| kanamoriさんの登録情報 | |
|---|---|
| 平均点:5.89点 | 書評数:2463件 |
| No.1543 | 7点 | 絆回廊 新宿鮫Ⅹ 大沢在昌 |
|
(2011/06/18 17:49登録) 新宿鮫シリーズの最新作。 近年の単発作品の低調ぶりから推して内容を危惧していましたが、このシリーズに対する作者の思い入れ具合が分かるさすがの出来でした。シリーズを10作書いてクオリティが落ちないというのは大したものだと思う。 ただ、本作ではシリーズ愛読者にとってショッキングな事態があるものの、前作で一区切りつけて新たなステージへのイントロの物語のような感じで、次作に期待を抱かせるという結末は評価がわかれることだろう。 |
||
| No.1542 | 6点 | 悪女イブ ハドリー・チェイス |
|
(2011/06/17 18:52登録) 英国人作家にもかかわらずアメリカン・ハードボイルド風の過激な暴力描写の作品を書いて流行作家となったハドリー・チェイスですが、そういったギャング小説とは別に”悪女もの”のサスペンスもいくつか書いていて作風は意外と幅広い。創元推理文庫のジャンル分類でいうと、拳銃マークと黒猫マークに分かれて出ていて、黒猫マークの代表作が本書のようです。 物語は、ハリウッドの新進作家「わたし」ことクライブが娼婦イブと出会ったことによって破滅へ向かうさまを描いた心理サスペンス。「蘭」シリーズなどとは全くテイストが異り、暴力描写がないどころか犯罪小説ともいえない内容だが、主人公が一歩一歩破滅への道を歩むさまは生々しく引き込まれる。 しかし、イブは悪女といえるのだろうか。元凶はクライブの盗作であって、イブの行為は娼婦として当然のことだと思えるのだが。 |
||
| No.1541 | 6点 | 天空への回廊 笹本稜平 |
|
(2011/06/15 20:42登録) 久々にスケールの大きい日本製の冒険小説を読んだ。 エベレストを舞台にした山岳冒険小説プラス、テロ集団とアメリカの陰謀が絡むという国際謀略小説。まあ全体の構成はステロタイプかもしれないが、プロットがよく練られていて展開が読めないところがいい。 主人公ひとりでそこまで出来るか、というツッコミはこういったタイプの小説に対して常に付き纏うものの、「ホワイトアウト」などが面白かった人にはお薦め。 |
||
| No.1540 | 7点 | アブナー伯父の事件簿 M・D・ポースト |
|
(2011/06/14 18:50登録) 東京創元社で編まれた”法と正義の人”アンクル・アブナーが活躍する短編集。 この2年前に出たハヤカワミステリ文庫の「アンクル・アブナーの叡智」のほうを読んでいましたが本書は初読み。といっても収録14編中10編が早川版とダブっているのですが・・・・。 ”思考機械”などと比べるとトリック一本やりなところはなく、全編”神の摂理”というテーマで統一され物語性が豊かです。アブナーの人物像も魅力的で、代表作「ナボテの葡萄園」はじめ感動的なエピソードが多かった。 ただ、出版社の都合で、有名作の「ドゥームドルフ事件」が収録されていないのは残念。 |
||
| No.1539 | 2点 | 虚構推理 鋼人七瀬 城平京 |
|
(2011/06/13 18:57登録) いったん読み始めたら途中でハズレだと分かっても最後まで読み終えることにしているのですが、これは本当に苦痛だった。 駄作というわけではなく、終盤の展開など作者独特のセンスを感じるところもあります。しかし、この物語の設定・世界観は全く嗜好に合わず受け付けませんでした。 小説ではなく漫画で描くほうが相応しいように思う。 |
||
| No.1538 | 6点 | 思考機械の事件簿Ⅰ ジャック・フットレル |
|
(2011/06/12 17:43登録) 東京創元社で編まれた”思考機械”ことヴァン・ドゥーゼン教授が活躍する第1短編集。 同じ年にハヤカワミステリ文庫で出た短編集のほうを読んでいましたが本書は初読み。といっても収録11編中8編が早川版とダブっているのですが・・・・。 一世紀前の作品集だけに陳腐になったトリックもあるけれど、特殊な凶器、意外な隠し場所、密室もの、偽アリバイなど、本格パズラーの色々なガシェットを取り揃えていて楽しめた。なかでは、「焔をあげる幽霊」が怪奇趣向と不可能性で編中のベスト。ディクスン・カーがイチオシというのも分かる出来です。 ただ、出版社の都合で、代表作の「13号独房の問題」が収録されていないのは物足りない。 |
||
| No.1537 | 4点 | 新・日本の七不思議 鯨統一郎 |
|
(2011/06/10 18:28登録) 歴史の新解釈シリーズの第3弾。 お題は、原日本人のルーツ、柿本人麻呂、空海、写楽の正体、真珠湾攻撃の謎などですが、提示される解釈は「邪馬台国はどこですか?」などと比べるとミステリ的な発想によるものではなく、最後に付された参考文献に寄りかかったものが大半で小説としての面白味に欠けた。 |
||
| No.1536 | 7点 | 大はずれ殺人事件 クレイグ・ライス |
|
(2011/06/09 18:20登録) マローン弁護士&ジャスタス夫婦シリーズの3作目。 米国’40年代の都会派ミステリといえばウールリッチとクレイグ・ライス。サスペンスとユーモア、ニューヨークとシカゴという風に、ジャンルも作品舞台も違うけれど、ともに古き良き時代のアメリカへの憧憬のようなものを感じさせてくれる。 本書は、次作の姉妹編「大あたり」と併せて、シカゴ社交界の華モーナ・マクレーンの殺人予告を巡るドタバタを縦糸にしたユーモア本格ミステリ。謎解きもいいけれど、小泉喜美子女史の軽妙な翻訳と相まって主役・脇役のキャラクターが楽しい。とくに、「警官になんかなりたくなかったんだ」のフォン・フラナガン警部がお気に入り。 |
||
| No.1535 | 7点 | メルカトルかく語りき 麻耶雄嵩 |
|
(2011/06/08 18:58登録) とかく”挑戦的な作品集”とか”問題作!”という煽りの紹介文は眉唾ものだと思っていましたが、本書はまさに本格ミステリに対して挑戦的な作品が揃っていました。 なかでも「答えのない絵本」が極北でしょう。非常にロジカルな消去法による容疑者絞り込みの末の真相が、コレかよ!という脱力感がなんとも(笑)。好みでいえば「九州旅行」のトボケた味も捨てがたい。 不条理な事件が、メルの不条理な解答で収束される話ばかりなので、結末にカタルシスを求める方には壁本相当かも。 |
||
| No.1534 | 6点 | 魔術師を探せ! ランドル・ギャレット |
|
(2011/06/07 19:46登録) 科学の代わりに魔術が発達したパラレル・ヨーロッパを舞台背景にした本格パズラー、主任捜査官ダーシー卿&魔術マスター・ショーンの活躍を描く連作中短編集。米澤穂信「折れた竜骨」の流れで再読してみました。 「その眼は見た」は、城館内の殺人の犯人は?というオーソドックスなフーダニット。被害者の網膜に残った犯人の映像という手掛かりにヒネリを加えていて扱いが非常にユニーク。 「シュルブールの呪い」は、英仏帝国VSポーランド王国というシリーズを通した構図を背景にしたスパイ謀略戦が楽しめる作品。船上の活劇などのテイストは「折れた竜骨」を髣髴させます。 「藍色の死体」は、死体全体を染色した理由の謎が魅力的なホワイダニットの力作中編で、完成度では編中のベストでしょう。 |
||
| No.1533 | 5点 | 片思いレシピ 樋口有介 |
|
(2011/06/06 18:16登録) ”せつない探偵”柚木草平の愛娘・加奈子を主人公にしたシリーズの番外編。 父娘の電話のやり取りで笑わせてくれますが、いくらませているといっても小学6年生の娘が使うとは思えない言葉を連発させるので気になってしょうがなかった。語彙が豊富すぎるでしょう。 塾講師殺しの事件のほうは、探偵団を組む友達の柚子ちゃん一家の濃いすぎるキャラクターに圧倒されて、主人公があまり活きていないように思えた。 |
||
| No.1532 | 6点 | 凍てついた7月 ジョー・R・ランズデール |
|
(2011/06/05 22:25登録) 忍び込んだ強盗を正当防衛で射殺した主人公が、逆恨みで強盗の父親から家族を狙われることになるという序盤の展開までは、よくある正統サスペンスかと思っていたら、突如ストーリーが変な方向に急展開して引き込まれた。 文体も最初はシリアス一辺倒な感じだったのが、構図が変わると共にハップ&レナードものを思わせるくだけた語調になってくるのが面白い。 文庫で250ページほどなので読み応えという面では物足りないけれど、毛色の変わったサスペンスを求める人にはお薦め。 |
||
| No.1531 | 6点 | 私たちが星座を盗んだ理由 北山猛邦 |
|
(2011/06/04 21:39登録) ノンシリーズのミステリ短編集。 初期作のような物理トリックを用いたものはなく、最後の一撃でサプライズを演出した作品が多い。 以下、察しのいい人にはネタバレぎみですが、 メルヘンチックな語りとラスト一行で明かされる真相との落差に唖然とさせられる「妖精の学校」が素晴らしい。”その場所は何処にも属さない!”という紙片の存在がなかなか効果的。これは物理ではなく地理トリックというべきでしょうか。 あと、「少年検閲官」に通じるような異世界本格「終の童話」も印象に残った。 「嘘つき紳士」は凡作だが、他の現実的な設定のミステリ「恋煩い」や表題作も水準以上の出来だと思う。 |
||
| No.1530 | 6点 | ハリウッド・ボウルの殺人 ラウル・ホイットフィールド |
|
(2011/06/02 22:20登録) 短い期間ながら’20~30年代半ばまでの約10年間、当時の有名なパルプ雑誌「ブラック・マスク」でダシール・ハメットと並ぶ人気作家だったホイットフィールドの私立探偵小説。 文庫解説によると、短編は多数同誌で発表しているものの、ハードボイルド長編は3作のみ、しかも私立探偵を主人公にしたものは本書だけらしい。 ハリウッド・ボウル(野外の円形劇場)での衆人環視下の殺人を発端とする本書、読後の第一印象は意外と謎解きの骨格が整ったフーダニット・ミステリだというもの。また、トーキーに移行した映画業界の変貌や、禁酒法によるギャングの横行をミスディレクションにするなど、この時代の背景がプロットにうまく溶け込んでいるように思える。ただ、主人公のベン・ジャーディンの人物造形がちょっと把握しずらいのが難点か。 書誌的な興味で読んでみたけれど、思っていた以上に面白く読めた一冊。 |
||
| No.1529 | 5点 | 麒麟の翼 東野圭吾 |
|
(2011/05/31 18:49登録) ヒューマン・ドラマとしてはありがちのストーリー。 データが後出しなので謎解きミステリを読むという楽しみもあまりなかったが、加賀恭一郎の観察眼の鋭さは今作も健在で、そこは面白かった。 |
||
| No.1528 | 6点 | スリー・パインズ村の不思議な事件 ルイーズ・ペニー |
|
(2011/05/30 17:44登録) カナダ・ケベック州のスリー・パインズという片田舎の小村を舞台にした本格ミステリ、ガマシュ警部シリーズの第1作。 アガサ賞作家だから何となく”お茶とケーキ”派のミステリかと思っていましたが、ガマシュを中心とした捜査チームの警察小説的な味わいもあります。自己主張の強い上昇志向の新米女性刑事が問題児でいいアクセントになっている。 森の中で元教師の老女が狩猟弓矢で殺された事件の物語のほうは、複数の村人たちの内面描写が頻繁に挿入され、なかなかストーリーが進展しないので終盤近くまで乗り切れなかった。次作に期待しよう。 |
||
| No.1527 | 6点 | 三題噺 示現流幽霊 愛川晶 |
|
(2011/05/28 16:43登録) 落語ミステリ、神田紅梅亭寄席物帳シリーズの4作目。 「多賀谷」「三題噺 示現流幽霊」とつづく二話は、ともに落語ネタとシンクロする現実の事件を、機転を利かせて福の助が高座で謎解くというシリーズ定番のプロットで、相変わらず安定した内容でした。 連作ミステリらしい仕掛けが炸裂する「鍋屋敷の怪」が異色作ながら出色の出来だと思う。吹雪のクローズド・サークル風の発端から、終盤の構図の逆転はなかなか圧巻で、落語ネタで見立てた”犯人”の動機に関する伏線も鮮やか。 |
||
| No.1526 | 6点 | ムーンライト・マイル デニス・ルヘイン |
|
(2011/05/25 22:10登録) 私立探偵パトリック&アンジー・シリーズ、11年ぶりの最新作にして最終巻。物語も現実世界と同様の年月を経過しており、パトリックも40過ぎの中年のオジサンというのがなんとも寂しい。 本作は「愛しき者はすべて去りゆく」の続編というか後日譚で、当時誘拐された幼女で16歳になったアマンダが中核となって、前回と相似形のような事件にパトリックが巻き込まれていくというストーリー。 正直、事件を収める手法は終盤グダグダになってしまった感じがするが、パトリック&アンジー、そして幼馴染のブッバの三人+アルファのラストシーンは悪くない。 |
||
| No.1525 | 6点 | 追憶のカシュガル 島田荘司 |
|
(2011/05/24 18:27登録) 御手洗潔シリーズの中短編集。 といっても、奇想天外な謎や大技トリックが出て来ないどころか、御手洗が推理する場面もありません。70年代に世界を放浪した御手洗が各地で出会った人物から聞いたエピソードを回想し語るという構成で、社会的弱者への差別と奇蹟の物語が中心になっています。 中編の2作が印象に残った。ともに、戦争を背景に花(曼珠沙華と桜)をモチーフにした、ある人物の悲哀あふれる生き様を描いている。とくに「戻り橋と悲願花」のラストシーンの奇蹟は感動的。いつまでも余韻が残る名作でしょう。 |
||
| No.1524 | 6点 | ファーガスン事件 ロス・マクドナルド |
|
(2011/05/23 18:58登録) ロス・マクといえば私立探偵リュウ・アーチャーですが、本書は、50年代後期に”家庭の悲劇”をテーマとするスタイルを確立して以降の作品のなかで、唯一アーチャーが登場しない長編です。 石油成金ファーガスン大佐の妻で元女優のホリーが誘拐された事件に関わることになる弁護士ガナースンの捜査方法は、事件関係者と会い、”質問者”となって彼らの虚飾を剥いでいくというアーチャーの探偵法と同じです。 ただ、彼には家庭があり、妻とまもなく誕生する子供についてたびたび言及されるなど、あまりハードボイルドっぽくないですね。このあたりが一般的に評価が高くない理由かもしれませんが、複雑なプロットとどんでん返しというロス・マクの特徴は本書も健在です。 |
||