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ミステリの祭典

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kanamoriさんの登録情報
平均点:5.89点 書評数:2467件

プロフィール| 書評

No.287 4点 古都に棲む鬼女
風見潤
(2010/05/10 21:10登録)
長野県での地方歌舞伎を巡る連続殺人を描いた本格ミステリ、シリーズ第3弾。
前2作と比べて、おおっというトリックは無く、絞り込みによる犯人当てとなっています。作者は他に出雲歌舞伎を背景にしたミステリも書いていて造詣が深い様で、この作品でも頻繁に歌舞伎用語に関する説明とウンチクが出てきますが、読者層が小中学生であることを考えると、この題材はどうかなと思いました。


No.286 6点 月下の蘭
小泉喜美子
(2010/05/10 20:55登録)
歌舞伎の演目をモチーフにした短編集で4編収録。
といっても物語の背景はどの作品も梨園とは無関係で、演目に詳しくない我が身にとっては元ネタとの比較もできませんが。
「月下の蘭」は華麗なタイトルとは裏腹の、洋蘭を愛する女性の復讐劇が凄まじい。女性の心情描写がほとんど無い分かえって恐ろしい。
「宵闇の彼方より」は幻想怪奇譚。山間の寂れた病院の情景描写と老いた女医の黒衣姿というのが何とも不気味。
読んでしばらくして4編とも女性の復讐が主題だということに気がついた。


No.285 6点 二人道成寺
近藤史恵
(2010/05/10 20:37登録)
歌舞伎界を背景に私立探偵の今泉と大部屋女形役者・小菊が探偵役を務めるシリーズ第4弾。
ライバル関係にある二人の女形役者と事故で昏睡状態の一方の妻を絡めた恋愛ものの様相で、歌舞伎の演目とシンクロさせたプロットがなかなか秀逸。
終盤、本格ミステリ風の謎解きがありますが、今泉の存在がこの物語なかで異質でマッチしていないように思いました。


No.284 7点 妖かし蔵殺人事件
皆川博子
(2010/05/10 20:21登録)
歌舞伎界を背景にした本格ミステリ。
歌舞伎とミステリは元々共通点があるので、梨園ものミステリは結構書かれてますね。ともに様式美を重んじる一方で先達をパロッたり、早変わりの一人二役やどんでん返しもあったりで。
本書は、舞台中の人間消失や消失した人物が密室の土蔵に死体で出現したりで結構派手なトリックが使われていますが、役者間のどろどろとした人間関係を描くことにも重点が置かれていてバランスがとれていると思います。


No.283 6点 バード・ウォーズ
多島斗志之
(2010/05/09 19:08登録)
初期の国際謀略小説。
ゴルバチョフ時代のソ連を舞台に、米国CIAによるペレストロイカ潰しの奇策を巡る謀略戦を描いています。
今回の大ボラ話のネタは、コウノトリによる細菌配布で、バカミスならぬバカ謀略ミステリと言えそうですが、KGBを始めソ連内部の抗争劇も絡んで、なかなか面白かった。物語が進展しても先が見えてこないプロットと最後のどんでん返しはいつもの通りです。


No.282 8点 砂のクロニクル
船戸与一
(2010/05/09 18:31登録)
クルド独立運動を舞台背景にした骨太の傑作冒険小説&壮大な抒情詩。
この時期の船戸の小説は、海外の紛争地域に日本人を投げ入れて引っ掻き回したり、緻密な現地取材に基づく歴史の証言者に設定したりがパターンで、本書はその決定版だと思います。
各章で銃撃戦の騒音が溢れ、幾多の血が流れます。単なる冒険小説としても怒涛のサスペンスに浸れますが、宗教と民族の紛争に対するメッセージ性が強いのが好みの分かれるところかもしれません。


No.281 6点 夏からの長い旅
大沢在昌
(2010/05/09 17:54登録)
作者が永久初版作家と自認していた時代の作品にも、ハードボイルドの良作が結構ありますが、本書もその一冊だと思います。
元戦場カメラマンの木島がある女性と出会ったことから、何者かから家への放火などの脅迫的行為を受ける。
主人公を刑事や私立探偵とせず、活劇も控えめにしていますが、一人の女性を守るために、ごく普通の男がプロ相手に立ち向かう姿がいいですね。多少甘めのハードボイルドかもしれませんが完成度は高いと思います。


No.280 5点 透明受胎
佐野洋
(2010/05/09 17:15登録)
SF設定のミステリ。
処女受胎によるクローン人間、ナチス・ドイツが開発した不老長寿薬など、いくらでも面白くなるネタを使いながら、こじんまりしたいつも通りのミステリになっているのは、時代性だけでなく作者の創作姿勢なんでしょうね。ちょっともったいない作品。


No.279 6点 贋作ゲーム
山田正紀
(2010/05/09 12:47登録)
犯罪をゲーム感覚で読める襲撃小説の短編集。
悪党パーカーシリーズにコンゲーム風のテイストを加味したような、アクションと頭脳戦を両方楽しめる逸品。
コンピュータ管理の列車からの絵画の強奪作戦「贋作ゲーム」、絶対に排除不可能と思われる機雷の除去作戦「スエズに死す」など、いずれも最後のオチが効いています。


No.278 5点 光媒の花
道尾秀介
(2010/05/09 12:13登録)
ロンド形式の連作短編集。
第1話の脇役格の登場人物が第2話の視点人物となるような形で6つの物語が語られます(トラックの運転手はちょっと苦しいですが)。テイストは「龍神の雨」風ですが、親子間の暗い関係とか昭和の清貧な家族小説を読んでいる気分になりました。
ラストで救われる話もありますが、全体的に暗いトーンの話が多いので読後感はあまりいいものではありません。


No.277 2点 神秘の扉
高木彬光
(2010/05/09 00:03登録)
通俗怪奇スリラー。
一種の復讐譚ですが、同時期に「白昼の死角」とか「誘拐」などを出していながら、このような戦前の作家が書くような古臭い物語を書く事情がよくわからないですね。


No.276 5点 雪のマズルカ
芦原すなお
(2010/05/08 23:55登録)
女性私立探偵ものはちょっと相性が悪い。
私立探偵の夫が銀座のホステスと交通事故死し、後を継いだ里子という女性を主人公とするハードボイルド連作短編集。
あまりぱっとしない設定で、作者が書くほどの物語とは思えない。脇役で「月夜の晩に・・」のふーちゃんが出てきたのが救いかな。


No.275 7点 蒼い描点
松本清張
(2010/05/08 17:27登録)
箱根・宮の下の旅館に逗留する女性作家のある秘密と周辺で発生した殺人事件を描いた本格風ミステリで、社会派的要素が希薄な作品です。
探偵役は女性編集部員と同僚男性で、事件に直接関係しない男女が好奇心から積極的に絡んでゆくプロットは「二人で探偵を」風で、筆致は重厚ではあるものの、これまでの清張作品のイメージと異なる作風といえそうです。
余談ながら、この時期のミステリのタイトル付けの流行として「空白の起点」「白昼の死角」「憎悪の化石」「影の告発」とか思わせぶりで抽象的なものが多いのは清張の影響なんでしょうか。


No.274 7点 幻の女
香納諒一
(2010/05/08 16:31登録)
数年前に不倫関係にあった女性と再開した直後その女性が殺される。主人公の弁護士が彼女の生い立ちを調べると全く別人の過去が立ち現われ、謎の集団が動き出す。彼女はいったい何者だったのか?
ストーリーを要約してみてあまりのベタな展開に萎えそうになりましたが、おじさん世代のハードボイルド読みにとっては結構おもしろく読めました。最後の彼女からの手紙の文面がよかったですね、余韻の残る終わり方です。


No.273 6点 金塊船消ゆ
多島斗志之
(2010/05/08 15:56登録)
初期の謀略系冒険サスペンス。
戦後40年たって届いた手紙は、フィリピンの海岸で焚かれた4つの火に関するものだった。
今作は、米ソ謀略戦などの国際的スケールの物語ではなく、戦争中に沈められた金塊を探す話ですが、多島作品らしくミステリ趣向が施されていて最後はどんでん返しが待っています。
現在この手の主題で書けばもっと長大なストーリーになると思いますが、後半コンパクトにまとまってしまったのは惜しい。


No.272 6点 死んだ時間
佐野洋
(2010/05/08 15:33登録)
女性タレント殺人事件の犯人として自首してきた女はれっきとしたアリバイがあった。
初期の作品で、ホワイダニットを前面にだした秀作です。著者自身も好きな作品のひとつと言っているだけに、謎の設定と意外な展開はなかなか読ませます。
謎の中心となる女性はストーリー上最後まで姿を見せず、その不可解性を高めているのも巧い構成だと思います。


No.271 5点 怒りの菩薩
陳舜臣
(2010/05/08 01:14登録)
終戦直後の台湾を舞台背景にした長編ミステリ第4作。
日本から引き揚げた新婚の台湾人青年の視点で、帰省先での連続殺人が語られていきますが、著者の父親の出身地と思われる台北郊外の田舎町の情景や風習が目に浮かぶように描かれていて興味をひかれます。
ミステリとしては、近隣の菩薩山からの人間消失にそれらしき所がありますが、トリックにあまり見るべきものがないのと、動機がいつものパターンなのでマンネリを感じました。


No.270 6点 歌うダイアモンド
ヘレン・マクロイ
(2010/05/08 00:56登録)
ミステリ&SF短編集。
バラエテイに富んだ作品が収録されています。長編のミステリでも超常現象を取り入れているので、ホラー風の作品は予想の範囲内でしたが、SFまで書いていたのは意外でした。
ミステリ作品では、清朝末期の中国を舞台にロシア女性の失踪を描いた「東洋趣味」が当時の雰囲気を醸し出していて読み心地が抜群によかった。SF作品では、人類の終末がテーマの「風のない場所」が非常に印象に残りました。


No.269 6点 ケイティ殺人事件
マイケル・ギルバート
(2010/05/08 00:37登録)
著者後期の捜査小説ですが、意外な拾いものの一冊でした。
田舎町のダンスパーティの夜、町出身の有名女性アイドルが惨殺される。物語の序盤は町の住民たちが次々登場し人物の交通整理が大変ですが、捜査陣の住民一人一人の聞き込みによって主要人物の造形が徐々に浮き彫りになってきます。
終盤、法廷場面になってダミー犯人と真犯人がおぼろげに推理できるのですが、最後の数ページでとんでもない事をやってくれてます。途中ちょっと違和感を覚えた記述があったのですが、M・ギルバートがそれをやるとは思わなかったので相当驚きました。


No.268 6点 三重露出
都筑道夫
(2010/05/06 00:12登録)
著者初期の作品全般に言えることですが、今作も捻った趣向を凝らしたメタ風ミステリです。
2つの物語が交互に進行します。ひとつは、忍者に憧れ来日したアメリカ人が奇天烈な忍術を使う女忍者たちとスパイ戦に巻き込まれるという、山風の忍法帖にジェームズ・ボンドを登場させたようなアクションもの。もうひとつの物語は、その小説の翻訳者が小説のなかに現実の記述がある謎に戸惑い調査を始めるというもの。
この二つの物語がどのように結びつくのかが肝のはずなんですが、結末はちょっと肩透かしの感じでした。狙いはよかったけど着地に失敗というところでしょうか。

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