定」・・・の繰り返しパターンもいつも通り。ただ、最終解があれだと、生霊の謎や恐怖が、実は・・・となってしまうのがやや残念かな。
「顔無の如き・・・」これも最後は上と同じパターン。ただ、最終解で、被差別者たちが、その暗い生い立ちのため、いくら常人と異なる感性を持っていたとしても、ちょっとあれはないんじゃないかな。それとも、まだまだ、そうした差別意識に基づく冤罪も普通にあった時代だ、ということなのだろうか(「狭山事件」のように)。

No.1 7点 kanamori
(2011/08/04 18:57登録)
刀城言耶シリーズ、大学生時代の事件簿を収めた中短編集。作中に”「新青年」で連載が始まった「八つ墓村」”という記載があるので、時代設定は昭和24年前後と思われます。

表題作「生霊の如き~」は、生霊=ドッペルゲンガー・ネタで、ヘレン・マクロイの作品にも言及しているが、本物の後継ぎはどっちかというプロットや人物配置など、モロに「犬神家の一族」へのオマージュ作。恒例の一人多重解決がよく練られている。
その他の作品もどれも面白かった。足跡のない殺人、密室状況からの人間消失などの謎解き部分と、最後に立ち現われるホラー部分が絶妙の融合を見せており、総体的に第1短編集より出来がいい様に思う。

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