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ミステリの祭典

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放課後はミステリーとともに
鯉ヶ窪学園探偵部シリーズ

作家 東川篤哉
出版日2011年02月
平均点6.56点
書評数9人

No.9 6点 パメル
(2024/02/07 19:22登録)
鯉ヶ窪学園高等部に通う高校生の霧ケ峰涼は、探偵部の副部長。学園内で起こる事件を追いかける8編からなる短編集。
「霧ケ峰涼の屈辱」Eの形をした建物内で、泥棒を目撃した霧ケ峰涼は追いかけるも見失う。衆人環境の中、消えた泥棒はどこへ。本格的密室事件を扱いながら、そのオチには唖然。
「霧ケ峰涼の逆襲」有名芸能人が、密会しているというマンションを張っている芸能カメラマン。その芸能人が消え失せてしまう。トリック自体も鮮やかだし、そのネタを最終的にどう提示するかという仕方も巧い。
「霧ケ峰涼と見えない毒」霧ケ峰涼は、友人の高林奈緒子に頼まれて彼女の居候先へ。そこの主の頭に瓦が落ちてきたのを、誰かが殺そうとしたに違いないと考え推理を頼んだのだ。しかし、その日に主は毒殺されてしまう。トリックがチープすぎて残念。
「霧ケ峰涼とエックスの悲劇」星空の観測会中、UFOらしきものを発見し、地学教師とともに追う。忽然と姿を消したエックス山で、首を絞められた跡のある女性が倒れていた。馬鹿馬鹿しいトリックでユーモアたっぷり。
「霧ケ峰涼の放課後」体育倉庫でタバコを吸っていた不良。霧ケ峰涼たちは見ないふりをしようと思ったが、そこへ生活指導の先生が。しかし、不良が所持していたタバコとライターは探すも見つからなかった。トリックを暴くとさらなる真相が見えてくる構図は見事で完成度が高い。
「霧ケ峰涼の屋上密室」教育実習に来ていた先生が、上から降ってきた女子生徒の下敷きに。しかし、女子生徒の落下時、その建物は密室だと判明する。偶然が過ぎると言われればそれまでだが、偶然を必然に変えるトリックで驚かされる。
「霧ケ峰涼の絶叫」大言壮語の走り幅跳び選手である足立が、グラウンドの砂場で倒れていた。砂場には犯人のものらしき足跡はない。不可能犯罪の謎がコント的なオチで笑える。
「霧ケ峰涼の二度目の屈辱」またもEの形をした建物内で、障害未遂事件が起こる。学ランを着た犯人を追うも、またしても衆人環境の中、消え失せてしまう。思い込みを上手くトリックに使っている。
驚愕するようなトリックや真相はないものの、作者らしいコミカルな雰囲気、魅力的なキャラクターが上手く生かされていて小気味よい。

No.8 6点 mediocrity
(2019/03/27 18:52登録)
鯉ヶ窪学園探偵部副部長、霧ヶ峰涼が主人公の短編集。なぜか長編の馬鹿トリオは出演しない。初めの2編の出来がいい。途中から野球ネタが減るが、それに比例して作品自体の出来も下降。魔法を封じられた魔法使いのようだ。東川氏はとことん野球が好きなのであろう。
①霧ヶ峰涼の屈辱
日本人の10%にしか分からないような野球ネタを連発する。長編より更にネタがマニアック化してる気がする。
ただし、わからなくても読める。名作だと思う。
②霧ヶ峰涼の逆襲
短編の割に話が二転三転して面白い。これがベストか。

No.7 7点 ねここねこ男爵
(2018/03/25 12:42登録)
面白い。割り切ってぶっとんでるので個人的には「ディナー」よりこっちの方がずっといい。
高校生というのが作者のノリに合ってるし、シンプルな謎を提示してサクサク解決でテンポ良い。

No.6 6点 いいちこ
(2015/07/07 16:33登録)
「ディナー」以上にエキセントリックなユーモアが暴走気味で、本格度の高い作風とのギャップを感じる。
キャラクター造形にしても、探偵が固定されていない不安定さもあり、「ディナー」の2人には遠く及ばない。
ベストは「霧ヶ峰涼の逆襲」で断然。
僅かな仕掛けから意外性あふれる真相を導き出しており、極めてレベルの高いパズラー。
準ベストは「霧ヶ峰涼の屈辱」。
それ以外はトリックこそ大胆であるものの、偶然の産物やフィージビリティに難がある作品ばかりで、前2作とのレベル差が大きく、この評価

No.5 7点 makomako
(2013/12/27 20:30登録)
 私としては作者の名を知らしめた「謎解きはーー」シリーズよりこちらのほうが好きです。本格物としても明らかに上だと思うのです。
 まず名前が良い。探偵が(あんまり探偵として機能してはいないが)霧ヶ峰涼とは実に覚えやすい。なかなか愛らしいキャラクターで読んでいてだんだん好きになりました。
 結構なトリックも楽しめる。お話ごとに結構大胆なトリックを惜しげなく投入しているんです。まあ現実には無理そうなトリックもあるけど、ユーモアミステリーだから許せてしまう。
 バカミスなる小説ではしばしば内容も貧弱でばかばかしいものがみうけられるけど、作者の小説はそれとは一線を画する本格ユーモアミステリーと思います。 

No.4 7点 白い風
(2012/02/22 00:08登録)
昨年テレビ放送などで話題になった「謎解きはディナーのあとで」の次に読んでみました。
形式は同じような短編集で楽しめました。
短編集だしトリックは大掛かりじゃないけど、主人公の霧ヶ峰涼を筆頭にキャラが楽しめました。
だから、ミステリ度より青春小説の意味合いが強かったけどね。
でも、「ディナーのあとで」の宝生麗子同様、涼も副部長だけど謎解きは人任せだね(笑)
これも、テレビドラマ化すればそれなりに面白いかもね。

No.3 7点 まさむね
(2011/11/24 21:14登録)
 鯉ヶ窪学園探偵部シリーズ…ってことになるのでしょうねぇ。とは言え,探偵部長をはじめとする3馬鹿トリオは登場せず,副部長「霧ヶ峰涼」を主人公とした短編集です。
 7年間にわたって書き溜めたらしいですが,確かに,初期の作品ほど出来がよいです。第1話「~の屈辱」は,野球を絡めたのがミソ(ある部分の伏線は欲しかったけれど)。第2話「~の逆襲」は,あの分量での連続反転が見事。短編ミステリとして高水準。他の作品も悪くはないですが,インパクトは落ちます。
 ちなみに,ギャグとしても野球ネタをふんだんに使用していますので,真に楽しむには「野球好き」が条件になるかもしれません。ミステリとは違う視点で「読者を選ぶ」かも(笑)。
 作者は,大ヒット「謎解きは~シリーズ」や「烏賊川市シリーズ」の短編集も発表していますが,個人的にはこの短編集が最もしっくりきましたね。単に私が野球好きだからかもしれませんが…っていう個人的嗜好も含んでこの点数に。

No.2 6点 kanamori
(2011/04/19 17:58登録)
ベストセラー作家どころか、いきおいで本屋大賞にまで登りつめてしまった東川センセーの最新作。先日たまたまテレビのインタビューで拝顔させてもらいましたが、戸惑い感まるだしで面白かった。

それはさておき、本書の高校生・霧ヶ峰涼君の事件簿は、2003年から昨年まで、比較的長いスパンで雑誌掲載されたもので、微妙に作風が変化しているように思える。第1話の広島カープ・ネタなどマニアックな(=一般受けしない)ギャグが、後半の作品になるほど抑えめになっているのはちょっと残念。

ミステリ的にも初期作品ほど出来がいい。とくに、第2話「霧ヶ峰涼の逆襲」は、物語の構図が次々と変転した末の真相が鮮やかで、編中のベストといえる傑作パズラー。
第1話の「~の屈辱」もパズルとして悪くはないが、あの叙述がフェアと読めるか微妙だと思う。「ミステリの仕掛けを堪能するために第1話からお読みください」という編集部の注記がヒントといえるかもしれないが。

No.1 7点 江守森江
(2011/02/20 04:49登録)
「謎解きは〜」のベストセラー現象のお陰で漸く発売に漕ぎ着けた「3馬鹿(学ばない学園)シリーズ」のスピンオフ「霧ヶ峰涼シリーズ」短編集(売上次第で此方が本家になるかも?)
主人公が名探偵でない(しかも探偵役が変わる)設定は本家に同じ。
本格ミステリ作家クラブのベスト・アンソロジーで「〜屈辱」「〜逆襲」を先に読んでいたので、本シリーズに対する(未読短編への)期待はMaxだった。
そして残念ながら期待は裏切られたとしか言いようがない(未読作品が既読作品のレベルに及ばない)
それでも、他作家の同様な発売展開した短編集よりは思い入れが格段に強いし、読めて良かったとの思いもある。
私的な採点は6点に思い入れで1点加点の7点だが、先にアンソロジーで読んだ2作は文句なしに素晴らしいので未読で本書に接していたなら満点(8点)にしていたかもしれない。
東川が売れっ子作家になり図書館予約が殺到している現状は嬉しいような、嬉しくないような、複雑な心境。
久々に図書館を待たず購入してしまった(>_<)
息子が読んだら高価買取中なので近所の古本屋に即転売予定(^O^)/

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