夜の熱気の中で 棺桶エド&墓掘りジョーンズ |
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作家 | チェスター・ハイムズ |
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出版日 | 1975年09月 |
平均点 | 6.00点 |
書評数 | 2人 |
No.2 | 6点 | クリスティ再読 | |
(2025/04/09 22:06登録) さてジョン・ボールの「夜の熱気の中で」に引き続いて本作。ジョン・ボールの原題は In the Heat of the Night で、本作は The Heat's on なので、後発でもある本作が「わざと」訳題をカブせたわけだ。そうしたくなる気持ち、わかるよ。続けて読んだからね(苦笑) 火災報知機を押して消防車を呼び寄せた黒人少年ピンキー。やや頭がヨワいとされる白子の巨人である。なぜピンキーは偽の火事を通報したのか?この件で棺桶エドと墓掘りジョーンズのコンビは、どさくさでピンキーに踏み殺された売人の死の責任を取らされて、職務停止にされてしまう...アフリカに向けて旅立つ準備をするピンキーの養父とその若い後妻、秘かな愛人である「アフリカ人」を巡るトラブル...それは詳細不明な「宝」を巡るもののようで、ピンキーの伯母で祈祷師兼バイニンのシスター・ヘブンリー、そのヒモのアンクル・セイントといった怪人物が争奪戦に加わり、苛烈な殺し合いが始まる...この中で撃たれた墓掘りの命は? こんな話。重態の墓掘りの分も担おうと棺桶が、コンビの代名詞でもある墓掘り愛用の38口径リボルバーを借りて、単身命をマトに「ヘロイン中毒者の巣」を巡り歩くあたりなど、ちょいと泣かせる。そのために棺桶が自分の武装を整えるシーンが、言うまでもないがハードボイルドな良さがあってシビれるな。 ショルダー・スリングは、衣装箪笥の扉の裏のクギにかけたあった。銀メッキした特製の、銃身の長い、38口径のリボルバー、ハーレムでだれ知らぬ者のないこの銃が、スリングにおさまっている。彼はそれを抜き出して、真鍮をかぶせた五発の弾を手速くはじき出しながら、弾巣を回転させた。そしてきれいに拭って油をさし、ふたたび弾をこめた。五発目は、アメリカ陸軍規格の曳光弾と交換した。そして撃鉄と向かいあった薬室は、悪党を銃把でなぐったときなど、そのはずみで暴発しないように、わざと空にしておいた。 引用が長くなったが、こういう描写がカッコいい。まあ、いろいろな悪党たちがそれぞれの思惑で動きまわるし、ハードボイルドに心理描写を排して客観描写でいろいろな視点に飛び回って描写するために、全体の把握がかなり難しかったりする。これが難かな。 |
No.1 | 6点 | kanamori | |
(2011/08/07 12:38登録) ハーレムの黒人刑事コンビ、棺桶エド&墓掘りジョーンズ・シリーズの第7弾。 今回も、あるブツを巡って個性的で怪しげな人物たちが争奪戦を繰り広げるというパターン化したプロットながら、騒動で続出する死者が総勢12名というのはシリーズ一番の過激さです。 ”墓掘り死す”のラジオのニュースを聴いてからの棺桶の暴走ぶりも迫力満点でしょう。ツッコミどころも多々ありますが、最後は珍しくミステリ的な仕掛けもあり楽しめました。 |